3Dの

仕事仲間から聞いたのですが、3Dベースのドラエモンの映画が80億の興収だとか。セルアニメの代用品のような事をやらされていた3Dではなく、3Dならではのテイストで作品を作って、80億もの興収を叩き出したのは、シンプルに喜ばしい事です。最近の作画版のドラエモン映画が30億台だった事を考えれば、大躍進ですネ。

メディコム・トイの「藤子・F・不二雄シリーズ」のフィギュアを見れば、ドラエモンなどの「藤子マンガ」が立体に堪え得る事は以前から明白だったのです。3Dベースの映画は中々に苦戦を強いられ続けてきましたが、とうとう「実績」を築いたわけで、今後は「漫画原作は作画アニメの牙城」とは言い切れない状況に移行していくのかも‥‥知れませんネ。
*しかし何だ、メディコム・トイのシリーズは可愛いのが多いですネ。千円シリーズでQちゃんや黒ベエも出してくんないかな。

お客さんのからだが、徐々にセルアニメではないアニメーションに慣らされていくのは、わたし的に多いに歓迎すべき事です。私は「絵を描く事」を放棄するつもりは毛頭ありませんが、それは「セルアニメに固執する」事ではありません。2Dアニメーションだって、美麗なイラストテイストで動かせるし、フルフレームのモーションだって可能です。今の作画の慣習とキッパリ決別すれば、です。

「アニメと言えば、作画」みたいにふんぞり返って、殿様商売していてはダメだと思っています。慣習でアニメを作るような意識は、「一人勝ち」だった昔と違って、競合が頭角を現していくこれから先は、やがて観る側に飽きられていくと感じます。現在そして未来は、10年前、20年前とは、大きく違うのですから。

前にも書いた事ですが、もし現業界が、作画システムに4Kやタブレット作画を自ら招き入れた場合、良い事と一緒に、凶悪なくらいの悪い事も持ち込むと、私は考えています。ちょうど、東西の交易でペストがもたらされたように、4Kの市場は利益だけでなく、業界の生活圏に甚大な打撃を与えるかも‥‥です。しかし、それは「世界の生まれ変わり」にはどうしても必要なプロセスだとも思うので、慌てず騒がず狼狽えず、4Kパンデミックを見守っていこうとも考えています。誰が生き残り、誰が死んでいくのか。

何はともあれ、3Dならではの映像作品がヒットしたのは、喜ばしい事です。もし、3Dの躍進に「自分のテリトリーを侵犯される」ようなキモチな人がいたら、その時点で既に「負けている」んだとも思います。3Dを商売敵にしてしまうあたりで、既に審判は下されているのでしょう。

たとえ、2D作画を信条としていても、3D制作チームを映像制作における頼もしい仲間と考える事が出来るか、否か‥‥で、その後の進む道は大きく変わってくるように思います。

 

メモリ

私の自宅にある旧型のMac Pro 2008年モデルは、今やほとんど電源を入れる事もなく、内蔵HDDのデータ整理を待つばかり‥‥の状態です。Mac Pro 2008のマズいのは、メモリがDDR2の800と旧いタイプなので旬を過ぎており、2014年現在に16GB以上にすると結構なお金がかかる点です。8GBのメモリモジュールが1枚3〜4万円しますが、2枚セットでの装着が必要なので、16GBの増設をおこなう場合は7〜8万円かかる‥‥という事になります。ちなみにiMacやMac mini用のDDR3-1600だと8GB x 2 = 16GBで2万円を割ります。

私のMac Pro 2008の現在のメモリは6スロットにそれぞれ1GBで6GB。残りの2スロットに8GBを差せば16GBプラスで、合計22GB。‥‥果たして8万円を投じる値打ちがあるか? 22GBになったMac Pro 2008がどれだけUltraHDにおいて使い物になるか?‥‥という予測・ジャッジは、中々難しいです。8万円あれば、BTOでCPUをi7に変更したMac mini本体が買えちゃうわけですから。

思えば、いつの時代も、こうしてメモリの増設に浮いたり沈んだりしてきました。PowerMacの頃は、128〜512MBの容量移行の中で、G3〜G5の頃は512MB〜2GBの中で、Intel Mac出たての頃は1〜4GBの中で‥‥。私の所有する一番旧いMacは中古で買った「Mac Plus」ですが、それはたしか、「256KB x 4 = 1MB」だったような‥‥。

まあ、概して言える事は、コンピュータの世界に「数値的な常識など定着しない」と言う事でしょうか。メモリが小さかった頃の話をしたら、MSXなどは今では信じられない16KBとか32KBの容量で、Mac Plusの256KBメモリモジュールですらリッチに感じた事でしょうから、きりがありません。昔のアニメによくあった、ロール紙にパンチ穴でログが書き出されるコンピュータなんて、想像もできません。しかし現在に視線を戻すと、64〜128GBのメモリ容量が標準となる時代はそう遠くない未来なので、「数字の感覚」はどんどん更新していかねばならんすネ。

ここ10年くらいは、映像の解像度が1.5〜2Kで落ち着いてくれてた一方で、マシンがG3、G4、G5、Intel Macと、どんどん性能アップしていき、メモリ搭載量も比例して増えていったので、動作は軽くなる傾向にありました。2D映像においてはマシン的に「極楽の時代」だったと言えます。しかし、映像制作の基盤が4K以上になると、いきなりドカンと、それまでの頼もしかった機種が冴えない機種へと転落します。

コンピュータの世界は、「ウンザリしたもの負け」みたいなところがありますから、メモリもディスク容量もピクセル寸法も、膨れ上がる数値との「根比べ」‥‥ですネ。

MacBook Pro、100トラックに堪える

最近、MacBook Pro(i7, 16GBメモリ)の処理能力が高い事を、度々書いていますが、実際に、ここ数日の100トラック越えの音楽制作にも堪えて、その能力の高さを実証してくれました。

ソフトウェア音源オンリーで100トラック‥‥ともなると、マシンの性能がかなり必要になりますが、最後まで作り終える事ができ、私にとってMacBookは何とも頼もしい存在となりました。もしヘタるようならバウンス(After Effectsでいうところのプリレンダリング)して凌ごうと思いましたが、そんな必要もなく、いわゆる「フィルムスコアリング」(映像を見ながら音楽制作する)をストレスなく作業できました。

前にも書きましたが、先代のMacBookまでは「ワークステーションに比べて、性能は2段落ち」くらいの印象でした。しかし、8月に買った最新のMacBook Proは、ワークステーション同等の働きをしてくれます。充分に、「2台目の作業用マシン」になってくれます。

ちなみに、私の買ったMacBook Proのスペック詳細は、
 

15インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル


 
  • 2.5GHz Quad-core Intel Core i7
  • 16GB 1600MHz DDR3L SDRAM
  • 256GB Flash Storage
  • Intel Iris Pro Graphics
  • JIS Keyboard/User's Guide-JPN
  • Country Kit-JPN
‥‥です。

「ターボブースト時に3.7GHz」との事で、どんな時に「ブースト」が利くのがよくわかりませんが、少なくとも100トラックの音楽制作には堪えてくれました。

でもまあ、本業バリバリの方は200トラック‥‥なんて話も聞くので、そこまで出来るかはナゾです。さすがに、MacBook Proで200トラックはちょっと無理な気もしますけどネ。

とは言え、確実に旧Mac Pro(昔のアルミ筐体のやつ)以上の働きをしそうです。つまり、メインマシンにもなるし、メインマシンが既にある場合は、After Effectsのレンダリング用サブマシンとしても使える‥‥という事ですネ。

フタを閉じてしまえば、超薄型のデスクトップマシンのように設置できますし、モバイルだけでなく据え置きとしても使える最近のMacBook。‥‥わたし的にはカナダ作業用に買った予定外のマシンでしたが、実はかなり使えるメインマシンとしても、これから先、重宝しそうです。

機材のコスト

自社完結の作品ならともかく、複数の制作会社・スタジオとやり取りする時、「定番の悩みどころ」は制作環境の差異による「互換性」の問題です。私は極力、ソフトウェア固有のプロジェクトファイルでの受け渡しは避け、一般的なファイル(QTやPSD、DPXなど)を用いるようにしています。

ソフト・ハードを「最新版合わせ」に維持し続けるのは、作業端末を多く抱える会社ほど困難です。ゆえに、作業を計画する際には、「受け渡しに用いるファイルは、ごく一般的な汎用形式を採用したい」のですが、それでも難しい事はあります。

例えば、現在のMacはAVIファイルの出力は苦手です。また、Windowsは基本的にはProResコーデックの書き出しはできません(ウラ技を使えば何とか)。かと言って、DPXを常用するのは、運用的に中々難しいです。MacとWindowsで「共通して、奇麗な10〜12bitのムービーファイル」は非圧縮のQTになるかも知れませんが、容量的にNGです。よって、多少の汚さは覚悟で、Avidの高圧縮コーデックを使うのが「痛み分け」的な感じですが、品質で商売をするわたし的には「画質が汚いのは痛いだけ」(=譲歩したくない)なので、やっぱり「圧縮した事で目に見えて画質が劣化する」コーデックは避けたいと思っているのです。ProRes4444をAppleがWindowsにも開放すれば全ての問題は片付く‥‥んですがネ‥‥。

相変わらず、私が本格的にコンピュータを使い始めた1996年頃と同じ問題を、世界は抱えているわけです。でもまあ、これは言ってもしょうがない事なんで、「解決できない問題ありき」で構えて、その時々のベストな選択をチョイスするようにしています。

しかし一方で、機材が古いままでも問題がおきます。2009年前後のハイスペックマシンは、HDサイズの制作には適していますが、4Kクラスの映像制作には目に見えて遜色が出てきます。2008年のMac Pro(4コア)、2009年のMac Pro(8コア)を使っているので、しみじみ、実感できるのです。ひと昔前にエントリー機種の上位CPUだったCore2Duoなんて、4K時代にはお話になりません。限界は「もうすぐそこ」です。各作業グループ間でマシンの年代の差が大きすぎると、共同作業自体が危うくなります。

といっても‥‥です。そんなに簡単に、フラッグシップのマシンなどホイホイ買えません。大型の劇場作品など、ハイスペックを導入するに値するプロジェクトが進行していないと、導入は厳しいのが現実です。

最新版のMac Proは6コアで40万、メモリやHDDを買い足してプラス10〜20万、合計で50〜60万です。もしかしたら、昔の32bit版の環境のまま作業している場合は、プラグインとかを一斉にバージョンアップしなければなりませんので、さらに5〜10万くらいの上乗せになるかも知れません。最悪の場合、一式70万円で、6人の作業者がいた場合、420万円の調達費がドカンと必要になります。WindowsマシンでもBTOでMac Pro同等のスペックのマシンに仕立てたら、やっぱり50〜60万くらいはかかると思いますから、OSに関わらず「似たような出費のパンチ」を喰らう事になります。

でも、どんな状況においても、Mac Proクラスのマシンが必要なのか?‥‥というと、そうでもないのです。Mac Proを「重戦車」に例えるならば、全部隊の全戦闘車両をティーガー重戦車で揃える事は無いですよネ。国家によって支えられている実際の軍隊だって、そんな無謀な配備はしないわけです。

Wikipediaによると、ティーガー重戦車のコストは「30万ライヒスマルク」、一方、攻撃力ではティーガーと同クラスを誇るパンター中戦車はなんと「12万5千ライヒスマルク」で、半分以下のコストです。なぜ、そんなにもコストの差がでるのかは、詳しくは専門家の方にお譲りするとして、戦力的に見ても強力なパンター中戦車がティーガー重戦車の半分以下なのは、単純な驚きです。

話を元に戻して、コンピュータの世界でも今は、Xeonでなくても、Core i7の高クロック数のマシンであれば、かなり強力なパワーを持っています。「i7、3.5GHz前後、32GBメモリ」を積んで、さらにはSSDでシステムを動かせば、Mac Proを喰う勢いのマシンに仕立て上がります。なのに、コストは20〜35万でMac Proの半分、まさにパンター中戦車の頼もしさ。

重戦車たるハイスペックマシンには、それに相応しい「激戦の戦場」がありますが、戦場全てに重戦車が必要なわけではありません。戦場には、軽戦車から中戦車、重戦車、自走砲や突撃砲まで、多種多様な装甲戦闘車両が存在しますが、同じように現場も「目的・用途」にあった的確な機種選定をおこなう事で、絶望的とも思える高額な調達コストを回避・軽減できると思います。制作システム的に考えるならば、「E計画」のような配備を計画しても良いかも‥‥ですネ。

「異様に固い敵」に肉薄して撃破するのは重戦車の役割、「平素な敵」を次々に撃破するのはパンタークラスでも可能。まあ、ドイツは四方を敵に囲まれて自滅的に負けてしまいましたが、その高い戦闘能力は、戦勝国がドイツの技術を自国に持ち帰って研究したほどです。‥‥日本人は今でも敗戦のショックからか、戦術論や戦争論を学ぶのは「戦争を肯定しているようで悪い事だ」と思う人が多いですが、日常生活においても、戦いに勝って生き抜くという事は、日々是戦争なのです。史実の戦いの歴史から、自分の作業現場に活かせる事も沢山あります。

ふと考えてみれば、何でもかんでも「同じ性能のマシン」というより、「自分の腕前が上がれば、重戦車(=ハイスペックマシン)に乗れる」という目標も、解りやすくて良いかも‥‥です。

新人が、ハイスペックの1/10も使いこなせず、簡単な作業内容に終始しているのだとすれば、9/10は無駄なコストです。新人の能力向上に合わせて、自走砲(i5)から始めて、中戦車(i7)、重戦車(Xeon)とステップアップするのは、マシンの何たるかを体得するうえでも、良いかも知れませんネ。ハイスペックのマシンを使ったからと言って、その人間の能力がいきないハイスペックになるわけじゃなし、むしろ「ハイスペックマシンとの対比でミジメ」になる事すら考えられます。人とマシンが同じ歩みでハイスペックになっていくのは案外良い事かも‥‥です。

「そうこうしているうちに、全員がエースになったら?」という状況もあるでしょう。「結局エースになるのだったら、最初からハイスペックなマシンを1台買ったほうが良い」という考え方も当然あります。しかし、「ハイスペックマシンの能力を100%使いこなす人材」なんて、簡単に育つものではありません。途中で脱落する可能性も充分あります。さらには会社の作風的・作業内容的に、そもそも重戦車エースの技量でなくても済む作品も多いでしょう。最初に巨額の機材費を投じる事無く、「戦況」を見極めて調達を進めていくのが良いと感じます。もし「新人の頃にハイスペックマシンを購入して、その新人が上達した5年後に、マシンの買い替え時期がやってきた」とすれば、「5年間のハイスペック」に対するコストは無駄が多かった事になります。定期的な買い替えを考慮すれば、むしろ「上達する前から、無理してハイスペックを買う事はなかった」と思うのではないでしょうか。

もし仮に、皆がめでたくエースになった暁には、自走砲や中戦車クラスのマシンは、部内の共有マシンにしてしまえば良いです。実際、融通のきく共有マシンは活躍の場が多いですし(ガルムではソレで助かった‥‥)、全員が全てのマシンを「使いこなせる」状況にあるのですから、妙に短期レンタルで見知らぬマシンを導入するよりも頼りになります。ゲスト作業者のマシンにもなりますしネ。

新人が成長して、重戦車級のハイスペックマシンを駆る時、「自分は強い」と自信に満ちあふれている事でしょう。機材コストの面もそうですが、各人の意識においても、ハイ&ローの運用は有用なのかも知れません。

ルッサー、再び

様々なタイプの映像制作に携わっていると、しみじみ「ルッサーの法則」の真実味を味わう事が多くなります。毎日、同じ行程で似たようなクオリティの作業を続けていると解りづらいんですが、アニメ・実写・3Dを入れ替わりで、さらには本編・PV・OPなども入れ替わりで作業すると、各作品ごとの「作業意識」や「状況」の大きな差に直面します。

作品のボルテージを「100点満点での点数」で表現するのはあまりにも大雑把ではありますが、仮に80点くらいのボルテージを実現したい時、レイアウト・原画・動画・ペイント・背景・撮影の6セクションはそれぞれ「何点くらい」の作業をすれば良いか、考えた事はありますか?

ありがちなのは、「80点のボルテージを実現する為に、皆、80点くらいの仕事はしようよ」みたいな考え方です。いわゆる、「皆で80点の仕事をしておけば、完成物も80点になるだろう」という「平均点」の考え方です。

しかし、これは大きく間違った考え方です。

まあ、算術上の仮定‥‥ではありますが、皆が20%も手を抜いて80%のヌルい作業で作った作品のボルテージは、0.8 x 0.8 x 0.8 x 0.8 x 0.8 x 0.8 = 0.26、何と26点というボロクソな結果となります。作業経験豊富な方だったら、「皆でやっつけ仕事をしたら、予想以上にマズい仕上がりになった」苦い記憶を過去に持つ人もいるんじゃないでしょうか。皆で80点の作業しても、作品は80点にはならない‥‥という事を。

「なぜ、平均点で考えちゃダメなの?」と思う人もいるかも知れませんが、よく考えてみましょう。

レイアウト・原画・動画・ペイント・背景・撮影の各作業結果は、別々に展示したり公開されるものでしょうか。作品を見る人々に対して、各作業が独立して提示され、個別に評価される‥‥なんて事は、ありえないわけです。作品はあくまで、「各作業が掛け合わされて、1つになって出来上がる」のですから、各作業を並列に並べて平均点で評価する事自体が的外れなのです。

作業はすべて「掛け合わされる」のですから「平均点で算出できるわけがない」のです。


作品は、各作業結果を並列に眺めるものではなく‥‥


掛け合わせて1つになった映像を見るもの‥‥ですよネ。


では、80点の出来にするには、各作業はどれだけの作業ボルテージにすれば良いのでしょうか。計算してみると、0.964 x 0.964 x 0.964 x 0.964 x 0.964 x 0.964 = 0.8、これまた何と、満点近い96点の仕事が各セクションに必要なのです。80点の完成度を得る為に、各作業者はほぼ満点の96点の作業ボルテージが必要になります。

96点なんて無理っぽく感じますが、実際のプロフェッショナルな意識としては、「120〜140%のボルテージで作業して、様々な経緯で結果的に100%くらいに落ち着く」案配で取り組む人も多いでしょう。言われた事だけを最低限やるのは「ヘタレ」という意識は現場には昔からあって、作業の基準として、20%くらいのマージンを多くとって作業してちょうど良い‥‥というわけです。下から昇って100点を目指すのではなく、プロフェッショナルは上から100点に落とし込むのです。

しかし、これはどの現場でも同じ意識‥‥ではなく、ところ変われば意識も大きく変わり、結果的に「作品の差」となって表れるのです。凄腕揃いでシビアで「技術のキリングフィールド」(ヘタレは八つ裂きにされろ、的な)みたいな高レベルな現場もあれば、ほめ殺しあって体よくまとまるぬる〜い現場もあり、様々です。だからね‥‥、1つの会社の1つの部署で純粋培養されるのは、「ものつくり」個人としてはかなり危ういんですよネ。色んな作品の色んな現場を体験して、はじめて獲得できるものなのです。

‥‥で、話を戻して、仮に「26点」になってしまった可哀想な作品はどうすればよいのでしょうか。最後の救いは、音楽や声優さんの演技、そしてビジュアルエフェクト(VFX)やグレーディングなどの強力な後処理です。

また数字上の仮定の話ではありますが、26点の映像に対し、音楽・キャラクターボイス・VFX&グレーディングの3工程で146点の「100点越えの頑張り」を見せれば、80点まで挽回できます。「0.26 x 1.46 x 1.46 x 1.46」=0.8=80点‥‥というわけです。‥‥まあ、何とも酷い話でリアルな話でもありますが、心当たりがある監督さんも多いんじゃないでしょうか。ゆえに、演出さんや監督さんは、音を重要視する人も多く、VFX&グレーディングの「挽回力」を知っている監督さんは、必ず最終行程にVFX&グレーディングを配置してきます。
*「VFXと音が掛け合わされるっていう考え方は、絵と音で別カテゴリーなのに変じゃない?」なんて言う人もいるかも知れませんが、VFXやインハウスのグレーディングで映像のメリハリや情報量をアップさせておくと、音響さんのほうでも呼応して、一層のかっこいい音を上手く付けてくれるのです。空気感のエフェクトなどは、アンビエントにも影響してきますしネ。フィルムスコアリングの際にも、映像内容の上下はかなり重要な要素となります。

でも‥‥です。こうした点数での例えは、実際のところ、「本当に80点まで挽回できているのか」と言うと、そうでもありません。ロングショットのぶっといトレス線でキャラの絵が崩れているのは、アニメ好きな素人さんでも判別できますし、音やVFXで隠せるものではありません。素が良くないとどうにもならない局面は沢山あります。

以上は各セクションが「80点の仕事ぶり」をした仮定の話ですが、現場の名誉のため付け加えておきますと、現場が恒常的に80点の作業をしているわけではありません。「あくまで、全セクションが8割くらいのユルさで仕事をしちゃった場合」の仮定です。実際の現場では作品を良い方向へと向かわせる人々も沢山います。

ただ同時に、80点すら危うい苦境の中で作業する事が多いのも、実情としてあります。金や時間をどこからも捻出できない‥‥となれば、それはあからさまな「詰将棋」となり、そのパイの中では改善など望むべくもありません。狭いパイのまま、4K時代に突入したら、どんな惨事になるのか、想像もできません。

様々な要素、そして状況は、掛け合わされて1つの作品となります。決して、平均点で推し量るべきものではありません。作品の出来映えを、作業の平均点で思考する事があるとすれば、それはまさに落下の始まりなのです。逆に「掛け合わせ」で思考する時、100点以上のボルテージを発揮するスタッフやセクションは、品質強化と挽回の、まさに作品にとっての虎の子、代え難い存在でもあるのです。

雑感

ガルムの作品終了後の現在、私らの作業チームで作業している内容は、とあるアニメ映像の「絵と音楽を作り変える」内容です。「エフェクトを追加して見栄え良く」なんていう軽いものではなく、「世界観を仕切り直す」レベルのものです。今後はこうした、かなり積極的なグレーディング(その際は従来のグレーディングと差別化する為にも役職名は変えたいですが)も請け負う事になるかも知れません。

アニメ作品にも、ファイナルビジュアルエフェクトやグレーディングで映像を左右する動きが「のっぴきならないニーズとして」見え始めた‥‥とも言えます。でもまあ、考えてみれば、タイムシート通りに撮影して完成‥‥なんていうスタンスのまま、映像技術が盛りだくさんの現代と未来に通用するはずもないのです。

相変わらずのアニメ制作工程、すなわち、線画からスタートして、背景を先に完成させて、そこに色を合わせていくような作業では、「映像の強い意志」など作品が体現するわけありません。作品に現れるのは、各作業者が自分のテリトリー内で「反射神経」でまとめあげた作業結果の寄せ集めです。その結果=完成映像を見て、「いまいちピンとこない」なんて‥‥当たり前の話じゃないですか。現アニメの生産ライン自体がもともと、明確な映像表現の到達目標に基づいて動いているわけではないのですから、「強い何か」を映像上に表出させたいのならば、作品に基づく強い磁界をフローに作用させるリーダーと精鋭スタッフ、そしてメカニズムが必要なのです。

私はBlood劇場版(2000年の)のスタンス、つまり、各セクションのキーマンが明確な映像表現の指針のもとに協調して作り上げる制作スタイルがベストだと考えていますが、一方で、色々なしがらみで「このままでは世に出せない」ような状態になってしまった映像を、監督を中心としたごく少人数の精鋭スタッフで「作り変える」方法もやむなし‥‥と考えてもいます。「ピンとこないものを、ピンとさせる」とでも言いますか。‥‥凡庸な内容のものを大量生産ラインで作っておいて、最後の段階で大改造を加える‥‥なんて、あまり良いやり方とは思えませんが、大量生産ラインの当事者たちが「今のまま変える気がない」状況なのですから、ぶっちゃけ「仕方ない」ですよネ。

映像表現は宝くじではないので、いかようにもで結果を導き出せるのに、なぜか、「いつも通り作って、たまに当たりが出る」みたいな考え方をする人は‥‥多いですよネェ‥‥。

4Kやペンタブ作画にトライする動きも各所で出ていますが、明確なビジョンがないと、「2倍にリサイズした2K」「紙と鉛筆の代用品」になるのは明確です。‥‥なぜそんな風に言い切れるかと言うと、ビジョンを持たずに周りに何となく流されてデジタルに移行した人々が、フィルム時代の代用品としてデジタルを「活用」している現状況と結果が、何よりもの「証拠」なのですから。

「2倍にリサイズした2K」「紙と鉛筆の代用品」で作り上げた作品が、「ピンとくる」作品になるわけがないですもん。4Kとペンタブに代えれば、宝くじの当選確率が上がる‥‥とでも思うのでしょうか。

新しい何かを始める時、扱っている自分自身が「(良い意味で)ヤバい」と感じるような要素を、いくつも含んでいるものです。強い何かを感じないまま「ペンタブと4Kにすれば、上手くいくんじゃないか」なんて愚かな思考そのものですが、「困った時は決戦兵器」の歴史が示す通り、人間の「性質」の一面でもあるようです。規格を4Kにして大変な作業を抱え込み、今以上に厳しい状況の中にスタッフを投じて、出来上がったものが「2Kのアップスケーリング映像」だなんて、悲劇を通り越して喜劇ですが、昔から似たような事は繰り返されてきてますよネ。少なくとも私は、一緒に作っていく仲間も含めて、そんな道へは進みたくはない‥‥と思い、色々と進めているわけです。

私の数年間の指針となる、技術的なスペックを簡単にまとめると、「4K/12bit/Log/48,60,96fps」と言ったところです。数年後の未来のアニメーションの土台として相応しいと考えていますが、その土台の上に何を築くかは、多種多様、色々なものを考えています。

新しいカンバスを前に、何を描けば良いのか想い浮かばなくて悩む人、描きたいものがいっぱいあってドキドキする人、それぞれの差は、確実に数年後にカタチとなってあらわれるんでしょうネ。

ガルム少々

映画祭での上映に合わせて、ガルムの情報公開が少しだけ始まりましたネ。ほんの少しだけ。

ガルムは、ファイナルビジュアルエフェクトやグレーディングが、世界観を作り得る事を強く実感した作品でもありました。もちろん、実写の撮影監督が良いショットを獲得してくれたがゆえに、後の工程で「世界観作り」が可能になったわけです。

ログの10bitによる運用も今回のガルムでは有効でした。今は、アニメの作業に戻っていますが、リニア空間における「中低域」のレンジの狭さが、いちいちやりづらく感じます。使わない帯域と使う帯域の傾向は明確に分かれているのだから、よく使う帯域のためにデータ領域を確保するログ運用は、至極、合理的ですよネ。

まあ、ガルムの詳細は公式の展開に委ねるとして、もし観れる人は映画祭で観ておくと良いかも知れません。何でも簡単にネットで情報やモノが手に入る‥‥と錯覚しがちな昨今ですが、実はそうでもないんですよネ。


しかし思えば、最初にガルムに関わったのは、1996〜7年のパイロットフィルムの頃だったので、今から18年前の事なんスね。その頃は、Quadra650とGatewayの100MHz前後のマシン、メモリは128MB前後、ハードディスクはSCSI(40〜80Mbpsくらいだったかな)で1GB〜2GBの時代でした。2014年のガルムは‥‥と言えば、3〜4GHzのプロセッサのMacPro、32GB(3万メガバイト!)メモリ、Tunderbolt2で20Gbpsの16TBのRAID0+1のハードディスクと、超弩級に性能はアップしておりますが、作風の根っこの部分は96年当時を継承しておるんですネ。もちろん、2014年の作品は、96年当時では絶対にできない事ばかり‥‥ではありますが。

 

MacBook Pro、よく堪える

8月に調達したMacBook Pro 15インチモデルは、スペックが示す通りに快活に動作し、典型的な劇伴スタイルの音楽制作によく報えてくれます。100GBものソフトウェア音源波形を内蔵しながら、簡単に持ち運べるので、制作環境をMacBookに集約して限定できます。

何十トラックもある、しかもソフトウェア音源の‥‥といういかにも重い作業を、特に破綻する事もなく、よく働いてくれます。

ぶっちゃけ、MacBook Pro&音楽制作ソフトウェア、USBのミニ鍵盤、ヘッドフォンはMDR-V6K240Studio(またはK240MK2)があれば、ラフミックスくらいまでは持ち込めます。昔に比べて、もの凄いコンパクトな環境ですネ。音源だけでなく、ミキサーとかDSPもLogicやNIやIKのソフトウェアでカバーできますので、MacBook以外は、入力用の鍵盤と出力用のヘッドフォンだけで当座はOKなのです。
*2種のヘッドフォンは必須です。私は特徴の違うソニー製とAKG製で聴き比べて、音の状態を把握しています。また、小・中・大の3段階の音量で聴き比べて、音の「姿」を突き放して見るようにしています。でかい音量で聴くとキモチ良いかも知れませんが、何でも迫力があるように感じるので、特にナマ演奏の魅力を持たない「打ち込み音楽」においては「ヘッドフォン大音量」での制作はキケンなのです。

最近、私が(自分でも意外なくらい)よく使うのが、AdobeのAuditionです。私は波形編集については、長らくLogicを使っていましたが、Auditionも使い慣れると、Logicとは違う方法を色々とチョイスできるので、近頃は何かとAuditionばかり使っています。折角、Adobe CCに含まれている事ですし。

とりあえず、懸案の音楽作業はラフミックスまで到達したので、今度は返す刀で別作品の原画をば。

しかし、MacBook Proの性能を日々実感するたびに、Mac mini(か、それ相当)の新型が望まれます。Mac miniって、MacBook ProからRetinaディスプレイと薄いボディを抜いて、安上がりにまとめたような製品なので、実力は高いのです。‥‥私の場合は、以前にMac miniを買って、かなり使い物になったので、MacBook Proも大丈夫だろうと判断したくらいです。

Appleが電話に時計か。まあ、今はもうAppleは、コンピュータで儲けている会社じゃないもんな…。

絵も音も

世間は3連休のようですが、私はどうにも隙間がなく、懸案の音楽の仕事を日月で自宅で作業できるかも‥‥くらいです。先月でほぼ作業が完了した実写ベースの作品が終わって9月に入ってみれば、鉛筆とペンタブレットと鍵盤が入り乱れる日々‥‥で、1日をジャンルごとで切り替えるのがめんどいです。今年のお盆休みはやっぱり10月以降になりそうな予感。

絵と音は、それぞれを手繰っていくと、根底に共通部分があるように思います。しかし音は、絵とは違うメソッドやインターフェースで具現化するので、あまりにも頻繁に絵と音を行き来していると、「頭の部屋」の模様替えが煩わしいです。簡単にはテンションが切り替わらないんですよネェ‥‥。

私の周りには、映像だけでなく音楽もやってきた人が多く、先月カナダのラボでグレーダーをやっていたパトリスも若い頃は音楽方面に進むか迷っていたらしいですし、音大出身のVFX&イメージコンセプトのスタッフもいれば、ドラムを叩く作画&演出の知人もいますし、米国の映画学校を出たスタッフも過去にエレクトーンをやっていたりと、偶然とは思えないほど「絵と音を理解する」人が多いです。幼少期から少年少女期に音楽に親しんでいた感覚は、映像表現の内層に通じるものがあるのかも知れません。「ここを明るくするといい感じになる」とか「光の抑揚のリズム」とか、後天的に理詰めでは会得しにくい「感覚的なもの」を10代までに身体に取り込んだ経験を持つ‥‥といいますか、映像規格とかAfter Effectsの機能とか「暗記もの」では得られない、表現における根本的な衝動が常に体内にある感じ‥‥です。

皆まで言うな」という感じで、そういう人々は「1から10を知る」というか、言わなくても「行くべき方向を察知する」ので、トントン拍子に作業が進んでいきます。カナダのラボでのグレーディングが滞りなく進んだのは、ラボの作業環境も貢献しているでしょうけど、やはりグレーダーのパトリスの能力に因るところが大きいです。その映画は何を求めているのかを何となしに気取って、まるでライブセッションで音を合わせるかのごとく、絵を合わせていくのです。

音大の声楽科出身のスタッフもいるのですが、自分の身体を直に楽器にする「歌科の人間」は、ダイレクトに色彩や明暗に関与するビジュアルエフェクトやグレーディング、さらにはカラーリールなどの作業に適しているようにも思います。色彩が法楽・法悦的といいましょうか、表現した者勝ちともいいましょうか。

言葉では言い表せない「何か」を、音にするのか、絵にするのか‥‥の出力の違いはありますが、脳ミソの根っこのコア部分は絵も音も共用しているのかも知れませんネ。

iMacの選択肢

私に限らず、映像制作でiMacを使っている人は、実はそこそこ存在するのですが、現在販売中の全てのiMacがプロの映像制作用途に適しているわけではありません。むしろ、5モデルある内の2モデル以外はスペックが不足しています。

21.5インチのiMacは、特に最下位モデルは「デスクトップなのにまさかのオンボードメモリ」で、8GB以上にはなりませんので、映像制作にはあまりにも不適合です。「Menu Meters」というメニュー常駐型のアプリを起動していると解りますが、メモリ消費量は8GBなどあっという間に超過してしまいます。最低で16GBは確保しておきたいです。

21.5インチモデルの中では、CPUをi7に変更可能な「21.5インチ最上位モデル」が映像制作には適当です。CPUをi7にBTOで変更、メモリは後でアマゾンで8GBx2のセットをアップルストアよりも安く買って装着‥‥というのが、21.5インチ購入の際の「落としどころ」でしょうネ。

27インチモデルも、CPUをi7に変更できる最上位モデルが適当です。メモリはやっぱり、アマゾンとかで8GBを4つ、安く購入したほうが出費を抑えられます。

‥‥という感じで、5つも選択肢があるiMacではありますが、実は映像制作で本気で使うには、2つに選択肢が絞られます。さらに、使いまくり・レンダリングしまくりの「遜色のないマシン」に仕立てるならば、27インチの最上位=一番高いiMacだけに絞られます。

スペックにあまり詳しくなく、現場での使用経験も少ない場合は、どんなマシンを買ったら良いか、迷う事しきりだとは思います。現時点での最優先ポイントは「i7」「16GB以上のメモリ」への変更が可能である事です。

アップルストアではディスプレイ寸法の違いで選択を即すような売り方になってますが、ぶっちゃけ、その点については「悩む必要はない」です。メモリ消費量を自分の用途に合わせて、16GBならば21.5インチモデル、32GBならば27インチモデルを買う事になり、画面の大きさは特に考慮しなくても良いです。‥‥なぜかというと、どっちにしろ、映像制作用途ではEIZOなどの特性の素直なディスプレイをメインモニタとして調達する事になりますから、iMac本体の癖のあるディスプレイは「サブモニタ扱い」になるので、アレコレ悩むのは不要なのです。もし悩む事があるとすれば、「オレの部屋の机には27インチ(メイン&サブ)を2台も置けない」とか、住宅事情のほうでしょうネ。

ちなみに、私の使用するiMac(27インチ, i7 3.4GHz, 32GBメモリ)は、「ジョバンニの島」では内容のヘヴィなカットの撮影(=マシンの処理能力が不可欠)と本編半数のグレーディング(=安定性が不可欠)をこなし、近作の実写ベースの作品では全カットのProRes4444変換やグレーディングのレンダリングを数多くこなしました。一年以上使って、既に「実績はお墨付き」です。最高位のiMacを使って重く感じる作業は、ゴミ箱型Mac Proを使っても重く感じます。つまり、現在の映像制作ニーズに耐え得る性能を充分持つという事です。

ただまあ、10月の後半とか、アップルの更新時期の1つでもあるので、買うタイミングは悩みどころ‥‥ではありますネ。

Mac Proは高すぎて買えなくても、iMacなら何とか‥‥と思っている人は、以上の点を考慮しながら購入プランを組み立てると良いかも‥‥です。


calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
2425262728  
<< February 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM