私がAEを使い続ける理由

Adobeが「CC」を発売開始して、以前では考えられないくらい安価に、フルスペックのAdobe製品を使用できるようになったのは、つい1年前くらいの事でした。

一方、Nukeなどのプロ現場で使われるソリューションも30万円代から買えるようになったり(1年前のキャンペーン価格)、Smokeが50万円代だったり、個人でも「買えなくもない」価格になってきました。

しかし、私は今のところ、「CC」で充分だと考えております。一番現実的なのはCCだ‥‥とも思っております。

ソフトウェアやハードウェアは、「一度買ったら、それで安泰」ではありません。維持費やメンテ費用を忘れてはならないのです。今度出るMac Proだって、数年後には低速なマシンになっているしょう。2012年のNukeを2020年に使い続けられるんでしょうか。‥‥つまり、買い換えやバージョンアップの費用を、「導入したら最後」、払い続けなければなりませんが、高スペックな初期導入費用の高価な環境ほど、相応に高額となり、少なくとも個人ではかなり維持がキツくなるでしょう。

なので、ビデオ編集の仕事を高回転で回すようなプロ向けスタジオでも無い限り、例え購入したとしても、最新スペックの状態を維持できないのが現状だと思います。(アドビが目をつけたのも、そのへんだよネ)

私はビデオ編集スタジオを主宰しているわけではないので、NukeやSmokeが数十万円へと価格改定して安価になっても、「今の価格ではナシだな」と思ってしまいます。販売元にしても、CC互角の1ライセンスあたり月5,000円換算なんて、ありえないでしょうし。

そして何よりも重要な事は、そのハリウッド系のプロ向けソリューションが、私のニーズに応えられるか?‥‥です。

例えば、「銃を構えている女性」の1枚絵を描いた線画オンリーの原稿(原画)があるとします。そこから「線画にセル画風に色を塗って、"駆け寄って銃を3発撃つ(で、残弾が0になる)" アニメーションを作る」という事がAfter Effectsでは可能です。こんな感じで。



上のムービーの制作時間は、全く素材がゼロ(注1)のとこからスタートして、1人足(=つまり私一人)で半日です。リギング(注2)が大雑把なんで、少々「止め絵」感がでちゃってますが、このくらいの事はAfter Effectsで普通に基本機能だけで(操作が簡単だとは言いませんが)可能です。Photoshopでの背景作成も込みで「セル画風の映像を、どれだけ短時間でできるか」を数年前にテストしたものです。
(注1)YouTube画質ではわからないかも知れませんが、線画は速描きしたのに加えて最近の定番の「ステッドラー」「こな雪」を使ってないので、線質がガサガサしてます。でも逆に、作風によっては「味」に使う事も可能でしょうネ。
(注2)2Dでもリグは重要で、リグ次第で制作時間やクオリティが大きく変わります。


Nukeとかって、線画のスキャン画像をポンと渡されて、完成映像まで作れるんだろうか。After Effectsは彩色はもちろん、いざとなれば背景だって描けますが、おそらくNukeとかはビジュアルエフェクトとか映像合成加工に特化してしまっていて、こんなキワモノ的活用法なんて考慮されてないんじゃないかな‥‥と思います。つーか、そんな事を想定しているソフトウェアって皆無だとは思いますが、少なくともAfter Effectsはその要求に応えてくれています。

私が今取り組んでいる映像の研究は、上のムービーのような「セル画時代のアニメの代用品」ではなく、ずっともっと先の意識、画具・画材としてのコンピュータの性能を活かしたアニメーション表現です。未来視点からすれば、上のムービーはまさに「極・初歩編」とも言えます。その「未来のアニメーション技術にとって初歩的な事」が、実質CCの何倍も維持費のかかるNukeに出来るのかな?

ハリウッド由来の高価な機材にココロを動かされるのは、もちろんあります。しかし、結局は総合的な判断で、After Effectsが一番「何でもできそうだ」というキモチに落ち着きます。

ただNukeとかも、「私がAfter Effectsに馴染んだ、同じぶんだけ」使い込めば、ひょっとしたら、キワモノ的操作ができるのかも知れません。‥‥しかし、それにはAdobe CCくらい安くならないと、私は手を出せないでしょう。ハリウッド系機材に数十万も使って高い維持費を払うのなら、他の創作活動に投資したほうが「自分のタメになる」とも考えてしまうのです。

職場のハリウッド系機材で「お仕事」はできると思います。しかし、創作活動の日々のうねりの中で愛用されるのは、Adobe CCのような安価なソフトウェアだと思っているのです。

私は、AdobeがCCソリューションを始めたがゆえに、若い人の中から、やがて天才が現れる‥‥とすら思っています。「身近にある」というのは、それほど重要な事だ‥‥と考えています。

いんふら

ようやく、新しいデータベース「atDBx」を基幹とした運用システムを動かしはじめました。余裕のある設計にしておいたので、どんな類いの作品でも情報記録が可能となりました。今は部分的な運用ではありますが、既に新設計の恩恵を感じております。

作品ごとの「完全に独立した用語辞書」を設定できる仕組みにしたので、キーワードや略語で困る事が皆無となりました。作業工程の全要素を記録する事が可能です。また、作業用のアプリケーションソフトウェア(ヘルパー的なもの)がデータベースにリンクしているので、情報を手で入力する必要はなく、作業者の作業進捗にシンクロして情報も自動記録されます。

データベースは、ファイルサーバとも連携しており、各作業のマネージメントの他、作業進捗上のアーカイブも情報管理できます。当然ですが、Webサーバも連携し、情報(画像も含む)をブラウザで確認できる仕組みになっています。

iPadなどの普及した今でも印刷物は重要なアイテムですが、データベース管轄の印刷用ファイルには、すべてバーコードが刻印してあり、キーボード入力に頼らずとも各種情報の検索が可能です。まあ、バーコードの本格運用はまだまだ先でしょうが、ISBNのごとく仕様としてバーコード表記が定められているので、使う使わないに限らず印刷物には刻印されるのです。バーコードの読み出しは数千円のバーコードリーダで簡単に読み出せます。

また、現在はまだアクティヴにはなっていませんが、各種コスト情報(時間・難易度・金額など)の記録も可能です。標準仕様として既に設定されております。

こうしたインフラ構築の取り組みは、作業を快適にするため‥‥と言ってしまえば簡単ですが、では「快適な作業環境」とは何かと考えれば、ストレスなく作業に没頭できる環境の事です。これは、作業者本人の快適性だけでなく、作品全体のコスト面でも重要な事なのです。例えば、作業の前段階でインフラが整ってないがために作業に入れず、本来の作業をストップして、トラブル収拾のために何時間も充てた‥‥となると、コスト損失は明らかです。

インフラの構築。‥‥まあ、気の遠くなるような事なんですけどネ。でも、チクチクと作り続けていれば、案外、積み上がっていくもの‥‥でもあるんですよ。

多分‥‥ですが、アニメ業界仕様のアウトソース(外製)の作業進捗マネージメントツールって、永久に現れないような気がします。何故かって、ソリューションを売る側が商売にならんでしょうからネ。対費用の問題で、売る側と買う側の折り合いがつく事は無いと思うのですヨ。制作運用マネージメントツール〜アニメ制作専用のITアウトソーシングなんていう「24時間対応の責任重大なもの」を、アニメ業界の「期待する安値」で売って展開できるわけがありません。仮に買う側が大決断して、初期導入時に大枚を叩いても、その後のメンテ・維持の費用捻出がツラくなると思います。

結局はインソースしか無いと思ってます。「制作運用システムも、自分たちの強力な武器である」と意識する事が肝要かと思います。バトルオブブリテンでイギリスを守ったのはスピットファイア単体だけじゃないのは、ちょっと戦史をかじっていれば周知の事実でしょう。

TSフォーマット

私が2003年当時、After Effectsでアニメ撮影をおこなう際のハードルとして立ちふさがっていたのが、「After Effectsへのタイムシートの適用」でした。当時はRetasを併用するのが常識でしたが、私はタイムシートのタイミング反映だけにRetasを導入する気には全くなれず、After Effectsだけで完結する方法を模索していたのです。

タイムシートをAfter Effectsに適用する事自体は、それほど難しい事ではありません。タイムリマップをシート通りに適用すれば良いだけの話です。

難しくはないけれど、めちゃくちゃ、面倒なのです。After Effectsでキーフレームを生成して、タイムリマップの値を書きこんでいく際の、UIは最悪です。

いくつかの案が浮かび上がりましたが、私としては、専用の何かを作るのではなく、タイムシートを扱う汎用的なフォーマットを策定して、そのフォーマットからAfter Effectsへ流し込む方法を考えてみました。

Excelとか特定の高価なソフトウェアに依存するのではなく、他者の何らかのソフトウェアに頼るのでもなく、テキストエディタなどの何か汎用ソフトウェアさえあれば、タイムシートをデータ化できて、After Effectsへ適用できる方法を、です。

つまり、ソリューション開発ではなく、基礎的なフォーマット〜タイムシート記述法からスタートしたわけです。基礎的なフォーマットを策定しておけば、後でいくらでも応用ができます。MacOS標準のTextEditでも、Numbersでも、Excelでも、HTMLのフォームでも、記述する際の媒体は問わず、作業上で使いやすいものを使えば良いのです。違う言い方をすれば、タイムシートエディタの開発にのめり込んじゃうと、長期戦になるだろう‥‥と感じ、あえて、エディタ開発は避け、タイムシートフォーマットとキーフレームデータの「ブリッジ」の開発のみに留めたのです。

例えばTIFFやTGA。TIFFのフォーマットを確立するカロリーに、さらにPhotoshopなどの画像エディタを開発するカロリーを追加したら、目もくらむようなハイカロリーになります。

エディタなんて、使いやすさを追求したら、「底なし」じゃん?

なので、エディタは他の何か、使いやすいものに依存し、自らはフォーマットの策定とブリッジルーチンの開発だけに集中する‥‥というプランを採ったのです。

そういった状況から生まれたのが、独自フォーマットの「TSフォーマット」です。2003年にイノセンスの制作が終了して、次の劇場作品の「HoLiC」からTSフォーマットは使用開始され、現在に至ります。

しかし今、私は、タイムシートそのものから離れ始めています。タイムシートがアニメーション表現の「アキレス腱」になっているのをしみじみ実感していますし、同時に、もはや旧来のタイムシート書式を必要としない、新しいアニメーション技法で映像を作るのが主となり始めているからです。

なので、実はTSフォーマットは、最近まで「もう放棄でいいや」と思っていたのです。しかし、新しいアニメーション〜一秒間が48〜120フレで構成される〜を制作する過程においても、まだまだ使い道はありそうだと考えるに至り、atDBxの策定と同時に、最後のブラッシュアップをしています。

旧来タイムシート互換という視点ではなく、タイミングの意図的・恣意的な操作手段としてとらえれば、「タイムリマップのタイムシート的操作」はまだ使う場面は多いと感じているのです。

TSフォーマットそのものには、実はFPSは存在しません。単にセル(表でいうところのcellです)が漠然とあるだけで、1秒あたりの分解能は、変換処理をおこなうブリッジルーチンが操作しています。なので、1秒間96だろうが120だろうが、TSフォーマットはそのまま使えるのです。

ただ‥‥2003年当時に作ったTSフォーマット解析のブリッジルーチンは、自分でも腹が立つほど、カオスです。手探り過ぎて、後からコードを読むと、回りくどくて呆れてしまいます。‥‥我ながら。

でもまあ、ここでキレイにしておけば、もうこの先、妙なバグで悩まされる事もないので、お掃除をしつつ、整頓して、ルーチンをリファインしようかと思っています。

ちなみに‥‥、TSフォーマットは、フォーマットというよりは記述法なので、厳密にはフォーマットとは呼べません。単なるTEXTファイルフォーマットです。その昔、Appleにクリエータ・タイプコードを申請して取得し、TSフォーマットファイルとして使おうと思っていましたが、「‥‥テキストファイルをテキストエディタで処理するのに、独自のタイプなんて必要ないじゃん」‥‥という事になり、今まで使われる事なく眠ったままです。エディタを自己開発すれば、クリエータコードくらいは使えると思うのですがね。でもまあ、まだ使う余地が無いとは限りませんので、温存しておきます。

atDBの刷新

既に仕様の限界に達している「atDB」を刷新すべく、種々各々、取り組み中です。新しいatDBは「atDBx」と呼び名を変えて、旧来との差別化を図っています。

atDBとは、私が独自に開発・運用している、「特にコンポジット(撮影)」を作業する際の、様々な情報を記録するための「規約・規定」ですが、策定を始めた2004〜5年では想像もつかなった作業も請け負うようになり、さらには未来の展望も明確に見えてきた最近では、ひどく陳腐な仕様に落ちぶれてしまった感が否めませんでした。

旧atDBの策定内容は、あまりにも「撮影業務」に偏り過ぎているがゆえに、応用が利かない、ツブシが効かないのです。騙し騙し使い続けていましたが、もうそろそろ潮時と観念し、全面刷新をおこなっています。

旧atDBのネックは、データベースの階層構造にありました。撮影の作業要素〜つまりは、作画から通ずるタイムシートやレイアウトの構成にも波及しますが、それらの要素に対し都合良く手短に策定したため、「新しい要素」を盛り込めなくなっていました。今のタイムシートが新しい要素たるZ軸を致命的に扱えないように、atDBも新時代のPCベースの作画スタイルやグレーディングなどをデータツリー上で正統に扱えないのです。

新しい要素を追加する際は、あたかも既存のプロパティの1つであるかのように、ごまかしてネジ込む必要がありました。例えるなら、Z軸操作をTU,TBで記述するかのごとく。‥‥なので、非常にヤリづらかったのです。

今回の大刷新は、タイトル、シーン、カットの基本構成までは今までと共通ですが、作業に関する要素の取り扱いが一変しています。「アナログだろうがデジタルだろうが」すべて記述・記載できるように構造を作り直しました。要は「作業」を全種類、atDBの文字列情報で表現できるようにしたわけです。

こう書くと大仰ですが、簡単に言えば、全ての行程の情報を記録する「覚悟」をした‥‥という事ですね。「そんな大変ぽい事」と言われそうですが、コンポジットやグレーディングの作業データベースを運用してきた実感で、「できる見込みがたった」のです。

情報記録作業を人間の手でやっていたら、マンパワー的に、早々にオーバーフローするでしょうが、atDB運用のキモは「記録作業に人の力を消費しない」事であり、そのためのツール類の開発が必須なのです。人が共同作業する際に、必ず通過するポイントは「上がりを次の行程に渡す」事(=じゃないと作業が終了せずに作業費を請求できないもんね)ですから、そのタイミングで専用ツールにて「自動記録」してしまえば良いわけです。さらには「受け取り」の際にも自動記録が可能ですから、作業IN/OUTの基本情報がどんどんデータベースに記録できるわけです。

例えば、データによる作業の受け渡しは、「どこどこのサーバの、どこどこの階層に」などと煩わしいものですが、「簡単アップローダ」を開発し配布、作業者がそのツールで上がりをアップする事で、作業者も段取りが楽、かつ正当性を実証でき、管理者も作業IN/OUTを確認して運用指針とする事ができます。「データが無いよ」「そんな事は無い。何月何日に確かにアップした」‥‥なんて泥試合、手作業でサーバにアクセスしてると発生しがち‥‥ですワな。

ツール類を開発しようにも、運用のフレームワークがキッチリしていないと、場当たり的で短命なツールになってしまいます。しかし、ある程度の試行錯誤(=無駄を含む)を経験していないと、「キッチリ」設計する事自体ができません。

atDBでこなした作品は、私がメインで関連した歴代作品群で、大型の作品も含まれます。それらの作業を振り返ると、atDBだけあってもどうにもならなかったでしょうが、atDBが無かったら「悲惨」だったとも思います。atDBがこなしていた「おっかけ」を私が生身でやっていたら、映像のアイデアに割く時間など半減していた事でしょう。撮影監督が「事務」に消費されるか、「映像表現」で活躍するかの、「瀬戸際」をatDBが握っていたわけです。私は周囲から、「事務屋」ではなく「アイデアマン」として期待されていたでしょうから、事務的作業を請け負うatDBの存在はとてつもなく大きなものだったのです。

atDBで得た運用のノウハウやウィークポイントを、ふんだんにフィードバックした新しい「atDBx」。人体の骨格のごとく、表面に目に見えて出る事はありませんが、体を内側から支える重要な主要要素となる事でしょう。

来年以降公開の作品群で、atDBxは少なからず威力を発揮する事と思います。人は、とかく表面上のきらびやかな容姿に目を奪われますが、その容姿をしっかりと支える「目に見えぬ何か」が実はとても重要なのです。


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