立体参考資料

私は作品制作の参考資料として、プラモデルを活用します。マンガのコマや絵コンテを描く際に、設定だけチラリと見て描くより、プラモを手に取って描いたほうがアイデアが豊富に浮かびます。その機種ごとの「いい顔」「いいアングル」が目の前で即座に確認できますからネ。

プラモ制作も自分でやるのですが、物量をこなさないとダメなので、中々に大変です。休日の短時間しか制作に時間を割けないので、いかに短期で仕上げるかがミソとなります。

立体を把握するための資料なので、実機のようなリアル表現は不要です。立体把握の際に、実機塗装は邪魔になる事が多く、つや消しの単色で塗られているほうが都合が良いので、サーフェイサーと墨入れ、最後にトップコートだけで済ませます。

なので、戦車などの地上物、艦船などの海洋物は、窓ガラスさえなければとても楽です。しかし飛行機はキャノピーのマスキングに手がかかるので、どうしても停滞しがちです。以下のように‥‥。


*サーフェイサーはほどよい艶消しなので、ご覧の通りに、立体が把握しやすく、影付けの参考にもなります。3Dで作るという選択肢もあるでしょうが、何から何まで3Dで作るのは大変ですから、まずはプラモデルで実感を得るところから始めるのが良いと考えています。

この他、写真の倍の数のプラモが、キャノピー待ちで滞っています。ちなみに上のプラモは、タミヤの1/100シリーズで、1967年頃の金型で、私と同年齢の製品です。コックピットの表現は1/100かつ旧製品なのでビミョーですが、ロングで全体のフォルムを簡易確認するにはちょうど良い大きさです。

キャノピーのマスキングは、Adobe Illustratorで実寸のマスクを作成し、伸びる透明シートにプリントして作るのですが、中々全面が埋まらないので、どうしても「図版完成待ち>プリント待ち>キャノピー待ち」という悩ましい連鎖が発生します。資料用途なので、同じ機種のバリエーションを複数作る事が多く、毎回ワンオフでマスキングをしていられないのです。また、段差消しや継ぎ目消しもほどほどで終わらせ、資料として支障のない程度におさめます。趣味ではなく、業務用の作り方‥‥ですネ。

ただ、サーフェイサーばかり大量に吹くと、スプレーブースのフィルタがすぐに目詰まりします。クレオスのブースはこともあろうに「フィルタの交換は両面テープで貼り直して」という異様に面倒な仕様なので、真正直に付き合っていられません。なので、鉄のプレートをフィルタ取り付け部周辺に強力ボンドで取り付け、強力磁石でフィルタペーパーを固定して使用しています。改造しちゃえば、クレオスブースのフィルタ交換もグッと楽になります。固定する磁石は100円ショップのものだと磁力が弱くてNGなので、コクヨのネオマグバルク品を買うと良いです。ちなみにフィルタはデイツーの換気扇用フィルタを流用しており、正規品より格安です。


*どんなサイズのフィルタでも流用可能なように、ベタベタと金属プレートを貼りまくっています。金属プレートもフィルタもケイヨーD2で安く入手しました。隙間は吸入の風圧でフィルタが側面に密着するので、この程度の固定で充分機能します。

出来上がったモデルは飾るのではなく、収納箱に判別しやすく保管します。あくまで実用なので、飾る必要はないのです。

しかし、まだ未制作のプラモが山ほど。‥‥以下の写真の10倍はあるのです。。。ぐえ。



 

目指すならハイアマ

現在はプロ並みのハード&ソフトウェアを安価に購入できるようになったので、アニメーションを自主制作する人が増えているようです。さらにはYouTubeなどの全世界に向けた公開の場があるので、昔よりは自主アニメを制作するモチベーションは高くなっていると思われます。

私は「アマチュア」を「報酬契約がないがゆえに、自分の好きなものを作れる」存在だと考えています。決して、技量の上下ではない‥‥と。

実際、アニメではないですが、プラモデルの「超スゴい」アマチュア作品をいくつも見た事があります。プロは報酬相応のクリオリティが求められますが、逆に言えば、報酬以上のクオリティは作らないという事でもあります。アマチュアはそんな制限はOut Of 眼中、まさに「値段の付けられない」作品を、一般のサラリーマンの方が作ってしまうのです。私のアマチュアの印象は、そうした「ハイ・アマチュア」の姿です。

で、アニメ。アニメは映像制作の知識がまだ世間には広まっていない影響か、アマチュア作品では作品云々よりも技術的なトラブルが目につきます。その技術トラブルのせいで、完成度が最後にガクッとダウンしている作品が多いように感じます。トラブルとは、輪郭のちらつき、フリッカー、アップorダウンコンバートのミステイク、映像信号レベルに無頓着、トーンジャンプ‥‥などなど。

正直、もったいない。‥‥調理場では美味しく出来上がったものを、盛りつけで失敗し、さらにはテーブルに料理を運ぶ際にこぼしてしまい、最後の最後で料理が台無しになってしまう‥‥。

もし「アマチュアだから、そのへんは大目にみて」というのなら、周りもそういう程度にしか見ないでしょう。でも、そんなの悔しくありませんか。‥‥折角作るんだったら、技術トラブルに邪魔される事なく、作品ができるだけストレートに観客に伝わったほうが良いじゃないですか。

例えば‥‥。
 
輪郭のちらつき
>画面全体のフォーカスやニュアンスをミクロレベルで調整する意識を持っていますか?
 =セルの輪郭線がキツ過ぎるとチラツキの原因になりますので、適度にボカしましょう
 =素材を配置してエフェクトをかけるだけでなく、全体のニュアンスを細かく操作しましょう


フリッカー(画面の動きが目にひっかかる)
>カメラワークやセル(人物やメカなど)のモーションを吟味していますか?
 =カメラワークはシチュエーションによってフリッカーのように見える事がありますので、カメラワークの速度などを変更して吟味しましょう
 =キャラの動きとカメラワークの動きが噛み合ないとフリッカーが盛大に出ますので、コンポジットの方法を変えてみましょう


アップorダウンコンバートのミステイク
>最良のマスターを作る意識を持ち、かつ、公開テストを実施していますか?
 =プルダウンなどのフィールド合成は現在は不要ですので、24pや30pのフォーマットで制作しましょう
 =DVDやBDに焼く際にはディスク作成ソフトのマニュアルを熟読しましょう(DVDの24p対応は意外にもあまり知られていないようで、不要な2:3プルダウンをする人が今でも多いです)
 =YouTubeでアップロードし全世界公開する前に、非公開でアップロード&再生テストを入念におこない、問題があれば、公開は一旦取りやめて、コーデックの設定などを試行錯誤し、障害を取り除いてから公開しましょう


映像信号レベルに無頓着
>いくつもの異なる環境で映像を再生していますか?
 =1つのPC環境だけで作っていると、色が偏る事がありますので、DVDなどに作品を焼いて色々なテレビ(身内や知人宅の)で見て、まず自分の環境と自作映像の傾向を知っておきましょう
 =レベル補正のヒストグラムなどを全体&RGB別にみて、黒の締まり具合や白の抜け方が意図する状態になっているか、確認しましょう
 =できれば、編集後にAfter EffectsやFinal Cutなどでグレーディングをおこない、全体のカラールックの最終調整をしましょう


トーンジャンプ
>公開メディア用に映像をチューニングする意識を持っていますか?
 =10bit(422)や12bit(4444)ではセーフでもYouTubeやDVDではNGな事がありますので、After Effectsなどで8bitに減色した公開用原版をつくりましょう

 
自宅機材でも充分実践可能な内容を書き連ねてみました。高価な基準モニタや測定器がなくても、プロ品質に肉薄する映像は運用次第でアマチュアでも作れる状態にあります。要は「見る人々に、最良の状態で映像を届けよう」とする意識、マインドセットの問題です。

自分の好きな事だけしかやらず、他の事はめんどくさがって放置する‥‥という意識が、作品をどんどん蝕んでいる事に気付けるか否か?‥‥ですネ。

どんなに美味しい料理でも、髪の毛が入ってたり、ハエが浮いてたりしたら、喰いたくなくなりますよね。ゴキブリが混ざっていた時点でアウト!‥‥です。解決法は簡単です。髪の毛や虫が入らないように、心を配る事、です。

意識が甘めだと、「自分の好きな事だけをやろう」という状態が、そのまんま、作品に出てしまうのです。「面倒な細部まで手を抜かず、手塩にかけて完成させて、満を持して公開する」という意識、マインドセットを持てれば、作品を蝕んでいた障害要素は激減し、より高い完成度を持つ作品となるはずです。もしキャパオーバーならば、未完成で出すのではなく、内容を削る決断力も、意識として必要となります。

でも、新たなマインドセットを獲得するのって、自分ひとりじゃ中々難しいんですよネ。‥‥ですから、他人の出来の良い作品を見て、ショックを受けて、自分の価値観を徐々に高めていく必要があるのです。私も日本のアニメ業界だけだと、ともすれば井の中の蛙になりそうでしたが、実写や欧米の制作手法を見て、「全然甘い」と思うに至り、新たな格闘をしている日々です。米・某社のアニメ(3Dじゃない〜まだ非公開?)を見た時はかなりショックで、日本側の決定的な遅れを痛感し、「日本のアニメ業界というマインドセット」からスッパリ抜け出る覚悟ができました。そういう刺激がマインドセットの変化には必要なのです。

Adobe CCやCLIP STUDIOなどがリリースされた現在、機材的なハンデはもう薄皮1枚です。あとは、「執念」というマインドセットだけ‥‥です。

安くても良い品

ここ最近、After Effectsの自動制御を利用して、VFX&グレーディングのシステム作りを進めています。私は近い未来、作画にもAfter Effectsを使用したシステムを作ろうとしているので、今回はその前哨戦というわけです。

After Effectsの良い点は、まずは安価である点、次にマニュアル(細かい手仕込み)で色んな事が出来る点、最後にスクリプト制御にかなり対応している点でしょうか。あくまで、私の主観ですが。

他の競合製品とかを見てもあまりココロがトキメかないのは、数十万〜数百万だしても、さほど結果物のクオリティが変わらない事に因ります。After Effectsの基本的な設計は、1997年に私が本格的に使い出した頃と変わらず、その点をつつけば「古い」と言われそうですが、新しいソフトウェアを使っても結局はクリエータ次第で結果が決まるのですから、全然気にしておりません。逆に、高い機材を使ってショボいのを作るほうが、恥ずかしいかな‥‥と思います。

私は最近、CLIP STUDIO PAINT EXというソフトウェアを使い始めましたが、中々に気にいっており、新しいアニメーション作りに使えないか、模索しているところです。私は2000年初頭のRETASの印象から、開発元のセルシスの製品を避ける傾向にありましたが、今のセルシスは以前とは大きく変わっていて、業界向けソフトウェアの販売というよりは、日本のアニメ&コミックのクリエーションを盛り上げようとしている雰囲気を感じます。

CLIP STUDIO PAINT EXは、月額500円で使用が可能で、特質すべきはクレジットカードや銀行口座を所有していなくても、コンビニで決済が出来る事です。これは若年層には大きな利点です。クレジットカード決済オンリーにすれば手っ取り早いでしょうが、あえて10代の学生でも可能な決済を実現し、かつ月額が500円なのですから、その意図は言わずとも充分汲み取れます。

CLIP STUDIO PAINT EXは、MacとWinの両バージョンがリリースされており、Macで一番安価な私のMac mini(i7で16GBメモリ)でもストレスなく動いております。各種の描線制御機能など基礎技術の高さを感じるソフトウェアでもあり、使い方に慣れれば、Photoshopよりは格段にアニメーション制作に向いているかも知れません。Photoshopのショートカットを数多く踏襲しているので、転向組もあまり迷わず作業が進みます。

私は未来の維持費も含めてシステムだと考えているので、ソフトウェアを導入する際はバージョンアップなどの維持費をべらぼうに要求するソフトウェアは「危険」だと判断し、できるだけ敬遠するようにしています。でもまあそれにしても、CLIP STUDIO PAINT EXの500円は安さが極端ですけどネ。毎回5万も10万も要求するソフトウェアはやがてバージョンアップが滞り、システムの崩壊が始まりますから、6〜12年くらいのスパンで維持できるソフトウェアを選択すべきです。ソフトウェアの購入の際に「清水の舞台から飛び降りる」ようでは後が続きません。

使い方次第で、米国大手のスタジオに比肩しうる作品は作れると思います。国内で言えば、アマ・個人でもプロ同等かそれ以上のものを作れる可能性を持つと思います。「一定以上の機能を持つソフトウェア」を手にしたならば、最終的にはクリエータ個々の技能が雌雄を決します。

なので、「一定以上の機能を持つソフトウェア」を何とか手元に揃えたいところです。Adobe CCの学割がもっと安ければ(高校生だと月3,000円はキツいですし、バイトをやってたらソフトをイジる時間が減りますから、どうしても親御さんの大きな援助が必要になるでしょう)、10代からバリバリ作れるんですけどねえ‥‥。

プログラムぐるぐる

私は今、ファイナルビジュアルエフェクト・カラーグレーディングのシステムプログラム開発の佳境で、頭の中にプログラムコードやダイアグラムがぐるぐると動き回る日々が続いております。絵作りとプログラムは、根本的なものは実はとても似ているのですが、手段が大きく異なるので、1日の中で同時に進行させるのは正直ツラいものがあります。しかし、「両立させなければダメ」なのは、もう経験上、痛いほど解っています。

After EffectsやPhotoshopなどを作業者各々が操作するにしても、では全体としてどのように運用するのか?‥‥を、コンピュータネットワークを活用したシステムプログラムで具現化すべく苦闘しているのです。After Effectsが漠然とコンピュータにインストールしてあるだけじゃダメで、作業リソース(素材や結果物)や各種情報をいかにして有機的にバインドさせてシステムとして成立させるかが必要なのです。システム作りをしておかないと、アリ地獄のような苦悶の日々、討死覚悟・バンザイ突撃の作業が待っています。

映像制作にコンピュータを用いる意義は、単に画具の代用品としてPhotoshopやAfter Effectsを用いるだけに留まらず、制作全体に機能すべきものです。コンピュータの能力を制作運用の全体に浸透させれば、著しい高効率化を果たせるのは明白なのですが、深刻な1つの問題によって、状況は停滞したままです。

深刻な1つの問題‥‥とは、シンプルな事ですが「マインドセット」です。「意識」「思考」とでも言いましょうか。コンピュータが制作運用を飛躍的に向上させるという意識が根本的に無いがゆえに、PhotoshopやAfter Effects、エクセル、Webブラウザ、メールをスタンドアロンの単体ソフトとして使う事ばかりに終止しているのでしょう。どれもみな、画具やカメラ、帳簿、図書館や辞典、手紙や電話の「代用品」としての使われかたです。

代用品思考なので、基本的なスタンスは以前と何も変わりません。以前の道具が高機能化しただけの意識に留まります。ゆえに人の動き方も以前と同じ。人の扱い方も、足りなければ人を増やし、余れば減らす‥‥という具合です。

業界は苦しいというけれど、実は自分たちの思考にも重大かつ根本的な問題があるようにも思います。基盤となるシステムを一向に改善しないまま、人材を自動販売機の商品のように扱うままの意識では、苦しい状態から抜け出せるわけもない‥‥と思うのは考え過ぎでしょうか。

でもまあ、昭和の時代に確立した今の作り方は、昭和生まれの人々が墓穴へと道連れにする‥‥ので、ちょうど良いのかも知れないな‥‥と、最近は達観しております。

ただ、昭和生まれでもジタバタともがく私のような人間も業界内には潜在するでしょうし、平成生まれの若い人は「勝手に道連れにするな」とも思うでしょう。‥‥だったら、新しいシステムを作らんと。先人の開拓精神を継承しつつ、新しい土台を形成しないと。

コンピュータは人間を疎外するものだという考えは、著しく古いレッテルでの発想です。ある種、昭和的‥‥とでもいいましょうか。

前々から言い続けている事ですが、コンピュータプログラムの活用は、制作現場当事者たちの能力を「引き立たせる」ために使うのです。臆する事無くズバリと言えば、人間を尊重させるために、コンピュータを使うわけです。私の考えるシステムはコンピュータで出来る事はわざわざ人間がやらず、人間にしかできない事を人間がやるという人間性重視のものだと自負しています。

コンピュータ入門編として、コンピュータを代用品として使う方法はありでしょう。しかし、もうそろそろ、プログラムにも着手しないと状況は先に進まないと思います。現場意識の新旧は、「自分たちの現場を支えるトータルシステムを、自己開発できるか否か」で、明確に示されるでしょう。

自分たちで土台を作り直さない限り、今の状況からは絶対に抜け出せないと思います。コンピュータプログラムを遠巻きにしているようでは、スタートすらできません。多かれ少なかれ、プログラムの素養を持っていなければ、ディスカッションすらままならないでしょう。プログラム音痴の人間「だけ」が寄り集まって、新しいシステムの有意義なディスカッションなんて不可能です。アニメとコンピュータの両方の知識が、まず必要です。

サザエさんの「デジタル化」でもわかるように、もはやアニメはコンピュータなしでは作れません。なのに、今でも異質な門外漢として、コンピュータを扱っているフシがそこかしこにあります。「インターネットが嫌いです」とインターネットを使って発言しているようなものです。そろそろ、目的と手段の整合性を直視しても良いんじゃないですかネ。

不整合を内包して無駄を延々と発生し続けているのに、「大変」だなんて、ある種の自作自演です。アニメーション制作は、何をどうやったって、基本的にとても作業量が多くて大変なものです。なのに、段取りを多くしてさらなる大変なものへと作り上げちゃっているわけです。作業量が多くて大変ならば、なぜ無駄や大回りを回避して効率を上げる方法を模索しないのか、不思議でしょうがないのですが、「アニメの作り方はそういうもの」というマインドセットが強固なので、呪縛を解けないのです。仮に1セクションが新しい提案をしても、全体意識が提案を却下する事も多いです。

戦(いくさ)度胸は必要ですが、それがイコール、バンザイ突撃なのだとしたら、コンピュータを導入してもなお、アニメ業界の根っこは昔と何も変わっていない‥‥という事です。兵士の度胸頼みの白兵突撃を繰り返す、無策の戦術と戦略。零戦無敵の神話は、サッチウィーブの確立によって早々に失われていた事は、日本人の私には耳痛い事ですが、事実は事実です。日本人はもしかしたら、昔取った杵柄を大事にし過ぎるのかも知れません。

数々の名作を生み出してきた昭和のアニメ制作システム。コンピュータやインターネットなど現場にはなかった時代のシステムです。私はそのシステム上で動く人々にどこか、大戦末期の零戦の悲痛な姿がオーバーラップするのです。しかし、運命まで重ね合わせる必要はない‥‥とも思うのです。


マスターについて

Kindle Fire HDXやiPad Airが発表され、小さい画面でありながら高密度解像度という、次世代の映像の基礎が徐々に形成されつつあります。フィルムをデジタイズする際の高品質の売り文句だった「ハイビジョンマスター」というフレーズは、もはや逆に、「今どき、ハイビジョンマスターじゃないマスターなんかあるの?」というくらいの勢いに転じています。

そんな事を考えると、2004年〜2010年くらいのあいだに制作された「D1サイズのデジタルアニメ」って、相当マズいですよネ。品質的なツブシが利かないですもん。ダウンコンして、さらにプルダウンまでして‥‥。16ミリや35ミリフィルムとちがって、SD(DVDやD1)サイズの画素数って、ホントに貧弱です。横幅720ピクセルしかない現実はどうにもなりません。

せめて、ドット・バイ・ドット&24fpsでアーカイブしてあれば、まだどうにかなったと思うんですけどネ。

私は当時から、そんな「わざわざ低品質にするワークフロー」に強い疑問をもっていたので、自分が主導権を握れる作品においては、ドット・バイ・ドット、ネイティブFPS、そしてちらつき防止ブラー無しの、クリアなマスターをアーカイブするようにしていました。最上位品質のマスターを「ホワイトマスター」と呼び(私の造語です)、下位メディアに合わせて「ブルー」「オレンジ」「レッド」の各マスターを必要に応じて作りました。

2004年のお伽草子という懐かしい作品で、第1期のオープニングを担当しましたが、D1へのダウンコンバートなしの等倍サイズ、24fps、16bit(RGBで48bit)のマスタークリップが今でも存在します(どこにあるかは探す必要がありますが)。ロングショットの花びらや雪などのディテールがちゃんと見えますし、キャラの輪郭もシャープ、グラデーション表現も滑らかです。

手塩にかけて作る作品が、当座の納品仕様に合わせてむざむざ低画質になるのは、どうしてもイヤだったのです。

近い未来、また映像フォーマットは揺れ動く事と思います。また「アニメの作品」の制作において、アニメ業界が一人勝ちの現状は、徐々に崩れていくんじゃないか‥‥とも思います。「クールジャパンなのに?」と思う人は多いかもしれませんが、そういう状態が一番「危ない」と思うんですよ。

全ての要素を先読みして、タップリと対応する事は不可能だと思います。だからこそ、「これはマズいと思う」要素〜例えば故意に品質を下げるような行為〜くらいは何らかの解決策を導き出して、作品作りにのぞみたい‥‥と思うのです。この10年の経緯や経験を活かして。

「知識を身につければ十分? 否。何事かに応用せよ。 望むだけで十分? 否。行動を起こせ。」と、かのドイツの文豪も申しておりましたネ。

機材的な話題

最近、紹介した4K視点のサンプル画像は、ほとんどがMac miniで作ったものです。下にズラリと並べてみましたが、2点のみ(銃を撃つ女性とクマの子)がMac miniを買う前に2008年製の古いMac ProやPowerMacG4で作業したもので、残りはMac miniで作業しました。Mac miniをメインとした自宅の環境は、本業よりも2〜3段はランクの低い環境ですが、レンダリングに時間がかかるだけで、作業は普通にできます。‥‥昔は自宅でも、タワー型で作業するのが普通でしたが、現在の観点だとうるさいし電気喰いなので、Mac Proのようなタワー型は出来るだけ起動しないで済ませています。


*上図サンプルは未紹介のもので、ペーパーレス・ベクターオンリーの5K解像度のものです。100%表示だとこんなに(下図)デカく寄っちゃいます(揺れるペンダント部分)。

*以下は既出のサンプルです。






*ついでに6年前に作ったクマの子(オリジナルはHD解像度)も、画風の参考として出しときます。

最近のMacはminiでも、相当やります。ぶっちゃけ、こんなに仕事の出来るやつだとは思ってませんでした。Mac miniをメインにするようになって、そろそろ1年くらい経ちますが、充分使えます。

構成はこんな感じです。




作業用マシン「Mac mini i7」の構成は、何の変哲もない構成に見えますが、完全なバックアップ体制のために、HDDを増強しているのがミソ、でしょうか。バックアップ間隔は1時間で、作業ミスでしょうもないデータ紛失をしても、1時間前には戻れる仕様になっています。いわゆるHourly Backupというヤツです。メモリはアマゾンで安く買った16GB(8GBx2)に変えてあります。現在のHD解像度ならともかく、UHD(4K)以上の作業は、最低でも16GBのメモリは必要ですヨ。本当は32GBにしたいんですが、Mac miniの上限は16GBなので、断念。

HDDの銘柄は、バックアップ用途はWDのGreenなどのコストの安いもの(=低速)、作業スペースはBlackなど7,200回転以上のモデルにしてあります。ThunderBoltで繋ぎたいけど、今のところはUSB3.0で凌いでいます。

ペンタブレットはIntuos5を常用し、Cintiqはあまり使いません。なまじ、ペン先と映像にズレを実感しちゃうよりは、Intuosの遠隔操作のほうが潔いと思っております。スキャナはフラットベッドとドキュメントスキャナの2種。ラフのスキャンは、ドキュメントスキャナが圧倒的に楽です。フラットベッドスキャナは、400dpiくらいまではスキャン速度があまり落ちないモデルが良いかと思います。プリンタは、絵を出力するのはガイドの線画程度なので、高級なのは要りません。Canonの5千円プリンタで充分すぎるくらいです。
*ドキュメントスキャナの文節にと、富士通のScanSnap最新モデルを検索してて驚いたのは、どうもローコスト化が画質に出ているらしい事です。‥‥なので、1世代前のモデルがお勧めです。‥‥売れ筋商品で定番化するとよくあるんですよネ。iMac(昔のオニギリ型のCRTモデル)も、モデルが刷新されるたびに故障しやすく(コンデンサとかのローコスト化で電源不良が相次いだ)なっていったし。アニメも、2013年と2003年では、金のかけ方や人材・時間の問題で、クオリティが必ずしも向上&進化しているとは言えませんもんね‥‥。

作業用サーバは、メインメモリ8GBですが、やはりデータのバックアップは完全に網羅してあり、バックアップ間隔は1時間〜3時間にしてあります。ぶら下がるのは私1人だけで、複数端末からの同時アクセスを高速に捌く能力は必要ないので、安いMac miniで充分です。逆に言えば、ぶら下がるのは映像制作用途だと2〜3人くらいが限界ですかネ。あくまでも「個人用のサーバ」です。ちなみに、モニタディスプレイやキーボードは繋がず、VNC(Macで言うところの画面共有)で遠隔モニタリングします。

LANはもちろん有線ギガビット。無線は使いません。将来に合わせて、10ギガビットの線を敷いてます。ケーブルだけだったら、10ギガ対応でもそんなに値段は変わりませんからネ。

‥‥とまあ、「こんな安っちいので、出来るのか」‥‥とか思われそうですが、2年ごとにメインマシンは買い換えなので、維持費は結構それなりにかかります。HDDのメンテ&管理(有り体に言えば適宜の買い換え)もできないといけません。

ちなみに、この環境で4K(実質は5K近い)をレンダリングすると、1フレームあたり1分前後です。つまり、48fpsだと1秒レンダリングするのに48分〜1時間近くかかるわけです。1フレームあたり2分くらいかかるのも珍しくありません。

しかし、考え方を変えれば、こんな安いマシンで次世代フォーマットのレンダリングが可能なんですから、要は運用次第ですね。個人制作レベルでも、工夫を凝らしてそれなりに「イケる」んじゃないでしょうか。プロの場合は長尺の作品をこなす必要性から、どうしても性能の高いマシンが必要ですが、個人制作の短編なら、見込みは充分あるんじゃないでしょうかネ。

ドイツの有名のお方のコトバで「人生はおよそ二種類のものがある。できるけれどもしない。したいけれどもできない。」というのがあります。‥‥ならば私は、「できることはしよう」と思うのです。

追記:Macには「買うタイミング」というものがあります。めんどくさいですが。‥‥10月現在は、様子を見たほうが良いかも知れません。

文字列変換マクロ

映像制作の際には、ファイル名やフォルダ名など、様々な文字列を適宜処理して、作業を進めます。ファイル命名規則において、全世界で統一されているのはファイル拡張子くらいなもの(ようやく‥‥ですが)で、他の文字は各国各社各セクション、バラバラです。

ファイル名を見れば、その持ち主が性格が解るくらい、「名は体を表す」のです。どのくらいの練度か、またどのくらいコンピュータを使いこなしているかも、大体判断できます。「人海戦術タイプ」とか、「手作業でやっつけるタイプ」「地道におっかけるタイプ」など、運用パターンも「たかだかファイル名」だけで見えてきます。

ファイルやフォルダの名前の文字列は、それを運用する人々の性質を反映しており、ポリシーがまちまちです。共同で作業する作品制作でも、ファイル名の命名規則は統一できません。統一するには、関与する人々全員に何か大きい「恩恵」「対価」が必要なのですが、現在のところ、その恩恵は見えてきません。同一セクションならともかく、他のセクションにファイル命名規則を強要する事は、現状では難しいのです。

しかし、作業状況を把握するには、何らかの管理法が必要です。ファイルやフォルダから取得する情報はとても有用ですが、名称がまちまちだと、ストレートに情報を得られません。

‥‥なので、私は以前から「名称変換式」という仕組みを作って、他者の規定した名称を、自分の管理するデータベースに最適な文字列へと変換する方法を採っています。毎回、他者の方式に合わせるのではなく、内部はガッチリとシステムを作っておいて、外部との受け渡しの際にだけ先方との整合性をとる‥‥というやり方です。

このやり方は、手作業だと二度手間・三度手間ですが、コンピュータの自動処理ならば、人の手間は増えません。

2005〜6年くらいから既に導入していますが、最近は使い勝手が悪く感じられるようになり、この度、全面的に変換式を刷新しました。ファイル名の名称変更以外にも幅広く活用できるよう、「名前変換式」ではなく「文字列変換マクロ」という位置づけにグレードアップし、あらゆる「難題」に対処できるように強化したのです。

まずAppleScript版から作り、JavaScript版もほぼ完成しました。同じ命令文でAppleScriptでもJavaScriptでも同じ動作をするので、「言語ごとに命令文を変える必要がない」のが特徴です。そんなに難しい事はしてないので、ShellScriptやPerl、Objective-Cなど他の言語でも実装できると思います。命令文は単純なテキストなので、ASCII文字列、日本語を使いたければUnicodeを記述できる媒体・データベースでOKです。

以下は模式図です。



作業者に配布されるヘルパーアプリは、この「文字列変換マクロ」のコンポーネントライブラリをサーバからロードし、同時に「マクロ命令文」もサーバから供給されます。作業者は特に煩わしい操作をする事なく、作品仕様に合致した「自動変換結果」を適用できるのです。

私の考える未来の制作方法は、皆が同じファイル命名方式をリレーして踏襲するので、このような「文字列変換マクロ」は不要になる予定です。その時の「マクロ命令文」は「?THRU」という命令文になります。‥‥とはいえ、まだ来ぬ未来に焦点を合わせ過ぎても現在が立ち往かなくなるので、基本「どんな名称でも」対応できるように作り込む所存です。

A4かB4以上か、または‥‥

前回、色々な画風でのキャラのルックテストを紹介したのですが、作業上のスペックは「A4/600dpi」という内容でした。今の業界の標準が150〜200dpiくらいですから、かなりデータ量の大きいスペックで作業をおこなっているわけです。

しかし、どんなにスキャン時のdpiをあげようが、紙の大きさと描線との比率が変わるわけではありません。dpiの数値をあげたところで、「黒鉛粒子が紙の繊維と絡み付いているさま」が克明に描写されるだけで、線が繊細になるわけでもなければ、滑らかで流麗になるわけでもありません。

要は、スキャン解像度をあげるだけでなく、鉛筆・シャーペンの「繊細な使い方」と、紙の「繊維の滑らかさ」も、同時に向上させないと、単に描線の荒さが生々しく目立つようになるだけ‥‥なのです。

とはいえ、どんなに芯の先を尖らせて精密に線をひいても、「A4」の小さな紙に描いているがゆえに、限界はすぐにやってきます。4k以上の解像度にふさわしい描線を全てA4用紙で描き切る事は不可能だと、数年のテストを繰り返すうち悟りました。「A4用紙に線を描く」時点で、絵の繊細さはある程度決定してしまうのです。

今の業界フローでも、小さ過ぎて線が潰れてしまう場合は、拡大して作画し、撮影時に縮小するという方法が部分的に用いられています。4k8kではそうした「描線のマテリアル」問題が、いっきに表面化するのです。でも実は、現在でも既に表面化し始めてるとはおもうのですよネ。テレビでたまにCMでアニメ映像を見ると、線が太くて異質で、即座に「現業界産」だという事がわかってしまいます。レタスの線って、すぐわかっちゃうんだよねえ‥‥。

A4用紙に鉛筆で描くと、線があらくなる。もしくは太くなる。‥‥この問題に対し、解決方法はいくつかあります。

1・B4以上を用紙のスタンダードにする

紙の面積と鉛筆線の比率を、引き離そう‥‥という考えです。例えば線の太さを0.3ミリと仮定して計算すると、今までA4「297mm : 0.3mm」(990:1)だった比率が、JIS-B4「364mm : 0.3mm」(1213:1)となり、相対的に線が繊細になります。‥‥しかし、簡単そうに見えて、結構な高いハードルです。

全てのスキャナをB4以上のモデルに刷新しなければなりません。B4のスキャナは入手が困難ですから、都合A3スキャナになります。10万円クラスが最安になり、機材導入費としてかなりのパンチとなります。

そして何よりも作業スペースを広く確保する必要があります。スキャナが最低10万円だと嘆くよりも、こちらのほうが大打撃です。絵を描くスペース、スキャナを置くスペース、さらには用紙の単価(今よりも白色度の高い専用紙)も普及したA4よりも割高となります。描き終えた原画類の保管場所も、相応に広い場所を必要とします。現在発売されている事務用品のメインはA4サイズですから、度々、「B4対応製品の少なさ」に泣かされる事になるでしょう。(‥‥既にリサーチ済みです‥‥)


2・分割作画&スキャンする

原稿をA3で作画し、分割スキャンする方法です。これが一番、(少なくとも今は)現実的かも知れません。

どうせ分割スキャンする手間を負うのですから、B4なんて中途半端なサイズでなく、いっきにA3まで拡張できます。また、私の考える新方式ではリギングが必須ですが、分割スキャンする事がリグの単位と関連づけられるので、合理的に作業を進める事ができます。
 
レイアウト&ラフ原画=A4(後に拡大して用いる)
原稿(旧来の原画と動画に相当)=A4分割作画によるA3やA2サイズ
スキャン=A4/300dpi以上

難点は作画サイズが入り乱れる事、分割の手間が各所に波及する事などです。うまくフローを構築しないと、すぐに大混乱に陥るでしょう。上手く運用できれば、スキャナもプリンタ(作画のガイド等のプリント)もA4サイズで完結できます。


3・そもそも鉛筆と紙を使わない

これが一番合理的に思えますが、絵描きにとっては合理的ではない部分もあります。ペンタブレットが今でもヘタレなのが、最大のマイナス要因です。

10数万円出費して液晶タブレットを買っても、紙と鉛筆の正確さに匹敵できないのは、かなりイタい事実です。私は液晶タブレットを使っていますが、ガラス越しに絵を描いている感覚が今でも馴染めません。さらに座標のゆがみが存在するので、描いている時のストレスが相応にあります。タブレットを使った後で、鉛筆や筆を使うと、そのダイレクト感に今さらながらに驚きます。

しかし、道具の上手な使いこなしを模索するのも、フロー構築の醍醐味。原画を描く行程で「ペーパーレス」になれば、やはり一番合理的なフローになるのは明白です。

Adobe製品に限定せず、Clip Studio PaintとかSketchBookProなどもフローに組み込んで、ペンタブで絵を描く意識をデフォルトにした制作システムを考えても良いでしょう。‥‥まあ、統合的なシステム作りは相応に大変、ですけどネ。


4・ペンで描く

紙は使うが、鉛筆・シャーペンは使わず、丸ペンやコピックマルチライナーなどのペンで描く方法です。「うそぉ」と引かれそうですが、実はこれはかなり有効な方法です。A4用紙でも、格段に「高解像度感」を得られます。

弱点はズバリ、消しゴムで消せない事でしょうか。ただし、少々(いや、かなりの?)の修正はスキャン後に可能ですから、大間違いでも無い限りは問題にはならないですネ。

あとは、原画を描く人間が、ペンの扱いになれているか?‥‥ですネ。


‥‥とまあ、いくつかの方法を挙げてみました。一番現実的ですぐに実行できるのは「2・分割作画&スキャンする」でしょうが、他の方法も利点も難点もありますから、随時平行して研究していく所存です。

「1・B4以上を用紙のスタンダードにする」方法は、東京集中型の作業スタイルだとキツいものがあります。A3スキャナって、小振りの仏壇なみの専有面積を欲しますからねえ‥‥。なので、実は新方式に絡めて、地域分散型の制作方法も込みで考えているのです。作業場所の拡充を考慮すれば、当然の成り行き‥‥ですよネ。地方の安い地代でアニメが作れれば、コストを他に充当したり還元できるもんね。東京って不用意に人が多いよねえ‥‥‥。そいでもって、ふらちなほど、物価が高いよねえ。「都市集中・地方過疎化に歯止めを」って、30年前から言ってるわりに、全然ダメじゃんね。

ちなみに‥‥、私は祖先が浅草界隈なので、先祖代々の実家に戻って‥‥という方法はできないのです。まとまった広い敷地なんて、ありゃしません。お寺は青山の善光寺ですが、そこだけスポット的に都市化を免れていて、周囲は都会の喧噪そのものです。地価も相当なもんだろなあ‥‥(他人事)。‥‥なので、私の代から日本のどこかで土地持ちになるほかありません。まさに「アニメバカ一代」。素手で牛を倒すかわりに、4Kの短編を1人でこなしたろうか。

先祖代々‥‥でふと思い出しましたが、年初め正月1日の朝食は必ず「小豆のおしるこ」でした。お餅の入ったお雑煮ではなくて、朝っぱらから甘〜いおしるこです。なぜ、おしるこなのかと言うと、小豆の皮が中央部で真横に割けている様子から、「いつでも腹を切れる用意をしておけ」という1年最初の訓だったのです。おしるこは必ず祖父(=料理が得意だった)が作っていました。腹切りとは「腹を切るほどの覚悟」、すなわち「命をかけて物事にあたれ」という意味ですわな。

ふさわしいキャラ

女(じょ)キャラはまさにアニメ作品の華‥‥ですが、そのキャラのデザインは、紙で作画してペイントするという工程上の制限を反映して「今の感じになっている」のは、周知の事実です。ですから、現アニメワークフローとは全く異なったフローでアニメを作るのであれば、今のデザインを踏襲する「技術的必然性」はありません。もし必然性があるとすれば、「慣習」があるのみ、です。

慣習とはなんだろう?‥‥と考えると、まずは「描き手の慣れ」があり、さらには作品を受け取る人々の「慣習的な嗜好」もあります。「アニメっていえば、コレだよね」という暗黙の合意とでも言いましょうか。

現在のキャラデザインのアプローチとして、目を大きく描く「ロリ顔」が慣習化している‥‥というか、発想する時点で幼女顔にデフォルトがセットされちゃっているように感じます。ごく少数、「普通顔」「大人顔」のキャラも存続はしているようですが、大半は「ロリ顔」ですよネ。

「アニメと言えば、目のデカいキャラ」という認識から、少なくとも私は抜け出したいと思っています。萌え絵もあっていい、しかし、それ以外の作風も沢山あればいいのに‥‥と思うわけです。

‥‥なので、アニメのトレンドとか慣習とか、1度リセットした上で、
新しい方式で表現可能なキャラとはどのような広がりがあるのか、目の大きいキャラも小さいキャラも選り好みせずに、色々とテストしています。私が素で描くと、目の大きいキャラは敬遠がちになりますので。


以下は、同じポーズによるルック&デザインのバリエーションで、原画を描いた後に直にAfter Effectsに持ち込む「原画 to After Effects」の作業スタイルで作成したものです。オリジナルは「4.5k x 6.5k」のサイズですが、1/10サイズに縮小しています。

【1】それ系

線画をAfter Effectsに持ち込んだ状態が以下です。鉛筆画をAfter Effects上でベクタートレスに変換しています。




これをさらに、After Effectsでアレコレと作り込むと、以下のようになります。



‥‥無理しております。借り物のスタイルです。自分から素でこういう絵は出てきません。色んな箇所に無理が見えます。こういう絵は、「好きこそ物の‥‥」で、何も無理せず素で描ける人が描くべきですネ。

このスタイルは、今の業界フロー〜特に撮影部門に自動化を取り入れ技術向上させれば、今のままの作画スタイルでもとりあえずは実現可能でしょう。48fps以上に対応するには、かなりの効率化が求められますが、できなくはない‥‥と思います。

‥‥ですから、新方式でこれをやる意義はかなり低いと判断しています


サンプルを作ってみて‥‥、こういうスタイルの絵は、所詮、私には不似合いだと言う事を改めて確認しました(苦)。出来のマズさを承知で晒しております。パッションの薄さが、絵に表れており、小手先のテクニックで誤摩化そうとしているさまが、過装飾によってモロバレだ‥‥という事もゲロしておきます。大いなるパッションを持って、もっと上手く描ける人は大勢いると思います。

目の処理(下図)とか、色々試してみたんですが、
どうイジっても一定以上にはならんですネ。昔から解っていた事ですが、情熱が無いのなら、やらないに限る‥‥と思いました。



わたし的には‥‥



‥‥のくらいで充分だと思えてしまうのです。スッキリしてて、私はこっちのスタイルのほうが好きです。‥‥でも、この絵柄なら、なおさら、旧来の作り方で全く問題無さそうですネ。



【2】ちょっとそれ系

今度は目を大きく描く事をあまり意識せず、頭身も少し高くした絵柄です。とは言っても、充分、目は大きいですが、2013年現在の風潮では控えめなほう‥‥でしょうか。技術的には、鉛筆のニュアンス活かした、いわゆる諧調トレス線で処理してみました。今のアニメ業界は、ほとんどが2値トレス線(白黒オンリーで中間調を殺す方式)ですが、私の考える方式のデフォルトはこの諧調トレス線です。




After Effectsで色づけやら、グラデーションを加味します。今回の絵は、影の半分以上がグラデーションによる表現です。顔の影のディテールは、後のビジュアルエフェクトなどの効果を先読みして、適度な影付けをおこないます。原画・彩色で「ドンピシャ」にする必要はありません。照明によって顔のニュアンスはかなり変わります。

ビジュアルエフェクト・グレーディング等を追加して完成させたのが以下のサンプルです。3パターン作りました。


・柔らかいトーン


・色、濃いめ〜やや逆光


・逆光

1番目の「それ系」と似たような感じですが、私としては、こちらのほうが素に近い状態で描けます。おそらく、目の面積の問題なんでしょうね。あと、頭身や首の太さ、髪の毛の量など。こちらは、普段より目を大きめに描いて鼻や口を淡白に処理すれば良いので、ココロの負担が軽くて済みます。

グラデーションを影付けに多用して各所を処理しているので、今の業界フローではちょっと難しいかも知れません。グラデーションがキャラのニュアンスの大きな要素となっていますが、紙の作画時には指定のしようがありません。各所のグラデーションは、それぞれ濃淡の幅が違っており、
単純にボカせば良いというものではないので、今の業界フローでは「誰がグラデを操作するのか」が特定できず、フローが頓挫します。

私の考える新しい方式では、絵を描いた本人がグラデ操作をおこなうので、特に不都合は発生しないのです。線画だけを描くアニメーター‥‥という概念は、新方式においては、もう存在しないのです。



【3】私の素のスタイル(特に流行を意識せず)

特に何かを意識するわけでなく、気楽に描いたサンプルです。流行とは全く無縁のスタイルだと思います。前の2点に比べると、リアルバランスに見えるかも知れませんが、全然、マンガのバランスです。
諧調トレス線の持つ強弱を活かして、手描き感をより一層強調した方式です。




この方式では、もはや「トレス線が途切れないように、一定の濃さで無機質に描く」必要はありません。むしろ、たっぷりとした黒鉛(鉛筆やシャーペン)の表情が要求されます。これをAfter Effects上で、いくつかのアプローチにて作った3種類が以下です。


・中庸なニュアンス


・逆光&ソフトフォーカス〜彩度の高いパステルカラー


・荒びたフィニッシュ&線画の味わいを強調〜彩度低め
〜寄るとこんな線画のニュアンスです(下図)


私が無理せず、このスタイルの絵を描く時、いつも頭に想い浮かぶのは、ラッカムデュラックなどの、ほぼ100年前の絵本画家たちです。時代性からすれば、私の頭の中では「何百年も古くて良い」感じなのです。現在の特徴的な萌え絵や作画スタイルだって、10〜20年後には相応に古くなっているはず。‥‥であるのならば、仕事で設定に合わせて絵を描くのならしょうがないとしても、自分の絵を描く時は、流行に振り回されて絵をかくのではなく、ウソをつかずに絵を描くのが良いと思うんですよネ。ブームの尻馬にのって描いた絵は、廃れた際にファンが離れるのもはやいですもんネ。(もちろん、尻馬ではなく、ブームの本家本元は、根強いファンがつきますけども)

技術的には、2番目のサンプルとさほど変わりません。ペイント時にグラデーションを多用する事、ビジュアルエフェクト時に照明や陰影をコントロールする事、フォーカスの操作など、キャラの感じは違いますが、技術の基盤は同じです。もちろん、After Effectsで48fpsなどのハイフレームレートで動かせます。

線画の行程から微細なニュアンスが要求されますので、今のような夥しい人海戦術による量産には不向きだと思われます。一方、新方式は極めて少人数で制作が可能なので、キャラ崩れを起こす事なく、作品を作る事は可能だと思います。




【4】淡彩風

新方式の守備範囲の広さが発揮されるルックです。私は
いわさきちひろさんも大好きなので、こういう方向性も考えてみました。

線画はかなり自由な描き方です。こんな描き方でも、新方式は対応できます。以下は、スキャン後の状態です。




線がかすれて輪郭の曖昧な描き方は今の業界では御法度(というか対応不可)ですが、新方式では全然構いません。これをAfter Effectsに読み込んで、ちひろさんを思い浮かべながら、あれやこれやと作り込んでいくと、以下のような淡彩風の絵になります。After Effectsが単なる「素材ありきの画像合成」のコンポジットツールでなく、「絵を描く」という積極的なアプローチにも充分使える事がお解りだと思います。



これを背景と一緒に、ビジュアルエフェクト・グレーディング(‥‥この作業内容をVFXやグレーディングと呼ぶのはやめたいんですが)で「絵を描いてフィニッシュ」すると、以下のようになります。3パターン作りました。







ドロー風なテイストですが、描画ツール(ブラシなど)は使わず、すべてAfter Effectsのパスやエフェクトで作っていますので、48fpsだろうが96fpsだろうが動かせます。‥‥ただ、この絵柄に48fps以上のハイフレームレートモーションがしっくりくるかは、検討の余地があるでしょう。また、長尺には適さないのでは‥‥とも思います。絵本くらいのボリュームがちょうど良いかも。

このくらい「アニメ絵」と遠くなると、もはや今の業界フローでは全く対応できないスタイルです。もちろん、業界内に在籍していても、業界フローを用いなければ、色々な事はできる‥‥んですけどネ。現業界フローから「決別」しないと、こういう絵の表現の広がりは得られません。

また、「ペイント」という作業の呼び名も、もはや過去の意識となってきます。領域をクリックしてベタヌリするペイントではなく、水彩画と同等の神経を費やす作業ですから、「彩画」と呼んだほうがしっくりきますネ。今のレタス互換方式とは、似ても似つかない技法なので、一緒くたに「ペイント」と呼ぶのは、あまりにも大雑把過ぎます。

絵の特質からして、やはり、今のような夥しい量産には不向きだと思われますが、短尺ならば問題ないでしょう。



‥‥とまあ、色々と試してみました。まだまだ画風・スタイルはいくらでも模索できるでしょう。視界一面が水平線のように広がる未開拓のフィールドは、セル画時代の制限に縛られる事のない自由な広がり‥‥と言えますが、逆に「自由過ぎて何から始めたら良いかわからない」とも言えます。また、自由を支えるための、平野を開墾するための、しっかりとした技術基盤が必要でもあります。


つまりは、絵を描きたい・動かしたいという何にも代え難いパッションが根底にあって、それをどのように実現させるか‥‥という事に尽きるのでしょう。新方式においては、「アニメとはこういうもの」という固定概念はなく、「どんな絵を動かして、どんな話をつくりたいか」という、アニメーション作品における「Root」(根っこ・出発点)が何よりも重要なのです。それがなければ、何も始まらない、です。

私が未来に作りたいと思うアニメは、おそらく、萌え顔好きのファンの人々には、アピールできないものと想定しています。自分にウソをついて萌え絵ぽい絵を描いて、現在のファンの人々に取り入ろうとしても、そんな浅いウソはすぐに見破られるでしょうからネ。

私の考える未来の方式は、マンガと同等まではいわないまでも、初動段階のコストをかなり低く抑える事ができます。つまりは、リスクを抑えつつ、今までとは違う層に、違うカタチでアピールできるチャンスを持つ‥‥という事です。
60代に至る老若男女まで、もはや鉄腕アトム以降のアニメ世代だと言う事は、忘れてはならない事実です。

そんなこんなを考えた時、やり方はまだいくらでも開けていると感じるのです。「
サルまんの予言」がどんどん的中していく昨今、アニメはもはやティーンのものだけではないと、今さらながらに考えるのです。

老眼

ここ最近、数人の方から「今、ベテランのアニメーターは、老眼になって、自信を喪失している人が多い」‥‥と言う内容の話を聞いた事があります。複数の別々の場所で聞いたので、局所的ではなく、そこそこ広範囲の話題だと感じました。

たしかに。‥‥ある日突然、老眼がやってきて、今まで見えていた鉛筆の先の絵が、極端に見え辛くなるのって、かなりのショックですよね。

老眼の「老」は、からだ1つで自分の運命を切り開いてきた絵描きにとって、耳にしたくない、目にしたくない、1文字です。仕事の受発注のシステム上、老いを受容できないのです。

しかも、今のアニメ作画は、キャラがどんどん細かくなって、余計にマクロ視力を必要とします。

視力低下と細密なキャラデザインを前にして、自分がどんどん取り残されていくような不安や苛立ちが、感情の圧迫するとしても、致し方ない状況と言えます。

老いぼれたらThe End‥‥という、暗黙の価値観がアニメ業界にはあると思います。特にアニメーターは、そういう強迫観念が強いのではないでしょうか。白紙に描線をひいて、絵をゼロから描き起こすプレッシャーとともに生きてきたわけですから。

ですから、どんなに自分の感覚を磨き続けても、体が勝手に老いぼれていく現実は、絶対に受け入れがたい事なのです。老眼を認めたくない、あるいは、周りに言えない事も多いのではないでしょうか。

私は以前、アニメ業界は「老いを想定していないシステムだ」とブログで書いた事がありました。アニメーターに限らず、撮影などの他のセクションであっても、「20代の君は、30年後にどうなっているか、想像できるか?」と聞いて、具体的に答えられる人はあまりいないと思います。個々の生き様の話ではなくて、業界に在籍し続けた30年後の状態の事です。‥‥おそらく「今のまま、作業を続けている‥‥んじゃないかな‥‥」という漠然とした答になると思いますが、身体は30年後に「今のまま」であるはずがない、です。

アニメ業界の標準作業システム・ワークフローは、「ベテランー中堅ー新人」の技能を無視したフローとも言えます。作業内容の難易度を無視して、単価を一律に設定しているのが、その何よりもの証拠。技能の伝授に対しても「適当に内輪でやってよ」的なスタンスで、システムとしては何ら考慮されていません。

新人にベテランと同じ作業内容を要求して「ダメなやつだ」と罵る。同じく、50代と20代の体力を同じに考えて、捌ければいいやと、内容無視で仕事を撒く。どちらも、「‥‥」ですよネ。

私は「工房型」のワークグループを計画していますが、それには「ベテランー中堅ー新人」の技能サイクルの構想も含まれています。‥‥普通さ、誰でもそう、システムを考えないかな。特に変な事を言ってるとも思えないんだけど。

しかし、現実問題として、業界は「そう」(=「ベテランー中堅ー新人」を一律で扱う)なのです。前にも書いた事ですが、業界の枠組みが「そう」だから、今までアニメを量産し続けられたのかも知れません。しかし、個人に突きつけられる現実は、老眼がまるで死刑宣告のように響く辛辣なものです。

旧来アニメ業界のシステムはもう変えられないと思っています。しかし、新方式でアニメを作る新しい場所は、老眼なんぞで気落ちしない、技能ピラミッドをベースにしたシステムを構築したいと考えています。

「けッ。口で言うのは簡単だろ」と罵る声が聞こえてきそうです。しかし、「口で言うのは簡単だ。実際は難しい。」と言ってる人も、結局は口で言ってるだけ‥‥ですよネ。達観してみせて、自分は何も動かない。誰かが変えてくれるのを待っている。誰かが救ってくれるのを待っている。自分はつぶやくだけ。

「会議」や「議論」するだけじゃダメなんです。「会議」ってコワいんですよ。会議だけで何か成し遂げた気分になりますから。実質は何も進展していないのにネ。

要は行動を起こしているか、否か、です。‥‥私は、もう数年前から開発を自己資金で進めてますがネ。達観できるほどの経験と技術があるなら、それを元手に、具体的に行動せよ!‥‥です。

老眼になった事で、絶望的な気分になる、今の業界。

‥‥実は私も、数年前から老眼が忍び寄ってきています。数年後には老眼フルタイムになる事でしょう。老眼の兆候をはじめて感じ取った時は「これが老眼と言うやつか」と少々ショックでしたが、まもなく「視力が落ちたのなら、そのように対処すればいい。『老いのスケジュール』を組むべし!」とキモチを切り替えました。嘆く事にカロリーを費やすよりも、どうやって未来を切り開くかにカロリーを活用したほうが、有意義じゃないすか。


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