Adobe Audition

iTunesで2000年以前の旧い音源を聴いていると、音圧が低く、聴き辛く感じる事があります。最近の音源と連続再生した時に、特に差を感じます。

まあ、iTunesの各音声ファイルごとの音量調整機能を使えば良いのでしょうが、どのファイルをどれだけ音を上げ下げしたかが解らなくなりそうです。なので、私は音量の差をどうしても調整したい場合は、ファイルを複製して自分なりに調整したファイルに変えてしまいます。「自宅リマスター」みたいな感じ、ですね。

私は最近Mac miniを常用していますが、本格的な音楽制作環境はインストールしていないので、たまに音量が小さい楽曲に遭遇しても、そのまま我慢して聴いていました。いちいちLogic ProをインストールしてあるMac Proを起動するのが億劫なのです。

しかし考えてみれば、そのMac miniにはAdobe CCをインストールしてあるので、「Audition」というソフトを使えば、音圧くらいなら簡単に調整できるはず‥‥です。折角CC一式をインストールしてある事だし、試しに使ってみました。

結果。‥‥充分、使えますネ。あまり名前を聞かないソフトでしたが、特に扱い辛いと感じる事もなく、エフェクト類も充実してて、やりたい事が実現可能です。

Auditionって、何か、マイナーな扱いですよネ。もったいない。‥‥アドビって、色んな会社を買収してソフトウェアを自社化しても、どうも「持て余している」感がありますよネ。Speed Gradeとかもネ。

で、Auditionですが、パラパラッと流し見した感じでは、ひと通りの機能は取り揃えているようです。インターフェイスは最近のLogicなどに比べると、やや旧い印象を受けますが、特に困る事はありません。

音圧を上げる程度だったら、「エフェクト/スペシャル/Mastering...」だけで充分可能です。音楽制作の統合環境にはならなそうですが、軽めの波形編集やミックスダウンなら気軽にパパッとできちゃいそうです。

CCを契約しているのなら、Auditionはインストールしておくと、色々と重宝しそうです。機能限定版のGarageBandでマスタリングするより、積極的な事ができますヨ。当座、音楽制作環境がGarageBandオンリーでも、GrageBandでミックダウンした音声ファイルをAuditionでマスタリングするだけで、グッと音圧の詰まった聴きやすい音に調整できると思います。

でもまあ、Auditionって、ちょっと名前で損しているような気が‥‥。私も「オーディション?‥‥関係無さそ。」とスルーしてましたから‥‥。

Adobe CCには、音声の波形編集ソフト・マルチトラックミックスのソフトもついてくる‥‥と思えば、解りやすいかも知れませんネ。

デジタルの弱さと強さ

デジタルデータは、タフでもあり脆くもあります。脆い面の代表例は、「データ読み取りの互換性・再現性」です。特に旧式メディアに収録されたデータは、読み取りドライブが手元にない場合には、手も足もでなくなります。

私の手元にある一番古いデジタルデータ収録メディアは、QD〜クイックディスクというものです。当然、現在はクイックディスクドライブなんて売っているはずもなく、データの読み取りは困難です。
(まだドライブは捨ててないので、ドライブを物置から発掘すれば読み取れますが‥‥凄く面倒な段取りなので、もう一生使う事は無いでしょう=>捨てればいいじゃん)
*私の持つデータ収録メディアで一番古いのは、厳密には、カセットテープなんですけど‥‥手元に見つからないので(多分、捨てた)除外しました。

デジタルデータそのものはとてもタフなんですが、データを収納するメディアと「一蓮托生」なので、結果、脆くなりがちなのです。

なので、銀河鉄道999のメーテルではないですが、「体を入れ替えて」データを生き続けさせる事が必要なのです。当該メディアのフォーマットが古くなってきたら、新しいメディアに複製して移動するのです。その取り組みをやめた時点で、データは死ぬ運命にある‥‥んでしょうネ。

データの移動を怠らなければ、データはいつまでも存在します。もちろん、二重バックアップは基本中の基本です。私は1996年にマウスで描いた絵が、今でもデータとして手元にありますし、もっとさかのぼれば、PC-98のマルチペイントで描いたラクガキもデータとして残っています。もちろん、当時のメディアのままではなく、何世代もメディアを乗り継いで、現在に至ります。

20年前のデータが、全く劣化せず、今でも手元に残る。‥‥なんとタフな事でしょうか。18年前に作ったバンク素材だって、現役で使えます。1994年のデータでも、2013年のデータと並んで、共有ディスクの中に平然と存在しております。

つまりは、データをアーカイブしようと思ったら、現行の記録メディアを買い続け、定期的にデータの大移動をし続けねばならない‥‥という事です。それがイヤなら、データは捨てるしか無いスね。

また、データの保存方法を誤ると、様々な理由で開けない事もあります。After Effectsのプロジェクトファイルがその適例(昔のAfter Effectsとプラグインでないと再現できないとか)です。

当時のメディアに当時のデータのままとっておけばアーカイブは完了するわけじゃありません。ぞんざいに保管されたデータは、その半数以上が15〜20年後には廃棄物となる運命にあります。

デジタルデータをタフにするか脆くするかは、扱う当人次第‥‥という事ですネ。

4K8K、裏方の利点

4K8Kは、よく考えてみれば、さすがにもうテープで運用する事はないですよネ。

私は既にテープベースの仕事からは遠ざかっていますが、今でもHDCAM関連の仕事は周囲に沢山存在しております。

テープなんて、もう「作業場の慣習」「新規機材費カット」以外、利点なんてないもんね。複雑なメカ、高いメンテ費用とランニングコスト、前時代の画質(HDCAM)、ランダムアクセスできない点も遠い昔のフォーマットだよね。

4K8Kでようやくファイルベースだ(^D^)テープ撲滅だ(^Q^)

私にとって、ベーカム・デジベやHDCAMは、大げさな言い回しではなく、胃潰瘍寸前(武蔵境の日赤に夜間緊急外来)となる大きな原因でした。テープが無ければ、確実に睡眠時間を多くとれて、休息を得て体力を回復できたでしょうから。‥‥あたた、思い出しただけでも胃がキュウっとなってきますワ‥‥。

テープ運用って、何もかも、前時代的だもんね。コンピュータを使っている意味がほぼ無い。PCからリモートでデッキを操作‥‥なんて、懐かしい感じだよネ。そういえば昔、自宅の1/4インチのオープンリールテープやMD DATAのMTRとシーケンサー(MTCを使って)で似たような事、やってましたよ。それがまた運用が煩雑でねえ‥‥。

コンピュータデータも管理しなければ煩雑極まりないですが、工夫して自動化を導入すれば、大きく改善されます。テープ運用は、物理的に拘束される時間とメディアの管理に、どうしても手間(=時間)を持っていかれます。

テープデッキが現場から無くなれば、テープに関わる可能性はゼロになります。‥‥それはほんとに、嬉しい事です。

4k8k

4K8Kで検索すると、みな解像度ばかりで(4k8kが見出しだから、まあ仕方ないけど)、フレームレートの表記や注釈は皆無なんですよね。そしてさらには‥‥

ソニーや東芝は韓国勢への対抗策として4Kの早期普及に意欲を見せるのに対して、地上デジタル放送の移行に巨額の投資をしたばかりの民放各社は消極的。技術に絶大な自信をもつNHKは4Kに興味はなく一足飛びに8Kの開発を目指すといった具合だ。

‥‥という、予想した通りの展開。誰でも予測できるわな、こうなる事は。

なので、特に放送局の機材導入費用がネックとなり、受け手側だけでなく、作り手側のインフラもままならず、8K実現には20年くらいかかるんじゃないか‥‥と予測しておった次第です。

しかし「東京で決まっちゃった」ので、大きくロードマップが変更される予感。そして、既に迷走し始める「4K8K」。

「4K8Kを看板にしちゃう」‥‥のですか?

解像度ばかり売りにしても、一般の人々は「今のテレビがデカくなるのか」としかイメージできないすヨ。そうすると、「今の大きさで充分」とか思っちゃうよネ。

ちまたのタブレットやスマートフォン、ノートパソコンでは、しきりに「画素密度」(例えばRetina)がピックアップされて、必ずと言っていいほどレビューにも解像感が語られるのに、テレビだけは「売り方」が旧いよねえ。

4K8Kなんて売り文句オンリーで、「そりゃ欲しいわ」となるはず、無いじゃんか。

8Kのテレビって、画面が大きくなるの? ホームシアター? ああ、うちは要らないや、場所も無いし。

‥‥て、なるじゃんか。

同じ面積のテレビ画面の中で、格段に細密できめ細かい映像が、まるで「薄いガラスの向こうの現実」のように映るのが売りなんであって、解像度の数値なんて副次的なもんですよ。解像度で「何Kだ」とか言ってるのは、単に技術者・制作現場の「内輪の話」(このブログもね)であって、受け取る人間は理屈やスペックなんてどうでも良いのです。「ぐっとくるか、否か」「スゲえ、と思うか否か」です。

4k8kなんて単語を、「看板」みたいにして使うと、逆に受け取る側は萎えちゃうんじゃないでしょうか。だって、4K8Kと言われて、どのくらいの密度か‥‥なんて、現場に実際に関わっている人間でもなければ、とっさに想像できないでしょう。技術者フォーラム内で半ばスラングのようにして用いられる略語を、安易に一般向けに使うのは‥‥あまり頭の良いやり方とは思えないんだよなあ‥‥。テレビでも見ましたよ、「4K8K」という文字列。

「スーパーハイビジョン」とか「ウルトラハイビジョン」とか言っとけばいいじゃん。‥‥まあ、そんな呼称の「準備」もないまま、東京オリンピックが決定しちゃったんだろうけど。

実際、今、地デジ&フルHD液晶に馴れている日本の大多数の人が、いきなりSD解像度のテレビを見たら、「なんじゃ、このボケた映像は?」となるでしょうから、人はやっぱり「高品質なものに体が慣れて、後戻りはできない」性質を持つのだと思います。全員とは言いませんが、多くの人は。‥‥これは馴れというよりも、生理面で考えても、です。

なので、需要は確実に、潜在的にではありますが、「在る」と私は直感しています。車やバイクの馬力競争は、「公道を走るのに、そんなに馬力があっても」という論点が「現在は」成立するでしょうが、テレビに関しては「まだまだ低スペック」なんですから、いくらでも「伸びしろ」があります。画素が荒く、パカパカと辿々しく上映される映像よりも、きめの細かい滑らかな映像のほうが、ぶっちゃけ、見てて楽ですよね。昔の人は、昔の映画を、「そういうものなんだ」と思って観ていたわけですが、今日的な物差しで見るとかなり目が疲れる‥‥のはどうしようも無い事です。それと同じ構図が、今でも、程度の差こそあれ、続いているわけです。

日本人が技術者気質なのは、基本的には良い事だと思います。ただ、その技術者根性をそのままマーケットに出すのは、私は負けの最大要因だと考えています。あくまで、マジックのネタなんですから。マジックを披露しようって時に、会場にネタバラシのコピーをばらまいてどうすんのよ。

売り場で必要なのは、どれほど「これ、スゲェ」と思わせるかであって、「こんなにも高度な技術を使ってます」なんてのは、技術者指向の人間だけが受け取れば良い事です。

新聞に「4K8K」なんていう文字列が印字される時点で、早速、ちょっとつまずいたのかなあ‥‥と感じるのです。

7年後の

私は、4K8K〜つまり次世代のスーパーハイビジョンが世に浸透していく速度は緩やかなもので、ハイビジョンと同じくらいの年月を要すると考えていました。特に8Kは、20年くらいはかかるだろう‥‥と。個々の技術の問題ではなく、インフラがおっつかないだろうと。

そんなふうに思ってたら、あれまの、東京オリンピック決定。「太いものに巻く」とはこの事よ。

もし7年後に4Kが実現できているとすれば、8Kの到来はもう少し近いものになるかも‥‥知れませんネ。インフラの発達速度って、社会の勢いで遅くも速くもなるもんネ。

私は正直、ステレオグラムは「制限が多過ぎる」ので、今の方式だと発展は中々難しいような気がしています。根本的な話になっちゃいますが、「四角い平面枠の中で立体」というのが、どうにも、ピンとこないのです。立体が真価を発揮するのは、おそらく映画やテレビの延長線上ではなく、全く別の方法論・技術の上‥‥のように思うのです。発想が「平面由来」のままで、技術的に「フレーム」がある以上は、今以上の進展はなさそうに感じるのです。まあ、これ以上は申しますまい‥‥。

平面の枠の中でしっくりくるのは、やはり、4K8Kで48〜120fpsの「スーパーモーションピクチャー」だと考えております。枠の中の絵‥‥ですからね。

ただし、同じ平面の枠の中と言っても、画素数と動きが2〜4倍滑らかだと、誰の目から見ても「異質」です。新しい映像フォーマットを見てしまうと、今見ているすっかり奇麗になった地デジですら、精彩を欠いたものに感じられるでしょう。私は48〜60fpsプログレッシブのフルモーションアニメを自己研究で試験していますが、今までの基準が覆るほどの「変わりよう」です。演出法はもとより、企画・発想まで改革が必要な技術の変異なのです。120fpsなんて‥‥。

でもねぇ。新しい映像フォーマットと東京オリンピック、そして国民の感情が、螺旋状にからみあって上昇気流を形成するかは‥‥なんとも微妙なところです。

今はさ‥‥皆、娯楽を持て余してるでしょう? これは前の東京の時とは、大きく違うよネ。

7年後の東京オリンピックによって、日本の社会がどれだけ活気づいているか。前の東京オリンピックは、敗戦国日本の国際社会復帰の象徴でしたが、今回は同じようにはならんでしょうね。WW2で日本は軍民合わせて200万人(文献によっては300万人とも)の死亡者数との事ですから、1964年東京でのオリンピックは今度のとは比べ物にならないほどの「意味」を持っていたと思います。
*ちなみにWW2での死亡者数ですが、ドイツは685万、アメリカは29万、ソビエトは2500万。全世界合計で6000万人です。J.ピムロット「The Viking Atlas Of World War II」より。学校で意図的に避けてられてきた近代史ではありますが、学校を卒業したら独学でも勉強せんとね。「1192年」の数が覚えられるんだったら、「おおよそ6000万人」の数も覚えんと。

今度の「東京」オリンピックは「失ったものを取り戻す」とか「無いものを手にいれたい」というキーワードは希薄です。ですから、国民がイケイケとばかりに新映像フォーマットを欲して、国内に一気に普及するとは考えにくいです。しかし、新しいテクノロジー「関連商品」売り出しの好機であるのも事実で、オリンピックはまさに4K8Kにピッタリのコンテンツです。Retinaディスプレイばりの高密度画素のテレビで、60p〜120pで映像が配信されれば、その違いは誰の目にも明らかでしょう。

「その先が見てみたい」という人間の好奇心は、昔も今も変わりませんよネ。私もその好奇心を持つひとりです。

しかし7年か。‥‥インフラ、間に合うんかな‥‥。

怪優

私はゲームをほとんどやらないのですが、唯一、軽めのフライトシミュレータだけは息抜きにやります。私の好きなのはF-14(つーか、F-18, F-14, A-6, C-2, ハリアーの5機種からしか選べない)で、アメ車みたいな乗り心地がたまりません。

で、ほんとのF-14が飛ぶところを見たいとなると、トップガンとかファイナルカウントダウンを観る事になるのですが、特にファイナルカウントダウンはハイビジ(色鮮やかなマーキング)の米海軍機が総出演で、今となっては貴重な映像がてんこ盛りです。映画そのものの話のスジは、まあ‥‥いいじゃないですか‥‥。

今、ファイナルカウントダウンの飛行シーンを見返すと、いやまあ、凄い迫力です。CGに見慣れた現在の目で見ると、実写・実録のホンモノの実機がどれだけ凄みがあるのか、思い知らされます。

重いF-14が空力を駆使して、エグいマニューバを見せるカットなんかは、「実写だとなんでこんなに迫力がでるのか」うまく分析できません。実写というよりはもう、「実録」の凄み、ですよネ。

映像を頭で想像する面白さもありますが、「頭で考えてるよりも、実物は不思議な動きをする」事に、しみじみ感じ入ります。頭で考えちゃうと、飛行機はみんな行儀よく、機首を進行方向に向けて飛ばしがちですが、こういうのって(YouTube)かっこいいですネ。

このファイナルカウントダウン、日本人の私から見ると、ちょっと悲しくなる部分もある映画なんですが、基本的には「娯楽」作品です。登場人物がどんな深刻な会話をしてても、あくまで娯楽。なので、F-14が「やったるでー!」と意気込む時にVG翼が後退する描写(低速な零戦を相手にする時にはむしろ‥‥)も、気分盛り上げ演出として気になりません。つーか、この作品に理屈で突っ込むのはヤボだよネ。「スペース・トリック戦争巨編」だもの。

なんちゅうか、ポップコーンのバターの匂いがするような映画。ただ、実機が登場するシーンだけは物騒です。軍用機はその出自ゆえ、どうしても「怪優」になっちゃうのですネ。

*しかしなんだ、この映画もご多分に漏れず、零戦(テキサンだけど)の風防の脇に、奇怪な日本語モドキの文字が書かれていますネ。

弱者こそProRes4444

Appleの「ProApps」に付属するQuickTimeコンポーネント「ProRes」は、特に品質面において優れています。

そのなかでもProRes4444は、MacのQuickTime Playerでリアルタイム再生可能なのに、非圧縮映像と見分けがつかないほどの高画質を誇る、「低容量・高画質」のコーデックです。

プロの現場は、実は意外に、機材の選択は「いろんな理由で」不自由です。なので、画質がイマイチと思っていても、ファイル形式やコーデックを変えないまま、制作を続けたりします。

私の作業グループでは、ProRes422(HQ)以上のコーデックを常用しています。中でも、私が編集まで請け負うインハウスの作品では、ProRes4444基盤の12bitワークフローで作業を完結しています。(2013年現在はまだ10bitベースが多いですよネ)

自己研究など自宅で作る映像に関しても、通常はProRes422(HQ)を使い、本気のマスター映像はProRes4444を使います。After Effectsの16bitレンダリングのクオリティが、ProRes4444でより一層具現化できるのです。

ぶっちゃけ、アニメ制作現場で常用されるAvidなどの圧縮コーデックより「目に見えてハッキリと」画質が高いのです。特に暗部などの表現力は、格段に違います。

DVDやブルーレイ、地デジの視点だと、「ビットレートだけ、そんなに高くても」と思いがちなんですが、現行メディアに「映像の質」を合わせたがために、後でツブしが利かなくなった作品は、山ほどあり‥‥ますよネ。マスターは高品質に作っておいて、DVDやブルーレイ向けにダウンコン(色んな部分で)すれば良いのですから。

ProResを使うのに、高いライセンス料は必要ありませんし、とりあえずは内蔵のSATAのHDDでも再生できます。安価に環境が構築できるのに、プロ現場と同等、場合によっては凌駕する品質が得られる「弱きを助けるコーデック」なのです。1997年生まれのHDCAM(144Mbps)なんて目じゃないですよ。

ProResコーデックの入手法は、「Compressor」を買うのが一番安い‥‥のでしょうかネ。「Compressor」はMacOSX用の映像変換ソフトですが、ソフトの中(パッケージ形式になってます)を開けるとProResコーデックが見つかります。それをAfter Effectsでも使えるようにリンクしておけば、QuickTime7やAfter EffectsのoutputModuleから出力できるようになります。

個人やアマチュアの人ほど、ProRes4444を使って欲しい‥‥ですネ。せっかく苦労して作り上げる自分の作品に、マシンの都合でトーンジャンプが出ちゃうのって、あまりにも悲し過ぎるじゃありませんか。

私がAEを使い続ける理由

Adobeが「CC」を発売開始して、以前では考えられないくらい安価に、フルスペックのAdobe製品を使用できるようになったのは、つい1年前くらいの事でした。

一方、Nukeなどのプロ現場で使われるソリューションも30万円代から買えるようになったり(1年前のキャンペーン価格)、Smokeが50万円代だったり、個人でも「買えなくもない」価格になってきました。

しかし、私は今のところ、「CC」で充分だと考えております。一番現実的なのはCCだ‥‥とも思っております。

ソフトウェアやハードウェアは、「一度買ったら、それで安泰」ではありません。維持費やメンテ費用を忘れてはならないのです。今度出るMac Proだって、数年後には低速なマシンになっているしょう。2012年のNukeを2020年に使い続けられるんでしょうか。‥‥つまり、買い換えやバージョンアップの費用を、「導入したら最後」、払い続けなければなりませんが、高スペックな初期導入費用の高価な環境ほど、相応に高額となり、少なくとも個人ではかなり維持がキツくなるでしょう。

なので、ビデオ編集の仕事を高回転で回すようなプロ向けスタジオでも無い限り、例え購入したとしても、最新スペックの状態を維持できないのが現状だと思います。(アドビが目をつけたのも、そのへんだよネ)

私はビデオ編集スタジオを主宰しているわけではないので、NukeやSmokeが数十万円へと価格改定して安価になっても、「今の価格ではナシだな」と思ってしまいます。販売元にしても、CC互角の1ライセンスあたり月5,000円換算なんて、ありえないでしょうし。

そして何よりも重要な事は、そのハリウッド系のプロ向けソリューションが、私のニーズに応えられるか?‥‥です。

例えば、「銃を構えている女性」の1枚絵を描いた線画オンリーの原稿(原画)があるとします。そこから「線画にセル画風に色を塗って、"駆け寄って銃を3発撃つ(で、残弾が0になる)" アニメーションを作る」という事がAfter Effectsでは可能です。こんな感じで。



上のムービーの制作時間は、全く素材がゼロ(注1)のとこからスタートして、1人足(=つまり私一人)で半日です。リギング(注2)が大雑把なんで、少々「止め絵」感がでちゃってますが、このくらいの事はAfter Effectsで普通に基本機能だけで(操作が簡単だとは言いませんが)可能です。Photoshopでの背景作成も込みで「セル画風の映像を、どれだけ短時間でできるか」を数年前にテストしたものです。
(注1)YouTube画質ではわからないかも知れませんが、線画は速描きしたのに加えて最近の定番の「ステッドラー」「こな雪」を使ってないので、線質がガサガサしてます。でも逆に、作風によっては「味」に使う事も可能でしょうネ。
(注2)2Dでもリグは重要で、リグ次第で制作時間やクオリティが大きく変わります。


Nukeとかって、線画のスキャン画像をポンと渡されて、完成映像まで作れるんだろうか。After Effectsは彩色はもちろん、いざとなれば背景だって描けますが、おそらくNukeとかはビジュアルエフェクトとか映像合成加工に特化してしまっていて、こんなキワモノ的活用法なんて考慮されてないんじゃないかな‥‥と思います。つーか、そんな事を想定しているソフトウェアって皆無だとは思いますが、少なくともAfter Effectsはその要求に応えてくれています。

私が今取り組んでいる映像の研究は、上のムービーのような「セル画時代のアニメの代用品」ではなく、ずっともっと先の意識、画具・画材としてのコンピュータの性能を活かしたアニメーション表現です。未来視点からすれば、上のムービーはまさに「極・初歩編」とも言えます。その「未来のアニメーション技術にとって初歩的な事」が、実質CCの何倍も維持費のかかるNukeに出来るのかな?

ハリウッド由来の高価な機材にココロを動かされるのは、もちろんあります。しかし、結局は総合的な判断で、After Effectsが一番「何でもできそうだ」というキモチに落ち着きます。

ただNukeとかも、「私がAfter Effectsに馴染んだ、同じぶんだけ」使い込めば、ひょっとしたら、キワモノ的操作ができるのかも知れません。‥‥しかし、それにはAdobe CCくらい安くならないと、私は手を出せないでしょう。ハリウッド系機材に数十万も使って高い維持費を払うのなら、他の創作活動に投資したほうが「自分のタメになる」とも考えてしまうのです。

職場のハリウッド系機材で「お仕事」はできると思います。しかし、創作活動の日々のうねりの中で愛用されるのは、Adobe CCのような安価なソフトウェアだと思っているのです。

私は、AdobeがCCソリューションを始めたがゆえに、若い人の中から、やがて天才が現れる‥‥とすら思っています。「身近にある」というのは、それほど重要な事だ‥‥と考えています。

いんふら

ようやく、新しいデータベース「atDBx」を基幹とした運用システムを動かしはじめました。余裕のある設計にしておいたので、どんな類いの作品でも情報記録が可能となりました。今は部分的な運用ではありますが、既に新設計の恩恵を感じております。

作品ごとの「完全に独立した用語辞書」を設定できる仕組みにしたので、キーワードや略語で困る事が皆無となりました。作業工程の全要素を記録する事が可能です。また、作業用のアプリケーションソフトウェア(ヘルパー的なもの)がデータベースにリンクしているので、情報を手で入力する必要はなく、作業者の作業進捗にシンクロして情報も自動記録されます。

データベースは、ファイルサーバとも連携しており、各作業のマネージメントの他、作業進捗上のアーカイブも情報管理できます。当然ですが、Webサーバも連携し、情報(画像も含む)をブラウザで確認できる仕組みになっています。

iPadなどの普及した今でも印刷物は重要なアイテムですが、データベース管轄の印刷用ファイルには、すべてバーコードが刻印してあり、キーボード入力に頼らずとも各種情報の検索が可能です。まあ、バーコードの本格運用はまだまだ先でしょうが、ISBNのごとく仕様としてバーコード表記が定められているので、使う使わないに限らず印刷物には刻印されるのです。バーコードの読み出しは数千円のバーコードリーダで簡単に読み出せます。

また、現在はまだアクティヴにはなっていませんが、各種コスト情報(時間・難易度・金額など)の記録も可能です。標準仕様として既に設定されております。

こうしたインフラ構築の取り組みは、作業を快適にするため‥‥と言ってしまえば簡単ですが、では「快適な作業環境」とは何かと考えれば、ストレスなく作業に没頭できる環境の事です。これは、作業者本人の快適性だけでなく、作品全体のコスト面でも重要な事なのです。例えば、作業の前段階でインフラが整ってないがために作業に入れず、本来の作業をストップして、トラブル収拾のために何時間も充てた‥‥となると、コスト損失は明らかです。

インフラの構築。‥‥まあ、気の遠くなるような事なんですけどネ。でも、チクチクと作り続けていれば、案外、積み上がっていくもの‥‥でもあるんですよ。

多分‥‥ですが、アニメ業界仕様のアウトソース(外製)の作業進捗マネージメントツールって、永久に現れないような気がします。何故かって、ソリューションを売る側が商売にならんでしょうからネ。対費用の問題で、売る側と買う側の折り合いがつく事は無いと思うのですヨ。制作運用マネージメントツール〜アニメ制作専用のITアウトソーシングなんていう「24時間対応の責任重大なもの」を、アニメ業界の「期待する安値」で売って展開できるわけがありません。仮に買う側が大決断して、初期導入時に大枚を叩いても、その後のメンテ・維持の費用捻出がツラくなると思います。

結局はインソースしか無いと思ってます。「制作運用システムも、自分たちの強力な武器である」と意識する事が肝要かと思います。バトルオブブリテンでイギリスを守ったのはスピットファイア単体だけじゃないのは、ちょっと戦史をかじっていれば周知の事実でしょう。

TSフォーマット

私が2003年当時、After Effectsでアニメ撮影をおこなう際のハードルとして立ちふさがっていたのが、「After Effectsへのタイムシートの適用」でした。当時はRetasを併用するのが常識でしたが、私はタイムシートのタイミング反映だけにRetasを導入する気には全くなれず、After Effectsだけで完結する方法を模索していたのです。

タイムシートをAfter Effectsに適用する事自体は、それほど難しい事ではありません。タイムリマップをシート通りに適用すれば良いだけの話です。

難しくはないけれど、めちゃくちゃ、面倒なのです。After Effectsでキーフレームを生成して、タイムリマップの値を書きこんでいく際の、UIは最悪です。

いくつかの案が浮かび上がりましたが、私としては、専用の何かを作るのではなく、タイムシートを扱う汎用的なフォーマットを策定して、そのフォーマットからAfter Effectsへ流し込む方法を考えてみました。

Excelとか特定の高価なソフトウェアに依存するのではなく、他者の何らかのソフトウェアに頼るのでもなく、テキストエディタなどの何か汎用ソフトウェアさえあれば、タイムシートをデータ化できて、After Effectsへ適用できる方法を、です。

つまり、ソリューション開発ではなく、基礎的なフォーマット〜タイムシート記述法からスタートしたわけです。基礎的なフォーマットを策定しておけば、後でいくらでも応用ができます。MacOS標準のTextEditでも、Numbersでも、Excelでも、HTMLのフォームでも、記述する際の媒体は問わず、作業上で使いやすいものを使えば良いのです。違う言い方をすれば、タイムシートエディタの開発にのめり込んじゃうと、長期戦になるだろう‥‥と感じ、あえて、エディタ開発は避け、タイムシートフォーマットとキーフレームデータの「ブリッジ」の開発のみに留めたのです。

例えばTIFFやTGA。TIFFのフォーマットを確立するカロリーに、さらにPhotoshopなどの画像エディタを開発するカロリーを追加したら、目もくらむようなハイカロリーになります。

エディタなんて、使いやすさを追求したら、「底なし」じゃん?

なので、エディタは他の何か、使いやすいものに依存し、自らはフォーマットの策定とブリッジルーチンの開発だけに集中する‥‥というプランを採ったのです。

そういった状況から生まれたのが、独自フォーマットの「TSフォーマット」です。2003年にイノセンスの制作が終了して、次の劇場作品の「HoLiC」からTSフォーマットは使用開始され、現在に至ります。

しかし今、私は、タイムシートそのものから離れ始めています。タイムシートがアニメーション表現の「アキレス腱」になっているのをしみじみ実感していますし、同時に、もはや旧来のタイムシート書式を必要としない、新しいアニメーション技法で映像を作るのが主となり始めているからです。

なので、実はTSフォーマットは、最近まで「もう放棄でいいや」と思っていたのです。しかし、新しいアニメーション〜一秒間が48〜120フレで構成される〜を制作する過程においても、まだまだ使い道はありそうだと考えるに至り、atDBxの策定と同時に、最後のブラッシュアップをしています。

旧来タイムシート互換という視点ではなく、タイミングの意図的・恣意的な操作手段としてとらえれば、「タイムリマップのタイムシート的操作」はまだ使う場面は多いと感じているのです。

TSフォーマットそのものには、実はFPSは存在しません。単にセル(表でいうところのcellです)が漠然とあるだけで、1秒あたりの分解能は、変換処理をおこなうブリッジルーチンが操作しています。なので、1秒間96だろうが120だろうが、TSフォーマットはそのまま使えるのです。

ただ‥‥2003年当時に作ったTSフォーマット解析のブリッジルーチンは、自分でも腹が立つほど、カオスです。手探り過ぎて、後からコードを読むと、回りくどくて呆れてしまいます。‥‥我ながら。

でもまあ、ここでキレイにしておけば、もうこの先、妙なバグで悩まされる事もないので、お掃除をしつつ、整頓して、ルーチンをリファインしようかと思っています。

ちなみに‥‥、TSフォーマットは、フォーマットというよりは記述法なので、厳密にはフォーマットとは呼べません。単なるTEXTファイルフォーマットです。その昔、Appleにクリエータ・タイプコードを申請して取得し、TSフォーマットファイルとして使おうと思っていましたが、「‥‥テキストファイルをテキストエディタで処理するのに、独自のタイプなんて必要ないじゃん」‥‥という事になり、今まで使われる事なく眠ったままです。エディタを自己開発すれば、クリエータコードくらいは使えると思うのですがね。でもまあ、まだ使う余地が無いとは限りませんので、温存しておきます。


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