ミキサーのススメ

映像制作をしていると、コンピュータをはじめ、DVD/BDプレーヤー、HDDレコーダー、iPhone、iPadなど、あれやこれやと機器が増え、都合、音声の出力も比例して増えていきます。

オーディオコンポが全盛だった昔は様々な機器をプリメインアンプに繋いでセレクタで切り替えて音を聴いていました。しかし現在は安価で手頃、高性能のミキサーが各社から発売されているので、今となってはブームが下火となって選択肢の限られたプリメインアンプよりも、ミキサーを買って機器を繋いでしまったほうが、結果的に安上がりで色々と融通が利きます。



しかし、ミキサーは何か「専門的な印象」があるのか、手軽に使う人はあまりいないようです。30年近くアニメ業界の色んなスタジオを見てきて、机にミキサーを置いて使っていたのは、ほんの数人の方々だけです。

もったいない。ミキサーって便利なのに。

昔は、ちょっとしたミキサーでも2〜3万円したので、軽い気持ちで買ってみる機会も無かったと思います。しかし、今はセール品とかだと5,000円以下、普通に買っても1万円くらいです。プリメインアンプを買うより手軽です。

1万円クラスのミキサーの使い方は、至極シンプル。機器を繋いで、各機器の音声レベルをツマミかフェーダーで調整して音を1つにまとめるだけ‥‥です。3〜4万くらいするミキサーだと、レコーディングに必要な多彩な機能(音声の道筋を色々と分岐させる‥‥とか)がついているので少々難しいですが、1万円のミキサーは「音をまとめて1つにする」のがメインなので、迷う事がありません。

例えば、以下のように機器を繋いで、1つのヘッドフォンと1ペアのスピーカーで音を聴く事ができます。もちろん、ヘッドフォンだけでも構いません。




聴きたい機器の音量を上げ、ヘッドフォンやスピーカーでモニター(音を聴く)します。音声レベルのまちまちな機器も、ミキサー側のゲイン(入力感度)で適宜無段階に調整できるので、あらかじめ音量の差を無くして一定に合わせておく事もできます。

さらにいまどきのミキサーは、USBオーディオインターフェイスを内蔵しているモデルも1万円くらいから買えるので、USBケーブルでMacやWindowsマシンを直にミキサーに繋ぐ事もできます。要はミキサーがUSBオーディオインターフェイス代わりになるわけです。



USB付きのミキサーをMacなどに繋ぐと、音を聴くだけでなく、コンピュータで録音する事も可能になります…が、まあ、録音する事はあまりないですよネ。MacOSXですと、「システム環境設定」の「サウンド」の入力・出力のリストにて、ミキサーを選択する事が可能になります。ベリンガー社のミキサーですと「USB Audio Codec」という名称でリストに現れます。

映像制作の作業場でもミキサーは重宝します。作業者それぞれがミキサーで音声をまとめておいて、メインチェックモニタのメインミキサーに送れば、自在に「出音(でおと)」を制御できるようになります。



作業者個々の映像をチェックする際、即座に映像と音声を切り替えて、監督・演出チェックができますし、音量を手元で如何様にでも調整できるのでとても便利です。ほどよくセッティング済みの「2ch」ステレオ音声がすぐに出せるだけでも、チェックは何かと円滑に進むようになります。

いちいち後ろに回ってプラグを差し替えたり、音量調節のできないセレクタで切り替えるのは、ピリピリしがちな映像チェック時には出来る限り避けたいものです。余計なストレスは排除し、スマートにチェックを進めたいですよネ。

「音は出る?」「繋いでないので出ません」‥‥なんていうやり取りで場が白けるのは、なんと言うか、わびしいですよネ。作業者がミキサーのフェーダーを上げれば、即座に音がモニタースピーカーから鳴るようにしておくと、チェック時だけでなく、オフライン映像のちょっとしたプレビューにも役立ちます。

私のオススメは、安くて有名な「ベリンガー」のミキサーです。選択肢が広く、様々なニーズに安価に応えてくれます。ネットで耳年増になった人とかは、音を聴きもせずに「安かろう悪かろう」なんてベリンガーをこき下ろしますが、プロのコントロールルームで聴くような場面でも無い限り、個人使用やアニメ会社の雑音の中で聴くレベルだったらベリンガーで十分です。

なんかさぁ‥‥、アニメ会社の音声モニタ事情って、往々にして劣悪ですよネ。テキトーなPCのオマケスピーカーで鳴らしてたり‥‥とか。音を実際に扱わないアニメ会社だって、音をモニタする事(主題歌のデモとか予告の音声とか)はいっぱいあるじゃんか。ベリンガーのMS16とQX1002USBで合計2万円もしないですけど、それでも、オマケスピーカーとかテレビ付属のシャカシャカした音よりは格段に良くなります。線撮にはべらぼうにお金を使うわりに、音声モニタ環境には一銭もかけないのよネェ‥‥。

まあ、ともかく、個人の環境は個人でレベルアップできますから、安価かつ良品質で使いやすい音声モニタ環境は、2014年の今はとても容易に揃える事ができるのです。

ちなみに、買う場合は「サウンドハウス」や「オフプライス楽器」など格安楽器店の通販でケーブルも同時に買うのがオススメです。特にケーブルは、アマゾンで購入するより楽器屋さんの通販での「まとめ買い」がお得ですヨ。アマゾンで1本ずつ買ってたら、出費が1万円くらい変わっちゃうかも‥‥ネ。

管理する側、される側

私はアニメーターとして稼ぐ日々から、やがてアニメ作品におけるコンピューターグラフィックスの作業も請け負うようになり、ビジュアルアエフェクトやら撮影監督やら、実写のCGパート、実写やアニメのグレーディングまで、作業の幅を広げるようになりました。

そうした色々な作業の中で、「管理される側」と「管理する側」の両方を体験してきたわけですが、私が双方の立場において共通して「避けたい」「やりたくない」と強く思う作業が、「同じ情報を何度も記述・入力する手間」です。

例えば「カット名」や「カットの尺」。

管理する側は、ほんの些細な気持ちで、「何度も何度も」同じ情報を、作業者に繰り返し記述させたりキー入力させます。これは作業者にとって「単純にうっとおしい」作業であり、ケアレスミスが発生する原因でもあります。

アニメーター的な立場で言えば、「カット150、尺3+0」という情報は、レイアウト用紙とタイムシートに書いたら、それ以上はもう書きたくないですよネ。仮に「こちら側で管理する為に、作業が上がったカットは、パソコンでカット名と尺と日付と作業者名を入力して」と管理者から言われたら、「タイムシートが言わば伝票でしょ? それじゃダメなの?」と思うはず。

管理者側からすれば、簡単で少ない手間のように思われる作業でも、「同じ事を何度も繰り返すのは」嫌なものです。さらに「コンピュータで管理する為だけに、やらされる」のだとしたら、反発は必至です。

「コンピュータを使いたいのは、管理者側の都合であり、作業者にとってのメリットは無い」んじゃあ‥‥、イヤになりますって。

管理者がコンピュータで作業情報を管理したい、かつ、作業者がデータ入力を自ら率先しておこなう状況を作り出すためには、双方がメリットを感じられる「上手いからくり」が必要なのです。

アニメの撮影作業を例にとります。私が以前、劇場作品などで用いていた「xtools」というシステムは、作業を始めるにあたり素材ファイルを収集する時に、「FHX」というソフトウェアを起動し「カット名と尺」を対話方式で入力します。そうすると、カット名を認識した「FHX」が必要な素材を色々な素材保管場所から収集して、作業の準備を整えます。

作業者にとっては、「カット名と尺」を入力する代償として、素材をいちいち手作業で収集する手間を省けます。また、After Effectsで作業開始する際に、カット名と尺を自動設定するので、「プロジェクトファイル名」「コンポジション設定」の手間が省け、さらに「フッテージの読み込み」「コンポジションへのレイヤー配置」など、作業のお膳立てをしなくて済みます。これは明らかなメリットです。最初に「カット名と尺」を入力すれば、あとは「xtools」のソフトウェア群がデータベースと連携して情報を引き継いでくれるのです。

管理者にとっては、「誰がいつ、どのカットをどのマシンで、どんな作業を開始したか」「カットの尺」などを、「作業者本人の入力」によって得られ、データベースに蓄積できます。作業者がおこなうのは、あくまで「カット名、尺、トランジション」の入力だけで、「誰がいつ、どのマシンで、どんな作業」に関しては、使っているコンピュータのマシン名や日付、ログインユーザ、ソフトウェアの種別から、自動で情報を得られます。管理者サイドは、情報入力する手間を省けるので、やはりメリットです。

作業管理システムって、管理者側の視点が強くなり過ぎて、「え‥‥。また同じ事をキーボードで打つのかよ‥‥」と作業者をウンザリさせるベクトルに進みやすいです。「管理するために、協力してくださいよ」と言われても、メリットが無いなら、作業者的には「しょうがないからやる」モチベーションに落ちてしまい、やがて「ミスの多い入力」へと繋がっていきます。

「管理する側、される側」の「双方のメリット」。‥‥管理側だけの都合良さだけでは、人は動かんのです。作業者側〜管理される側のメリットを組み込んで、はじめて、活きた管理システム・自動処理システム・作業補助ツールになると思っています。

私が4Kに絡めて、以前の「作画」をコンピュータベースへと移行させたいのは、新しい映像表現の土台として、「作業管理」及び「作業の正当性の実証」の為にコンピュータを上手く使える‥‥と考えているからでもあります。例えば、「作業内容の重いカットを、素早くアップした」場合に、ちゃんと双方の実益に繋がるようなシステム作りが必要だ‥‥と思うのです。

制作管理システムを設計する際、金・作業内容・時間を全て扱える「極めて統合的」な管理システムでないと、アニメーション制作現場には上手く馴染まないと思います。管理する要素だけに限定して、作業者のメリットを「オミソ」にした管理システムは、作業者にとって厄介なものでしかありません。

「そんな風呂敷を広げ過ぎな‥‥」と思うかも知れませんが、私は「風呂敷は、広げる必要がある時には、広げるべきだ」と考えます。風呂敷を結んで閉じたままじゃ、そもそも風呂敷の存在意義がないじゃん。

要は、最初っからバカデカい風呂敷を広げようとするから途方に暮れるのであって、まずは小さい風呂敷から広げようと考えているのです。

4K試験放送開始

新聞の1面で見たのですが、明日(2014.06.02)から4Kの試験放送が開始されるようです。2016年からは8Kの試験放送も予定されているらしい‥‥です。

ぶっちゃけ、放送するコンテンツはあるんかいな‥‥と不思議。まあ、NHKだから、機材を購入できない民放とは事情が違うのかな。

民放に関連する実写ベースの各社が、4Kの機材を買って、またすぐ次に8Kの機材を買わなければならないのは、かなりキツいとは思います。どうすれば4K8Kが「売り物」になるのか、「実際にあまり扱っていないので」手応えも曖昧。‥‥実は実写ベースのほうが「事態は深刻」なのかも知れませんネ。例えば、バラエティ番組を今と同じ作り方で8K120fpsで収録して、どれだけの対費用効果が生み出せるのかを考えると、思わず腕組みをして考え込んじゃいますもんネ。

実写は物理的に、4Kや8Kカメラがないと収録すらできないですが、アニメは工夫次第で汎用コンピュータを駆使して作る事ができます。それに、現時点でも大判のカット(大判の付けPANとかネ)で8K相当の画素数をこなしてたりしますから、8Kの大体の感じはアニメの撮影の人だったら想像できるんじゃないでしょうか。私もCMなどの「たがを外した」アニメの撮影では、10〜15Kくらいの大判をよく扱います(2〜3年前の時点で、4Kのアニメが今すぐにでも出来そうだと思えたのは、恐ろしい大判撮影に対応してきたから‥‥かも知れませんネ)。ただまあ、8Kが標準フレームになった時にアニメで怖いのは、やはりカメラワークです。横2フレのPANですら、16Kの幅ですからねぇ‥‥。

4K60pについては、アニメ業界を含めた映像業界・放送業界は、対応にモタモタするとは思います。でも、私は業界の状況がどうであれ、手のつけられるところから、どんどん駒を進めていく所存です。「地ならしが終わった後に」という考え方も然り‥‥ですが、一方で「早いもん勝ち」「取ったもん勝ち」という事実も存在するのです。オセロゲームでの「布石」のごとく、事態が進んでしまってからでは、どうにも覆せない事もあるのですから。

雑感〜新しいやりかた、あれこれ

私の計画実行中の新しいアニメーション制作方式は、枚数制限がありません。それどころか、折角なら動かしたほうが「お得」です。それは作品内容的にも、コスト全般で見ても、です。

そして、48fps(=1秒間48コマ)はおろか、60でも、96でも、120でも、240でも、フレートレートが上がるほど対費用効果が向上し、旧来方式とのアドバンテージを示せるようになります。非現実的であり得ない数字ですが、秒間2400コマでも(出力は大変ですが)大丈夫です。

今のアニメ制作方式ですと、フレームレートに合わせて作画枚数を追随させようものなら、まさに「死への片道切符」、フレームレートが上がれば上がるほど、辛くなっていきます。しかし、新しい方式は、全く逆の特性を持つのです。

弱点もありまして、「シーンがいっぱいあると、効率が落ちる」のがネックです。‥‥ですので、ある種、舞台演出のようなスタンスが、今のところは効率が良いのです。今後のノウハウの蓄積でどう解決してくか‥‥ですネ。

2Dをコンピュータで動かす方式では、いわゆる上下左右&拡大縮小による「紙芝居」的なアニメーションや、ボーン(擬似的な骨組み)や三角メッシュを組み込んで動かす方式が一般的ですが、私の技術開発内容はあらゆる方式を統括して活用し、平面移動に限定されない「いきいきとした」アニメーション技術が主眼です。「振り向きができないキャラ」なんて、どうにもならないですからネ。このあたりの技法〜手で描いた絵をコンピュータで自由に動かす〜の確立に、私も多くの時間を使ってきたのです。

3Dによる「セル画風のアニメ」は充分に将来性アリですが、2Dでも3Dでも、結局は、「キャラの内面を感じさせる所作」が表現できるか否か、だと考えます。2D〜いわゆる手でキャラを絵に描く方式だと、どうしても描いた本人の内面が出てしまいますが、逆にそれを上手く利用する事ができるので、結果的に「手描きだと内面を表現しやすい」のです。まあ、出ちゃいけないもんまで出たりするのが「絵」なので、楽しかったりキビしかったり‥‥ですけど。

作業環境に関しては、コンピュータなんてどっちにしろ、これから先の未来、1人の絵描きに1台は必要になるのですから、自前で持っているのが前提の、必須のアイテムになります。ミュージシャンが楽器(持って構えるやつだけじゃなくて、バックの機材もね)を揃えるようなものですし、イラストや油彩、立体造形や焼物だって道具を揃えたら、コンピュータに負けないコストになります。旧来アニメの作画は「タップ一本渡り鳥」なんて言われてたくらい「超弩級の作業環境コストの安い」職業でしたから、それを基準に考えるのなら、周りの全てはNGになってしまいます。
*今でも、フリーアニメーターが自宅作業する場合は、机とライトボックスが必要になりますが、画具はもの凄く廉価に調達できますよネ。私が高かったと記憶する画具は円定規くらい(1種類1,500円くらいだったかな?)ですが、円定規は今や100円ショップでも売ってますし。また、電動消しゴムは必須ではないですしネ。

軽自動車が買えるくらいのバカ高いコンピュータなんて、個人はおろか企業だって購入に足踏みするわけですから、私はMac miniクラスのコンシューマ向けコンピュータにAdobe CCをプラスして揃うくらいの個人作業環境を想定しています。そして、その環境で作業可能な技法の開発をおこなっています。高いソフトウェアやプラグインを頻発する作り方なんて、あっという間に息切れしてしまいますからネ。

ただ、コンピュータ関連は、とにかく熱を出します。たまに作画スタッフオンリーの作業エリアに行くと、その涼しさと静かさに驚きます。いまどきは、照明をLEDにできるので、昔に比べて格段に発熱を抑えられます。しかし、コンピュータの作業環境は、CPU、HDD、液晶モニタなど、メインの機材が暑苦しいほどに熱を出すので、各所に熱がこもりやすく、空気循環のためにファンもブンブン回る‥‥で、「絵を描くには、うっとおしいくらい、うるさく」なる場合もあります。液晶ペンタブレットの熱って、私は堪え難いものがあるんですけどネ。

データを守りたいならば、HDDなどのデータ記憶装置は快適温度の環境に置く事が必須です。私は昔、「人がいない間は、高熱でもいいや」と36度くらいの部屋(自宅です)にサーバをおいていたら、HDDが次々と昇天しました(HDD自体の温度はどんな事になっていたのやら‥‥)。無知とは怖いものよのう。‥‥それに、コンピュータの熱にうなされて、人間だってオーバーヒートしますし。
*昔の自宅での、冬場の暖房は、部屋の一角の「サーバ溜まり」からサーキュレータで空気を拡散させて暖房代わりにしていたので、エアコンの出番はありませんでした。「今年一番の冷え込み」の日ですら、300ワットのハロゲンヒーターを足下にちょっと使うだけでした。

なので私は、「熱対策」がこれから先の作業場の「最大の難敵」だと考えています。コンピュータの熱を冷却する為に、膨大な電気料金になりかねないので、部屋に「単に机を並べる」のではなく、時には空気の流れを誘導する境界板なども設置して、エアフローを事前に慎重に計画した配置にしなければなりません。もっと言えば、物件の選定時点で何よりも「電力」「熱対策」「エアフロー」を見極めておく必要があります。‥‥なんか、SImCityの「公害対策」みたいな話ですけど。‥‥私は昔住んでた自宅がエアフロー的に最悪で、電気料金6万円を超えた経験がありますので、機材費よりも空調のコストのほうが深刻です。夏場の電気代は地獄ッス。

とはいえ、技法上や環境上のこうした様々な事は、私が思うところの、「作りたい作品を作るため」なのです。‥‥アニメ制作の一般論ではないので、早合点しないように‥‥。

私としては、工場生産型のスタイルにアニメーション作りが染まっている状況から抜け出し、別のスタイルで作ってみようと考えています。放映終了して1週間くらいで忘れ去られるような「その場の退屈しのぎ」作品ではない、後になっても思い起こされるような味わいの消えない作品を、これからの半生で重点的に作りたくなったのです。

工場型で作るスタイルを否定するつもりもないですし、工場型で作りたい人はずっと続ければ良いです。ただ、「アニメとは工場生産型で作るものだ」という定義から脱却したいのです。市場に流通する商品は、工場からの出荷品でなくても「商品として成立していれば」問題無いですよネ。

そういえば、新しい方式の研究の最中、現アニメ業界方式でも4Kの48fpsや60fpsに対応できるアイデアを、ふと考えつきました。新しい方式の副産物とも言えますが、私としては本命の主題が山ほどありますので、そのアイデアを実践する時間もありません。いずれ皆が48fpsと対面すれば気づく事かと思いますので、ここでは言及を控えておきます。‥‥もう私は、現アニメ業界に進んでアイデア出しをする人間ではないでしょうしネ。
 

紙と鉛筆を使い続けるために

私の計画している新しいアニメーション制作方式では、紙と鉛筆を「絵のインプッドメソッド」とする作品の場合、もしくは「レイアウト」作業工程などで紙と鉛筆を使いたい場合は、スキャンは作画スタッフ本人がおこないます。どこかの誰かではなく、自分が、です。

うん…。この時点で多くの人々が「背を向ける」と思っています。「なんで、俺がスキャンしなきゃならねんだよ」と思う人が山のようにでる予感。

でも私は、この方針を変えるつもりはありません。

これはワークフローが「データの受け渡しを持って、作業のIN-OUTのフラグが立つ」ように設計しているから‥‥の他に、「ものつくりの重要な側面」〜つまり、「自分の線(絵)のフィニッシュは、自分自身でやるのが、一番意図通りになる」から‥‥と実感するからです。

私の考える方式は「原画」「動画」ではなく、「レイアウトの原稿」「動きの原稿」「線画の原稿」です。「どこかの誰かの動画マンが奇麗に清書してくれる」なんていう意識自体が存在せず、「描いたままがそのまま映像に出る」ので、とても「他人任せ」にはできないのです。そうですね‥‥、今で例えると、「版権イラスト」の感じ(動画工程を通過せず、原画マンの線がそのまま出る)に近いです。

「うわー、何だか、めんどくせ」‥‥と思うでしょう。私もこうした考えに辿り着くまでに、「原画マン気質」が邪魔をして、中々決断できませんでしたからネ。

「でも、そんなに気を使う描き方だと、数千枚〜1万枚規模の作画なんて無理じゃん」‥‥とも思うでしょうし、私もそう思います。過去に何度も書いてますが、「描き送りで枚数を大量描画する方法」ではないので、「線画ニュアンス重視」の方式を選択できるのです。

一方で、「オールベクター方式」のも同時進行していまして、そっちのほうは「アタリ」(=工程内では別の正式名称のジョブとして制定されています)にしか紙と鉛筆を使いませんが、やっぱり描いた本人がスキャンを担当します。ベクターでの描画は繊細を極めるので、必ずしも元絵を描いた本人がベクターを操作しなくても、専門の作業工程を設けたフローになっています。

「もしスキャンを自分で引き受けるのなら、今の原画料金では引き受けたくない」とも思うでしょう。‥‥まず何より、考え方をゼロに戻しましょう。そもそも「原画作業」じゃないんです。ですから、「原画作業依頼」が発生する事があり得ませんし、今の「作画料金体系」自体を採用しません。「原画」でもなければ「動画」でもない、さらには難易度を無視した「均一」料金でもありません。

あくまで、新工程における新しい料金です。‥‥私は、今まで「旧来にはなかった類いの作業」を何度も立ち上げてきましたし、今でもその最中だったりするので、「周囲の相場がわからないと、価格を決められない」なんていう事はないです。ちゃんと、計算の仕方があります。

新しいアニメーション制作方式は、「今の色々」から抜け出るきっかけでもあるのです。

私はメカやエフェクト作画を多く担当してきましたし、内容の大変なカットを振られる事も多かったのですが、同じような境遇の人と思いは同じ、当然の事ですが、「なんで止め口パクと、自分のドンパチカットが、同じ単価なんだよ」とやりきれない思いを抱えて、業界を生きてきました。そんな私が、新しい方式を考案する際に、「料金はみな均一」なんていう構造を考えるはずもないですし、「どのようにして料金に段階を設けるか」をまさに「当初から開発に盛り込んで」いるのです。

作画する本人がスキャンも担当し、データとしてフィニッシュして、次の工程にデータ転送して「作業完了」。アニメ業界じゃ「ありえない」ケースかも知れませんが、他の業種の絵描きさんはどうですか? 自分の絵が「デジタルベースの作品として提供される方式」を持つのなら、ごく普通に「画像データのフィニッシュ」も自分でやるんじゃないですか?

「デジタル」が苦手なスタッフへの考慮は重々理解します。また、コンピュータ機材の調達コストも大きな問題です。料金体系を変えられない現状も承知しています。‥‥ですから、「今までとは全く別の仕切りの、新しいアニメーション制作方式」なのです。

今の業界方式を変えようとは考えていません。業界のシステムを一部でも使おうなどとは、全く考えておりません。ただし、業界に在籍する様々な才能を持つ人々の参入は歓迎します。人とシステムは別です。

ちなみに‥‥、業界では「そんな前例はない」かも知れませんが、いまどきの学生さんは「ごく普通に、紙もコンピュータも」やってるんですよ。アニメって、今で言えば、まずは「自分の絵をモニタに映し出す事」が基本じゃないすか。‥‥なので、描いた本人がスキャンする事は、特殊でも何でもないです。

アニメ業界は、「竜宮城」になり始めているのかも知れませんネ。実写とかをやっても、アニメ業界の「閉ざされ」感を感じる事があります。‥‥まあ、実写は実写で、別の閉塞感はあるのだろうとは思いますが。。。

紙と鉛筆は、本当にイイです。その使いやさに「惚れ惚れ」します。でも、それが「紙と鉛筆以外は使いたくない」という発想には、私は繋がらないですし、繋げません。コンピュータも相当に使えるヤツですから。

総意として

大多数の人々が考えるところの、アニメーション制作における新しい映像フォーマットへのスタンスを知っておきたくて、ここ最近、ツイッター等を見ていましたが、やはり、「今のままで、できるだけ変えないで、この先もいきたい」というのが総意‥‥みたいですネ。

ゼロからコンピュータで描く方式も「セル画アニメ」のイメージを踏襲したものが多いようですし、新しいフォーマットの到来に合わせて「アニメーションを再発明しよう」という機運は、少なくともネット上の言葉からはほとんど感じられませんでした。

あくまで、過去フィルム時代の技法のトレース、その技法の効率化と洗練‥‥の方向性で考えているのが読み取れました。昔馴染みの用語が頻出するので、「思考の足場」が旧来から離れていないのが伝わってくるのです。

もちろん、過去の優れた表現を必ずしも捨てる必要はなく、伝統を継承する一派はむしろ存在すべきです。‥‥が、一方で、「新しい考え方」を指向する勢力を見かけなかったのは、シンプルに「何故だろう?」と不思議に思いました。

結局、作品づくりを昔のままで変えたくない‥‥ならば、ではなぜ、「作り方を変える話題に、そもそも発展するんだろう?」‥‥という単純な疑問。

皆、時代の流れに押されて、フォーマット対応に追われているだけで、実は新しいフォーマットでやりたい事なんて、もともと持っていない‥‥というよりは、実はいつも「新しいフォーマットは迷惑でしかない」んじゃないか‥‥というのが、数ヶ月間ネットの論調を見ていての印象でした。

そうした思いがツイートの裏に見え隠れします。

であるならば、「変に4Kに手を出すくらいなら、アップコンバートの技術に金を投資したほうが良いんじゃないか?」とも思えます。実際、アップコン技術での4K対応なら、A4相当の作画サイズ、24コマのシートで2Kで作り続けられるので、「制作方式を変更する負担」が一番少ないですよネ。作画陣が今まで通りなのはもとより、コンピュータを使う陣営も「マシンの買い換えをしなくて済み」ますし、作品単体の予算も現状を維持できます。

もちろん、今後登場する周囲の「生粋の4K」に比べれば、明らかな品質の差は出ますが、「アニメの型とはこういうものです」と言い切るのも、手ではありますネ。よくよく考えてみれば、90年代のテレビアニメだって、剛胆なまでに粘りに粘って、16mmで撮り続けてたんですからネ。(それを今、DVDやブルーレイで見てたりしますしネ)
注)*最後のほうのフィルムテレビアニメは、パッケージ販売を含みに入れて、35mmで撮っていたものもあるようです。

* *

私は「絵を描く行為〜絵を動かす行為は、全く色褪せない」と考えています。地球がある日ドカンと破裂して消滅すれば話は別ですが。

もし「古くなる要素」があるとすれば、絵を描いたり、話を作ったりする事が古くなるんじゃなくて、あくまで「その時々の、ものつくりの型」が時代からズレていくのだと感じます。

現代人の我々は「昔の人たちの、技法における時代性」を、達観したかのように云々言いますが、「リアルタイムで進行する、自分らの時代性」に関しては甘い評価を下しがちです。自分の目では自分の顔が見えないように、自分らの時代性に関しては盲目ですらある‥‥かも知れません。

流行に怯えながら生きる事はないと思いますが、一方で、自分らの「型」については辛口な態度でつきあうべき‥‥とも思うのです。

自分の時代性と辛口につきあうのは、やり方そのものは簡単で「自分の姿を写真で撮っておいて、今と見比べる」、つまり「数年のスパンで振り返って総括する」事です。‥‥が、「やるは簡単」でも「受け入れるのは難しい」‥‥ようですネ。

トランジションとDB

映像制作の作業内容を知っていれば、データベースの記述はとてもシンプルにまとめられます。

例えば、トランジションだと、以下のように。
 
BLi=0+12
FI=1+0
TIME=8+0
OLo=2+0

これは、私の規定した情報記述の一例ですが、意味は、
 
「カット頭黒コマ12コマ、フェードイン1秒、尺8+0、カット尻OL2秒」

‥‥です。ムービーのデュレーションは自動計算で「9+0」になります。





ただし、編集時に黒コマを足すので、作画も撮影も黒コマは取り扱わない運用方法であれば、「BLi=0+12」が差し引かれます。編集さんとの取り決めで多少変動はありますが、その取り決めもデータベースに記録して、反映する事ができます。

表記の順番が以下のような場合でも、

OLo=2+0
FI=1+0
TIME=8+0
BLi=0+12

結果〜並び順は変わりません。決して、
 
「カット尻OL2秒、フェードイン1秒、尺8+0、カット頭黒コマ12コマ、」

‥‥とはならず、ちゃんと、
 
「カット頭黒コマ12コマ、フェードイン1秒、尺8+0、カット尻OL2秒」

‥‥になります。

尺の表記位置はいいとしても、フェードインの後に黒コマが入る事はないからです。かならず黒コマの後にフェードインが来ます。

なぜ、そんな事が言い切れるかと言うと、トランジションの組み合わせや順番は、プライオリティをいちいち明示しなくても、暗黙のうちに決まっているからです。出来上がった映像を想像してみれば、「順番や組み合わせの決まり」は解りますよネ。

アニメ制作における作業経験が、データベースの策定事項に有効に合理的に反映されなくてはなりません。また、データベースを活用するクライアントソフトウェアのプログラム内容も、アニメ制作の作業経験を十分にフィードバックしている必要があります。


‥‥なんですけど‥‥

業界の基礎的な作業規約が、場当たり的な形崩れを繰り返しているのなら、データベース策定なんて愚の骨頂ですよネ。

泥の上に屋城を建てようとする「滑稽さ」に、もうずいぶん前に、改めて気づいたんですヨ。‥‥なので、データベースやパイプラインツールは、新しいしっかりとした土台の上に作る方針へとシフトしたのです。

とはいえ、形崩れにも限界があります。4Kなどの外圧も加わり、液状化するまで形崩れしきった際に、どのように業界の人々が動くか‥‥で、日本の旧来のアニメ技術の存続が左右されると思っています。ですから、半端に形崩れを防ぐよりは、逆に「なすがまま」にしておいたほうが、後で「作り直しがしやすい」のかも‥‥と思うようになりました。日本のアニメを伝統芸能化するのなら、「昔のやり方へデジタルを用いて戻る」のも、意外にありえるアイデアだ‥‥とも考えるのですが、とにもかくにも、一度、要素を全部バラして組み直す必要があるのかも知れません。

* *

型が崩れてまとまりを失いかけた状況って、「流される人と流されない人を選り分ける」良い効果も併せ持つのかも知れません。「周りがそうだから、自分もそうしよう」という人と、「何か変だ」と状況に不信を抱く人とを、分離する効果とでもいいましょうか。
*流される類いの人だって、組織には不可欠ですが、それは組織・システムが一定以上、完成し成熟した状態での話です。しかし、完熟を過ぎた頃から、腐敗を加速させるのかも知れません。

容器の中で物質を分離するには、激しくではなく、小さい幅で小刻みに、容器が揺れている必要があります。今の業界はまさに、体制に大打撃を与える事なく、小刻みに震えている状態ですネ。

同じ危機感をもった人々は、示し合わせなくても、自然と分離され、やがて合流していきますから、特に現時点では、広く呼びかけようとは思っていません。危機感ゆえに進言する類いの人は全体から見ればマイノリティでしょうから、集団からあぶりだされて、やがて同じ境遇の同胞と巡り会う事になるでしょう。

私はその時に、新映像フォーマット時代に威力を発揮し、共に戦える「武器」をいくつも用意しておきたい……と考えているのです。皮肉な事に、その「武器」の開発においては、形崩れをおこした旧来の現場から学び得る事も多いのです。

Gbpsだよ

人とは怖いもんで、4Kの解像度や48fpsの動きを見慣れると、それが「デフォルト」状態になってしまいます。HD映像に見慣れると、SD映像(今だとDVDで生き残っていますネ)が低画質に感じられるのと、構造的には同じです。

とはいえ、機材や世のインフラは、まだまだ4K48fps〜60fpsを余裕で扱える状態にはありません。ふと映像クリップのスペックを確認すると、旧来の「線撮」にあたる線画状態のオフラインムービーでも、4K48fpsでProRes422だと1.5ギガbpsまでデータ量が膨れ上がっており、ひと昔前のマシンでは到底扱える内容ではありません。
*まあ、オフライン用途だったら、ProResでもProxyとかを使えば良いんですけどネ。

ちなみに、DVDは0.009ギガbps、地デジは0.015ギガbps、Blu-rayで0.045ギガbpsくらい、現場でよく使われるProResやAvidなどの圧縮したHDコーデックでも0.1〜0.3ギガbpsですから、1.5Gbpsがどんだけ高スペックかは数字だけでもお分かりと思います。

1.5ギガ。圧縮しても、1.5Gbps。今のHDDの「実質転送速度」だと簡単にフレーム落ちしそうな秒間データ量スね。

環境をベンチソフトで計測してみましたが、Thunderbolt2で2台のSATAのHDDをソフトウェアRAIDでストライプした環境で、300〜320メガバイト/sec(MB/s)、つまり2.4〜2.6ギガビット/sec(Gbps)でした。この辺に詳しい人なら、「Thunderbolt2(=20Gbps)でその程度?」と驚かれるかも知れませんが、作業の性質上、速度はそこそこに抑えるかわりに、保守性と耐障害性を確保した設計なので、まあこの数字でも「良し良し」です。機材のチョイスとセッティング次第では、2ギガ越えの転送速度を個人レベルでも普通に確保できる事はわかりました。もうちょっとお金を足して、構成を「速度重視」にふれば、もっと速度は出せると思います。

一方、買ったまんまの普通のiMac(HDDを内蔵)とかでは(〜おそらく似たスペックのWin互換機も)、1.2ギガbpsくらいしか速度が出なかったので、メモリをキャッシュ用途(ファイルのデータを高速なメモリに一時保存する)で使い果たした後は、転送落ち〜コマ落ちが頻発する事でしょう。

SSDにすれば、すんごい速度が上がりますが、3〜6TBクラスでバックアップ付きの環境をSSDで実現するのは‥‥まだ絶望的なくらいコスト的にキツいっすよネ。運用方針をキッチリ規定して、「ラッシュ再生」用途に限定すれば、0.25〜0.5TBのプチ容量でも運用の機運は高まると思います。


*こんな速度が、コンシューマモデルでも出せるのは、いつになるのか。でも、SSD&Thunderbolt2なら、小容量(128GBとか)であれば、今すぐに、数万円で実現可能です。PVくらいなら収録できますネ。

とにかく、今の「高速」な環境は、4K48fps〜60fpsの「未来の映像フォーマット」視野では、「凡速」どころか「低速」にすらなります。‥‥‥‥はあ‥‥。

やっぱ、キツい。かなりキツい。

でも、「キツい」事は、「できない」事とイコールではありません。色々とやってみて、むしろ、「できるじゃん」という感触のほうが、実感としては強いです。「簡単とは一切言わない」ですけど。

18年前だって、Quadra650やPowerMac8500、Gatewayの166MHz(‥‥だったと思う)は決してスペック的に十分とは言えないものの、工夫と知恵で乗り越えてきたんですから、今だって乗り越えられるはず‥‥と自分を奮い立たせる今日この頃です。
 

怖がられて頂く

ねこまたやさんの「尺の計算について」アンケートは、本来なら全ての制作関係者が「正解して一致」すべきものです。タイムシートやカット袋の表記も、「業界内で標準化されたワークフロー」ならば統一されていてしかるべきです。しかし、もうずいぶん前から、型が崩れてグダグダになっております。これもねこまたやさんのツイートにある通りですし、私もこの10年以上、幾度となく目にしてきましたし、降り掛かった火の粉は容赦なく叩き落としてきました。

ちなみに私は、トランジションを含む為に尺表記とクリップデュレーション(継続時間)が異なる場合は、併記しています。これは私がアニメーター駆け出しの頃に作業場の人々から教わった当時のままで、今でも継承しています。例えば、3秒0コマのカットで、前のカットとのOLが1秒の場合は「3+0(3+12)」と明記します。今はこの併記が解らない人も増えている雰囲気を感じるので、「秒:3+0/クリップ:3+12」などのように「尺と実際のクリップのデュレーションが異なる」事を解りやすく書きます。

私が撮影監督の際、「のりしろを含むため、尺とデュレーションが違うのに、併記されていない」表記を見かけた場合は、全て修正して書き直しますし(カット袋の場合は油性の太いペンで)、表記だけでなく内容そのものへの修正が必要な場合は担当作業者に戻します。制作スタッフの中には「波風を立てたくない」という理由で戻すのをいやがる人(=「撮影さんで何とかして」)もいるのですが、実際問題として撮影できない素材では作業が前に進まないので、アニメーターか演出に戻すのです。

例えば、以下は「担当者に戻す」事例です。(タイムシート表記の再現図)


知っている人なら「ハァ?」とあきれてしまう表記‥‥ですネ。

Bセルは空(カラ)だから、まあいい。Cセルもリピートだから、足りない部分は埋められる。問題はAセルです。

オーバーラップの「のりしろ」に絵が用意されていないので、根本的に撮影自体ができません。まさか最初の絵を止める?‥‥そうすると、映像中のオーバーラップ部分で「絵が止まっているのがバレる」のですヨ。

オーバーラップののりしろ分を含めて尺を合計して、「尺が収まりません!」なんてアホ過ぎるし、編集時に「のりしろがないので、クロスディゾルブできないよ」なんていうのも、マヌケすぎる。

つまり、「前後のカットと絵が混ざるタイプのトランジション」における、尺とデュレーションの考え方は、こういう事です。




* *

日頃から感じるんですが、現アニメ業界の撮影監督の人って、「やさしくて、腰の低い人」が多いですよネ。そして、制作陣も「めんどくさくなくて、何でも言う事を聞いてくれて、波風も立てないで、融通を利かしてくれる撮影監督が良い」と思っているんじゃないすか?

で、その結果が、今の現場の状況です。シートの書き方はおろか、尺の記述も計算もできないスタッフが相当数紛れ込んでしまった現場へと徐々に変貌していったのです。

旧来のアニメ制作形式や技法を踏襲しているわりには、規定された事柄を何となくルーズに変えていった、2000年以降の「デジタルアニメ」。そして、撮影セクションが「素材のうまくいってない部分」を吸収して整える‥‥という状況。

この「うまくいってない部分を吸収」する状況は、撮影スタッフが責任感の固まりだから‥‥というよりは、撮影という作業工程が「素材を組み合わせて1つの映像にまとめる」作業内容ゆえ、なし崩し的に「尻拭いを背負わされた」から‥‥のほうが、的を得ているでしょう。「後の行程が上手くやってくれるだろ」みたいな態度をとれない作業工程ゆえに、「吸収せざる得ない状況に追い込まれた」のです。

吸収せざる得ない‥‥という状況に、私は反発してきました。‥‥大人しく言う事を聞かなくて、ごめんなさい。

‥‥でも、ですよ。

撮影監督はもっと周囲から「怖がられる」存在でも良いんじゃないですか? 「変な素材を渡したら、ドヤされる」と周りから思われておいたほうが、結局は作業現場全体の「ためになる」んじゃないですか?

嫌われたくないのは、解るんですがネ。でも、多少は怖がられてみましょうよ。じゃないと、どんどん、作業の型が「やさしさに溶かされて」崩れていきますヨ。

フィルム時代は、怖い撮影監督さんが多く居たようです。私はその当時、作画スタッフだったので、撮影監督さんと直に話す事は稀でしたが、演出さんとの雑談で「怖かった話」を多く聞きました。‥‥なので、「規定通りの書き方」を実践せねば‥‥と、気を引き締めたものです。

* *

ちなみに、私はデータベース上では、「カットの時間」を「TIME」、「クリップの継続時間」を「DURATION」というプロパティで記録しています。また、トランジション情報は代表的な表現については「FI」「FO」「WI」「WO」「OLi」「OLo」「BLi」「BLo」「WHi」「WHo」(大文字小文字は実際には無視されます)などの略語で扱い、それぞれのトランジションの尺を記録しています。出力担当者がサーバへアップする映像素材は、これらデータベース上の情報と照合され、尺間違いなどが事前にチェックされる仕組みです。

After Effectsのヘルパーツールでは、トランジション情報が「オートビルド」(自動によるコンポジション生成)時にプロジェクトに埋め込まれるので、仮に「OLi=1+0」だったら、カットボールドの表記はコンポジションが3+20でも、「3+0/3+12」と並列表記され、コメント欄に「カット頭OL(1+0)」と自動表記されます。(8コマはボールド分なので、どんな場合でも差し引かれます)

まあ、あくまで私が運用するワークグループでの策定内容なので、「古今東西、尺はTIME、クリップの長さはDURATIONと呼ぶんだ」‥‥なんていう万物の法ではありませんヨ。あくまで、便宜上、そうやって「私は」管理している‥‥という事です。

尺の表記って、ものすごく基本的な作法ですが、そのあたりが揺らいでいる今のアニメの現場は、まさに「現場の状況を口に出さずとも言い表している」のかも知れませんネ。

しかし‥‥、絵コンテのTIMEの欄に「トランジションののりしろを含めた、クリップのデュレーションを書き込む」なんて、形崩れにもほどがある。おそらく、経験の浅い「理由の知らない人」がやり始めたんだろうし、周囲の誰も注意しなかったんだろうな。‥‥幸い、私はそのような絵コンテには、まだ遭遇していないのですが、遭遇したら「表記を修正してください」と要請し、それが受け入れられないようなら作業を降りると思います。「融通の利かない人だなあ」と敬遠される由縁かも知れませんがネ。‥‥でもまあ、自らゲロしなければ、絵コンテに表記された尺が「のりしろ含み」か否かなんて他者にはわからないので、もしかしたら、既に「蔓延」してるのかな‥‥。
 

HDDケースを買い替え

USB3.0のHDDはよく「落ちる」。

恐らく、Macで特に不安定なのだと思いますが、突如HDDがデスクトップからアンマウントされる症状を、私はもう2年近く誤摩化しながら運用しております。しかし、自宅レベルとはいえ、大切なアーカイブを保存してあるサーバのHDDの「アンマウント癖」はもう誤摩化しきれないと観念し、新たに「安定動作で(わたし的な範疇で)実績の高い製品」へと買い替えました。

こやつ、です。


Logitec HDDケース 3.5インチ RAID (HDD4台用) USB3.0 + eSATA接続 ガチャベイ LHR-4BRHEFU3

4発ケースとしては、お高めの価格設定の18,000円台ですが、USB2.0/3.0, FireWire400/800, eSATAと、Thunderbolt以外の接続形式全部入りです。以前から、公私ともにこれをUSB3.0接続で3台使っていますが、少なくとも私の使用経験ではアンマウント癖は一切なく、1年365日24時間、動きっぱなしで健常動作しております。

USB3.0でアカン場合は、FireWireで‥‥と思って機種選定したのに、FireWireの出番は一切なく、USB3.0で安定動作しているので、ちょっとだけ悔しいス。でも、FireWireは経験上、素晴らしく安定しているわけでもないので、USBで安定しているのなら、それで良しです。

今回は、同型のバリエーション、USB&eSATAオンリーのちょっと廉価な「LHR-4BNHEU3」を買って試してみます。私はケース側のRAIDを使わず、システム側のソフトウェア上でRAID0を複数組みTimeMachineと組み合わせる「RAID0 + TimeMachine」運用(RAID10にちょっと似た感じになります)なので、RAID機能を持たない安価なEU3で十分なのです。これで数ヶ月運用して安定動作が確認できれば、ようやく「ひと安心」できます。
*RAID0を使うという事は、「いつかHDDがブッ飛ぶ」のを予期しているわけです。その日が来るのは、できるだけ作業のピーク時でない事を願ってはいますが(復旧に1日くらいかかるので)‥‥。私は企業が使うHourlyバックアップの機能が自宅にも欲しいので、RAID0を丸ごと、TimeMachineでバックアップしています。RAID1+0とかだと、耐障害性は確保できても、「間違って消しちゃった」みたいな人災には対応できないスもんネ。

「最初からコレを買っておけば良かったんだ」なんていうのは、結果から見ればそうですが、結果は行動してみて得られるものなので、仕方ねいです。365日安定動作するか否かなんて、商品の説明やユーザレビューだけでは、見通せませんしネ。

でもまあ、私が購入した他のUSB3.0ケースは、Mac Server用途ではNGだった‥‥のは確かです。USB3.0のHDDケースには随分と散財し、クローゼットの中には使えなかったケースがいくつも眠っております‥‥。そんなこんな、ロジテックの4発ケースは、今のところ、安心できる機材と言えます。

じゃあ、ロジテックは他も良い思い出があるのか‥‥というと、実は以前に4台買ったUSB2.0のケースの内、3台が「ファンの故障」で使えなくなった事があります。1台はファンが完全停止、2台は猛烈な騒音を発するようになって、電源をオンにできなくなりました。後にファンを買い替えて修理したんですが、故障するのが早かったので、製造メーカー(販売メーカーと言ったほうが適切か)には、良い印象はありませんでした。つまりは、製品毎に品質が大きく上下する昨今、「このメーカーを買っておけば安心という甘い考えは持たないほうが良い」という事‥‥なんですネ。

昔っから、「機材の相性」(細かく言えばコントローラチップやドライバソフトウェアなど色々でしょうが)などという釈然としない理由で、散財してきたわけですが、この状況は未来も延々と続くんだろうな‥‥と思います。コンピュータの世界とは、すなわち、煩わしいもの‥‥なんでしょうネ。
 


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