速度感覚

昨日、新しいディスクを設置しました。これ。

 

 

 

SonnetのFusionです。1TBのThunderbolt 3 の外付けディスクです。内部は高速なM.2のSSDが内蔵されています。

 

制作期間だけお借りする機材なので、返却時に判りやすいようにタグが付いています。

 

 

 

容量こそ1TBですが、その辺の1TBポータブルHDDとは「色々」と格が違います。

 

まず、速度。‥‥毎度のGIF映像ですまんす。個人的に、YouTubeにいちいちアップするのが面倒で。

 

 

 

BlackmagicのDisk Speed Testでの計測の模様を、QuickTime Xで動画収録して、AME(Adobe Media Encorder)でGIFに変換しました。肝心の計測結果は、見ての通りの4K時代を体現する、充分過ぎるほどの高速性能です。書き込みで1300MB/s、読み込みで2200MB/s。次世代映像制作のスタンダードと言える速度です。

*BlackmagicのDisk Speed Testは古いバージョンですと、メーターの速度範囲が狭い=速度範囲が低速仕様なので、忘れずにアップデートが必要です。

 

昔の認識ですと、「SSDなら速い」と無意識に思いがちですが、SATA IIIでUSB3.0接続では、速度は「理論値がそのまま出ても」PCIe(M.2)のThunderbolt3接続の速度には到底及びませんし、そもそも4Kの映像制作には外付けUSB3.0/SATA/SSDでは不適格です。

 

SSDであることは速度を保証する証にはならず、SATAかM.2か、USB3.0かThunderbolt3か‥‥の、接続形態の転送速度が問われる時代にもはや突入しています。

 

ここまでディスクの速度が高速になると、今度はCPUの処理速度が問われるようになるのです。

 

やはり、昔の認識ですと、CPUは充分高速で、SATAやUSB3.0、HDDやSSDの速度が低速ゆえに「お荷物」「足枷」状態でした。しかし、M.2の高速SSDになると、ディスクの転送速度は充分間に合って余裕すらあるのに、CPUのデコード速度が追いつかず、再生が落ちる‥‥なんていう「立場逆転」が起こります。

 

なので最近、システムスタッフの同僚と、「CPUの速度が問われる時代へと、時代がひとまわりしましたね‥‥」としみじみ感じ入った次第です。

 

‥‥で、4K制作において、Sonnet Fusionの使い道は、何よりも「イメージキャッシュ」「リアルタイム再生ファイルの置き場」でしょう。4Kになると、一番「性能が必要になる」部分です。

 

「対性能効果の高い」運用をしないと、もったいなさ過ぎますもんネ。Sonnet Fusionの速度性能が活きる運用が不可欠です。2K24pSDRの制作にはオーバースペック〜対費用効果は低く、4K24〜60pHDRでこそ必要な機材と言えましょう。

 

 

 

 

次に値段。

 

2018年現在ですと、1TBのポータブルHDDは6千円台で買えます。以前、私が買ったのはコレ。

 

 

 

そして、そのUSB3.0 HDDの速度はこんな感じ。

 

 

M.2 SSDの速度を見た後では、随分遅く感じますが、いやいや、全然優秀です。バスパワーで2.5インチ省電力(5400回転?)のHDDで100MB/s(=800Mbps)出ているのですから、充分、廉価なポータブルHDDとしては高速でしょう。映像制作のキャッシュディスクには無理ですが、持ち歩きやノートPCの補助ディスクには有効です。

 

一方、SonnetのFusionは$999です。大雑把に12万円‥‥くらいでしょうか。まあ、つまり、USB3.0のポータブルHDDの20倍のお値段です。

 

「うわッ!高っっ!」と思うでしょうが、値段だけ20倍ではなく、読み込み速度も20倍なので、なんだか妙に説得力がありますネ。「速度こそ値段」を体現しています。

 

 

 

ちなみに、中身は東芝のRD400との表記がありました。

 

 

 

OCZのブランドで売られているコレ‥‥ですかね。

 

 

 

まあ、1TBに10〜12万円なんて、個人がプライベートでホイホイ買える機材ではないですが、現場の、しかも4Kの制作環境には、必須のアイテムになると思います。

 

After Effectsは特に、「ディスクの容量があればあっただけ、どんどんキャッシュにして喰う」ので、Mac/PCの高速なM.2起動シスクを消費することなく、安心してアドビ製品に容量を喰わせるディスク領域は、環境管理面でも有効です。

 

 

‥‥で、最後のスペシャル。

 

Sonnet Fusionを、2台、Thunderbolt3に挿して、ソフトウェアRAID0で組むと、どんな速度が叩き出せるか。

 

こんな時でもなければ、検証できないチャンスなので、実際に試してみました。

 

 

 

書き込みの速度はかなり向上しました。一方、読み込みの速度はあまり向上していません。ソフトウェアRAIDによるRAID0なので‥‥ということもあるのかも知れません。

 

Thunderbolt3を2本挿しなので、そもそもハードウェアRAIDは組めません。それに、アニメ制作の場合、読み込み性能のほうが重視されることもあり、単品接続で充分速度は出ていますし、作業環境としてはわざわざ複数買ってRAIDを組むのは、速度というよりはバックアップ・耐障害性目的になるかと思われます。

 

こうして色々テストしてみると、改めて、iMac Proの内蔵SSDの速度性能が飛び抜けていることがわかります。以下はiMac Proの内部SSDのスピードテストで、書き込みが恐ろしく高速なのがわかります。‥‥まあ、非リアルタイム記録のアニメ制作だと、あまり関係ないんですけどネ。

 

 

 

今までも、あらゆるジャンルにおいて、速度の感覚がどんどん上がる一方でした。乗り物などの移動手段だけでなく、買い物の速度〜ネット通販での決済と宅配サービス〜まで。

 

2020年代、コンピュータの色々な速度も、さらにまた1世代、高速化して進化することになる‥‥のでしょうネ。

 

 


根性の使い道

4KHDRで60pのアニメーション制作は、何を言ったところで、根性は必須です。そりゃそうだ。‥‥今までとは格段に繊細な絵と動きの品質を問われるわけですから。

 

なので、1日の根性は絵を作る事で使い果たします。作業段取りに根性を割いている余裕などありません。

 

だから、雑事の自動化です。

 

絵を作ること・映像を作ること「以外」の作業は、出来うる限り自動化せねば、身が持たず、ブラック産業に後戻りです。

 

ゆえに、

 

俺、コンピュータ音痴だから

私、プログラムなんてわかんな〜い

 

‥‥なんて、何の冗談にも愛嬌にもなりません。みんなで最低限のプログラム知識は持ちましょう。それが現場で1日中コンピュータをいじくって仕事する人間の、未来の姿・素養です。

 

 

日本語を覚えても、誰もが人を感動させる詩や小説を書けないのと同じく、プラグラムを覚えても高度なソフトウェアを作れるわけではありません。

 

しかし、日本語を覚えれば、状況を他に伝達し、達成目標を伝えることはできます。詩的な言い回しなど必要ありません。

 

同じくプログラムも、高度なソフトウェアは作れなくても、雑事を軽減するヘルパースクリプトくらいなら作れます。

 

DIYの日曜大工で家は作れなくても、椅子や棚は作れますよネ。それと同じです。

 

 

「勘」は人間の優れた能力の1つです。しかし、「勘」に頼り切ると、いつかどこかで破綻します。要は、「勘」に頼る部分と、「合理」に頼る部分とを、切り分ければ良いだけです。一緒くたにするから、迷走するのです。

 

プログラム能力を身につけることは、合理性を大きな要素として体得することに等しいです。勘であてずっぽうにコードを書いても、プログラムは動作しませんからネ。

 

アニメーション制作では、すべてが勘で乗り切れるわけもないですし、すべてが合理性で解決できるわけでもないです。矛盾した要素が同居するのが、「商業作品の作品制作」というものです。

 

商業作品に従事する映像作品制作者は、クリエイティブな側面と事務的な側面の両面を併せ持つのです。ゆえに、事務方面のルーチンワークは自動化で処理して、クリエイティブ方面に力を注ぎ込むと、作品の表現にウェイトを置くことが可能になります。

 

じゃあ、何をすれば良いのか。

 

ちょっと前にも書きましたが、表計算で日々の雑事を集計してみるのは良いでしょう。関数を使いこなして、自分の日頃の経費などを日記代わりに表計算に記録するのはアリです。

 

あともう1つはESTKですかね。アドビのスクリプト環境です。アドビのPhotoshopやAfter Effectsなど様々なソフトウェアがプログラムコードで自動化できます。

 

ESTKはアドビだけでなく、ファイルシステムの自動化も可能です。

 

例えば、レンダリングのうっかりミスで「A下セル」を「Aセル」の間違った名前で書き出しちゃった‥‥とします。

 

 

 

ファイルは72枚もあり、手動で名前を変更するのはアホ過ぎますし、連番はそのまま残しておきたいので、誰かの作ったリネームソフトの都合ではなく、自分の都合で「a」の部分だけ差し替えた変更処理をしたい‥‥と思います。

 

なので、ESTKでたった3行のプログラムを作ります。以下。

 

 

var theFolder=Folder.selectDialog("フォルダを選択してください");
var theFiles=theFolder.getFiles("*_?????.tga");
for(var i=0;i<theFiles.length;i++){theFiles[i].rename(theFolder.name+"_"+theFiles[i].name.split("_")[theFiles[i].name.split("_").length-1]);}

 

 

ブログのスペースの都合で文が回り込んで4行に見えますが、実際は3行です。

 

親フォルダの「a」を「a-un」に変更すると、ファイル名は親フォルダの名前を継承する‥‥という内容のスクリプトです。ESTKはAfter EffectsやPhotoshopだけでなく、ファイルシステム上のリネームや移動なども処理できるのです。

 

早速、実行しましょう。一瞬で「a_00001.tga〜a_00072.tga」が「a-un_00001.tga〜a-un_00072.tga」にリネームされました。

 

 

 

たった、この3行のプログラムが書けないばかりに、誰かの作ったフリーソフトを一生懸命探して、そのフリーソフトに不具合やOS未対応があっても手も足も出せず、泣く泣く他のフリーソフトを探す‥‥みたいな「ネット漁り」をしなければなりません。

 

能力の貧富の差が著しく表れるのが、コンピュータの世界の怖いところでもあり、痛快なところでもあります。

 

コンピュータを使って一日中、映像や絵を作っているんでしょ? ‥‥だったら、コンピュータを使いこなせたほうが俄然有利じゃないですか。

 

コンピュータに対して、手も足も出しましょうよ。

 

 

根性は、絵作りと映像作りのために使い切りたいものです。しかし、往々にして、コンピュータの作業でも雑事は付きまといます。

 

だったら、早期にプログラムの「いろは」を学んでおいて、自分が映像作りの中心的人物になる頃には、スクリプトプログラムくらいは手足のように使えるのが好ましいでしょう。「コンピュータを使いこなして映像世界を具現化する」ために必須ですヨ。

 

ソフトウェアが発達したから、コンピュータのことなど知らなくてもソフトは使える‥‥なんて、20年前の売り文句に過ぎません。

 

むしろ現代は、コンピュータの深部にどれだけ斬り込めるかで、映像表現の具現化=生産性が大きく上下し、個人だけでなく、集団の「能力の貧富の差」がはっきり作品に表れる時代です。

 

 

根性の使い道をわきまえることで、作品のクオリティに反映するだけでなく、「ブラック」と言われ続けた現場の未来をも左右することになるでしょう。

 

 


タップ穴

完全ペーパーレスになったら不要になる筆頭は用紙の「タップ穴」です。デジタルデータのキャンバス〜用紙でも位置合わせは必要ですが、その為にあの3穴のタップ穴である必要は全くありません。

 

ペーパーレス、オールデジタルデータ運用になっても、タップ穴をキャンバスに設置しているのであれば、それはもう「思考停止の象徴」であって、そこから自分の「頭の固さ」を思い知るべきでしょう。‥‥って、実は私がそうだったからです。

 

私は今でこそ、いろんな旧来の制作上の慣習を「不要なもの」として見分けられますが、10年前は「口ではコンピュータ運用を志していても、頭は無意識に慣習に縛られて」いました。体に染み付いた紙と鉛筆とフィルムの感覚は、そうそう抜け出ないのです。

 

ではなぜ、旧来の慣習から抜け出せたのかというと(‥‥いや、まだまだ旧来の思考は根深く残っていると思われますが)、「実写系の仕事をした」「紙と鉛筆では収まらない規模の内容を実践した」ことに因ります。

 

タップ穴に関して言えば、実写の仕事にはそもそもタップ穴なんてないですよネ。でも、コンポジット・ビジュアルエフェクト作業時には正確に位置合わせはしなければならないですし、作業者間で基準点の継承は必須です。カメラのフレームが基準となり、皆がカメラフレームを基準にすることで、位置合わせがピッタリ1ピクセルもズレずに可能になります。

 

一方で、紙と鉛筆時代にも、タップ穴では機能しない規模の作画をすると、タップ穴に頼らずに位置合わせをする方法が実感できます。ちょっと考えてみればわかる事ですが、紙ベースの作業段取りは全てタップ穴で位置合わせしているわけではないですよネ。角合わせだったりトンボだったりマーキングだったり、位置合わせをおこなう方法はタップ穴以外にも色々とあります。

 

2013年に自宅のMac miniで4Kの取り組みを開始した時、A4用紙サイズでは到底4Kには対応できないことが判り、一方で液タブは価格と性能の折り合いがついておらず、「描くことを優先」してA4用紙の「分割作画」で3分割して作画しました。実質A3サイズ超えのサイズで作画しましたが、その際にタップ穴は全く機能せず、トンボで位置合わせして分割した作画を統合しました。下図は、その当時のテストで描いた4K品質想定のキャラクターです。

 

*髪の毛は相当細かいですが、コンピュータで動かすことを前提としているので、OKなのです。この髪の毛を手描きで中割りなんて無理ですよネ。

 

紙に対する相対的な描線の直径が細くなるので、詳細感を醸しだすことが可能になります。A4サイズでは、どんなに美麗な線を描く動画マンでも、物理的に無理です。紙の繊維とカーボンの粒子の顕微鏡レベルの話に行き着くからです。

 

また、コンピュータが描線を演算することと、人間が描くことの、大きな差が欲しくて、近年に見られる均質な描線ではなく、鉛筆線ならではのグレインやマティエールを意識しています。二値化はペイント時に便利ですし描線の均質化には有効ですが、人間が手で描いた要素を抹殺する側面も持ち合わせていますので、わざと鉛筆の書き味を意識したものになっています。

 

縦の寸法合わせなので、実際の横長の16:9にすると、下手をすればA2サイズ‥‥なんていうことにもなりかねません。まあ、明らかに紙での運用はキツいわけで、2015年のiPad Proの登場により、紙での運用は終結できると感じました。

 

でも、こうしたタップ穴では機能しない紙の作画をすれば、タップ穴に依存する意識も薄くなり、「他の方法」を考えるようになります。

 

で、あらためて、「自分はなぜ今まで、こんなにもタップ穴に固執していたんだろう」と気付いた次第です。

 

 

では、現在、私らがどのようにしてタップ穴に代わる位置合わせを実践しているか‥‥というと、実写の経験をもとに、「カメラフレーム合わせ」です。まあ従来の撮影作業でも、セルと背景の解像度が違うなんてよくあったことですから、カメラフレームを基準にして大きさや位置を合わせて事なきを得るのは、作画の人間は知らなくても、撮影の人間は勝手知ったることでした。

 

加えて、マーカーで合わせる方法も併用します。位置合わせの基本はカメラフレームですが、タップ穴に縛られ過ぎた過去を鑑み、カメラフレームに縛られ過ぎることも避けるべく、トンボのようなマーカーで位置合わせをする方法も導入しています。そうすれば、大判などで基準マーカーを設定しておいて、描画部分だけ描けば済むようにできます。4K解像度では深刻となる無用な大判サイズ(横2フレで9000pxになるからネ)を、「描く部分だけのサイズ」で防げるわけです。

 

 

 

タブレットで絵を描く時に、パラパラと絵を動かすのは、ソフトウェアの機能です。決して、タップ穴で固定して手でパラパラめくるわけではないのです。

 

であれば、タップ穴は不要でしょ。

 

タップ穴は、タップに手早く紙を固定してパラパラめくって動きを確認しやすくするために存在していたのですから。

 

他の業種では紙の位置合わせを枠線やトンボで合わせていたのに、アニメ制作ではタップ穴だったのは、まず最初に紙の作画の都合によるものだったのを、今一度、思い出しましょう。

 

タブレットで作画するようになった今、タップ穴である必要はないです。画像認識で自動で位置合わせ‥‥と言うのであれば、タップ穴の形状を踏襲する必要はなく、もっと画像面積を小さく抑えた方法でキャンバスサイズの無駄な拡大を防ぐべきと思います。4K時代は、タップ穴のため(周囲の余白を含む)にも、相当なピクセル寸法を消費しますからネ。

 

 

まあ、今は紙とタブレット混在なので、過渡期としてタップ穴が必要な現場も多いでしょう。しかし、オールデジタル・ペーパーレスになったのに、まだタップ穴を紙の頂点に挿げているのであれば、思考停止と惰性による運用を公言しているようなものです。

 

でも、今までの制作体制の「癖」はなかなか抜けないのも人情です。私だって、ここまで割り切れるまで10年かかっているわけです。

 

形骸化した「癖」に気がついたら、意地を張らずに、謙虚に、自分の思考固着を正すのが宜しいです。昔取った杵柄は、「癖」「惰性」として残すのではなく、「温故知新」として活用すべきです。それは経験を豊富にもつ年長者こそ‥‥です。

 

 

 

 


機材とともに

After Effectsの機能強化は「傍目には」地味な内容が多いですが、新しい技術体系を構築すべく取り組んでいる現場には、それなりに有用な機能が追加されています。

 

15.1.2のアップデートでは、前々回紹介したCSVの他に、パペットツールの「ダイナミックメッシュ密度」「Mesh Rotation Refinement」、グレイン系エフェクトのマルチスレッド化などは、次世代アニメーション制作に直に作用する性能向上です。

 

一方で、期待ハズレだったのはビデオリミッターです。「放送の仕様に合わせてクロマとルミナンス値を制限できます。」とのことで、PQ1000nitsクリッピングや300クリッピング環境において、出力側からもリミッティングできるのか!‥‥と思ったら、相変わらずの旧来放送基準〜SDRのリミッターでした。「HDR&PQ探検隊」の道のりはまだまだ先が長そう‥‥です。

 

After EffectsやPhotoshopも、そろそろ次世代を強く意識すべきだと思います。相変わらずのsRGBや709視点では、未来の制作環境の足手まといになりますから、積極的に4KHDR以降の機能を盛り込んで頂きたいです。

 

現在、私らの制作技術グループでは、今までのアニメ制作ではあまり使ってこなかったソフトウェアも徐々に標準化しています。ハードウェアもsRGB系2Kのディスプレイは補助用途(波形のパレードをみるとか)で数台を残すのみで、HDR化・4K化を進めています。DaVinciやExtreme Studio 4KなどBlackmagic社の機材も増えており、FinalCutやPremiereは使わなくなっています。

 

アニメーション制作体制においても、新機軸の導入が続々進行しています。例えば、「カット袋廃止」「Webベースの演技シート(=タイムシート的なもので、FPSが自由定義で、自動集計)」「タップ穴廃止」など、紙が一切存在しないペーパーレスは基本中の基本です。作業者の作業IN/OUTを自動で記録するシステムを基盤とし、ファイルサーバはもはや直に掘る必要もなくディレクトリの無法地帯化を防ぎ、進捗管理はWebでおこないます。

*進捗記録のシステムは自社開発で、新技術系のアニメ制作に最適化されています。作業者が全員ベータテスターのようなもので、作業チーフが要望をまとめて開発チーム(システムスタッフ)と相談しながら開発を進めるので、まさに「身の丈の、自分たちの欲しかった機能」が実装されることになります。

 

紙と鉛筆をどうするか‥‥なんていう段階で足踏みしているのではなく、慣れ親しんだAdobeの製品群、Blackmagic社の廉価で高性能な製品群、セルシス、Affinity、Reallusion社などの製品群、AppleのiPad Pro、EIZOのHDR製品群など、次世代で活用できるハード&ソフトで基盤を見直し、その基盤の上でどれだけ表現と生産性を高められるかを模索するのが、プロのアニメーション制作者のスタンスと心得ます。

 

 

相次ぐ作画崩壊、相次ぐ放送延期、相次ぐ放送中止‥‥などで「同情をかっている」うちはまだ良かったかも知れませんが、出資者たちに愛想を尽かされ始めていることに、アニメ業界の現場の人間はあまりにも疎すぎます。あなたがお金を出す側だったら‥‥を考えれば、想像できるでしょう。酷い出来栄えでまともに納品されるかどうかも判らない商品、もしくは「無理して作ってたのをやめて、これからは新価格でいきます」と恐ろしく価格引き上げしてきた商品を、「ああそうですか」と何の不安も躊躇もなく買い求めるでしょうか。否!‥‥ですよネ。

 

紙と鉛筆と絵の具とフィルムとセルで作ってきた延長線上のアニメ技術がそろそろ終焉を迎えるのは、誰の目からも明らかです。それを認めたくないのは、現場で現職にしがみついている業界内部の人間だけ‥‥です。このまま策も無く、旧来技術に依存し続けるのなら、軒並みアニメ制作会社が3DCG制作会社の下請けに転じる日、さらには中国の下請けに転じる日も近いのかも‥‥知れませんヨ。

 

 

私はしみじみ考えます。「絵を描く人間は、これから先、どのように映像を作っていくべきか」と。

 

他の手段でアニメっぽい絵と映像が作れるようになった時、地道に絵を手で直に描く人間は、何を描き、どのように動かすべきなのか‥‥を。

 

複合組みや付けPANの話題で、内輪の閉じられた世界で時間を潰している場合じゃないと思います。目の前のことを解決するのは必要でしょうが、「B-29を相手にバケツリレーと竹槍では勝てない」ことも、しっかりと認識すべきです。

 

でも、実際に焼夷弾が頭上から降ってくるわけではなくて、状況はいくらでも身の丈で変えていけます。iMac 5KとiPad Proで少なくとも4Kと60pは始められるのです。私はMac miniで2013年から4Kの取り組みを始めましたから、「機材がないからできないなんてウソ」です。いつまで経っても自ら行動しない人間の自堕落な「言い訳」に過ぎません。

 

 

新しい世界を切り拓くために、行動を開始しましょう。‥‥でなければ、どんなに周囲の「アニメを支持する人々」が支援しても、破滅の道を免れません。

 

絵を描いて動かせる能力を、アニメ制作の惰性で受け流すだけでなく、その技術的本質を根本的に見直せば、アドビやBlackmagic、セルシス、iOSの各App、EIZOやAppleの機材は、改めて、強い力になってくれます。

 

 

 

ちなみに‥‥、macOSでPQを運用すると、macOSのGUIがPQに対応していないので、中間調がふっとんで、System6時代のMacintosh PlusやSEのような白黒2値のような画面になって、なんだか懐かしいです。

 

 

PQの300や1000クリッピングに対応したアピアランスが実装されるのを待ちつつ、粛々と事を進めていきますワ。

 

 


AE15.1.2でCSV

小刻みにアップデートを繰り返すAfter Effects。最近、またアップデートがあり、バージョンは15.1.2です。

 

15.1.2ではCSV、TSVなどの簡素なデータを読み込む機能が追加されています。CSVは直訳するとカンマ区切り値、TSVはタブ区切り値のことで、データの羅列をカンマやタブで区切ったテキストファイルのことです。

 

例えば、Googleスプレッドシートで、タイムシートらしきものを作ったとします。

 

以下のように。

 

 

 

「Aセル=頭部と体」「Bセル=目パチ」「Cセル=セリフ(くちパク)」そして「C上セル=髪の毛のなびきリピート」です。見切れてますが、実際は72コマ〜24コマで3秒のシートです。1列=A列目はコマ番号で、BCDE列がセルのタイムシート部分、F列=最終列「blank」は読み取り上の都合です。

*列も行も、ブランクを1列1行付け加えておかないと、After EffectsのCSV読み込みがうまくいきません。とりあえず、現段階は。

 

このままですと、Webだけで使用可能なデータのままですので、CSVで書き出します。「ファイル」の「形式を指定してダウンロード」メニューからCSVを出力します。テキストエディットでダウンロードしたファイルを開くと、以下のような状態です。

 

 

 

文字通り、カンマで区切られた値の羅列です。

 

このCSVファイルをAfter Effectsで読み込みます。

 

 

 

CSVファイルの使い方は、それこそ、使う人次第です。CSVに直にアクセスできるようになったというだけで、それ以上の機能は今のところ、ないみたい‥‥です。なので、手っ取り早く、エクスプレッションで活用してみます。

 

エクスプレッションでの呼び出し方は、「timesheet.csv」の1列目の1行目なら‥‥

 

footage("timesheet.csv").dataValue([0,0]);

 

‥‥となります。コンピュータのしきたりに従って、1つめはゼロです。ただ、1行目はヘッダ行として判断されるのか、2行目が1行目扱いになっていました。‥‥ややこしい言い方ですネ。

 

これを活用すれば、CSVの数字の羅列をタイムリマップのデータとして適用し、タイムシートを反映できます。

 

私が試したエクスプレッションは、以下の通り。

 

var fileName="timesheet.csv";
var id=1;//読み込む列を指定

var frm=timeToFrames(time + thisComp.displayStartTime, 1.0 / thisComp.frameDuration, true);
var tsData="";
var currFrm=frm;
while(tsData==""){
tsData=footage(fileName).dataValue([id,currFrm]);
currFrm--;
}
framesToTime(tsData, 1.0 / thisComp.frameDuration);

 

なぜ「while」を使っているかというと、空白行を埋めるためです。まさか、タイムシートのデータをCSVとして読み込む都合のために‥‥

 

 

 

‥‥のように「空白を埋めて」書くわけにはいきませんもんネ。タイムシート編集の利便性が失われます。もし空白行の場合は、直前の値をwhileとマイナスの加算(=つまり減算、デクリメントですネ)で上の行に遡って探しています。

 

こうして、スプレッドシートでタイムシートを書き、CSVで書き出して、After EffectsでCSVを読み込んで、エクスプレッションで処理すれば‥‥

 

 

‥‥のようにタイムシート通りに動きます。各セルがCSVの値通りに動いているのを、テキストで確認できます。

*GIFで済ませたかったんで、トーンジャンプはご勘弁。‥‥早く、HEVCがどの端末でも見れる時代がくれば良いですネ。上図ムービーは、GIFだと256色960pxで9MBにもなりますが、HEVCなら10bit深度2880pxで2MBで収まりました。まあ、GIFとHEVCを比べるのは酷ですけどネ。

*毎度同様、iPad Pro&Procreateで原画(相当)、そしてAfter Effectsでペイントと動画(相当)を処理しています。撮影(相当)はいうまでもなくAfter Effectsです。目が透けるのは、コンピュータでゼロから仕込めば、なんてことはない処理です。目パチがあろうが、髪との「組み処理」は皆無なので、全然問題なし。

 

CSVデータは下記の通りです。

 

fr,a,b,c,c-ue,blank
1,1,1,1,1,
2,,,,,
3,,,,,
4,,,,2,
5,,,,,
6,,,,,
7,,,,3,
8,,,,,
9,,2,,,
10,,,,4,
11,,3,,,
12,,,,,
13,,2,3,5,
14,,1,,,
15,,,,,
16,,,2,6,
17,,,,,
18,,,,,
19,,,3,7,
20,,,,,
21,,,,,
22,,,1,8,
23,,,,,
24,,,,,
25,,,3,9,
26,,,,,
27,,,,,
28,,,2,10,
29,,,,,
30,,,,,
31,,,3,11,
32,,,,,
33,,,,,
34,,,1,12,
35,,,,,
36,,,,,
37,,,3,1,
38,,,,,
39,,,,,
40,,,2,2,
41,,,,,
42,,,,,
43,,,3,3,
44,,,,,
45,,,,,
46,,,2,4,
47,,,,,
48,,,,,
49,,,3,5,
50,,,,,
51,,,,,
52,,,2,6,
53,,,,,
54,,,,,
55,,,1,7,
56,,,,,
57,,,,,
58,,,,8,
59,,,,,
60,,,,,
61,,,,9,
62,,,,,
63,,,,,
64,,,,10,
65,,,,,
66,,,,,
67,,,,11,
68,,,,,
69,,,,,
70,,,,12,
71,,,,,
72,,,,,
,,,,,

 

 

最後に、,,,,,で空白行を入れているのは、前述の通り、After EffectsでCSVを正常に読み込むための処理です。行も列も、最後尾に空白行・空白列を入れておかないと、「珍妙な動作」になります。イメージキャッシュのトラブルのような症状がでます。‥‥気付くまで時間がかかりました。

 

あと、AME〜アドビ・メディアエンコーダにキューすると、CSVのエクスプレッションが正常に動かないのを確認済みです。

 

まあ、まだまだこれから先に熟成していく機能‥‥ですかネ。

 

しかしまあ、このCSV読み込み機能‥‥。15年前に欲しかったですヨ。

 

 


タブレット

「江面模型店」と言われるほど、プラモのストックで溢れる私。「これからの人生は、溜め込んだものを消化するぞ」とココロに決め、「もう買い物は極力控えよう」と思った矢先に、結局プライムデーで「Fire HD 8」を買う始末。

 

アマゾンの甘い罠、プライムデーに今年もひっかかってしまった‥‥とは思うものの、コンピュータ関連機器は「使用期間の限界」があるのも現実なので、Fire HD 8で旧iPadを置き換えた次第です。

 

ちなみに、Fire HD。私がどのように使い分けているのか、ご参考程度に。

 

Fire HD 7

作画机でのビデオ鑑賞用(流し見)

絵コンテなどのラフ画のビュワー(解像度を必要としない)

参考写真1枚表示(はがきサイズと2L判の中間くらいの大きさ)

音声再生(Amazon Musicなど)

 

Fire HD 8

作画机でのビデオ確認用

絵コンテなどのラフ画のビュワー

設定などの詳細画ビュワー(ピンチインして拡大して見る)

参考写真1枚表示(2L判くらいの大きさ)

 

Fire HD 10

作画机でのビデオ確認用

絵コンテなどのラフ画のビュワー

設定などの詳細画ビュワー

参考写真1枚表示(A5くらいの大きさ)

ネット検索(Webブラウザ)

 

 

‥‥という感じで、画面の大きさが使い分けの基準になっています。画面が大きいほど、用途も広がります。一方で、限られた面積の机では7や8も賢く用いて、空間を効率的に使うことが求められます。

 

「PCを置いて、24インチのパソコンモニタで見れば、済むんじゃないの?」と思う人もおられましょう。

 

でも、作画机にパソコン‥‥は足元としても、パソコンモニタを机天板に置くのは、それこそ前世紀の20年前から「狭い机」の象徴として繰り返されてきたことで、正直「辟易」しております。「パソコン導入のワクワク感」のうちは気づかないんですけど、1〜2年使っていると、作画机の面積がモニタとモニタのスタンド(台座・脚部)、キーボード、マウスで、アホみたいに消費されていることを再認識して、パソコンが主役で、作画作業をする人間が風下の脇役‥‥みたいな境遇に鬱憤が溜まってきます。

 

特に、PCの操作にキーボードが必要なのが、致命的です。キーボードを常設すると、机は一気に狭くなります。モニタのスタンドで場所を占有され、キーボードで占有され‥‥と、ダブルパンチです。

 

設定書や参考本を机にポンと置くようにして、モニタも気軽に置けたら良いのに‥‥を、まさに叶えてくれるのがiPadやFireなどのタブレットです。

 

作画机にパソコン一式を置くのは、まさに前時代的だと感じます。もし作画机にパソコン一式を置くのなら、作画机自体の設計見直しが必要でしょう。ペーパーレス時代の作画机‥‥ということです。でも、そうした作画机はまだ出現していない‥‥ですよネ。

 

なので、20年の長きにわたり、既存の作画机をどのようにして「パソコンの占領」から解放するかを考えています。現在の私の作画机のコンピュータ機器は、全てiPadとFireで構成されているので、それらを1枚2枚と避ければ、60秒もかからず机の上はクリアになります。据え置きのモニタと違って、フットワークが格段に軽いのです。掃除も容易です。

 

 

作画しつつコンピュータを使う人誰もが、一度は作画机にコンピュータを置いてみる。そして「アカンな」と思う。もっと空間を有用に使う方法はないかと模索し、各人の方策の分岐に至る‥‥と、パターンは決まっています。

 

恐ろしく軽量薄型で、24〜32インチで、ワイヤレスで、タッチパネルの4K HDRモニタが発売されれば、遠隔にパソコンを置いといて、机の上にスッキリ薄いモニタだけをスタンドに立て掛けて作業‥‥なんてこともできるのでしょうが、まあ、今は無理ですネ。

 

まあ、絶対無さそう‥‥だけど、Fire HD 16とか、iPad Pro Plusで19インチとか、大画面タブレットPCが出てくれれば、より一層、快適に作画机をセッティングできるんですけどね。

 

そういえば、iOS版のPhotoshopフルバージョンの噂が流れてますネ。そうなってくると、やっぱり今よりも大画面のiPadは欲しくなるのですが、う〜ん、iPadは現在のAppleの戦略からみて13インチで打ち止めなように思いますし、複雑なところです。

 

 


iMac 5K、4年。

自宅のiMac 5Kのローンがあと数ヶ月で4年満期を迎えます。購入した4年前=2014年は、MacBook Proも同時期に購入したため、Appleローンの月額を抑えるために期間を4年で組みました。購入当時は「4年目はそれなりに古いマシンになってるんだろうな」と思ってましたが、性能で不満を感じることはなく、自宅用途では十分現役です。

 

一方、作業場のiMac 2.5Kの2012、Mac Proの2013は、もはや色々な面で古さが隠せず、特にiMac 2.5K Late2012は、その画面解像度により、フォントがぼやけて見えるので、肌身で古さを実感します。しかし、計算端末としてはまだ有用なので、「もうアカン」と限界の時まで、使い倒す所存です。

 

来週には本格的に作業場の主要モニタを4K環境へと移行し、公私ともに4Kがデフォルトになります。ここ数年は、自宅は4〜5Kでも、職場は2Kという「スペック逆転」現象が起こっていましたが、ようやくそれも解消され、波形モニタやレンダリング端末でもない限り2.5K以下のモニタは引退となります。

 

ご家庭向けテレビも、もはやわざわざ2Kを買うこともないほど、4KHDRテレビの価格は下がって来ています。でもまあ、自宅の2Kテレビが正常動作しているのなら現時点では無理に買い換えることもなく、液晶の寿命がそろそろやって来る頃に4Kに切り替えれば良いでしょう。

 

iMac 5Kのi5モデルだと、20万円以下でAmazonで買えるようです。メモリは後から交換&増設して64GBにできます。

*私は色々とカスタムして買うので、購入するのはAppleストアばかりです。i7にしたり、ビデオカードのランクを上げたり‥‥と。

 

初代iMac 5Kが、今でも現役足り得るのは、私の実感ですと、

 

  • i7で4.0GHz動作のCPU
  • 32GBメモリ
  • とりあえず速度的になんとかなるFusionDrive
  • 5Kの解像度

 

‥‥のあたりです。購入当時、iMac 5KをBTOでカスタムしておいたのが、功を奏しました。もうしばらく=2〜3年は、自宅のパソコンを買い換える出費が抑えられる‥‥ということですネ。これは嬉しい誤算です。5年が買い替え時期だと考えていたので。

 

やっぱり、私のiMac 5Kが2014年の4年前のモデルでも「じゅうぶん現役感」を醸し出しているのは、5Kのモニタ解像度です。コンピュータはたとえターミナル操作でも、必ずテキストフォントは目に映りますから、CPUやメモリよりも、日頃の威力はデカいです。

 

2〜2.5Kの画素密度の低いモニタは、字がぼやけて見えるため、老眼の影響じゃなくてもまるで老眼で見たようなニュアンスに感じられます。4〜5Kに慣れてくると、2〜2.5Kのうっすらボケているのが、明確に意識できるようになるのです。PCモニタと比べると、同じ2K解像度クラスのiPhoneやiPadでも、画素密度が高いので(=小さい画面にPCモニタと同じ画素を詰め込んでいる)、全然テキストのカッチリ感が優れてますもんね。

 

画業で言えば、むしろ鉛筆を使って絵を描いている人ほど、4〜5Kの世界がぴったりなんですよネ。紙に鉛筆で描いた絵のスキャン画像をiMac 5Kのモニタに映し出すと、生々しいほど、自分の描線がリアルに表示されます。2〜2.5K程度のモニタでは、その画素密度の粗さから、鉛筆画のニュアンスなんて表現できていなかったことが、つぶさに見てとれます。もちろん、線を二値化をしたら台無しなので、階調を保ったまま扱う必要がありますが、生々しい鉛筆の黒鉛の筆致・ニュアンス、描いている当人の筆運びや感情までも克明に表示する4〜5K解像度の世界は、2〜2.5Kのモニタでは全く味わうことのできない境地です。


一方、ペーパーレスにおいて、私の映像制作上の価値観を近年大きく変えたのは、iMac 5KとiPad Proに他なりません。紙と鉛筆がなくても、十分、未来を切り開けると確信できたのは、iMac 5KとiPad Proの存在あってこそです。もはや紙と鉛筆による2K24pは私にとっては過去に過ぎず、新時代の映像制作技法と高度な映像品質が自分の生きる道と心得ます。3〜4年前に導入したiMac 5KとiPad Proは、品質の意識を大きく塗り替えてしまいました。どうせ描くのなら、どうせ作るのなら、2K24pSDRじゃもったいない、同じ苦労をするのなら、4K60pHDRで作れば、その先の様々な展開や発展も引き寄せられる‥‥と考えるようになりました。

 

 

世の中には、高いお金を出しても、所有欲だけしか満たせない物品も多いです。自分の人生の未来を変えてしまようなチカラを、高級な時計も自動車も与えてはくれません。‥‥まあ、少なくとも私にとっては、ですが。

 

iMac 5Kの価格では、今どき、125ccのバイクを買うのがやっと‥‥かも知れませんが、絵や映像を作る人間にとって、30万円そこそこのiMac 5Kが与えるチカラは、当人の情熱次第で計り知れないものとなりましょう。

 

私がしみじみ思うのは、3〜4年前に、ホントに良いタイミングで、iMac 5KとiPad Pro&Apple Pencilが発売された事です。私はAppleがどのタイミングで何を発売開始するかなんて与り知らないわけで、次世代品質のアニメ制作技術を模索していた最中に、決定的な道具が「意図せず偶然のように」現れたのです。‥‥ある意味、セレンディピティに近いです。

 

私は22〜24年くらいまえに、同じような「セレンディピティ」チックな体験をしているので、今回のムーブメントも「サイクルがひとまわりしたんだ」と感じました。After EffectsのloopOut("cycle")で言えば、ループの先頭に戻るタイミングですネ。

 

偶然のようで偶然じゃない、必然ではないように見えて必然だった‥‥という体験を指して、ものすごく大雑把に言うと、「時代性」と呼ぶのかも知れません。思うに、時代性とは、意図したことが意図しない繋がりを経て、やがて意図したかのような結果を導き出す「必然と偶然のsuperposition(重ね合わせ)」を事実として体現したもの‥‥なんでしょうかね。

 

 

まあ、そういうややこしい話はおいといて、iMac 5Kが2014年の秋に発売されて、もうそろそろ4年。iPad Proと相まって、「次世界への列車」に乗り込む、まさに「切符」のような役割だったと思います。

 

列車にのって、どこにいくか、お楽しみはまだまだこれから‥‥ですネ。

 

 


4KHDRと言っても

4K HDRのモニタが随分と安く売られております。ただ、映像制作に必要なスペックは満たしておらず、何よりも致命的なのは、PQカーブに対応できるプリセットを持てない点です。

 

HDMI経由で信号の中にメタデータが含まれる場合は対応できる‥‥との製品もありますが、その仕様では制作現場ではNGなのです。配信データと同等の信号を、PC/Macのディスプレイ出力から(簡単には)送出できるわけではないので。

 

ディスプレイポートで4K60pかつHDR PQの信号の運用をどうするか。

 

う〜ん。金がかかる方法しか今は存在しない‥‥みたいですネ。

 

 


インストラクター

新たに技術を導入する際に、インストラクター的な立場の技術者や経験者の存在は、非常に重要だと思っています。インストラクターの質が、まるでその技術本体の質のように受け取られるからです。

 

インストラクターとはWikipediaによると、

 

インストラクター(instructor)とは、工業技術、スポーツなどの分野に於いて様々な指導を行う立場の者をさす。

 

‥‥だそうです。とても重要な役職‥‥ですよネ。特に技術の導入期においては。

 

アニメの技術、特に描画に関するソフトウェアの場合、単にソフトウェアの使い方だけを知っているだけでは、有能で指導的なインストラクターにはなり得ません。インストラクター本人の画力と経験は、ソフトウェアの有用性を実証する上でも、とりわけ不可欠です。

 

どんなにスペックを暗記しても、マニュアルやヘルプを暗記しても、描画系ソフトウェアの場合は、「実際に何を描けるか」に対して人々は注目するので、インストラクターが描いてみせる絵は、そのままそのソフトウェアの印象として受け取られます。これはもう、20年も前から同じ傾向なので、今後も同じでしょう。

 

描画ソフトウェアではないですが、After Effectsがアニメ業界で台頭して、コアレタスが事実上死滅したのは、「映像表現の印象」が決定的にユーザに作用したからだと感じます。After Effectsのメーカー(=Adobe)での宣伝映像や画像は、「こんなことができるようになる」とそれまでのアニメ撮影とは一線を画した表現にあふれていましたが、コアレタスは「再現できます」「今までと同じことができます」スタンスに終始して、しかもサイトで掲載していたサンプルはお世辞にも「未来を感じさせる内容」ではありませんでした。2000年前後の話、です。

 

同じことが、2020年前後に、作画セクションで起こるように思います。作画に用いるソフトウェアが、実際にどんな表現をアピールするか、そして、その未来の可能性を印象付けるか‥‥です。

 

現在、幅広くクリスタが支持されているのは、やはり、サイトのデモ画像が美麗であることと無縁ではないでしょう。クリスタを使えば、こんなことができるようになるんだ、と思えるサンプル画像の数々は、これから何を導入しようか迷っている人にとっては大きな印象を与え、強い指針となり得ます。そして、あの月額(今でも500円?)が決定的に人を動かします。

 

TVPaintに関して言えば、その昔「Aura」の名で呼ばれていた頃から、恐るべき画力で様々な画風で使いこなしていたアニメーターさんがいますが、そういう手練れの人たちが他人が羨むような絵を描いてデモするようになると、流れは大きく変わるかも知れません。Cacaniも内容の良さそうなソフトウェアですが、アピールの印象はあくまで機能説明に終始しているように感じられます。

 

物事を動かすのは、細かい機能解説の数々ではなく、圧倒的と言えるほどの大きな印象です。

 

もう散々、いろいろな「フォーマット戦争」で経験して来たこと‥‥ですよネ。細かい機能のアピールが勝敗を決したか? 否!‥‥です。

 

じゃあ、大きな印象って、結局、何?‥‥って、それは当事者たちでその「印象の実体」を作るしかないです。それがまさに、「ものつくりの戦い」なのですから。

 

 

 

思うに、ソフトウェアのインストールベースや普及の趨勢だけでなく、アニメ制作会社の未来も、インストラクションで変わってきます。インストラクターの質が低いと、その会社の「技術の質」も停滞するのです。

 

通り一遍の機能をレクチャーするだけの「人間マニュアル」のような人材が、ソフトウェアの使用法の基準になってしまうと、「基礎の先にある応用技術」に到達するまでに多くの時間がかかってしまい、発展のチャンスを逃し続けます。基礎が出来上がってくると、応用がとんとん拍子で面白いように発展するのが、まさに技術の醍醐味ですが、そうしたことがインストラクターの質が低いことによって阻害されるのです。

 

とはいえ、ソフトウェアの使い方や機能を知っているだけでインストラクターが務まるのは、技術移行期の極初期だけです。現場の人間は、やがて基本的な使い方や機能をマスターしていくわけですから、そうなれば、質の低いインストラクターは存在意義を喪失します。

 

ですから、インストラクターはある種、エヴァンジェリストのような役割も担って、どんどん更新される技術内容、どんどん台頭してくる新しい技術を、現場に広めることが主として必要になりましょう。アニメ制作現場の場合、その普及の実践段階において、描画ソフト系インストラクターは画力を宿命的に求められます。

 

では、アニメ制作現場のインストラクターが成立するのは、どのような状況でしょうか。

 

実際、「そのソフトでどこまでできちゃうのか?」を掘り下げるのは、その当人の表現力に依存します。つまり、絵が描けない、映像のイメージが希薄、映像が頭の中で動いていない人は、ソフトのポテンシャルを「チュートリアル程度」にしか引き出せないので、リアルな現場のインストラクターとしては役不足です。

 

ソフトウェア開発者自身すら驚く「そんな使いかたまで出来たのか」というレベルまでソフトを使いこなすのは、第一線の表現者・作業者です。基礎を終えて応用まで到達するのは、実際に作品制作で凌ぎを削って生き残った、キャリアを積んだ当事者です。

 

ということは、アニメの現場に有用なのは、インストラクターかつエヴァンジェリストで、最前線の作業者として活躍している人間‥‥となりましょう。要は、現場の技量の高い人間が、若年の人間を指導する‥‥ということです。現実的な経験を積んだ一定以上の技量を持つ現場の人間が、インストラクターを兼任する‥‥ということに落ち着くでしょう。

 

‥‥あれ? それって、「善き現場」の復興‥‥ですよネ。

 

 

 

思うに、現場が幼くて不安を抱えている時こそ、曖昧なインストラクター的ヘルプを必要とします。しかし、それは「自分たち自身で、必要な技術を体得するんだ」という覚悟を先延ばしにする温床にしかなりません。なんだかコンピュータは難しいっぽいから、誰か知ってる人、助けて‥‥なんていう弱腰が、いつまでたっても「乳離れ」できない幼い現場に留め続けるのです。

 

特にアニメーターにありがちな「コンピュータ苦手意識」は、アニメーターがコンピューターネットワーク時代に「ひとりだちできない」大きな原因です。

 

以前、コンピュータの知識がない‥‥というだけで、いかにも不利益で不毛な現場の未成熟状態を、私は経験しました。画力の高いプロフェッショナルな人間たちが、コンピュータの知識が乏しいというだけで、低い発達状態のまま停滞していました。

 

コンピュータを用いた制作現場において、それらコンピュータ関連機器を取り使う人間の意向に、作品表現が従属しなければならない状況は、あからさまに、構造悪だと思いました。

 

しかし一方で、コンピュータの知識がなければ、映像デジタルデータ時代の作品作りにおいて、作家性や絵画表現力を発揮することは難しいです。

 

構造悪は、自分の「コンピュータって難しいからわからないや」という甘えも、大きな原因だったのです。新しい時代の作品作りには、作家性、絵画表現力、そしてコンピュータの知識を、全て兼ね備えることが必要です。

 

コンピュータ音痴を自嘲的に自分のステータスとして気取っているのは、未来の映像制作からの脱落と逃避を意味します。

 

コンピュータをどんどん知って、コンピュータのシャーシが軋むまで使い倒して、今までとは別次元の作品表現を成し遂げる、まさに「コンピュータ時代の映像表現の体現者」として、制作現場の人間は成立すべきです。そのくらいの気迫を胸に秘めても、バチはあたるまい。

 

 

ちなみに‥‥、私の作業場の傍には、「フランケン」と呼んでいる、ボロボロのiMac(Late2012)が現役ですが、iMac Proを導入した今でも、最後の最後まで使う所存です。

 

まあ、私にとって頼りになるのは、中途半端な技量のインストラクターではなく、リアルな現場の仲間、そしてコンピュータそれ本体‥‥ですからネ。

 

そして、別立てでインストラクターを用意するまでもなく、頼りになるリアルな現場の仲間が、良質な「専門分野個々のインストラクター」足り得るとも思っています。

 

 


速度は時間

その昔、230メガバイトのMOが登場した時に、フロッピー200枚分だ!と驚いたものですし、UltlaSCSIで繋ぐ外付けHDDは2〜4ギガバイトでも大容量に思えたものです。

 

しかし2018年の現在、容量に対する意識は大幅に変わり、ギガバイトはファイルの容量、ディスク容量はテラバイト単位です。ディスクに対する意識そのものも変わり、光学ディスクに焼いてデータをやりとりするなんて、白箱(‥‥箱じゃないけどね、今はもう)くらいなものです。まだまだ大容量用途で活躍するハードディスクすら、映像制作のデスクトップでは陳腐に思えるような時代です。

 

 

 

一般的に、記録メディアは容量ばかりに話題が向きがちです。しかし、どんなに大容量でも、どんなにコンパクトでも、今や「時は金なり」で、速度も重要な要素です。

 

大容量のデータを扱うようになると、その大容量データをコピーしたり再生したりする速度も軽視できません。4K60pで10〜12ビットのデータになると、非圧縮で大まかに、1秒1ギガバイトを消費します。映像制作的には、ものすごい大容量時代がもうすぐそこまできているわけです。

 

一方、市場は‥‥といえば、それこそ「安かろう、遅かろう」の製品から、「高かろう、速かろう」の製品まで、芋洗いで混在しています。

 

用途に合わせて、および、達成したい目標に合わせて、適切な記録装置を購入することが大切です。「こんなに大容量が、随分と安くなったねえ〜」なんて言っている場合ではなく、速度性能も重視する必要があります。映像制作に従事するのなら‥‥です。

 

製品による速度差は、今や凄まじい落差があります。

 

例えば、USBメモリ。‥‥何と言っても中身はメモリなので、高速な読み書きが可能‥‥と思い込む人は多いかも知れません。しかし、製品によっては「小さいだけが取り柄」の製品もそこら中に転がっています。以下のような低速な製品も、実はそんなに珍しくないです。

 

 

随分と遅いなあ‥‥と思いますが、このレベルのUSBメモリは今でも現役で、しかもアニメ制作会社=映像制作会社で用いられています。

 

では、ちょっと未来の映像制作では、どのくらいの速度が普通になるのか?‥‥というと、以下のような速度になります。

 

 

 

あまりにも落差がありますよネ。

 

でも、映像制作を未来も続けようと思うのなら、こうした製品の落差が入り乱れる状況の中で、単に安さに目を奪われる事なく、自分らの目的を全うできる製品を、ちゃんと選別して購入し、制作環境に装備する必要があります。

 

 

速度だけではわからん‥‥というのであれば、時間で考えればすぐに実感が湧きます。

 

500GBのデータをコピーするのに、かたや待ち時間が数分、かたや2〜3時間。つまり、コピーを見届けてから帰宅するまでに、2時間以上の差が出ます。

 

実際、40GBのデータをコピーする際に、20秒で終了したのを目にした時は、新しい時代の速度感覚を痛感しました。最新の環境ではたしかに、1秒2GB(=2000MB/s)の速度で、データをコピーしています。

 

カップラーメンにお湯を注いで食べ終わるまでの10分(に満たない)程度で1TBのコピーが終わる‥‥ということです。ちょっと前なら、外に飯に出て戻っても1TBのコピーが終わってない‥‥なんて、ザラだったのに、です。

 

私の場合、フロッピーディスクから現場の経験を積んでいる(=Apple Quadra650でした)ので、余計、その速度感覚のギャップに気が遠くなる思いです。

 

でもね。

 

慣れりゃあ、慣れるもんですよ。

 

‥‥だって、その速度がないと、運用上、お話にならないわけですから。

 

 

速度は時間と同義です。

 

それはムービーファイルの再生速度(=フレーム落ちにかなり関係する)だったり、作業の待ち時間だったりと、時間の定義も色々ですが、空間も時間も狭い日本を広く使いたいのなら、今後も速度性能は重要な要素であり続けるでしょう。

 

 



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