ループの速度

私が本格的にコンピュータによるアニメ制作に関わり始めたのは、1996年の頃です。その当時、コンピュータの何が一番衝撃的だったかと言うと、フィードバックの速度です。いわゆる、PDCAサイクルやOODAループの回転の速さです。

 

1・エフェクトや画面効果をこんな風に描いて動かせば良いんじゃないかな?

2・そのアイデア通りに実際にPhotoshopやAfter Effectsで作った

3・パーセプション(当時の動画再生システム)でモニタに映して見た

4・良い部分もあったし、悪い部分もあったので、すぐに作業に反映しよう

 

→1に戻ってループ

 

こうしたループが、速い時には1日に2回可能でした。そんな「型破り」な映像経験のフィードバック速度は、フィルム時代は絶対にあり得ないことでした。フィルムでは不可能でも、After EffectsやPhotoshopで直にエフェクトを描いたり動かしたりすれば、数十分のレンダリングを経て、パーセプションに読み込んで、その場で「ラッシュフィルム」が見れたのです。‥‥恐るべきことで、「これなら、どんどん作業内容にフィードバックして技術を発達できる」と武者震いしたものです。「これで上手くいかないはずがない」と成功を沸々と確信していました。

 

表面上のAfter Effectsの機能よりも、そのフィードバック速度の速さこそが、コンピュータ活用の最大の武器だと思いました。

 

 

そして2018年の今。

 

同じことが4K HDRで再演されています。DaVinci Resolve Studioによって映し出されたPQ1000nitsのテスト画像&映像は、「毎日発見がある」と言っても言い過ぎではなく、乗り越えるハードルが飛び越えてはすぐに出現して目まぐるしいですが、猛烈にノウハウを蓄積している実感があります。

 

4Kでは何を描けば良いのか、HDRにはどのような色彩や映像効果が映えるのか、120fpsまで映像が補完された場合に、どんな動きが美しくかっこよいのか。スペックを読んで頭だけで考えるのはなく、過去のアニメの価値観で自分を束縛するのでもなく、実際に自分の目で見て、どんどんサイクルして更新できるのです。

 

20年前、アニメのフィルム撮影技術が素晴らしいのは解っていても、「もうそれではない」という実感に満たされていました。今、2K24pSDRを見て感じるのは、同じキモチです。

 

ほんとに、時代は繰り返すもんだ‥‥と思います。

 

 

今も昔も、黎明期や草分けの頃に必要なのは、「工房スタイル」です。「工場」ではなく。

 

現在「主流になってしまった」工場スタイルでは、セクショナリズムが強烈過ぎて、フィードバック速度なんて鈍足も甚だしいです。‥‥いや、鈍足ならまだ良いほうで、一向にフィードバックなんて反映されない現場も多いでしょう。

 

しかし、新しい技術に関しては、フィードバックなし、PDCA/OODAなしでは成立しません。問題を解決しつつ、新たな可能性を次々に実践して、表現内容に盛り込んでいくには、工場のような「生産ラインだけで繋がった」現場ではなく、各スタッフのノウハウが対流して融合し合う現場=工房的なスタイルが必須です。

 

アイデアがまた次のアイデアを呼び、初めての経験が新たな知識として蓄積され、最新の知識がさらなる新たな経験を呼び寄せる。‥‥1996〜2004年の頃はそんな時代でした。

 

あと1年半で2020年代ですネ。

 

4K 60p HDR 10bit‥‥という新たな時代のフォーマットが、否が応でも、新たな知識と経験の高速ループをアニメーション制作に与えてくれます。

 

 


散財エアファイター;F-35とラファール。

「エアファイターコレクション」はアシェットからの通知によると「3〜5号が予想以上に売れて在庫切れなので、追加生産中」とのことです。ゆえに、私も4号5号は未到着、定期購読特典も未到着で、号を飛ばして6号、7号が先に届きました。

 

 

 

F-35ラファールです。F-35は自衛隊仕様、ラファールはC型です。

 

F-15の時に汚しすぎた失敗を踏まえ、今回は大人しくスミ入れだけです。私のようなサンデーモデラー(の下の部類)は、特に1/100スケールにおいてはスケベ心を出さず、ひと味添えるくらいのディテールアップがよろしいです。

 

スジ彫り状態はこんな感じです。

 

 

 

このスジに、明るい塗装部分は暗めのグレーを、暗い塗装部分はほぼ黒(ちょっとだけ明るい黒)のサラサラにゆるいエナメル塗料を流し込みます。

 

*写真は拭き取った後の状態です。

 

スミ入れして拭き取ると、こんな感じの印象です。

 

 

 

 

所要時間は30分に満たないくらいでしょうか。

 

写真に写り込んだ綿棒との対比で、1/100の大きさが何となくでもお分かりかと思います。

 

まあ、おおらかな出来の1/100スケールモデルですから、これ以上の踏み込みはやめて、ちゃちゃっと他のエアファイターと並べて完了です。

 

次号はA-10なので、1/100と言えど結構でかいですネ。冬くらいに登場予定のMIG-25にも期待してます。

 

 

 

 


ペーパーレスとインフラ

ペーパーレスの制作運用は、思うに、本人たちが「紙を使いたくない」とココロの底から思うことが、推進の原動力だと思います。「やっぱり紙のほうが使いやすい」と心のどこかで思っていれば、ペーパーレスは単に「やせ我慢」にしかなりません。

 

これはつまり、「運用上で紙が混在すると、コンピュータとネットワークで作業の流通が完結せずに面倒なことになるから、紙を介在させるのはイヤだ」と当人たちが素で言えるほどの「インフラの整備が不可欠」とも言えます。インフラが整っていないのに、無理にペーパーレスをスタッフに強要しても、それは単に「面倒地獄」でしかないです。

 

インフラが整備され、自由にコンピュータのデータを作業のニーズにあわせて取り回せる状態でなければ、「紙を使いたくない」とまで思うに至りません。ごく普通の日常として、自分用のPC/MacとiPad Proが連携し、サーバやクラウドサービスにアクセスして他者とストレスなくやりとりできるようになってこそ、「紙はオフラインで取り扱いが面倒な存在」として認識するようになります。

 

コンピュータを導入しただけでは、ただ「絵の素材や運用の情報がデジタルデータになっただけ」であって、洗練された現場環境は実現しません。むしろ、場当たり的なツリー構造やその時ばかりのファイル名で紙以上に混乱するでしょう。「紙の方がマシだった」と漏らすのは、「インフラ未整備」な時に、いかにも聞こえてくる話です。

 

でも、ふと冷めて冷静に客観して考えてみれば、インフラを含めた環境整備って、要素が山積みも山積みで、果てしない気分にもなりましょう。

 

まず、パーソナルコンピュータ

モニタ

場合によってはサブモニタ

マウスとキーボード

絵に関わる作業者にはペンタブ

作業用の高速な外部SSD

バックアップ用の外部HDD

無停電装置

それらをつなぐ接続コード類

 

‥‥で、ようやく個人環境の基礎です。しかし、それはハードウェアだけでソフトウェアはまだ含んでいません。

 

アドビのソフト

セルシスのソフト

Blackmagicのソフト

Autodeskのソフト

Appleのソフト

マイクロソフトのソフト

オフィス系のソフト

セキュリティ系のソフト

etc...

 

‥‥の「作業上」のソフトウェアが必要です。

 

それら個人環境単体ではアニメを作れません。複数人数のワークグループが必要となります。

 

コンピュータ複数を接続するネットワーク配線

コンピュータをネットワーク接続するシステム環境設定

ネットワークハブ

各フロアを接続する配線

ファイルサーバ(SMBプロトコル)

 

これで作業ができそうな感じに思います‥‥が、実際はこれだけではすぐに限界がきます。コンピュータにローカルアカウントを作成して、ネットワークでサーバに接続する際に、どうやって接続ユーザを設定するのか‥‥。メールを使う場合、まさか、Apple IDかGoogleアカウントを取得して、iCloudやgmailのメールを「会社」のメールにするわけにもいかない‥‥。

 

もう「ローカルアカウント」のユーザでは管理しきれなくなります。ユーザアカウントを管理統制するために、ディレクトリサービスやメールサービスを自前で立ち上げる段階に達します。となると‥‥

 

ディレクトリサーバー(LDAPやアクティブディレクトリ)

DNSサーバー

メールサーバー

社内コミュニケーション用のHTMLサーバーやWikiサーバー

ドメインの取得

 

‥‥なども必須になってきます。さらにiOS端末や、訪問者の端末を接続できるようにするには‥‥

 

WiFi

ネットワークのセグメント分割

インテリジェントハブ

 

‥‥などが必要になります。

 

もうお腹いっぱい‥‥ですよネ。私の知識と経験もそろそろこのくらいでいっぱいです。私は2000年代にここらへんの知識の必要性に迫られて、実際に自宅に10数台のマシンを稼働させて(当時はマシン処理性能も低かったので分散させていた理由もあり)、MacOSX ServerやBSDでDNSやLDAP(の前はNetInfo)を実働して基本的な知識を体得しました。しかし、それはあくまで小規模ワークグループでの話であり、100人規模の管理はしたことがありません。

 

つまり‥‥

 

コンピュータ機材のネットワークをメンテして管理制御できる専門のスタッフグループ

 

‥‥が必要になります。

 

最大にして最重要な要素=人間が必要となります。

 

「俺、パソコンを長く使ってて、得意だから」で済むようなレベルじゃないです。専門のスタッフたちが必要です。

 

数年前に業界の寄り合い会合で「作画のデジタル化」「ペーパーレス」などの目標を掲げたのを傍観しておりましたが、コストのことには全く触れられておらず、「なんか、耳障りの良いことばかり言って、中身が空虚だな」と思っていました。

 

ペーパーレスの実現は、イコール「たくさんの準備とお金」です。スローガンを掲げてすぐに実行できるもんじゃないです。

 

ただでさえ、お金がなくてピーピー言ってる現場の運用に、どうやってペーパーレスの環境を築けと言うのだろうか‥‥と、ごくごく普通に感じたものです。「未来を取れる」確信と、相当な覚悟がないと、ペーパーレスなんて実現のスタート地点にも立てないと思っていました。

 

 

システム管理のスタッフさんを、単に「パソコンを整備する人」と思ってませんか? それは作画をする人を「線を書く人」、制作進行さんを「電話をかける人」「物を運ぶ人」と認識するのと同じで、表面しか見ていません。

 

システム管理のスタッフさんたちは、パソコンをしかるべき状態にセッティングすることで、それらを繋ぐネットワーク全体がしかるべき機能を発揮して正常状態を維持するように努めているのです。ごく普通に正常動作しているコンピュータやネットワークは、作画が安定しているアニメと同じです。作画の人間だったら、その「安定を維持する」ことがどれだけの技術と経験が必要なことか、お分かりでしょう。

 

その辺りをわからず、インフラ整備やシステム管理を軽視するのなら、ペーパーレスなんて絶対に無理‥‥ですよネ。

 

 

思うに、「うちはペーパーレスを導入しています」と公言している会社は、相当、その辺を痛感して、ちゃんとシステム整備もしているからこそ、言えるのでしょう。ペーパーレスを真に実現しているのなら、インフラとシステムスタッフに相当にお金をかけている証しです。

 

逆に言えば、インフラの質や機能が低く、システムスタッフにも乏しい状況なら、そりゃあもう簡単に「紙の方が融通が効くよね」という話に決着するでしょう。実際に、完成の域に達している旧来の紙運用の現場で、ヘナチョコレベルのペーパーレスを申し訳程度に導入しても、匹敵することはありません。

 

中途半端に未来を夢見て「ペーパーレス」なんて手を出さない方が「身のため」でもあります。何も得られず、お金を無駄に失って終了です。

 

もしペーパーレスを啓蒙するのなら、耳障りの良いことだけではなく、必要なコストを正直に列挙した上で、インフラと作業環境が次世代レベルに達した時に「何が加速して旧世代を追い抜くか」を話せば良いです。

 

で、一番重要なことですが、

 

ペーパーレス環境では、ペーパー時代と同じ方法をを踏襲するに留まらず、新たな違う方法をどんどん導入して実践する

 

‥‥のが、最大のペーパー環境に対するアドバンテージです。

 

ペーパーレス環境なのに、絵コンテ・レイアウト・原画・動画・ペイント・美術・撮影‥‥という旧来の方法だけを踏襲し続けて、何の大きなメリットがありましょう。違う手法や制作技法が広く大きく実現できるからこそのペーパーレスです。

 

まさか‥‥ペーパーレスを「紙を使わないから節約できる」とか思ってはいませんよネ。

 

新しいアニメ制作手法を次から次へと発展させて導入できる素地・足場が、まさにペーパーレスです。‥‥ですから、何度も書きますが、過去のアニメ制作をなぞった「デジタル作画」は過渡的な技術でしかないのです。

 

 

ペーパーレスを実現すれば、「あれ? こんなこともできるじゃん」とか、「これができるってことは、アレもできる」と、手法のバリエーションが増えて、今までの「原動仕美撮」の決まりきったアニメ制作技法だけでなく、幅広い制作技法をリアルに実現できるのです。

 

ペーパーレスの環境作りにはかなりのお金と労力が必要です。その、苦労の末に手に入れたペーパーレス環境を、今までの刷り直し行為に徹するのか、奇想で野心的な様々な新しい技法を現実のものとするのか、まさに当事者たちの「頭脳」が問われます。

 

ペーパーレスでインフラも作業環境を更新したのなら、自分らの「頭の中身」も更新してこそ‥‥ですネ。

 

 


4K8K本放送

ひさびさに休日にテレビを見ていて、NHKで「今年12月1日から、4Kと8Kの放送が始まります」的な宣伝を見かけました。最近は猛烈に忙しくてテレビを見る余裕などなく、自宅の録画機も予約録画が溜まるばかりでしたので、昨日初めて知りました。

 

たしか、去年か一昨年に見聞きした話では、2018年の12月から放送を開始するロードマップでしたから、それが予定通りに実現するのですネ。

 

一方で最近、アニメ業界関連の記事で「3年での離職率が9割」みたいな記事も見かけましたが(今は何かの事情で削除されてますネ。「9割」の情報の信憑性が問われたのかな?)、それと同じくらい‥‥いや、もっと深刻な、「新しい時代の映像フォーマットにアニメはどのように対応するのか」の問題があります。そちらは全くと言って良いほど話題にのぼりませんが、新時代の高品質フォーマットに対応できるスタッフはおろか、会社の体力すら根本的に問われる「大問題」です。

 

そんなアニメ業界の厳しい事情とは裏腹に、4K8Kの本放送開始。

 

そろそろ、根本的な事を考え直す時期です。

 

今やアニメ的なシチュエーションは実写作品で可能になっています。3DCGのセルルックのアニメもどんどん台頭しています。「アニメの表現技術が他の映像ジャンルに食われた」と危機感を抱く人もそこそこ多いのではないでしょうか。

 

しかし私は、実写や3DCGが「アニメを模倣」している時こそ、手描きのアニメのチャンスだと思っています。他の映像ジャンルが「アニメっぽい」ことに寄り道して遠回りしてくれているのですから、手描きのアニメ制作陣営としては新しい技術を確立する時間が稼げます。

 

でもさ‥‥。当のアニメ制作者が、過去のアニメの刷り直しばかりしてたら、そりゃあ‥‥追い越されますよネ。過去しか見てないんだもん。

 

 

根本的な事を考え直す時期です。

 

手で絵を描くことの「本質」を見極めて、コンピュータを賢く使うことです。

 

 

しかし、それは「デジタル作画」ではありません。「紙と鉛筆をペンタブに変えて、今までと同じことを繰り返す」のは、決して賢い方法ではないです。紙と鉛筆ではないコンピュータ関連機器で絵を描くことに慣れる‥‥くらいの効果、移行期における過渡的な手段として認識するくらいがちょうど良いです。

 

「デジタル作画」で得た報酬は? 1カット4000〜5000円?動画1枚200円そこそこ?‥‥だったら、紙作業の単価と同じですよネ。単価に変動がないのなら、効率はどうでしょうか。 出来高で月5万円だった動画マンがデジタル作画に変えたら出来高で25万円稼げるように‥‥はなっていませんよね。 加えて、ソフトやハードの保守費用を補って余る生産効果が「デジタル作画」にありますか?

*出来高ではなく固定給に変えて20数万円の稼ぎ‥‥というのは、デジタル作画の効果ではなく、雇用改善の効果ですよネ。すり替えないで考えましょう。

*もちろん、「デジタル作画」は単なる繋ぎで本命ではないのを重々承知して作業しておられる人もおりましょう。

 

キャンバスが3〜4Kになった時に、今までと同じペースで作業が進みますか? キャンバスが今までの4倍になったのに、昔と同じ絵を描いていて、4Kの効果をどれだけ使いこなせると思いますか? 競合の映像ジャンルはどんどん進化していく中で、どれだけ競争力を維持できると思いますか?

 

たしかに、アニメ制作を取り巻く状況は厳しいです。でも一方で、アニメ制作者当人も、旧来の技術基盤に慢心しきって思考停止しているのですから、より一層厳しいです。周りの状況だけでなく、自分たち本人の技術が危ういのです。その「厳しさ」「危うさ」の象徴がまさに「デジタル作画」です。何か「未来」の話をする時に、旧来の制作フローを大前提で話を始める時点で、既に未来はないです。

 

機関砲陣地に向かって、軍刀をかざして突撃すれば、ミンチ肉と化す未来が待つだけです。軍刀がボルトアクションのライフルに変わったところで、ミンチ肉に変わりはありません。世界の技術が新しく変わろうとしているのに、昔の「必勝パターン」にすがりついて、いくらたて直そうとしても無駄です。2020年代は1970年代ではないです。今のアニメの基本体制を築いてから、50年以上が経過していることに気がつくべきです。

 

 

アニメこそ、4K8Kを活かすべきです。そして、その方法はいくつもあります。

 

もし方法が見えないのだとしたら、旧来のアニメ制作技術の強い洗脳にかけられているのです。若い人間だけでなく、中堅もベテランも。

 

時代は御構い無しに、どんどん高品質映像フォーマットへと進んでいきます。アニメ業界の意思や期待など全く関係ないです。

 

2018年12月の4K8K放送開始は静かな「次世代」の幕開けです。アニメの制作者も、2020年代の次世代を見据えていきましょう。

 

 

 

 


HDMIからDisplayPort

意外とないのネ。HDMIからDisplayPortへの変換は。

 

DisplayPortからHDMIはうじゃうじゃあって選択肢が多すぎるくらいですけど、HDMIからDisplayPortへは結構少ないです。‥‥その理由は調べてないので判りませんが、USB給電用のコネクタやケーブルが併設されている商品が多いところを見ると、多分、面倒なんでしょうネ。

 

とりあえず、一番安いのを買ってみました。コレ

 

 

接続のハードルは低く、2K機器をまとめたマトリクススイッチャー(と言っても5千円くらいの無メーカー品)から2K30pで映れば良いので、多分イケそうな感じを期待しつつ買ってみました。

 

で、ハイ、ちゃんと映りました。特にUSBの給電は必要とせず、変換コネクタだけの接続でイケました。

 

4Kとか60pとかを期待しなければ、この手のコネクタは普通に映るように思います。

 

 

ちょっと前までは、HDMIと言えばコンシューマ向けの接続形態の扱いでしたが、今はプロの現場でも活躍しています。機材とケーブルの規格を満たせば、4K60pHDR10bitを搬送できるので、Thunderbolt2〜3の接続よりも遥かに融通が利いてローコストです。特にケーブル長の選択肢が豊富なのが嬉しいです。

 

ちなみに、私が買った変換コネクタは、HDMIのオスをDisplayPortのメスに変換するタイプ、つまりHDMIの出力コネクタに挿して、DisplayPortケーブルで配線するタイプなので、配線に必要な長さのDisplayPortケーブルが必要になります。

 

 

 

今回買った変換ケーブルセットは、作業場で2K機器を4K HDRテレビとマスモニに分配して表示するために使います。

 

4K HDRはえげつないほどの映像補完を「家電メーカーの威信」にかけて処理する一方で、マスモニは「味付けなし」のニュートラルな立ち位置ゆえの高価な製品なので、同時に見比べると「オリジナルの映像とご家庭で見る映像」の差が目で見てすぐ判ります。

 

両者を見比べて「どっちが良い」とか言うのは、まるでわかってない人。民生テレビとマスモニを併設する意味は、どれだけ映像のルックが変わってしまうかを踏まえて、「映像表現のストライクゾーンを広くとる」ためにあるのです。

 

「作業者のこだわり」という名のもとに、狭すぎるストライクゾーンを設定してしまうと、見る側に伝わりにくい映像を作ってしまいがちになります。作業者の作業環境と同じ内容を持つ世帯がどれだけ存在するのか、考えれば「無茶なこだわり」だと判りますよネ。作業者が品質にこだわるには「ストライクゾーンが広い前提」が必要です。

 

あくまで基準はマスモニです。監督・演出・作画・色彩・美術・コンポジット・3DCG・etc‥‥の各スタッフのキーマンは、まずマスモニを基準にしてチェックし、テレビを「わき目」で見ながら「映像表現にどれだけ『バッファ』を設けて、どのくらいの『保険』をかけておくか(またはかけないでGOするか)」を考えるのです。

 

たまに道理のわからない監督さんや演出さんが「各世帯はテレビで見ているんだから、テレビでチェックすべき」とか言いだします。‥‥‥よ〜〜〜く考えてみましょう。 ラッシュチェックの際に目の前にあるソニーのブラビアが、各世帯に一斉に普及しているのでしょうか。レグザだってビエラだってアクオスだってありますよネ。2013年型と最新版の2018年型でも色彩に関する補正機能は変わってきますヨ。「各世帯はテレビで見ているんだから」なんて言って、全てのメーカーと年式のテレビを揃えてチェックルームに置くのでしょうか?

 

色々な視聴環境がある中で、何を基準にすべきか?‥‥という問いに答えるために、何百万もかけて映像信号を忠実に映し出すマスモニを購入して、映像業界の皆がそれを基準にしているのです。たしかに各家庭のテレビはマスモニとほど遠いかも知れませんが、それは各家庭のテレビの方がバラついていると考えるべきで、マスモニがズレているわけじゃないですヨ。

 

各家庭のテレビは、テレビ本体だけでなく、設置された環境も加味されて、とんでもないバラつきがあります。「各世帯はテレビで見ているんだから、テレビで映像品質チェックをしても良い」なんて理由は、まったく頓珍漢な話です。何の説得力もないですし、むしろそれを言った本人がどれだけ無知で盲目かを自ら晒すようなものです。

 

もちろん、「マスモニを買うお金はないので、チェックは普及価格のモニタでやる。その代わり、色彩関連の最終品質チェックと微調整はラボでやる。」というのなら、全く話は別です。色彩のチェックができない環境では、モーションや作業ミスのチェックに徹して、然るべきラボの環境で色彩関連をチェックしつつケアする‥‥というのは、コストとクオリティをわきまえた経験者ならではのジャッジと言えます。

 

 

でも‥‥なんですが、驚いたことに、最近導入した13万円の型落ちブラビア(2017モデル)を「HDR受け入れ」モードで表示すると、色彩の見え方がマスモニとかなり似ます。これは映像制作者にとっては、嬉しいことですネ。意図した映像とかなり似ている状態で、各世帯に届けられるのですから。‥‥とは言ってもテレビは決してチェック基準モニタにはなりませんが、マスモニに近い映像が民生テレビでも再生できるのは、作品を作る側として好ましいです。

 

HDMIのロードマップもどんどんエスカレートしていきます。2.1の規格では、4320p(8K)で60Hz、48Gbpsですって。‥‥もちろん、HDRの広い色域であるBT.2020も含まれています。

 

まあ、2Kはいずれ過去となるフォーマットなので、もうこれ以上は手をかける必要はないかなと思っていますが、まだ各世帯では

2Kは主流なので、移行期の事情を鑑みつつチェックしながら、新しい時代の流れにのっていこうと思います。

 

 


SMPTE

私自身暫く耳にしていなかった「SMPTE」。エスエムピーティーイーとも、シンプティとも呼ばれるSMPTEは、最近「2084」、つまりPQ=パーセプチュアル・クオンタイゼーションの正式な規格「SMPTE ST 2084」として、まさに私ら制作技術集団の新しい取り組みにおける中心的存在として、頻繁に目と耳にするようになりました。

 

SMPTEは、アメリカの映画テレビ技術者協会の略字とのことで、IEEEなどと同じような「技術関係者の協会」です。SMPTEの詳しい内容はネットで調べるとして、SMPTEの規格は「それもSMPTEだったの?」と驚くほど普及しています。

 

その代表格がタイムコード。その他に「NTSC」「SDI」「MXF」「DPX」などもあります。

 

若い頃、SMPTEタイムコードには随分と憧れたものです。ラジカセやビデオデッキで何かを収録する時、素人だと「せーの」で再生と記録ボタンを手動で押しますが、SMPTEタイムコードで制御された機器だと「マスター」と「スレーブ」でシンクロして再生と記録ができたのです。

 

私はMIDIのシステムでタイムコードを初めて運用しました。当時の私(30年前‥‥)の機材は、MIDIシーケンサーがMC-50、QX-5が2台、そしてオープンリールのFOSTEX Model 80という構成で、Model 80をタイムコードのマスターにして、MIDIタイムコードで制御していました。

 

Model 80の8トラック目にMIDIタイムコードを記録し、オープンリールの動作に合わせてMIDIシーケンサーが追随する仕組みでした。‥‥今にして思うと、20歳そこそこの頃に既に「キャラ打ち」(=テープにタイムコードを打ち込む(記録する))をしてたのネ。(て言うか、今の人はQTのデータ運用しか知らないから、キャラ打ちは知らんか)

 

その数年後、私が24歳前後の頃には、今はもう倒産して無くなってしまった会社に、プリロール編集のビクターの業務用VHSデッキがあり、夜になると編集の真似事みたいなことをして、「カットつなぎの研究」をしていました。ほんの1〜2フレームの差でテンポやリズムや躍動感が変わってしまうことに驚くとともに、「これが本式のSMPTEタイムコードかあ‥‥プロ用機材って素晴らしい‥‥自分じゃ絶対買えないけどなあ‥‥」と機材とそのテクノロジーに感動しながら使っていました。

 

で、現在。

 

私ら技術制作グループが関わるSMPTEの直近のターゲットは「2084」。PQです。

 

しばらくソレばっかりやっていたので、かなり頭が慣れました。しかし、油断はしませんしできませんし、油断する気にもならないです。今までとは、ドカンと色彩の扱いが変わるので、それこそイメージボード・ショットボードの時点から、頭を切り替えなければなりません。

 

でも、ログとリニアの運用に慣れた実写の人なら、「ああ、もっと極端なヤツね」とすぐに順応するとは思われます。アニメはログもリニアもなく「リニア=見た目ひとすじ」ですから、PQを現場に導入するのはあまりにも今までとが勝手が違って、各方面で拒絶と混迷の阿鼻叫喚がこだますることでしょう。でもまあ、PQを扱わなければ、自分らで意図的で有意義な色彩をコントロールできないとなれば、慣れて覚えて使いこなすしかないです。

 

アニメ業界がHDRやPQの可否を決めるのではなく、HDRやPQなどの次世代映像フォーマットがアニメ業界の可否〜生死を決めるのです。アニメ業界を中心に世界の映像フォーマットが決まるわけじゃないですもんネ。今までだって映像フォーマットに準じてアニメを制作してきたのですから、これから先の未来映像フォーマットを中心にして「何を作るか」が問われるのは、今も昔も未来も同じです。

 

アメリカの放送技術者協会の規格が日本の規格‥‥というのは、まあ、少なくとも私が生きている間にとどまらず、今20代の人でも、同じでしょう。

 

 

ちなみに、私も「技術者協会」のような仕組みを作りたいと思っています。演出やアニメーターに限定した規模の小さい「寄り合い」のような集会ではなく、各方面の技術者で、出自の新旧問わず、これから未来の色々なアニメ制作の規格を明確に定めて、SMPTEやIEEEやISOのように、基礎をガッチリと固められたら良いなと考えています。

 

私ら制作技術集団では2005年頃から「atDB」、そして最近では新しい技術の基盤を成すために「ASTD」という規格を自主的に運用してきました。例えば、現在作業中の作品はASTD規格の4Kレイアウト用紙(のイメージファイル)を用いています。

 

日本のアニメの「表現の豊かさ」を鑑みるに、「自由に表現技術を拡張できた」がゆえの豊かさだと痛感します。

 

ですから、規格と言っても、あくまで基礎的な作業仕様や用語や取り扱いの範疇です。SMPTEのタイムコードやSDIやMXFが映像表現にクチを出さないのと同じく、アニメ制作技術者の標準規格も技術の仕様であって表現には関与しません。

 

レイアウト用紙やファイル命名規則に規格を制定したって、絵が極端に描けなくなるわけじゃあるまい?

 

むしろ、標準化・ユニーバサル化によって、ストレスは軽減され円滑に事が進むと思います。その標準規格の処理に必要な各言語のファンクション・ルーチンは協会員に公開されるわけですし、困った時は標準規格の「用語辞書」を検索すれば良いのです。

 

日本のアニメは表現をどんどん発展させる特徴を持つ一方で、内部の規格や決め事はグダグダに発展‥‥もとゐ悪化していく特徴も併せ持っています。複合組みとか付けPANの「業界標準の規定」なんて一切確立していないのに、あーだこーだ言っても始まらんのですよ。口約束、口頭伝達、成りゆきの作業習慣を、さも「決まり」のように語るほうが異常なのです。

 

「その決まりごとを規定して明文化しているドキュメントはどこにありますか?」‥‥と聞かれて答えられるのは、「動画&作画注意事項」だけでしょうが、例えばタイムシートの基礎1つとっても、その「作品ごとにコロコロ変わる注意事項」のどこにも明記されていないですよネ。

 

付けPANとFollow PANは違う、いや、同じだ。‥‥その根拠はどこで知ることができますか? 「先輩にそう教えられたから」なのだとしたら、とんでもない笑い草です。規格でも規定でもなんでもなく、ましてや標準と呼べるような状態とは程遠いです。

 

標準として規定された基礎を持たないなかで、いくら「どっちが正しい」かをツイッターで何百何千もツイートしても、時間の無駄以外の何ものでもなく、単なる暇つぶし・気晴らしです。‥‥実際、解決する気なんて毛頭なく、ただ単におしゃべりして盛り上がりたいだけなのは、端から見てればよくわかります。本当に解決したいのなら、ツイートに熱中するのではなく、規格草案をエクセルやワードで書くはずでしょう?

 

 

アニメ業界は多分に、SMPTEやIEEEやISOのお世話になっています。じゃあ、それら標準規格は自然とニョキニョキと生えてきたものでしょうか? ‥‥‥いや、違いますよネ。ちゃんと、人間たちが考え出して規定したものですよネ。

 

ですからアニメ制作者も、成りゆきに任せて誰かが発した言葉が自然と用語に定着するのを待つのではなく、自分らの明確な思考の制御によって、「運用のための規定」を規約すべきでしょう。いつまでたっても、学生の卒業制作気分じゃ、どうしようもないです。アニメのブラック問題って、実は自分たちのルーズな規定や規格が病巣だと思いませんか。

 

アニメ制作現場は、USBもDisplayPortもSMPTEタイムコードもSDIも使うわけです。アニメ制作はアニメ好きの人間たちが集まって「フワッ」としがちな現場ではありましょうが、「自分たちのSMPTE的なもの」を目指しても良い‥‥と思います。

 

 

 


iMac 5K。Mac mini。

PC・Macの性能は、長い間停滞気味で、モニタの性能は次世代映像に足踏みしている‥‥という現状を鑑みるに、私がパッと思いつく選択肢で誰にも判りやすい「現行機種」は「iMac 5K」くらいです。別にWindowsでも良いんですが、iMacに匹敵する知名度と性能をもつ「固有名」が思い浮かばないんですよね‥‥。

 

iMac 5Kのどこが「推薦できる」内容かを書き連ねると‥‥

 

  • 5Kの解像度を持つ
  • 5Kで60Hzのリフレッシュレート
  • コーデックを工夫すれば、コマ落ちなしで4K60pが再生可能
  • P3らしき色域(「Display P3」とAppleがのたまう‥‥)
  • i7で4コア8スレッドの処理性能
  • 64GBの実装メモリ
  • 外部に4K HDR/PQ 60Hz 10bitモニタを接続可能
  • さらに追加で2Kモニタも接続可能
  • 意外に高速なFusion Drive 2TB
  • 40GbpsのThunderbolt3
  • 実測で秒・2ギガバイトが出せる外部記憶装置の接続(高速な外部SSDはまだまだ高価ですけどね‥‥)

 

‥‥です。

 

上記スペックに近ければ、Windowsマシンでも何の問題もないでしょう。

 

ただ、Windowsマシンは何が厄介かというと、スペックをちゃんと読める人じゃないと、あまりにも選択肢が多過ぎて「必要なスペックを満たしていない製品」を買う危険性があることです。「安さに飛びついて、銭失いになりかねない」のです。

 

エプソンやDELLでiMac 5Kの最上位機種と同じ内容でBTOを組むと、結構いい値段がします。そこに普及価格帯の4K HDRモニタをプラスすれば、20万円台後半にはなりましょう。iMac 5Kの最上位機種と似たような値段になりますから、盲目的に昔の慣習で「WIndowsは安い」と思うのは、間違いの元です。Windowsマシンを買うにも、しっかりと腰を落ち着けてBTOで構成する必要があります。‥‥アニメの映像を作ろうと思うのなら、です。

 

 

なので、手っ取り早く、お金と性能のバランスが良いのは、iMac 5Kなんですよネ。特に、個人で買う場合は、面倒がないです。

 

ちなみに、私がここで書いていることは、自分の自宅や作業場での「実際の導入実績」に基づいています。スペックマニアが実物を知りもしないで予測で書いている‥‥わけではないです。

 

実際、私の自宅の初代iMac 5Kは、購入してからそろそろ4年が経過しますが、少なくともあと2年はイケそうな感じです。

 

職場のiMac 5Kは、EIZOのCG-319XをPQ1000nitsクリッピング・10bit・60Hzで接続し、さらに波形などを見るための2Kモニタも接続して、5Kと4Kと2Kの合計11Kのディスプレイにて、色彩設計の4K HDR作業環境として稼働を開始しました。「こんなに大量の画素数をつないでちゃんと動作するのだろうか」と半信半疑でしたが、ケロリと普通に動作しています。

 

 

そして、Mac miniの新型の噂。2018年の秋‥‥との噂ですネ。

 

iMac 5Kだと、ディスプレイ一体型で色々と融通が利かなくて‥‥という人でも、Mac miniの新型なら、低価格な4K60Hzのモニタを自由にチョイスして構成できますネ。数年後にさらに4K HDRの目視確認作業用モニタ(=普及価格帯では今はまだ良い製品がありません)を買い足せば、4K+4Kの8Kデュアルモニタでの作業環境も構築できましょう。新型Mac miniは幾ら何でも、今のショボすぎるグラフィック性能を刷新するでしょうからネ。

 

そこに、iPad ProやiOSが加わることで(まあ、Apple漬けですが)、個人のスタミナ次第で、他には何も必要とせずに「自主アニメ」「コミック」が作成できます。

 

旧来制作現場のアニメーターはさ‥‥、アニメをまるごとは作れないじゃん?

 

旧来技術の作画工程が生み出せるのは線画だけです。

*「デジタル作画」になってペイントを兼任するケースもありましょうが、作業クオリティや経験による障害回避がペイント工程のプロにどれだけ匹敵するのか、疑わしいです。実際、作画の人間の塗った荒くて雑なペイントを仕上げさんが尻拭いしたり、簡単なペイント(透過光マスクとか)だけやって面倒なのは仕上げさんに回す‥‥なんていう酷い事例も耳にします。

*ペイント工程を兼任するのなら、仕上げさんと全く同等の教程を実施し、ペイント工程に対する責任と品質管理が必要不可欠です。「デジタル作画だから動画だけでなく仕上げもやると稼げる」なんていう甘い考えは、少なくとも私は絶対NGだと思います。私はお金のでない自主開発では自分でペイントもしますが、制作費の出る商業作品ではペイントと色彩のプロに任せます。知識と経験が、専門職だと段違いですからネ。

 

でも、アニメーターが、iPad ProとiMac 5Kを手にしたら、線画だけを作り続ける「工場の工程の1役職」から解き放たれ、様々な可能性が現実のものとなります。「未来のアニメーター」が「旧来のアニメーター」と同じである必要は全くないです。むしろ、変わっていくべきでしょう。

 

旧来とは違う方法で手描きのアニメーションを作る方法は、旧来の現場では無理です。新しい技術が旧来の現場から生み出せないのは、まさに旧来現場の実情が証明しています。新しい技術を生み出せるのは、まずは自分の所有する映像制作環境です。そこから前例や実績を作って、ようやく次のステップに進めます。

 

 

iMac 5Kに加えて、秋にはビデオ性能とプロセッサを強化したMac miniが出るとの噂は、個人や仲間たちで何かを始めるきっかけにもなるでしょう。新しい何かで未来を切り拓こうとする人たちには、セレンディピティや共時性が味方してくれますよ。

 

私自身を振り返るに、4年前にiMac 5K、3年前にiPad Proが出ていなかったら、現在の開発プロジェクトにたどり着けなかったかも知れません。しかし、「時代性」をよくよく考えれば、iMac 5KもiPad Proも「出るべくして出て」、そして私が「ここぞとばかりに」飛びついたのです。‥‥共時性の為せる技に、まんまとハマったわけです。

 

まだまだ、コンピュータのお楽しみはこれからです。

 

それにしても、久々のMac miniの更新は楽しみ‥‥ですネ。

 

 


未来は現在

昨日に「明日」だと思っていた未来が、今日は現在。‥‥そんなの、あたりまえすぎることですが、未来がやがて現在になるのは、日々自覚していなくても、現実そのものです。

 

一方で、過去は絶対に現在にはなりません。過去はどんどん遠く、過ぎ去っていくものです。

 

ですから、アニメ制作業において、過去のノスタルジーに浸って、過去に制作した作品をどんなに懐かしく思い出しても、それは思い出話に過ぎず、たまに「酒の肴」にする程度がよろしいのです。

 

では、リアルタイムに進行する「今を生きる」とはどういうものか。「今だけ」を生きることもありましょうし、「未来に繋がる今に生きる」こともありましょう。そして「過去に生き続けて、今を過ごす」こともありましょう。

 

それは個人の生き方、考え方、価値観だけに止まらず、身の回りの物品、アニメ映像制作ならソフトやハードウェアにも現れます。

 

私は今でもカセットテープを再生可能にしていますが、それは全くの「過去に生きる」趣味です。カセットテープにはノスタルジーしかなく、未来など何も求めていません。カセットテープをラジカセで聴くことが、70〜80年代の私の少年期を思い出す「過去への扉」を開けてくれるのです。

 

 

でも、それは趣味だけ。‥‥仕事では、そういうことは一切しません。

 

仕事に過去のノスタルジーを持ち込むことは、あまりにも「ひとりよがり」だと思います。20代の若いスタッフだっているのです。アラウンド50の懐古趣味を仕事に持ち込んで、若い人間もろとも「過去に引きずり込んで」しまうのは、私としては「とても非道いこと」だと思っています。

 

私自身は、仕事にノスタルジーを持ち込む気にはなりません。本に挟んだ押し花やドライフラワーではなく、今咲いている花、そして未来に咲く花の蕾を、水やりしながら楽しく眺めたほうが、私は嬉しいし幸せだからです。そして、嬉しさと幸せは、現在進行して未来へと進むベクトルと一致しやすい性質でもあるので、私自身の感慨だけでなく、制作現場の技術発展と良い具合にシンクロします。

 

人は自身の不遇を感じる時には特に、過去の追憶に身を沈めます。時間が死んでしまった、決して再び蘇ることのない、思い出の亡骸をどんなに眺めても、ふと現実に戻れば、いっそう悲しみは増すばかりなのにね。今の不遇によって過去の思い出に閉じこもる人が制作現場の主要人物やキーマンだったら、その「悲しみ」を反映する現場にもなりましょう。

 

 

実際、アニメ制作は、結構色んな部分が「過去に生き続けている」ように思います。30代半ばですでに過去の技術だけに生きる人もいるんじゃないでしょうか。

 

旧来のアニメ制作技術が過去の技術の刷り直しばかりなら、そりゃあ、未来は「今だけを生きた延長線上」にしか存在しないでしょうし、気がついたら同じことをし続けて50代になっていた‥‥なんてことにもなりましょう。

 

未来に達成すべき目標がやまほどあれば、不遇を感じている隙間もないです。未来がどんどんやって来て、どんどん現在になっていく逼迫感と強迫観念に打ち勝つためには、過去のノスタルジーに囚われている暇もないですし、同じことを繰り返している余裕もないです。

 

 

未来は刻一刻と現在になります。

 

人間の思惑やキモチなど御構い無しに、時間はどんどんやってきて、過ぎ去っていきます。そんな当たり前すぎることを、改めてしみじみと実感すれば、自分が何をすべきかは個人ごとに見えてくる‥‥と思います。

 

今をのりきるためだけに、今の時間を使い続ければ、今と同じ未来が繰り返されます。自分の肉体だけが時間経過の影響をモロにうけて老いていくだけです。やがて、新しい時代の中で、衰弱して淘汰されるかも知れません。

 

過去のノスタルジーで今を埋め続ければ、未来も過去のループの中に埋没するでしょう。死して再び蘇ることのない過去と同化するなら、本人もやがて死と同化する日が訪れましょう。

 

未来を「新しい現在」とするには、何よりも「新しい未来」をつかもうとする意志が必要です。新しい未来を欲して行動するからこそ、新しい現在にどんどん置き換わります。

 

アニメはまだまだやれることがたくさんあります。新しい技術世代でアニメは作り続けられます。未来だと考えていた事物が、現在の現実にどんどん置き換わっていきます。新しい未来は、新しい未来を掴もうとアクションした人々にこそ、訪れます。

 

 

 

 


買い替えのタイミング

映像制作における機材の買い替えのタイミングは、現在の視点だけでアクションしてしまうと、その後に結構「損」をします。損した気分だけでなく、実質的にも。

 

で、買い替えのタイミングは、すべての映像制作関連機器が「全て一斉に、良いタイミング」とは限りません。ズレているのが普通です。

 

例えば、PC/Macはここ数年は大して進化していませんから、ビデオカードの性能とメモリを特に気をつければ、少なくとも「大ハズシ」はしません。ビデオ性能=UHDピクセル寸法(3840x2160)と60Hzのビデオ出力を確保しておき、メモリは最低で32GBを実装しておけば。3年後にも「自宅用」であれば映像制作にも耐え得るでしょう。

 

しかし、モニタはそうはいきません。2018年現在は10〜20万円出しても、未来にも使い続けられる性能のモニタは皆無です。モニタのラインアップは、ことコンシューマ向けに関して言えば、「不毛も不毛」、何ら「生え揃ってない」です。

 

ですから、現在使っているモニタがよほど低解像度でもなければ、今のまま使い続けてお金を貯めて、2年後くらいに4K HDR PQで10bitのモニタを買うのが良いと思います。

 

今、わざわざ中途半端に10〜20万円使って、旧時代のsRGBモニタやPQ非対応(=PQの設定をユーザが設定できない)のHDRモニタを買う必要はないでしょう。故障して壊れたのでもなければ、sRGBやRec.709、Adobe RGBのモニタを高い金で購入するのは、伊達酔狂か未来の映像制作に疎いか‥‥のどちらかです。

 

もし、環境を新規に立ちあげるのなら、今は「未来のサブモニタ」として割り切って、4K HDRを謳う6〜7万円の廉価モニタを購入するのが良いと思います。4K HDRの中身はあまり問わず‥‥というか問えないから6〜7万なのですから、未来メインではなくサブで使うと割り切って今は新規調達するのが現実的な判断と言えます。10万円足して、17万円出しても、必要な性能は揃わないですから、できるだけ安く、一応は「4K 60Hz以上(=60pが再生できる) HDR」仕様の安いモニタを買って、未来のために資金を温存するのがよろしいかと思います。

 

モニタはそのくらい、今は買うのが難しい時期です。

 

あくまで、映像制作に従事する人間が、数年の未来スパンで考えた場合‥‥ですけどネ。

 

 

もし、iPad ProとApple Pencilで「iPadで絵を描くのって、自分の感覚をロスなく映し出せて、線画以外の色んなこともできるし、未来が明るく思える!」と感じるのなら、ぜひ、止め絵でも良いから、4Kの世界に前進してみてください。そして、その前進のために、限りあるお金を大切に、自分自身の未来に投資しましょう。

 

過去の技術基準で考え続ける人にどんなにアドバイスを求めても、「2.5KでsRGBなら大丈夫、メモリも16GBもあれば充分」としか言ってくれないかも知れません。「大丈夫、充分」という根拠が、何ら、未来の映像製作を志向しておらず、過去の慣習だけに基づくものなら、どんなアドバイスも「未来を目指したい」人には役に立ちません。

 

映像制作の技術が2K24pSDRで停止するなんてことは、世界的な動向から、あり得ないのです。音速を超える旅客機のような16K240pならまだしも、4K60pHDRは普通のジェット旅客機レベルなのですから。

 

2018年の今、高い金額を自腹で捻出して、買った内容が「プロペラ旅客機」では、悲しいでしょう。アドバイスした人が「プロペラ機って、味があるだろう? この爆音と振動と低速度がたまらないよね」とノスタルジーに浸るのは構いませんが、まともにその「古いアドバイス」にのっかってしまった人は、ノスタルジーに巻き込まれて未来が遠くなって、お金も消えるのです。

 

2KのSDRでは、絵を描く人間の表現力なんて、とてもじゃないが収まりきるわけないです。器が小さ過ぎます。4K HDRの世界を自分の目で日頃から見て、iPadのキャンバスサイズを3840や4096に設定して器を大きくして、4Kを自分の「普通の日常」にしてしまうところから、4K HDRが等身大の技術になります。

 

個人の作業環境において、お金を使うポイントはひとつ。ノスタルジーでも慣習でもなく、リアルに自分の血肉となって未来を支える機材を、限られた金額の中で買うこと。‥‥です。

 

 

とは言え、今はまだ機材のラインアップがデコボコで、「買って良いもの」と「買うと損をするもの」が混沌と入り乱れています。

 

なので、「今は何でも揃うわけじゃない」ことを念頭において、過去の基準から思考を刷新して、未来視点でPCやモニタの選定をするのが良いでしょう。特にモニタに関しては、「今はあえて買い替えない」という選択肢も含め‥‥です。

 

 


フィルムの凄さ

フィルムの真価は、4K HDRでようやく人々の目に届けられる‥‥のだと思います。Rec.709(SDR)のHDではフィルムの性能は著しく損ねられていた‥‥と言っても、言い過ぎではないでしょう。

 

フィルムカメラ時代に、ポジフィルムで撮影して、現像上がりのポジをライトボックスとルーペで見たことがある人は、映像業界にどれだけいるでしょうか。おそらく、35mmライカ判の一眼レフカメラが現役だったころに20代だった人は、本業はアニメやビデオでも、趣味でポジフィルムに馴染んでいた人もそこそこいると思います。

 

まあ、ライトボックスにもよりますが、35mmポジフィルムをルーペで覗いた時の鮮やかさは、印画紙のプリントとは大きく異なります。Rec.709やsRGBも「発光体」を見ている状況は同じでも、ポジフィルムを覗いた時に比べて、色の発色が大きく異なります。

 

 

しかし、フィルムカメラが市場の表舞台から姿を消し、キャリアの最初からデジタルデータのアニメやビデオカメラしか知らなければ、sRGBやRec.709が、光学画像の経験の全て、映像経験の全てにもなりましょう。

 

つまり、現在の若い世代〜中堅の世代は、狭い色域の世界しか知らない‥‥のです。全員ではないでしょうけど、大半は‥‥です。

 

特に、ここ20年近くのアニメ業界は、sRGBとRec.709しか知りません。若い人は状況的に、sRGBとRec.709、Adobe RGBだけが、映像や画像の全てだと、無意識にも思い込んでいるでしょう。

 

でも、世界はそんなに狭く、チョロくはないです。映像の世界は、まだまだ深いエリアがたくさん存在します。

 

世界が今や見捨てた‥‥と言っても過言ではないフィルムでも、実は、Rec709なんてショボくて失笑するくらいの、幅広いレンジを内包しています。

 

ぶっちゃけ、私も今までのデジタルデータでそこそこ十分だ‥‥と思っていました。しかし、HDRの色域で10bit以上の映像を見ると、今までのSDR時代のフィルムスキャンは「すべてスキャンし直し」が良いんじゃない?‥‥と心から思えます。

 

 

とある技術者の方が、「Rec.709はもはや映像のワーストケース(=最下位品質)」だと言っていたのを思い出しますが、それは、新時代の映像技術を誇張して喧伝するためではなく、実際のHDRの映像実物が雄弁に物語っているからこそです。Rec.709と2100を並べて比較した際の、その無残さと言ったら、まさに「筆舌に尽くし難い」ものがあります。

 

HDRの取り組みを本格的に始めて、フィルムの魅力はまだ死んでいない‥‥と強く思うようになりました。フィルム作品は4K HDR時代に「生まれ直す」のだと思います。

 

私は今後、フィルムを使うことはないと思いますが、フィルム時代の作品は敬愛して止みませんし、フィルム一眼レフカメラ時代の撮影経験は私の基礎の大きな部分を占めています。

 

フィルム時代の作品が、今後、4K HDRのコンテンツとして、フィルムスキャンからやり直して、どんどん発売されることを望んでいます。

 

 

アニメ業界もRec.709に縛られた狭い了見で色彩を扱うのではなく、新しいHDR時代の色彩感覚を意識し始めるべきです。Rec.709なんて、人間の知覚からすればホントにショボさ爆発なのです。単に旧時代の放送や機器の都合でレンジが定められたに過ぎません。

 

今の若い世代が、Rec.709しか知らないのは、実は、今後の発展における大問題・大障害なんだよね。

 

かと言って、2018年現在にフィルムを経験することは中々難しいです。35mmのポジフィルムと一眼レフカメラを購入して、現像してポジを覗いて‥‥なんて、今では、酔狂でしかないもんネ。

 

なので、一番てっとり早いのは、自宅や職場に4K HDRのテレビを入れてしまう‥‥ことです。HDRでPQにも対応し、500nits前後で10bitのスペックの映像体験環境を、安価に入手するのは、ソレしかあるまい。

 

‥‥で、ネット配信のHDRコンテンツや、UHDでHDRのブルーレイを見て、今までの暗く寝ぼけたRec.709から「自分の目を解き放つ」べし!‥‥です。120fps補完の実態にも目を背けずにしっかりと自分の目で確認しましょう。

 

「未来の現実」を自分の目で見定めるのです。逃避するのではなく、です。

 

頭の中で、いくら300nitsだ1000nitsだ、HDR10だHLGだ、PQだと、「文字」だけで考えても、自分のナマの目で見なきゃ本当のところは判りませんヨ。

 

 



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