最後のアップデート

現行のアニメ制作フローにおける、コンポジット支援アプリの「xtools」は、コツコツとアップデートを重ねてきたものの、まだいくつか改善の余地があり、そろそろ決着をつけようかと思っております。ここ1〜2年は、いわゆる「撮影」作業工程に関する仕事は以前ほどなく、別ジャンルの仕事が増えています。「xtools」の出番はかなり少なくなっています。

アニメのコンポジット周りの仕事は、どうやっても、価格破壊のイタチごっこのような構造から抜け出せないと、少なくとも私は実感しています。つい最近の仕事もそうでしたしネ。「xtools」は薄利多売のツールとして作ったわけでは無いですし、現状の風潮にさらに適応させたところで、状況は一層、悪い方にエスカレートするでしょうから、これ以上の開発はヤメるのです。

24fpsベースの作画を起点とする現行のフローの10年後、20年後の展望について、みんなどう考えているんだろうか。単に「このままの状況が続く」と思っているのだろうか。秒間60〜120フレームの世界に馴れた近未来の一般人からは、秒間8〜12枚の作画アニメは、さぞカクカク動いて不自然な、古びたものに見えると思います。昔のトーキー映画とまではいわないけれど、アンティークな風情をどうしても感じてしまう事でしょう。現行のアニメ制作の「手描きで1枚ずつ、動きを紙に描いていく」方法を、まさか枚数を2倍4倍に増やしてやり続けるのでしょうか。そうなると、今以上に予算が厳しくなりますよネ。‥‥未来のビジョンは?

そんなこんなを考えると、現行方式に対する技術開発にリソースを割くのは、あまり妥当とは思えないのです。「xtools」は自己開発のソフトウェアですが、ゆえに、限りある自分の時間を、これ以上「以前のツール」の開発にダラダラ消費されるのを防ぐためにも、最終のアップデートは完了しておこうと思っております。ソフトウェアの使用期限を2050年とかにセットして、開発を終了するのです。

「xtools」に関する最後のアップデートは、「アニメ制作でありがちな連番ファイル」の読み込みに関する一層の効率化・単純化、いくつかのバグフィックスです。After Effectsをグレーディング作業で使いやすくするように準備する「xtools」の「GX」(xtoolsはツールの集合体なのです)というのがあるのですが、それは今後も使うでしょうから、「分家」しても良いかもしれません。

でも、実のところ、「xtools」という名称はそのまま受け継いで、全く新しく仕切り直したものをゼロから開発しようと考えています。旧来アニメ制作対応型の「xtools」を開発終了するだけで、新型ツールは必要なのです。新しい制作方式は、人間の成すべき事以外の雑事は、全部コンピュータに処理させないと、到底実現できるレベルでは無いのです。

開発したツールを納めたフォルダを眺めていると、私の情熱と失望が見て取れます。この10年でアニメ制作のコンポジット周辺は、価格と時間の競争でズタボロになってしまった。まあ、これはアニメに限った事ではなくて、世の常なのでしょうから、誰を恨むわけではありませんが、教訓はしっかり胸に刻んで、次の新しい方法では「予防策」をいくつも張り巡らせようと思っています。

もしかしたら、今やっている作品が、最後の「昔ながらのアニメ」の作業になるのだろうか。セル絵具のアニメから本格的に離れた1996〜97年も、こんなキモチだったように思い出します。

脅威

何かしらの作品を世に出そうとする時、一番気にするのは、「やりたい事がかぶっている」他の作品です。ストーリー、絵、映像‥‥いずれの要素も、他人とかぶりたくはありませんし、もしかぶっているならば、他よりも先に世界に発表したいと思います。

私がやろうとしている新しいアニメーションの技術で、根底の技術が「もろかぶり」の映像を見た事があります。1年前の話です。仕事で接したものなので、内部の設計・構造まで見たのですが、「やっぱり、普通にコンピュータを手にしたら、この段階に進むよなぁ」と同感すると同時に、強い焦りも感じました。‥‥なぜなら、垣間みたその技術は、太平洋の向こうの国力のある某大国のものだったから‥‥です。国内だったら「意地比べ」で拮抗しますが、某大国は「底力の差」(70年ほど前、大負けしたよネ)が歴然です。

‥‥やっぱり、「向こう」の人間は往々にしてプロジェクトやシステムに対し思考が柔軟で、かつ合理的だよね。なんかね‥‥、米英独が相応の規模を投じてジェット機を開発している時に、日本ではジェット機などまるで頭になくて、既に限界の見えているレシプロ機で手一杯だった‥‥という、戦時中の状況がかぶって、やるせない挫折感を感じます。こちらは自己研究レベル、あちらは大手でちゃんと予算を投入してスタッフも割いている‥‥、何だ、また負けるんか。

唯一の救いというか、勝機もある事はあります。あまりおおっぴらに言えないですが、国民性‥‥ですかネ。同じ技術を手にしても、やりたい事が全然違うので、そこだけは安心です。ただ、その勝機も、同じ土台の上に立てた場合ですから、今の日本のアニメ制作基盤ではどうにもならぬ、です。

日本では「アニメとは、紙の上に絵を描いて動かし、それをセルに転写して彩色し、レイアウトをもとに背景を描き、それらをカメラ撮影台で撮影するのが、これすなわちアニメである」と信じ込まれており、今は彩色・背景がペイントソフト、撮影がコンポジットソフトにマイナーチェンジした状態です。いくらコンピュータがあろうと、その段取り、‥‥いわゆる「道」は変わる事がありません。

私が垣間みた「向こうのアニメ映像」は、「絵を描く、絵を動かす、今はコンピュータがある、だからこのようにアニメを作る」‥‥という、とても明快な思想を体現した内容です。日本だと前例が無い、で蹴られてしまうような事を、なぜ、欧米は具現化できるんだろう。

日本は、いわゆる「サムライ的思考」が、良くも悪くも残り続けています。悪く‥‥とは、自分の武器に対し過剰なまでに傾倒する事です。自分の武器を信頼するのは何も悪い事ではありませんが、反動として、他の可能性をあまりにも軽視するのです。

私はこうした「サムライ的思考」は、個々の技術の進歩や高レベル維持においては、非常に有用に作用すると感じますが、システム的観点では「変化する事を嫌う」「新しい要素を受け入れない」という「殻に閉じこもる」原因とも感じます。鎖国状態ならそれでも通用するんでしょうが。。。

私の最大の脅威は、国内ではなく、某大国です。1年前にあのレベルに達しているんだったら‥‥と考えると、とても不安な気持ちになります。あのやり方だったら、簡易ではあるけどステレオグラムにも対応できますし、4K,8K,60FPS,120FPSも段階的に対応できるでしょう。私が構想している事と基礎技術はほとんど同じで、このブログで書いてきた事は、「向こうさん」は既にプロダクションレベルでやり始めている‥‥とは、なんともやるせないし、悔しいよネ。

もしサムライが、新しいシステムを受け入れ、その中で卓越したサムライ魂を発揮できたら、どれだけ強力か、と思いますが、新しさを受け入れる事自体がサムライゆえにありえない仮定‥‥なのかも知れません。

70年近く経っても、結局同じ事の繰り返し、か。クールジャパンとかさ‥‥、今のまま自画自賛しているような状態じゃ、クールの意味が「クソサブい」に変化するような気もしますネ。

色彩設計と衣裳

アニメ作品において、キャラデザインの衣装は、原作ありのものはそれを踏襲、オリジナル衣装の場合は、アニメーターが考えてデザインします。

まあ、明らかに限界がありますよネ。アニメーターは、まさにアニメーターであって、衣装デザイナーやコーディネーターでは無いですから。どんなに頑張ったって、衣裳に関わっている時間の差が表れちゃいますよネ。

私は画面作りの初段階でイメージを作る事が多いですが、「キャラと衣裳が、情景を呼び寄せる」方法論も多いにアリ、だと感じます。違う言い方をすれば、衣裳を纏ったキャラクターが、存在感を放射する‥‥とでも言うか。

現在のアニメ制作は、実制作に入ると、「線画ありき」「背景合わせ」の色彩がほとんどで、キャラと衣裳、その色彩がシーン・カットの中心的存在になる事は、ほぼ皆無と言っても良いでしょう。例え、プリプロのキャラ基本色の設計で、精彩な色彩を施したとしても、実際のシーン・カットで巧く扱われなければ、威力は半減してしまいます。「巧く」あるためには、背景にキャラの色を合わせるだけでなく、キャラを中心にして背景が色を合わせるベクトルだって必要です。今のアニメ制作だと、必ず「背景が先手」ですよネ。

私は白いキャンバスから完成に至るまでを描く事も多いので、「線画ありき」「色彩は後で考える」的なアプローチでは得られない、キャラの存在感が画面を圧倒する類いの絵作りも存在する事を承知しております。「キャラの表情、衣裳の色彩」がまず強烈に思い浮かび、背景や線画の処理はその後に招集される‥‥といった具合です。

ただ、その方法論は、実際に現場でやろうとすると、現在の作業システム上で無理が生じますし、何よりも、スタッフが見当たらなくて実現できません。まあ、それは当然。そんな役割など、今まで無かったのですから。

おしゃれな服をチョイスして集めれば良いという訳では、全くないのです。いわゆる、観るものの眼球を通して、脳に刻印するかのごとくの、完全にイメージされた衣裳が欲しいのです。それを表現できるスタッフが欲しい。

私は近い将来、色彩設計というペイント行程で色を決める人が、その役職を兼任してくれたら良いな‥‥と前々から考えています。もちろん、アニメのペイントの知識は必要ですが、それ以上に衣裳の知識、デザイン能力も兼ね備えて欲しいのです。なぜ、ペイント行程の色彩設計さんが?‥‥というのは、ペイント上の限界や作業時間を「読める」からです。実写のままではなく、ペイント・CGという枠組みの知識を踏まえた、衣裳デザインが必要なのです。

まあ、今のアニメ業界のシステムでは、行程的にも予算的にもNGでしょう。ですから、今は単に「夢想」の段階です。

でもね‥‥、アニメ業界ズレした視野でなく、ごく普通に映像作り、作品作りを考えるならば、卓越した衣裳はどうしても必要ですヨ。

以前、北村道子さんと仕事をご一緒した事がありますが、‥‥あんな人が居てくれたら、どんなに作品は豊かで鋭くなる事か。

最初と最後

私はコンポジットの作業者として、各種素材を合成して映像を組み上げる作業を、数多くこなしてきました。また、ビジュアルエフェクトとして、通常のアニメの撮影とは異なったニュアンスの映像を作る役職も長く請け負ってきました。

最後の最後で、「ミラクルな何かを期待される」のは、まあ、ありがちな話です。特効薬としてのビジュアルエフェクト、です。しかし、病人が薬ひとつで快活なスポーツマンのような健康体になるわけも無し。人々の心を振り向かせる映像は、最後の特効薬では成し得ません。

「最後」だけでなく、「最初」もとても重要なのです。この点がよく解ってくれている人は、作品の絵作りの始まりで、声をかけてくれます。つまり、「からくり」を解っているからです。

マジックにはちゃんと仕掛けがあって、大掛かりなものほど、手の込んだ仕掛けとなります。イメージボードという作業は、「からくり」「仕掛け」を仕込む、重要な作業です。

でもまあ、イメージボードと言っても、その捉え方は多種多様で、いわゆる「気分だけ」「気休め」のイメージボードも存在します。描いてはみたものの、あまり役に立たない類いのイメージボードです。

私が重要な要素として捉えるイメージボードは、そのシーン・カットの「マイルストーン」となる役割のものです。もっと強く言うならば、映像が流されないように「くさびを打ち込む」役割、でしょうか。「こんな絵を作ろう」などと言った気分的なものではなく、あからさまに「仕掛けに行く」内容のものです。いわば「時計塔の歯車の構成」を示すレベルにイメージボードが初段で機能しないと、からくりは成立しないのです。

最初と最後を押さえると、多少の出来不出来の上下はあれ、「からくり」は作品に作用し、作風を形成していきます。まるで水路に導かれる水のごとく、映像が意図したベクトルへと進み始めるのです。

これは去年やった作品でも強く実感できた事で、正直、自分でもその効果に(今更ながら)驚きました。美術監督と共同でイメージボードを作る事で土台が強く形成され、その後のプロダクション作業においてあまりイメージボードが持ち出されなくとも、「くさび」として潜在的に作用したのです。もちろん、フィニッシュのAfter Effectsでは、既に「計算ずく」の作業が可能だったのは、言うまでもありません。もしイメージボードで最初にくさびを打ち込んでおかなかったら、作風はどんどん中庸なものへと流されていった事でしょう。

アニメ制作は、絵を作る作業が複数人数で分断されます。ゆえに、全体として「絵を描きあげる」感覚が希薄で、個々の作業者は「絵のパーツを作っている」感覚が支配的になります。

通常、絵を描く間は、絵全体を見渡し、行程を最初から最後まで、考えながら絵を描きます。絵をイメージする人間、下書きを描く人間、色を塗る人間、最終的に仕上げる人間は、同一人物です。ゆえに、からくりが全部見える‥‥というか、からくり構造がリアルに手中にあり、構想から実働、制御までを1人でおこないます。

アニメは1人では作れないので、作業分担する事になりますが、「結局、絵がどのようになるか、誰も解っていない」状態で作業が進み、最後のおとしまえを撮影・ビジュアルエフェクトがつける‥‥というのが、「よくある」話です。しかし、そんな後手の手法、何となくやっつけちゃう方法では、絵の「求心力」は一定のレベルで頭打ちになりますし、何よりも「やっつけた感」が画面から滲みだします。

これは例えるなら、旅行で、やりたい事だけを列挙して、目的地を決めないで、出発するようなものです。‥‥で、なんとなく車を走らせて、行き着いた場所で、「やりたい事に沿うように現地調達する」のです。

あてど無い気ままな一人旅‥‥なら良いですが、大所帯で金もかかる旅行で、行き先を決めずに方角だけ決めて出発するなんて、現実世界では誰もが「そんな事しないよ、普通」と言うでしょう。

最後に「やっつける」ばかりでなく、最初に「期待する結果の通りに、からくりを仕込む」事は、一定レベル以上の作品を造るためには、必須の事なのです。

イメージボード、画面設計って、潜在的に作用するものなので、作品制作が終了すると、その「効能」をほとんどの人が忘れ去ります。「影のファクター」とも言うべきイメージボード関連の作業は顧みられません。

素材だけ渡されて、「あの作品のように」と言われても、同じになるわけがない。まあ、腕試しと思って作業はしますが、事前の仕込みとからくりなしでは、「派手な一発芸」にしかならんのです。

コマ感覚

私は、長年アニメ業界に在籍して、いわゆる「コマ感覚」〜タイミングの感覚が24fpsで体の中に定着しています。

しかし、48,60,120などのハイフレームレートの場合、24コマ視点だと色々と扱いづらい面が出てきます。ゆえに、最近は1秒は1‥‥というような、ある種の浮遊小数点的な感覚でタイミングを捉えるように変えてきています。まあ、24コマの感覚は根強いので、どうしてもクセは出てしまいますが‥‥。

After Effectsのプロジェクト設定は、私は昔からタイムコード表記にしてあります。フレーム数表記は、使いません。シートを照合する際は、テキストレイヤーでシート枚数とコマ数を表示するガイドを作って合わせています。

フレーム数表記は、例えば、シート風に1スタートなら、6秒は1-144になります。私はこの「秒の間隔を直感的に感じない表記」がイヤなのです。「馴れればいいじゃん」とか言う人もいるかとは思いますが、フレームレートが変わる毎に「馴れ直す」んでしょうかネ?  30,60,120fpsの世界では、6秒は144コマじゃないですからネ。

アニメ制作ではなく、映像全般の制作における表現者たるには、フレームよりも秒感覚で体内ストップウォッチを持っていた方がツブしが効くと思うのです。もちろん、音楽の「拍」と同じく、24で秒をグリッドしても良いかとは思いますが、かたくなに24コマだけの世界に閉じこもるのは、少なくとも私は不安を感じます。‥‥というか、私は30fpsも普通に作業でこなさなければならないので、24の感覚のままではいられなかった‥‥のですけどネ。

これは大雑把に時間を捉える‥‥という事ではなくて、むしろ逆です。例えば24fpsの1コマという把握の仕方ではなく、0.04秒と実感する‥‥という事です。24コマに馴れきった体には、結構シンドいかも知れませんが、24コマだって仕事で馴れたんですから、出来ない事は無いです。思うに、0.02秒くらいの分解能は、持てるんじゃないですかネ。ごく普通に16分音符のハイハットが聴き分けられるんですから。

ちなみに、現在私が使っている時間情報テキストレイヤーの一例は、以下の通りです。
もっと高機能な切り貼りシート対応型のもありますし、もっと動作の軽いシンプルなものもありますが、スタンダードなものをご紹介しておきます。


var tsFrameCount=144;//6秒シートの場合

var fps=1/thisComp.frameDuration;
var fr=timeToFrames(time,fps,true);
var value1=getTsTime(fr,fps)["tsFrame"]+" : "+getTsTime(fr,fps)["tsTime"];
var value2=getTsTime(fr%tsFrameCount,fps)["tsFrame"]+" : "+getTsTime(fr%tsFrameCount,fps)["tsTime"];
var tsCount=String(Math.floor(fr/tsFrameCount)+1);

time.toFixed(2) + " / 秒¥r- - - - - - - - - - - - - -¥r" + value1 + " / 全体表記¥r- - - - - - - - - - - - - -¥r" + value2 + " / シート" + tsCount + "枚目";

function getTsTime(framecount,fps){
    return {tsTime:String(Math.floor(framecount/fps) + 100).slice(1) + "+" + String(Math.round(framecount%fps) + 101).slice(1), tsFrame:String(framecount + 10001).slice(1)};
}



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