ビデオカメラの選択肢



高性能な民生用AVCHDビデオカメラや、今どきのコンデジムービー録画機能は、「これで録画は充分」と思う事しきりです。実際、私の所有するソニーの2万円以下のコンデジ(カールツァイスレンズのやつ)のHD録画機能は、そのボディのコンパクトさからは想像もできない高画質録画ができます。

高画質でホームビデオなり取材用ビデオを録る際、もはやプロ用機材にでも手を出さない限りは、「性能はこれでもう上限」か‥‥と思っていると、今年6月頃に発売されるBlackMagicの新製品は、中々に「ソソる」内容を持って、誘惑してきます。

Blackmagic Pocket Cinema Camera

価格は10万円。「え、凄く高いじゃん」とか思われるかも知れませんが、これは、AVCHDのビデオカメラではなく、ProRes422(HQ)とロスレス圧縮で映像を記録できるプロ仕様の超安価な「シネマカメラ」の本体です。「凄く高い」のではなく、「凄く安い」のです。

レンズはマイクロフォーサーズのマウントなので、レンズの選択肢も種類・価格ともに豊富です。紹介ページではLumixブランドのレンズが装着されてますネ。

記録フォーマットはProResコーデックを採用しており、FinalCutでストレスなく編集可能でしょう。422(HQ)なので、HDCAMよりも高画質です。220Mbps(30fps時)の余裕は、画質にもしっかり表れます。ちなみにAVCHDは24Mbps程度、Blu-rayは30〜50Mbps、HDCAMは144Mbpsです。
*テープで編集渡ししていた時代は、私にとって、暗黒時代でした。ProResなどのデータ渡しフローなら高画質&スピーディーなのが解りきっているのに、HDCAMにテープ落としする悲しさといったら‥‥。居残りのテープ落としで時間を浪費し、トーンジャンプなど画質も劣化して、さらにランニングコストも高い。データで映像を作っているのに、テープ運用をいつまでも続ける‥‥。有効・有用なテクノロジをいつまでたってもフローに導入できないアニメ業界の限界を思い知る、数ある側面のひとつ‥‥でしたネ。

BlackMagicは、この他にも、USB3.0&ThunderboltでHDMIや各種ビデオ入力をキャプチャする機器を、2万円で発売してたり、プロにもアマにも訴えかける製品を多くリリースしています。

ポケットシネマカメラ。発売後のレビューが楽しみな製品です。

壁掛け扇風機

自宅の作業場に壁掛け扇風機を設置しました。クーラーに頼りきるのは色んな意味で避けたいので、クーラー微弱&空気循環で夏場を凌ごうと思っております。

いつものようにアマゾンで安いリモコン付き壁掛け扇風機を買ったのですが、通販は実物が来るまで解らないのが難点です。モーター製品は騒音の問題があるので、結構「賭け」な買い物です。

私が買ったのは、テクノスの「壁掛け首振り扇風機 30cm」です。結果は「中辛」で、文句も無いけど、満足もしない‥‥という感じでしょうか。あくまで、私の感想です。

結構、様々なメカニカルノイズを控えめに発します。風を切るブレードが存在するのが扇風機ですから、音がしないわけも無いのですが、「音程のとれる」音を微かに発するので、やや気になります。Abの音が風量の強弱に関係なく発生します。回転数の上下で音程が変わらないから、ブレードの回転とは関係ないように思われます。

首を振る時にもカタタ‥‥と音が発生してたのですが、1日使い続けるうちに消えました。馴染んだのかな? まあ、メカでは「慣らす」事で、メカニカルノイズが消えたり振動が少なくなったりする事はよくある事です。ヘッドフォンもそうですネ。買ってすぐに本来の性能が出る訳じゃないのがメカですから、まずは2週間くらいは慣らし運転期間です。

壁への設置は、いつものように、アンカーを埋めこんで、付属の壁掛け金具を設置しました。石膏ボードなので、アンカーによる下地は必須です。

私は空気の循環用途で導入したので、天井に近い高い設置位置です。‥‥ふと思ったのは、リモコンで左右の首振りだけでなく、上下も操作できないかな‥‥と言う事です。が、まあ、コスト面で難しいのかな。



QTのデュレーション取得スクリプト

色々弄っているうちに、「せっかくだからルーチンとして完成させてしまえ」と思い、前々回書いた、QuickTimeムービーのデュレーションを得るスクリプトをサブルーチンにしました。

以下。

tell application "QuickTime Player 7"
    my getQTDurationInfo(document 1, 8) 
end tell

--以下からサブルーチン

to getQTDurationInfo(_document, _offset)
   
    set _frameDuration to false
    try
        tell application "QuickTime Player 7"
            set _duration to duration of _document
            set _timeScale to time scale of _document
           
            repeat with t in tracks of _document
                if (type of t) as Unicode text is "vide" as Unicode text then
                    set _frameDuration to duration of frame 1 of t
                    exit repeat
                end if
            end repeat
        end tell
        if _frameDuration is false then return false
    on error msg
        display dialog msg--エラー時、いちいちdialogが出るのがイヤな場合はコメントアウト
        return false
    end try
   
    set _fps to (round (_timeScale / _frameDuration * 1000)) / 1000
    set _rfps to round _fps
    set _sec to _duration / _frameDuration / _rfps
   
    set _frameCount to (_sec * _rfps - _offset) as integer
    set _sec to _sec - (_offset / _rfps)
   
    return {movie_frame_count:_frameCount, movie_seconds:_frameCount div _rfps, movie_frames:_frameCount mod _rfps, movie_time_info:((_frameCount div _rfps) as Unicode text) & "+" & (characters 2 thru -1 of (((_frameCount mod _rfps) + 100) as Unicode text) as Unicode text), movie_time:(round (_sec * 100)) / 100, movie_framerate:_fps}
end getQTDurationInfo

上記ルーチンで、23.976, 24.0, 29.97NDF, 29.97DF, 30.0の5種類のフレームレートを試しましたが、全て期待した結果を返す事を確認しました。

パラメータ「_offset」はボールド(スレート)のフレーム数を入れると、尺から指定フレーム数だけ差し引いて、デュレーションを計算します。

(12+20)で23.976fps、ボールド先頭8フレのQTで試すと、

{movie_frame_count:300, movie_seconds:12, movie_frames:12, movie_time_info:"12+12", movie_time:12.5, movie_framerate:23.976}

‥‥のような結果を返します。ちゃんと8フレのボールドを差し引いた"12+12"になっていますネ。

さらに、(12+25)で29.97fpsノンドロ、ボールド先頭10フレのQTで試すと、

{movie_frame_count:375, movie_seconds:12, movie_frames:15, movie_time_info:"12+15", movie_time:12.5, movie_framerate:29.97}

‥‥のような結果を返します。これも合ってますネ。

60秒の29.97fpsノンドロは、

{movie_frame_count:1800, movie_seconds:60, movie_frames:0, movie_time_info:"60+00", movie_time:60.0, movie_framerate:29.97}

となり、期待した結果になります。QuickTime Playerの情報ウィンドウだと「0:00:01:00.06」とか表示されて混乱しますが、上記ルーチンはちゃんと60秒ジャストの尺を返します。

ちなみに、尺が(59+28)のドロップフレームのQTをルーチンで処理しても、ちゃんと59+28を返します。

日々、こうしたルーチンをストックし、スクリプトコンポーネントに書き込んでおくと、とても楽に、面倒な処理のスクリプトがスッと作れるようになります。

スクリプトコンポーネントは単にサブルーチンを記載したスクリプト書類です。load scriptでスクリプト書類を読み込み変数に入れて、中身のサブルーチンを呼び出すだけです。

set myComponent to load script [任意のファイルオブジェクト]
set theResult to myComponent's getQTDurationInfo(document 1, 8)

最近は、本業を絵作り中心に戻そうと思っていますが、やはり、スクリプトで環境を武装しておかないと、不毛な時間的ロスが発生し、巡り巡って、絵作りの時間が奪われる事になります。あまり夢中になりすぎないように、自制しながら、スクリプトやプログラムと付き合い続けていこうと思っています。

ちなみに‥‥AppleScriptをいじった事がなく、他の言語でプログラムをやる人は、

 if _frameDuration is false then return false

‥‥なんて記述を見ると、不思議に思う事でしょう。AppleScriptは、値が存在すればtrueになるわけでは無いのれす。undefinedとかをfalse扱いにしたりも出来ません。いわゆるundefined的なものは、AppleScriptにおいては、スクリプト文の構造上の欠陥と見なされます。「存在しないならfalseだよ」とは行かず、「存在しないのはスクリプト文のエラーだ」となります。‥‥めんどくさいっすネ。結構、「型にウルサイ」やつなのです。


追記:ルーチンにちょっとミスがありました。ビデオトラックを検索する部分です。

誤記「set _frameDuration to duration of frame 1 of track 1 of _document」
訂正「set _frameDuration to duration of frame 1 of t」

誤記のほうは、何のためにループ文でトラックを検査しているのか、意味の無い書き方になっちゃってますネ。見直してたら気付きました。
‥‥まあ、いわゆる「撮影上がり」はビデオトラック1つだけの事が多いので、エラーもなく完了する事も多いのですが‥‥。


Numbersのスクリプト制御

NumbersはそこそこにAppleScriptで自動制御が可能なので、使う気になれば、色々な場面で役立ちます。Numbersの関数と、AppleScriptの各種コマンド、AppleScript上で作った自作の関数などを組み合わせると、日々の作業や日常生活で特に不満を感じる事なく、便利に使えます。

表計算ソフトウェアとしてのExcelの優位性は疑う余地の無いものですが、前に書いたエディットシート程度の内容や、バーコードなどのラベル作成、当座の集計表くらいならば、Numbersで充分こなせますし、レイアウトの自由度が高く、フォントが(お金をかけずに)奇麗なのは、Numbersならでは特徴です。おそらく、Numbersの開発意図も、Excelと「ビジネス分野で競合するつもりはない」のでしょう、Excelのビジネス寄りの盲点を突いた設計思想になっていますネ。

Numbersをスクリプト制御する際のコツは、「ある程度、Numbers内で作っておく」事です。要は、Numbersの関数と協同してスクリプトを実行するわけです。例えば、行番号はNumbersで「row()-1」(1行目が見出しの場合)で自動表記するようにしておいて、コンテンツはAppleScriptで流し込む‥‥みたいな。そうしておくと、後で「この行は不要だ」と削除した時に、いちいち行番号を書き変えなくてすみます。行番号までAppleScriptで流し込むと、任意の行を削除した時に面倒な修正が必要になります。

レイアウトもスタイル(フォントや文字サイズ、字体や装飾)も、Numbersであらかじめ作っておきます。スタイルや行揃えまでAppleScriptで制御しようとすると、無駄にスクリプト作成に時間がかかります。行を追加した時などは、Numbersはスタイルを前の行の状態を継承しますので、スタイルもひな形で事前に作っておけば、AppleScriptでの手間を省けます。

ただ、スタイルは「セルに1種類」と考えて、ひな形を作る必要があります。Numbers上では、セル内で内容文を改行し、行ごと(文字ごとでも)にスタイルを使い分ける事は可能ですが、AppleScriptで単純に値を流し込むと、行頭のスタイルで全て統一されます。スクリプトに対応するひな形のデザインをおこなう事で、最小限の手間でNumbersを思いのままに自動制御できるようになります。

私は、NumbersとAppleScriptを用いて、倉庫収容物のデータベースからバーコード付きラベルを印刷したり、QTファイルのレンダリング速度のアベレージを一覧表にしたり、「手でやると面倒な」作業を自動化しています。

アニメ制作においても、制作さんからCSVファイルを提供してもらい、自分の作業内容と照合して、結果をNumbersの表に出力するような事もできます。

人間の時間は限られたもの、24時間から睡眠時間を除いた時間しか与えられていなので、コンピュータでもできるような仕事は、どんどん自動化して、人間でしか出来ない事柄に時間を費やすべき‥‥と考えているのです。

このあたりの記事は、「片手間スクリプト」的なコラムにまとめて、もっと詳しくコードとかも書いて、リファインすべきかな‥‥とは思っております。Macを使ってるんなら、AppleScriptやiWork、XcodeやObjective-Cを使わないのは、もったいないもんネ。

QuickTime Player 7 と Numbers でエディットシート

今更ながらの話題ですが、QuickTime Players 7とNumbers、そしてAppleScriptがあれば、QuickTimeムービークリップの基本事項を記した一覧表、いわゆるエディットシートを自動で作る事ができます。最近、必要に迫られて昔のスクリプトをブラッシュアップした事もあり、忘れないうちに書き留めておきます。

NumbersはMacOSXの定番表計算ソフトウェアですが、システム標準装備の奇麗なヒラギノフォントなどを用いて作表できるので、見栄えの良いドキュメントを作成できます。AppleScriptを用いて、セル内の値の書き換え、行や列の追加などが自動処理できるので、ひな形ファイルでスタイルを作っておけば、最小限の手間で、スタイル付きの読みやすくて奇麗な表を作る事が可能です。

一方、QuickTime Player 7 は、AppleScriptを用いて様々な操作を自動で処理する事ができます。フルコマ〜数コマ毎の連番書き出し、映像の変換、字幕やインデックスの挿入、映像のカット&ペースト、サイズの変更など、自動処理できる内容は盛りだくさんです。もちろん、ムービーファイルの情報取得も可能です。

Numbersはひな形ファイルをまず作ります。タイトルのテーブルを作り、一覧表のテーブルも作ります。表に名前をつけておけば、「table "お好みの名前" of sheet 1 of front document」で任意の表へとアクセスできます。セルの指定はとても単純で、1行目左からカウントしていくだけです。例えば、8列2行の最終セル〜つまり一番右下のセルは「cell 16」となります。

行を下に追加したい場合は、add row below cell [セル番号] で簡単に追加できます。例えば、先ほどの8列2行の表に行を1行追加したい場合は、add row below cell 9、または、add row below cell 16などで下に追加されます。命令自体はとても簡単。

セルの内容を書き換えたい場合は、set value of cell [セル番号] to "ほにゃらら"で書き換えられます。空欄にしたい場合はvalueを""にすれば良いですネ。

ひな形ファイルはFinder上で複製して日付でリネームするのが楽です。日付けは、do shell script "date +%y%m%d"で、容易に省略した年月日が取得できます。"130510"のような書式は、下手にdateクラスを使うより、shellのdateコマンドを使ったほうが断然楽ですネ。

表の操作が可能になれば、あとはQuickTime Player 7で取得した情報を各セルに流し込むだけです。

QuickTimeはDuration(いわゆる尺ですネ)をタイムスケールの単位で表します。タイムスケールが480だった場合は、10秒は4800という値になります。タイムスケールは大きな数値の事もあれば、24という素直な数字の事もあるので、実際のファイルから取得して計算するのが安全です。duration / time scale で秒数は取得できますが、24コマ表記にする場合は、ちょっと頭をヒネって、変換式を作ります。

ビデオそのものの情報については、「ビデオトラック」の情報へアクセスします。コーデックを知りたければ、「data format of track 1 of document 1」です。
*これはPlayer上で一番手前のドキュメントで、かつトラックがビデオトラック1つだけの時に有効なスクリプト文です。トラックが複数ある場合は、track 1 でビデオトラックを指定できるとは限りませんので、trackの種別を調べてから情報を得る必要があります。でもまあ大概、After Effectsでレンダリングした「撮影上がり」QT は、トラックは1つだけです。

ビデオトラックよりもさらに細密なframeにアクセスすると、フレームレートなどが計算できます。ただし、23.976fpsはちょっと厄介です。「例の誤差」はご多分に漏れず、QTでも発生しますので、めんどくさがらずにサックリ対応します。

QuickTimeの場合、1分につき0.06の誤差が発生し、情報ウィンドウにも本来「60秒」であるはずが、堂々と「60.06秒」として表示されます。しかし、これではNG。しかと本来の尺になるよう工夫します。例えば、以下みたいな。

tell application "QuickTime Player 7"
    set dur to duration of document 1
    set ts to time scale of document 1
    set f to duration of frame 1 of track 1 of document 1
   
    set fps to (round (ts / f * 1000)) / 1000
    set sec to dur / f / (round fps)
end tell

duration of frame 1 of‥‥の下りは、After Effectsで言う「frameDuration」ですネ。fpsはそのまま計算すると「23.976023976024」なんて数値が返るので、野暮ったいやり方ですが、下3桁に丸めています。

上記スクリプトで処理すると、60秒のムービーはちゃんと60の値を返します。60.06(60+1)とかにはなりません。

fpsは23.976ですが、実際は24(四捨五入で)で計算をし、60秒ジャストの尺が返るようにします。せめて未来の120fpsは120.0であって欲しいですが、59.94なんてレートが存在するから、やっぱりダメだろうなあ。

そんなこんなで得た情報を、Numbersの表に流し込むと、整然とした書式の一覧表が出来上がります。

ブログなので、細部の説明はかなり端折っていますが、いつか本家サイトで詳しく紹介できたらと思います。



お役所仕事と萬屋仕事

私が以前書いた「作業区分を作業基盤で明確にすべし」という論調は、ともすれば、柔軟性を欠く、お役所仕事(と一般に言われている)に終止する危険性をはらんでおります。

かといって、あまりにも何でも対応すると、些末な事や前例のない事を大量に「タダ」で引き受けて自滅しかねません。

難しいものです。

私の場合、まず、「今回の作品の自分の役割」を明確にして、キャパシティと作業費目を確定します。撮影監督と撮影一式を自分と自分の部署で引き受ける場合は、人員と一日あたりの作業消化ピーク、各スタッフの技量などを考慮して計画を立てます。撮影監督としては、カット内容の監督・演出さんとのやり取りはもちろん、カットの詳細を記録・照合するデータベースも稼働し、作業記録もとっていきます。コンポジットの映像表現者だけでなく、作業事務も兼任するわけです。高品質な映像をコンポジットし、編集入れで尺やカット漏れがないように厳密なチェック機構を設け、かつ納期にも間に合わせるように、体制を敷きます。可能な事と不可能な事を、監督・演出さんに理解してもらう折衝もおこないます。

エスカレートする要求を抑えつつ、枠内でクオリティを最大にしようと努めるのです。枠内でできない作業内容は事情を説明して断る事もします。

一方、特殊なコンポジット内容を集中して引き受ける時は、撮影監督の意識とは全く変わります。納期を守る事はもちろんですが、全体視野ではなく、引き受けたカットのクオリティを特に重視するスタンスへと変化します。監督・演出さんの難易度の高い要求も、できるだけ期待に応えるべく、通常の撮影ではクオリティオーバーな内容も積極的に引き受けます。

現在のソフト・ハード性能を最大に活用しようと努め、従来の枠から飛び出たオーダーにも、積極的に対応します。今までにない作業内容でも、できるだけ引き受けて実現できるようにします。

つまり、引き受ける役割〜作業費目によって、私は「お役所」と「よろずや」の側面を使い分けている事になります。

しかし、こうした使い分けは、私だけの自己操作で成り立っているとは言い切れません。むしろ、私を使う監督・演出さんとの日頃の付き合いがあってこそ‥‥かも知れません。「使いどころ」を知っている人と一緒に仕事してこそ、最大限に能力が引き出せるだと思っています。

つくずく、自分は「工場型では無い」なと思います。「工房型」なんでしょう。

私が工場型をどうしても受け入れられない理由はいくつもありますが、解り易い理由としては、「工場の生産ピークに合わせて体制を組むと、工場はそのピークを保つように仕事を回さないと、立ち行かなくなる」と言う事です。

アニメって、工場で作るような需要が、未来まで継続するんだろうか。6年後、12年後、24年後、需要は維持されるのか。需要が減った時、どこにしわ寄せが行くのか。

そんなわけで、私は今は、「その時必要だから」という理由で、安易に人を増やせない、増やすべきではない‥‥としみじみ実感しているのです。「勝ちのパターン」が明確に、具体的なものとして、見えてこない限りは。

‥‥話題を元にもどして、この「お役所」と「よろずや」のバランス感覚、使い分けは、実はかなり重要な要素だと思います。

作業に目の回る日々を重ねていると、使い分けなんて面倒でできなかったり、12年後の自分を想像して今から準備するなんてやる気が出なかったりしますが、これは自分をプロデュースする上で、どうしても必要な行為・取り組みだと考えています。

ぶっちゃけ、タイムスリップして、30代の私に強く言い聞かせたい気分なのです。

使い分けなどの運用面、6年毎の近未来への準備、12年後へのインフラ構想などは、実は30代くらいのキャリアを積めば、充分行動開始できるものです。要はどれだけ、そこに意識を向けられるか‥‥です。

私はあと6年、はやく行動できてれば‥‥と、やや後悔。6年の意識の遅れはキビしいですが、取り戻そうともがいております。

HDDのプチ整理

連休中作業の代休に、自宅のHDDを少しだけ整理しました。新たなハードは買わず、既存の中でやりくりして、データをカテゴリごとに整理したのです。

作業環境がMac ProとMac mini i7の2つに増えてからというもの、今まで以上にデータの置き場が混乱し、合理的とは真逆の方向へ邁進しておりました。そこで、Mac mini Serverに増設済みのHDDへとデータを移動し、特に速度を問わないデータはファイルサーバ管轄へと変更したのです。

で、久々にMac mini Serverのデスクトップに遠隔ログインしてみて、驚き。半年前に、「データ混乱への危機感」から、既に5TB(=バックアップ含めて合計10TB)のディスクスペースをセットアップ済みだった事を思い出しました。‥‥半年も空のディスクがサーバで常時稼働してたとは、我ながら、マヌケ。HDDを増設したのは記憶してましたが、5TBも用意してあったとは‥‥。

Mac Proには、PowerMac8600(1997〜98年発売)からのデータも継承されており、ドキュメント、映像、音楽、アーカイブなど全部入ったマシンでしたが、サーバへとデータを移動し、Mac Proは作業端末としての「第2の人生」へと移行しました。

Mac mini Serverは、3時間ごとのバックアップにセットしてあり、間違ってサーバ上のデータを消去しても、3時間以前の履歴から復活できるようにしてあります。本当は1時間ごとのバックアップにしたいところですが、私しか使わないサーバなので、3時間ごとで充分と判断しました。ちなみに、作業端末上は1時間ごとのタイムマシンバックアップが動作しています。

以前書いたQnapのNASは、もう少し未来まで待って、今はMac mini のUSB接続のHDDの共有で凌ごうと思っております。


環境をどうする

私は去年のAdobe CC(Creative Cloud)サービス開始と同時に、予約までして使い始めたクチなので、今回のCCへの一本化は特に大きな衝撃なしに受け止められました。

ただ、最初から「旧ライセンスは破棄しても良い」なんて思えたわけではなく、CCを1年間使ってみて、「過去のライセンスを諦められるキモチになった」のです。さすがに1年前の段階では、「CCを契約したから、今までのライセンスはもういらない」とは決断できませんでしたネ。長い事、継承し続けたライセンスだもの。

アドビはアップグレードの「有効期限」がありますので、あまりにもアップグレードしないでいると、アッブグレードの権利を失効してしまいます。これは言わば、「アップグレード料金の定期支払い」を仕組まれているわけで、実は以前から、「ソフトを買えば安泰」なわけでは無かったのです。

私はCS5のままで止まっており、去年CCを契約した頃は、CS5.5に対応できずやりずらさを感じていたのですが、CCを導入した途端に、最新&全開でソフトウェアを使えるようになりました。

ただ、必ず新しい環境を導入すべきかは、考える余地がありそうです。

自社の作風を持ち、ブランド戦略が通用するところならば、あえて「環境を凍結」して手堅い制作環境でブランドを維持するのもアリ‥‥かも知れません。

実は私も、「環境の固定」を考えた事がありました。2005年頃で、まだ業界フローに光明を見いだそうとしていた頃です。野方図に新しいものを導入して環境が崩れるよりも、手堅く制作できる環境を考えたのです。

私はMacOSを昔から使っているので、「いつ、土台が無くなるか、わからない」強迫観念とともにありました。つーか、未来もそうか。‥‥Windowsユーザの人からは「可哀想に」と思われるかも知れませんが、土台がひっくり返るかも知れない危機意識を持ち続ける事は、あながち悪い事ばかりではありません。「どのように土台を形成するか」に、絶えず意識が働きますからネ。

しかし、業界の動向が「本撮は3日あれば良いほう」みたいな意識へとどんどん流れて、作業は過酷になる一方、このまま業界フローに巻き込まれていると「早死に」は必至と思うに至り、安住の土台など無い事を悟り、新しい制作方法を模索し、環境も新しいハードとソフトを求めるようになったのです。

私の取り組んでいる制作手法は、新生児のごとくの制作スタイルなので、ブランド力などありませんし、フローを育て上げるためにも、新しいハードとソフトは必須となるでしょう。なので、CCベースの環境は必然的です。

しかし、アニメの旧来スタイルやブランド力を継承し、CCを必要としない作業グループ・流派も、有って良いと思います。本当にCCへ移行すべきか‥‥を問うてみるのも、必要だと思います。特に、CCは「使い始める時に、全てのアプリが提供される」ので、移行を悩む間は、従来のCSで作業するのもありでしょう。

恐らく、業界全体としては、成り行きでなんとなくCCを導入して、やっぱり成り行きで作業区分が今以上に曖昧になり、ギャラ据え置きでコンピュータを使用する作業者の仕事が増える‥‥ような未来へと進むように思われます。これは未来の予言ではなくて、過去のいくつもも業界の事例を言い換えているだけです。業界の歴史を振り返れば、黙示録が浮かびあがります‥‥よネ。

各自、各グループ、各社、どのようなポリシーで環境を構築していくのか。そしてどのような未来になるのか。

私は覚悟を決めておりますが、‥‥皆はどうなんだろうか。そもそも、覚悟なんてしない‥‥のかな。

CC、よく考えてみれば

CSラインを廃止‥‥というか開発終了して、Creative Cloud〜CCへと移行する事をアナウンスしたアドビ。「今までのCSユーザはどうするんだ!」と困惑する人も多いのではないか‥‥と思います。

CS6の、新しいOSへの対応などは、アップデートで対応する‥‥としていますが、まあ、どこまで対応が継続するかは怪しいところです。今までのアドビの「物腰」を見ていれば、旧システム、旧バージョンのユーザーへの対処が「手厚かった」印象は薄いもんネ。

結局は、アドビの製品群を未来も使い続けようとする限り、CCへの移行を余儀なくされるのでしょう。今までのアドビ製品で充分‥‥という人は、システムとソウトウェアのバージョンアップを停止・終了して、「環境を更新しないで使う」工夫が必要になり、新しいアドビ製品を使いたい人は、CCを契約する事になります。

CCは「使い続ける限り、必ずお金を払い続ける」システムですから、歯に衣を着せずにぶっちゃけて言うと、「アドビをどこまで信用できるか」に尽きるでしょうネ。

そんなこんな状況を前にして、アニメ業界の事を考えてみれば、CCを各社・各フリーランスが導入した場合、様々な未来の状況が思い浮かびます。

まず、目先の事で考えてみましょう。今までソフトウェアの導入費用と更新費用を「倹約」して、限られたソフトウェアの旧バージョンを使い続ける事も多かったのですが、CS7(相当)以降を使う場合は「新製品導入とバージョンアップ費用が月額利用費の中に含まれている」ので、いつでも「MAXの状態」でアドビ製品を維持できる事になります。

‥‥これって、アニメ業界にとっては、大革新だよネ。まあ、もしCCへ移行すれば、ですが。

CCが導入されれば、バージョンの相違に悩む事も無いし、誰かのお下がりの旧バージョンを使う必要も無い。IllustratorやPremiereも使いたい時に自由に使える。アニメ現場では「夢のまた夢」だった事が、当然のように、普通に可能になるわけです。

ただ、この大革新が、近い未来のアニメ業界に「吉」とでるばかりとは限りません。

アニメ業界のセクショナリズムは、ソフトウェアによって「結界を張っていた」側面も多いからです。

すぐに考えつくシチュエーションは以下。

 演出「悪いんだけど、このTargaをaiファイルに起こしてから、撮影してほしんだけど」

 撮影「えー、aiファイル化なんて、撮影の仕事じゃないですよ」

 演出「でも、Illustratorもインストールされてるんでしょ?」

 撮影「それはそうですが」

 演出「毎月利用料払って、せっかく導入してるんだからさ。やってよ。」

 撮影「‥‥‥」

‥‥みたいな。いわゆる「ソフトがないから出来ない」という断り方はできなくなります。これは単に作業上だけの問題ではなく、「作業の対価」という面でも重大な問題を引き起こします。

今でさえ、「グラデーション背景なら撮影でできるからタダになる」とか、「作画の枚数減らしを撮影に負担させればタダになる」などのやり方が、様々な作品で散見されるのに、今以上に、作業費を「うやむやにしてカットする」行為がエスカレートして、「酷い事」になる‥‥と思うんですよねぇ‥‥。

今のアニメ業界の体質にCCが導入されると、はじめのうちは「何でも最新で使えて嬉しい」と喜ぶかも知れませんが、その後からじわりじわりと、「何でもやらされる」過酷な日々がのしかかってくるように思います。

要は、ソフトウェアによる区分けでなく、作業区分による区分けをハッキリさせておかないと、マズい事にいくらでもなる‥‥という事ですネ。


 演出「悪いんだけど、このTargaをaiファイルに起こしてから、撮影してほしんだけど」

 撮影「aiファイル化は別セクションの作業項目ですので、そちらに作業依頼してください。」

 演出「でも、Illustratorもインストールされてるんでしょ?」

 撮影「Illustratorに限らず、編集ソフトのPremiereなど、全てインストールされていますが、作業区分が違うので、お引き受けできないのです。」

 演出「毎月利用料払って、せっかく導入してるんだからさ。融通効かせて、やってよ。」

 撮影「それでは、新たに作業品目として費用と、作業にかかる期間を設定して、作業依頼してください。内容を精査し、お引き受けできるか、検討します。」

 演出「何でもできる環境なのに、引き受けてくれないの?」

 撮影「ではあなたは、紙と鉛筆が使えるからと言って、原画や動画を引き受けますか? 要は技術基盤の問題なのですよ」

 演出「ソフトがあれば、誰でもできるのが、コンピュータじゃないの?」

 撮影「‥‥というのであれば、あなたがご自分でおやりになれば良いのでは?」


ハイ、終了〜。これ以上続けても、どちらかが折れない限り、平行線ですのう。この状況をフォローする制作さんの苦労は如何ほどか‥‥。
*ちなみに、上記の想定会話は、デジタルを「タダで簡単に使える」と思っている、少数のダメな演出さんを模しています。色々と配慮して動いてくれる、監督・演出さんも大勢いらっしゃいます。

アニメ業界って、強烈なセクショナリズムで総合的な品質を維持してきたとも言えます。しかし、デジタルが導入されて、セクショナリズムに小さな裂け目ができて、ちょいちょいショートカットする行為が増えました。CCの導入は、その裂け目を大穴に広げる可能性(危険性?)がある‥‥と感じます。ただし、その穴は、4〜6年くらいで徐々に広がってくるので、危機管理をすり抜けて、「いつのまにか、辛い事になってた」という結果になるかも知れません。

道は2つ。

安易にソフトウェアでセクションの境界を作るではなく、あくまで「技術基盤で境界を形成し、「作業費目を明確にする」事です。これは現場が理性的であれば、成し遂げられるんじゃないですかネ。既に実践している現場もあると思います。

もう1つは、「現在保有する技術基盤をもとに、デジタル時代の新たな制作ドクトリンを考案し、ゼロから組み直す」事ですが、これはほぼ無理(=昔のままで作りたい人が大多数)だと思っているので、実質的な対処案は前者のほうですネ。

‥‥で、日頃私が取り組んでいる新しい方法(道で言うと、3番目の道)は、技術基盤すら変わる内容なので、CCとの相性が抜群に良いのです。アニメーターは、素でPhotoshop・After Effects・Illustratorを使いこなし、色彩設計はPhotoshop・After Effects・Illustratorに加えてPremiereをも使うかも知れませんし、ペイント行程ではPhotoshopだけでなくIllustratorも活躍します。アニメーターがモーションを作った時点で「線撮・タイミング撮」相当の出力が可能になりますし、レイアウトを組む時点でコンポジットの「素組み」になるので、撮影と呼ばれていた行程は、ビジュアルエフェクト要素だけ残して、各セクションに分散吸収されます。ビジュアルエフェクト行程は、After Effectsに加えて、Photoshop ExtendedやPremiereなども併用します。アニメ業界とは異なる全く新しい概念が基盤となっており、CCはその骨格を豊かに肉付けする役割を担う事になるでしょう。

‥‥なので、私は去年早々にCCへと乗り換えたのです。ツールの有機的な使い方を考案するために、CC(つまりはAdobe全製品)はどうしても必要だったのです。

アニメ業界はどのような選択をするのか、‥‥といっても、アニメ業界という人格があるわけではないので、「全般的・最終的にどのような結果となったか」があるだけですが、私は過去10年の業界の様子を見るに、あまり良い方向には向かわないような気がしてます。なんだかんだと、自発的に「窮状」の方向に向かうのは、‥‥誰も望まない事でしょうけど。。。

しかし、変換ミス

こんな感じで、文章は書くけど、文字は書かない私。

簡単な変換ミスがあっても、なぜか、それにしばらく気付きません。

前のブログのタイトルの「移行」を、「以降」と書いたまま、半日くらい気付かなかったし。


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