時計が出た

今日発表されたアップルウォッチは、結構前から予言されてた製品で、‥‥という事はどこかの誰かが内部情報をリークした‥‥という事ですね。アップルが時計型のガジェットを開発している噂は、結構前からネットで見かけましたもんネ。‥‥そんなこんなを考えると、アニメ業界の人々って、口が堅いスよね。例のジブリの件だって随分前から内側には流れてたのに、全然オモテには出なかったですもん。

アップルウォッチに関しては、スマートフォンの機能を使い倒している人ならば、魅力を感じるものなのかも知れませんネ。私はiPhone6が発表された今でもiPhone4SでiOS6、よく電池切れで放置してたりするくらいの人間なので、アップルウォッチに高い興味があるかと言うとビミョーです。ただ、お気に入りの登山用時計の電池が切れて久しいので、Mac/PCで管理できる時計があってもそれはそれで良いかも‥‥くらいには興味があります。あまり積極的に使っていないiPhone4Sだって、やっぱり便利なのは事実で、生活の一部と化していますもんネ。同じく、アップルウォッチが手元にあれば、それなりに生活に取り入れちゃうんだろうな‥‥とは予想します。「イノベーション」と呼べるまで私の生活がアップルウォッチで変わるとは思えませんが、確実に「あればあったで、使っちゃう」ガジェットだとは思います。



頻繁に外を走りまわる人にとっては、iPhone6やAppleWatchは魅力的なのかな。私はじと〜っと机にへばりついて、ものを作る商売なので、快活に動き回る「企業戦士」とは真逆のディテール。アクティブに動くのは頭の中がほとんどで、身体は運動不足が深刻なくらいに動かしません‥‥。‥‥なので、「室内で起こるイノベーション」をもたらす製品じゃないと、結構「隣町のお祭り」のような感じです。

‥‥で、やはりと言えばやはり‥‥、「放置プレイ続行中」のMac miniラインアップの更新はナシでした。昨日の時点でMac miniのアップルストアでの表示が「出荷24時間以内」になっていたので、「今回は無いだろうな」と思ってました。もしかしたら、ひっそりとクロック数だけ上がって、近々更新される可能性もありますが(アップルの更新パターンとして)、それも実際のところはインサイダーしか解らん事でしょうネ。

でもまあ、Appleに限らず、最近のデスクトップコンピュータは、派手な性能向上はご無沙汰です。ぶっちゃけ、ゴミ箱型のMac Proだって、見た目は斬新ですが中身とその性能は「見た目ほど」ではないですからネ。映像制作のプロ現場では、性能の小さな差が積もり積もって大きな差になりますが、一般家庭レベルではそもそも「積もり積もるような生産はしない」事がほとんどなので、iMacなどのコンシューマ向けのi7製品で充分です。40万円も出して個人が6コアのMac Proを買っても、その「対費用効果」は薄く感じられるでしょうネ。BTOでi7の最高速にしてメモリ満タン32GBにしたiMacはかなり速いですから(=「ジョバンニの島」の特殊撮影&グレーディングはそれで全て作業しましたしネ)

コンピュータ製品自体が行き詰まっているのかな‥‥。でも、家電業界でワサワサしてる4K8Kに対応(=高速な生産・運用)するならば、今のMac Proですら、性能が大きく足りてないですもんネ。しかしまあ、今までの10年間がたまたま「楽」(アニメ業界の映像スペックと比して)だっただけで、「マシン性能とやりたい事とのせめぎ合い」の状態にまた戻るのならそれでもOK。横ばいの現状が続いて「時間とお金の安売り」合戦を繰り広げて、「皆で貧乏になるのなら我慢する」という未来よりも、知恵を振り絞り、高い技術力を勝ち得たグループが、良い条件を獲得し頭角を現すほうが「苦労する甲斐があり」ますもんネ。

Mac miniの更新は、あるとすれば10月後半なのかな。‥‥小更新でもいいから、はよしてチョ。

第1志望‥‥

就職の話題が聞こえてくるシーズンになってよく思うのは、新人・新卒の人は、第1志望の場所に行かないほうが、結果的に良いんじゃないか‥‥と言う事です。遅かれ早かれ、若年の頃の理想や夢なんていうのは、ブチ壊れるんだから、第1志望のところにストレートに進んで、そこで決定的な挫折をするよりも、キャリアをある程度蓄積してから第1志望だった「本質」にカブりついた方が良い結果になる‥‥と、色々な出来事を見ていて思うのです。

だってさ、第1志望のところに行ったって、幻滅や失望は必ずあるもん。

しかも、自分の目標を「第1志望に合格する」なんて設定しちゃうと、受かった時点で「終了」じゃないすか。‥‥なんて、寂しい事だろうか。

希望する会社に入れないと自分の夢は実現できない‥‥なんて、「会社を買いかぶり過ぎ」です。むしろ、枠にハメられて身動きができなくなって、辞めていく人間が多いんじゃなかろうか。もしくは自分の夢とは裏腹に、「それ専用」の人間としてしか生きていけなくなったり。

私はそれこそ、「吹けば飛ぶような新人のフリーアニメーター」として第一歩を踏み出しましたが、まずは「自分に作業依頼が絶え間なく来るように、上手くなる」のが目標でした。会社とか作品とか、全然関係無く‥‥です。強力なコネがあったわけでもなく、親類のツテを頼ったわけでもありません。「次もお願いします」と言われるように努めて作業しただけです。裏技も隠しアイテムもありません。

自分の作業結果が周囲の興味をそそるものであれば、いやでも「周囲から評価される」ので大丈夫です。‥‥逆に、第1志望の会社に入っても、評価されずに埋もれる人も沢山いるのです。第1志望のところに進んで枠組みに組み込まれて頭角も現せずに失望して辞めるのと、着実にキャリアを積んで名をあげて「かつて第1志望だったところの人たち」と一緒に仕事をするようになるとの、どっちが良いんでしょうか。

新人の頃は作業そのものがままならないわけですが、新人が基礎的な技量を取得するには、第1志望の会社である必然性も無いです。基礎を覚えたら、後は自分の技術の発展に尽力すれば、放っておいても「周りは目を向けて」くれるものです。「無視できない技量」を勝ち得れば、自ずと、です。

第1志望か否か‥‥なんて、キャリアスタート時点の「お飾り」みたいなもんです。第1志望の会社に入れば、無条件に技量が上がるわけじゃないですし、要は当人次第なんです。

よく勘違いされる事ですが、「会社に入って、仲良しになれば仕事が来る」というのは大きな間違いです。どんなに仲良しでも技量が低ければ、仕事の依頼はありません。コネは「実技」によって形成されるのであって、「仲良しか否か」でコネができるのは「学生の頃」までです。だって、作品プロジェクトにおける責任職の人間が、単に仲が良いからと言って、重要な作業を依頼できるわけないじゃん? 技術を持ったもの同士が、お互いの技量を認め合う事によって、はじめて「コネ」が生まれるのです。

現場に入った事のない学生が、よりどころの1つとして「第1志望」を掲げるのは、状況としては理解できます。でも「決定的な要素では、まるでない」事も認識しておくべきです。‥‥何度も言いますが、第1志望に進んだからって、上手くいくとは「全く言えない」のですから。

私は「新卒で入社したまま、1つの部署で純粋培養される」事のほうが、「ものつくり」として危機感を感じます。その会社の流儀しか知らずに歳を重ねて、40〜50歳の頃にビッグウェーブが来たら、あまりにもツブしが効かずにパニック状態に陥るんじゃないか‥‥と。

そんなこんなを考えるに、アニメ作品制作のような「自分の芸を売る」のが根底にある職種は、最初から第1志望で思い詰めずに、むしろ遍歴を重ねたほうが、実は良いのではないか‥‥と、少なくとも私は思うのです。

バイク

前回、「20代の頃に色々な事を」みたいな内容を書いたのですが、色々な事をするには「足が長い」ほうが良い、つまり「移動手段の選択肢は広いほうが良い」のは、ちょっと想像すれば解ります。私は、周囲のフリーアニメーターの方々がバイクに乗っていた事に触発されて、22才くらい(20年以上前)の頃に初めて原付バイクの免許をとり、TLM50というバイクで走り回るようになりました。



「ギア付きなんて絶対無理」だと思っていた私が、TLM50のようなトライアル車にのるようになったのは、「当初買おうと思っていたビーウィズというオフロード寄りスクーターが生産中止だった」事と、「たまたまバイク屋に置いてあった」事の2つの理由です。
*2014年現在、ビーウィズ(BW'S)は新車としてラインアップに復活しております。

TLM50で本当に、色々なところに行きました。特に一緒に行動してたのは、故わたなべぢゅんいちさんで、ふたりとも金もないのに、毎週のようにバイクで遠方まで走り回っていました。ちなみにわたなべさんはKSR-IIというカワサキの80cc2スト小型バイクでした。遅い私のTLM50に、スピードを加減して走ってくれてました。

原付49ccで4.8馬力、山には弱いと言われる2ストエンジンのTLM50で、1日にいくつも峠を越え、イワナの塩焼きだけを食べて帰ってくる‥‥ような、およそ「観光」とは呼べないシロモノでしたが、逆にそれが良かったんですネ。観光にしてしまうと、情景が遠くなってしまってね‥‥。雑で乱暴で無計画だったからこそ、その土地ごとの光や空気をナマで体感できたと思います。また、バイクではなく乗用車だと、ガラス越しのスクリーン映写のようになってしまいますしネ。

峠道に入ると、木々が何十段もの「密着マルチ」(=用語が解らない人は「撮ま!」で調べてください)のPANのように変化し、独特の森林の空気に包まれます。日常の練馬区〜武蔵野市近辺では、決して体験できない情景です。走行途中でエンジンを切ると、風の音と車輪の空走する音だけになり、視界に飛び込むのは緑の木々のみ。長時間の走行でお尻は痛くなりましたが、かえがたい色々なものがありました。

その後、色々なバイクを乗り継ぎましたが、わたなべさんと一緒に走っていた頃、非力なTLM50で色んなところに行ってた頃が、一番充実して良かったのかも‥‥と思うことがあります。あの頃の体験〜記憶した情景の数々は、そのまま今でも様々な作業場面に反映されてます。

ちなみに、今は「オフロードバイクの冬の時代」で機種の選択肢が乏しい状況です。国内メーカーでは、トライアル車の市販モデルなんて皆無、50ccオフロード車も全滅、中型のオフロード車すら危ういです。スズキにおいてはオフ車全滅状態(2014年現在)で、新車でオフっぽいのに乗りたい人は「バンバン200」に乗るしかありません。スズキのオフ車はバンバンが支えておるのです。

50ccのオフ車が全滅の今だと、125ccの「KLX125」「D-Tracker 125」あたりが維持費が安くて手頃なところでしょうか。実車を街中で見かけますが、すごくコンパクトで、初心者でも手の内に収めて乗れそうです。パワーは10馬力ととりあえずは間にあいそうですし、シート高もオフ車にしては低めです。



写真だと大きそうに見えますが、意外に実車は小さく、まさにKLXシリーズ末弟と呼べる車格です。

また、ホンダの「グロム」は生粋のオフ車とは呼べないものの、オフ走行もこなせそうな雰囲気です。小さな車体に10馬力あるので、無難に何でもカバーできそうです。KLXと同じく125ccなので維持費も安いですしネ。



でもまあ、グロムで良いのなら、「クロスカブ」(110cc)でも良さそうな気も。



‥‥と色々と紹介しましたが、私自身、今はバイクが腐った状態でしばらく走行しておりません。また、乗りたいと思う反面、20代の頃ほど自由が利く身でもないので、もうしばらく我慢‥‥といったところです。

バイクで駆け回って色々な情景に触れるのなら、やっぱり20代に‥‥ですネ。

20代の強み

このブログでよく「20代の若い頃に色々とやっとくのがイイ」と書いていますが、それは何処かからの受け売りでは全くなくて、しみじみとした実感なのです。‥‥で、このような人目に触れる場所で文字にして公言しているのは、20代の頃に色々な経験をした人材が未来に必要になると考えるから‥‥です。

20代の頃は、40代の3〜4倍の時間が与えられて入るんじゃないか‥‥とさえ思えます。体力、吸収力、社会的責任のある程度の免除(=若くして経営者にでもならなければ)‥‥など、色々な要素が加味されて、20代の頃は「実効的な時間」が多いのでしょう。‥‥なので、色んな事が出来るのです。

私は20代の頃、原画を描いて、一眼レフで写真を撮って、音楽を作って、バイクに乗って、コンピュータプログラムを覚えて‥‥と、少なくとも現在の3倍はバイタリティがあったなぁ‥‥と思います。今、あの頃のバイタリティがあれば‥‥と、何だか健康補助食品の宣伝文句みたいな事をよく考えます。

20代の頃って、「種まき」「植樹」が豊富にできる時期ですネ。自分の事を振り返っても、その頃に植えた若芽が30〜40代に成長して色々な収穫をもたらしているのが実感できます。逆に言えば、20代の頃に蒔かなかったものは、その後も芽を出さないし、収穫もありません。ただ、自分自身の過去を俯瞰視して興味深いのは、決して「先物買い」的な感覚で計画的に行動していたのではなく、「これは自分には必要だ」という必然性めいた何かに引き寄せられて行動していた事です。「無駄かどうか」「後で役に立つか」なんて、小器用な計算などせず、「今の自分に必要だと思う」ことをやっていただけでした。全く仕事には関係無い事でも、「今、触れて手にしておきたい」という事を、本業の合間で実践していました。

40代になってよく思うのは、「無駄は無駄ではなかった」「遠回りで巡った地は、実は穴場だらけだった」という事です。20代の頃から「無駄を省く」「できるだけ近道を選ぶ」ような行動をする人も多いでしょうけど、私が思うに「20代だったら、反って、無駄足を踏んどいた方が良い」と思うのです。だって、30代後半や40代、50代になったら、無駄足なんて状況的に許されなくなりますからネ。無駄足で得られる「様々なメタデータ」は、20代だからこそ得られるもの‥‥なのです。「近道」ばかり選択してたら、目的のもの「しか」得られず、偶発的な収穫なんて皆無ですよ。

20代の頃に、1つの作業工程に徹して他には目もくれず、仕事の合間や余暇はただ漠然と気晴らしをするような生活を送ってしまうと、その後の人生はその行動の通りにセットされてしまうように思います。20代の頃の行動は、その後の人生に大きな影響を及ぼす‥‥のでしょう。

ですので、20代の頃から何か1つの工程の「職人」を目指すのは、実はかなりの「大きな岐路」だったります。普遍的とも言える職種・工程ならば、早いうちから「職人の道」もアリでしょうが、アニメの場合はちょっと危険ですよね。実際、フィルム撮影台は消えてしまったし、セル用紙や絵具も消え、コンプレッサーとハンドピースも消えました。アニメ制作の「普遍的な工程」って保証されませんよネ。人類の歴史とともにある衣食住に関連する職種とは、大きく異なるわけです。

コンピュータベースで映像を作るのが、現在、そして未来です。映像作品を発表するには、コンピュータを避けて通れません。どんなに鉛筆と紙が好きでも、原画をそのまま、美術館に展示するのでもなければ、必ずコンピュータを経由する事になります。フィルムではなくコンピュータが基軸となっているわけですから、当然、今後のアニメの作り方もフィルム時代の慣習を抜け、徐々に変わっていくでしょう。そんな中で「普遍の工程」なんて考える方が空しいです。

ということは、「特定工程のプロフェッショナル」という立ち位置は、危うい事になります。変遷していく映像制作に対し、「自分はxx工程のプロだ、職人だ」と言っても、「その工程自体が無くなりました」という事態に対しては無力です。「今度はどんな作り方するの? ああ、そう。じゃあ、そんな感じで今回はいこか」と「自分の中身のフォーメーション」を変える事が多くなるでしょう。その際に、20代の頃の種まきや無駄足・回り道が活きてくるのです。

「特定工程の職人では、これから先、マズい」と事態を察知した時には、既に遅し‥‥かも知れません。特定以外の立ち回りができない人生を、今まで歩んできてしまったのですから。

30代、40代と歳を重ねるうちに、人はどんどん冷えて固まっていきます。どんなに歳を喰っても、また熱して柔らかくすれば‥‥と思いがちですが、その「熱源」・エネルギーはどこから調達するのでしょうか。また、周囲の人々は「ガッチリと固まっていて欲しい」と願うかも知れません。責任の羽交い締め‥‥です。‥‥やはり20代の頃の、エネルギー保有量(端的に言って体力‥‥ですネ)も大きく、周囲からも束縛されず、冷えて固まる前に、様々な要素を自身に取り込んでおいた方が「合理的」「効率的」なのです。

温かい液状のゼリーにはいくらでもフルーツを混ぜ込めますが、冷えて固まったゼリーの中にフルーツをブチ込むのは如何にも無茶です。やっぱり、仕込みに最適なタイミングはあるんだな‥‥と、40代の今だから振り返って客観視できます。

20代の貴重な時間を、ネットを巡回して暇つぶししている場合じゃありません。いくら、奇麗な写真をネットで閲覧しても、それはその写真を撮った人の主観経由の結果物であり、自分自身の経験にはなり得ません。自分自身のからだでその情景の中に立ち、様々な情報を体内に取り込む事で、まさに「体験」として蓄積されるのです。ネットで見た写真はすぐに忘れるかも知れませんが、自身の体に刻み込まれた情景はいつまでも残り、ある時に映像制作の「表現」として発露する事でしょう。

でもまあ、どんなことを言っても、動く奴は言われなくても行動し、動かない奴は言われても行動しない‥‥のが、世の常ではありますけどネ。

18年間

海外での最終仕上げも終了し、いよいよ帰国と相成りました。現地でBaselightを自在に扱うグレーダーのパトリスは頼りになる存在でしたし、その他、特にトラブルが発生する事もなく終了できたのは、無事何よりです。

今作との付き合いは、遥か18年前のパイロットフィルム制作で、私がAfter Effectsを扱う以前までさかのぼります。その当時、私の使っていたマシンは、Quadra650とGatewayのPentium160MHz近辺のマシン。Photoshopは3か4の頃です。実装メモリは128メガバイト前後で、現在の16〜64ギガの状況と比べて、何倍になるのやら。‥‥色々、感慨深いものがあります。

思えば、その頃から今までの18年間は、長い長い移行期だったのかも知れません。私は本当に、紙に絵を描いて動かすアニメが好きでしたからネ。そんな私が、「絵を動かす本質」に立ち戻り、タイムシートをはじめとした様々なアニメ業界の技法と袂を分かつ決心をするには、幼少の頃からアニメに親しんだ同じ年月が必要だったのでしょう。

これから先の18年間、どのように進展していくのか。「イメージを実現する」小さなサイクルを繰り返して、不可能のように思われていた事を現実にしてきた過去を振り返れば、多少の紆余曲折があろうと、大体、思った場所に行き着いているように思います。ただまあ、私の年齢からして、最後の18年間になるとは思いますが。

 

英語

そろそろ作業の終了する今回の欧米との合作に関しては、日本側プロダクションの担当制作陣が全員英語を喋れる事が、あらゆる場面で有効に作用しました。作品を実際に扱う制作スタッフが英語に通じているのは、とても心強かったです。‥‥私は子供の頃に9年間、英会話教室に通ってはいましたが、基本的には記憶はスッパリ抜け落ちています。スクリプトやプログラムの簡単な英文を用いたマニュアルは読解できますが、会話はまるでダメなので、あらゆる場面で制作諸氏に助けてもらいました。

とは言っても、いつまでも助けてもらう訳にはいかないですし、どう考えても今後の展開として、日本だけをターゲットにしてたら行き詰まるのは確実なので、基本的な英語力くらいは復活させないとアカンでしょうネ。読むだけならば何とかなりますが、英文を作ったり喋ったりするのはハードルが高いです。

今は作品企画上の絡みから、ロシア語とドイツ語をのんびりと斜め読みの気楽さで学んでいるのですが、英語は結構本気で取り組むべき言語でしょうネ。若い人は、たとえアニメ作品の制作者を志していても、英語だけは早期から学んでいた方が良さそうです。世に出たいと思うなら、なおさら。

私も「英語で困る日が絶対に来る」‥‥と思っていましたが、今、まさにソレです。作業においては、通訳の方が間に立ってくれるので問題ないのですが、日頃の生活での会話は片言になってしまいますネ。まあ、それでも最終的には何とかはなるのですが、会話はごく普通にストレスなく通じた方が良いですもんね。

もし新しいアニメーションの新しい現場を作れたら、週に1度の短時間でも良いから、英語の達者な制作さんに協力してもらって、スタッフ皆で英会話レッスンが出来れば良いな‥‥と思います。だってさ、日本にいると、全く英語を喋らずに済んでしまうから、必要だと実感してても優先順は最後尾になっちゃうんですよネ。



 

そろそろ終了

現在作業している作品が完成した暁には、遅いお盆休みがとれれば良いなと思ってましたが、9月のゲームショー合わせの作品を急遽作業する事になったので、のんきな事を言ってられない状況になりました。その他、作業量は少ないですが2本ほど作業が待機しており、11月にはまた新たなグレーディングの作業が予定されているので、お盆休みは10月までおあずけ‥‥になりそうです。

どんな作品でもそうですが、作品制作が終了する間際には、様々な改善点や改良点が見えてくるものです。今作で言えば、ログの運用の利点は大きな収穫のうちの1つでしたが、その運用にふさわしい大画面のチェックモニタを設置する必要性もひしひしと感じました。ログによって高画質を維持した運用ができた反面で、27インチ程度のモニタではどうにも細部まで見渡せず、ラボの大画面投影にて気付く箇所があったのは、何とも心苦しい限りでした。よく見かける大画面テレビを補助モニタとして代用する方法だと、致命的に入力解像度が不足しているので、映画の2K(1920px以上)が収まりきりません。40インチクラスで最低でも2.5Kを表示できて、かつ特性もフラットなディスプレイが欲しいわけですが、‥‥この問題はすぐには解決しそうもありませんネ。 メーカーの今後の4K対応に期待‥‥です。

ProRes4444による運用は高画質ながらも低容量でフットワークも軽く、作業の高速化にかなり貢献しました。いくら低容量とはいえ、Avidの圧縮コーデック(DNxHD)を使用していたら、おそらく至る所で問題が発生していたと思いますが、ProRes4444は惚れ惚れするほどオリジナルDPXと一致しており、運用におけるコーデック上の不安を払拭してくれるものでした。ただし、編集さん側の大きな理解と対応が不可欠なので、まだ一般的ではない運用‥‥とは言えます。
*9月にやるゲーム絡みの映像のフォーマットがちょっと不安ではあります。まさか、今でもAVI納品(昔はゲームムービーはAVIで納品する事が多かった)なんだろうか。AVIはもういかにも時代遅れ(最後の最後でわざわざ低い画質に落とす必要ないじゃん?)だから、勘弁してほしいんですが‥‥。

あとは、やっぱりファイル等の「命名規則は大事」という事をしみじみ実感しました。もう十何年も言い続けている事ですが、やっぱり名前の混乱は、作業の混乱に繋がり、スケジュールの混乱にも繋がります。名前をピシッと標準化できれば、コストの削減に確実に繋がりますネ。無駄な段取りや作業が減るからネ。大袈裟な話では全く無く、ファイル命名規則って、「当人の理性」ひいては「集団の理性」みたいなもんだよネ。

その他、映像表現面でも色々な収穫がありましたが、どんなに機材が発達しても映像表現に関わる人間こそが作品を左右するのだと言う事を再確認しました。実写の撮影、小道具、大道具、3Dのモデルやアニメーション、3Dのカメラ、エフェクト・グレーディング、編集‥‥など各場面で人の手が加わり、作品へと影響していきます。‥‥なので、機材も大事ですが、若い人材の能力をどれだけ高められるかで、今後のプロダクションの盛衰が大きく変わってくるのでしょうネ。

これから先、アニメに限らず映像作品の未来には、様々な展開があるとは思いますが、やはり「1作品ごと必ず収穫を得て、確実に未来の足場にして、前に進む事」が重要です。作品を「消化試合」のようにして発展せずに時を送るのは、「いつのまにか歳をとっていた」浦島太郎にもなりかねません。たとえ、社会システムの消費のベクトル上であっても、「何かしら」を未来につなげるべき‥‥です。

街のスナップ

日本と13時間も時差がある地で作業をしていると、日付の感覚が危うくなってきます。さらには、こちらの人々は朝8時から仕事が始まり夕方には切り上げるサイクルで、気候的にも夜8時でも空が明るかったりするので、体内時計もいつしかこちらのペースにハマっていきます。こうしてブログを書くと、日本の日時での投稿になるので、多少は感覚が戻るのですが…。

私ら作品スタッフが宿泊している周辺は、金融街のようなところで、近代的なビルが立ち並びますが、所々に昔のヨーロッパスタイルの建物が残っており、歴史の積み重なりを感じます。







少し離れた旧市街には、まさにディズニーの古いアニメに出てくるような昔の建物が並び、金融街周辺とはガラリと表情を変えます。








*移動中に撮影したものなので、見上げる構図ばかりですが‥‥。

食べ物は安かったり高かったりです。生鮮市場に出ていくと、トマトが特に安く、日本では考えられない安価(大きなバケツ山盛りで1000円とか)で売ってたりしますし、トマトの種類も豊富です。スーパーマーケットで目を引くのは、チーズの種類の豊富さとその安さで、日本で買う1/3〜1/5くらいの価格でウォッシュ系をはじめとした様々なチーズが買えます。一方、日本では安い肉の代名詞である鳥のムネ肉が2枚で600円だったり、卵が10個パックで300円以上したりと、何でも安いわけではないようです。ムネ肉よりモモ肉のほうが安いのは、日本的感覚からすると不思議です。

日頃は英語とフランス語が混ざった雑踏の中を移動する事が多く、相手も気を使って英語で喋ってくれるのですが、生鮮市場ではほとんどフランス語なので、数字すら聞き取りが出来ません。こちらは税がなんやかんやと20%くらい加算されるので、表示価格ではなくレジの電光表示で支払額を確認するのですが、市場の手渡しによるフランス語のやり取りだと全く額がわかりません。‥‥なので、10ドル超えの場合、20ドル札で渡しておつりを貰うのが面倒がないのですが、反面、どんどん小銭が増えていきます。ハウスキーピングのチップでは到底消費できない小銭の量です。

仕事のほうは順調で滞りなく進行しております。予定通りに数日後には帰国し、9月に入ってからはまた別の「急ぎ働き」の仕事が待っております。まあ、時差の方は、日本にいても「貫徹作業で周囲との時差が発生する」のはよくある事で、都合、「時差を直し慣れている」ので、特にボケる事なく通常に戻せるでしょう。
 

腕時計がない

渡航前に、ふと「現在使える腕時計がない」事に気付き、アマゾンのお急ぎ便で購入しました。「iPhoneで見りゃいいじゃん」とか言われそうですが、腕にくっついててサッと見れる「専用品」に比べて取り回しが鈍いので、腕時計のほうが私は好きなのです。以前使っていた登山用(私は登山をしませんが…)の時計は電池切れで動かないままなので、とりあえず、安い「間に合わせ」のものを買いました。

これです。

 

届いて現品を見たら、さすがに1480円のクオリティ。至る所に「安いにはワケがある」仕上がりになっております。特に爬虫類風の合成皮があまりにもチープ。黄色と赤しか安いのがなかったので黄色にしましたが、フェイク皮のレリーフが明るい黄色にそれはもうミスマッチで‥‥。いっそのこと、ハードルを下げて単色ベタのデザインにしてくれれば良かったのに。

海外作業期間だけ保てばいい‥‥と思って安物を購入したこともあり、時計の機能的には何も不満はないので、チープさをググンとアップさせているフェイク皮の部分にヴィンテージ加工を施しました。



色調を落ち着かせて馴染ませる事、フェイクというよりは「風味」に振る事で、根本的なクオリティはかわらないものの、チープさは多少落ち着きました。何だか、時計にもグレーディングしている気分。

ヴィンテージ加工は、いつものプラモ技術を応用‥‥というか、そのまま使いました。タミヤのエナメル薄墨で墨入れ&ウォッシング、同じくタミヤのウェザリングマスターで汚しを入れて、こんな感じになりました。もっと手をかければ、よりダークな世界観になるのですが、一時しのぎの品にそこまでしなくても良いということで、これで完了。

時計かァ‥‥。もういい歳なんだし、奇麗なヤツも1つは持っておきたいですね‥‥。

ジョバンニの島と生涯功労賞

「ジョバンニの島」のDVD/Blu-rayチェックをしたのは、たしか初夏の頃くらいでしたが、製品が8月あたまに発売開始されたようです。

特にBlu-rayのクオリティは安定しており、「ラッシュチェックルームからお茶の間へ」といったくらいに、画像が鮮明で、絵ににごりがありません。繊細なニュアンスもそのまま伝わる良ディスクなので、興味のある方は是非。

カナダのモントリオールの映画祭「ファンタジア国際映画祭」で、ジョバンニの島が「今敏賞」(!)と「観客賞」を獲得したらしく、何はともあれ良かったですネ。ジョバンニの島のような作品は、作品の主題からして、爆発的ヒットのような売れ方はしない類いのものですから、長期的スパンで息長く見守りたいです。短期制作・短期回収のような作品ばかりでは、良い意味でのブランド戦略は成り立ちませんもんネ。‥‥しかし何だ、製品の帯を見ると、受賞歴はハデですネ。
*実は、ひらめきを短期のうちに形にするケースもあるので、必ずしも時間をかけて丁寧に作れば良いとは限らないわけですが、現在の殺人的なスケジュール圧縮は決して「ひらめき」によるものではないので、ほぼ100%、品質を下げるベクトルに作用します。

ジョバンニの島では、私ら「グレーディングチーム」は、内容の難しい「撮影」カットと、全カットのグレーディングを主に担当しました。また、撮影作業前に事前にバンク素材を用意したり、撮影ボード(撮影処理の見本)も作成しています。西久保監督が我々の能力を把握しておられるので、色々な活用アイデアを作品制作において実行してくれたのです。

一方、押井監督は「生涯功労賞」とな。「生涯」とはこれまた中々。


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