作業場に棚を設置する

自宅の作業場は、コンピュータの専有面積よりも、絵を描く環境と立体造形を作る環境の占有面積のほうが多いです。10年くらい前はコンピュータがひしめきあっていたのですが、高性能化によりコンパクトにまとめる事ができるようになったのが、直接的な理由です。ゆえに、我慢していた「手でものを生み出す」作業‥‥いや、これは語弊がありますね、つまりはデータではなく実物が空間に存在するタイプの(うまく言葉にできない‥‥)作業のスペースに面積を割けるようになりました。私はデータも「自らの手で生み出している」と強く感じているので、的確に上手く表現できませんが、絵を紙に描いたり、筆やエアブラシを使ったり、針金で芯を作ったり、クレイをこねたり、ミシンを使ったり‥‥という非デジタルデータの作業の場所が確保できるようになったわけです。

しかし、自分の自由にできる空間には限りがありますから、時を経るにつれ次第に、ツールや素材を置く場所に困る事になります。都市部の住宅事情よろしく、部屋の中も「高層マンション」状態で、高い棚を設置して「広さではなく高さを使う」収納で対応しています。

圧迫感はあるんですが、それはもう、仕方ない。「自分の部屋」である以上に、「作業部屋」なので、住宅やインテリアの広告写真のような「何も置いてない部屋」でスッキリ‥‥なんて、ハナから望んでおりません。

自立型の棚(カラーボックスやラックなど)は、床と壁に面して設置するのが主で、例えば天井付近のでっぱりには設置不可能です。部屋のデッドスペースを有効に活用するには、棚受けを用いた自作の棚も必要になってきます。

私の部屋は、いわゆる石膏ボードの壁で、棚受けを付属の木ネジで簡単に増設する事はできません。ネジのスクリューが噛むべき壁材は、まるで落雁やビスケットのようにボロボロと崩れます。壁の天井近くの高い位置に、「天袋」のような収納スペースを作りたくて、棚の材料を100均で買ってきて設置しようとしても、土台がもろいので簡単には設置できないのです。

対処方法はいくつかありまして、まず1つ目は、虫ピンのような極細のネジを複数斜めに打ち込んで棚を固定する方法です。市販のセット(「Jフック」のような)の釘と固定パーツだけ使う方法が簡単ですが、ちょっと高くつくのが難点です。なので私は、50〜100本で安く売ってる細い釘とワッシャで強引に固定しています。5本を1セットにしてワッシャを噛まして放射状に打ち込みます。ワッシャが釘抜け防止のストッパーになるわけです。もし、釘打ち込みまんまの見た目が気になるようなら、ひっつき虫をだんご状にこねてキャップのようにかぶせれば、市販の石膏釘セットのような外見になります。

2つ目は、借家ではできない方法ですが、アンカーを打ち込むやり方です。工具さえあれば、これが一番シンプルで簡単です。幅広大型のスクリューが石膏ボードを良く噛み、意外に頑丈です。アンカーを土台にすれば、石膏ボードではまるで役立たずだった木ねじが、打って変わって強力な保持力を発揮します。下穴を開ける際は電動ドリル、木ねじをねじ込む際は電動インパクトドライバがあると、短時間で楽に作業が完了します。アンカーを打ち込むのって、何か業者・プロっぽくて物怖じしてたんですが、いざやってみると、そんなに難しくなかったです。アンカーに木ねじをねじ込む際は、かなり「固い」ですから、ネジ穴をナメないように、できればクラッチ&トルク調整付きのインパクトドライバを用いるが良いですネ。私の持っているのはマキタの廉価モデルなのでトルク調整がなく、慎重に慎重にトルクをかけて回しました。インパクトドライバって、ナメる時は一瞬ですからネ‥‥。

そんなこんなで、環境をどんどん武装アップしていくと、部屋はもう、「作業要塞」のようになります。気の休まる部屋でのんびりと‥‥は、もう少し未来にとっておこうと思います。

ちなみに、棚受けは昔ながらのよくあるデザインのやつなら、ダイソーで2個100円で買えます。見た目はオシャレではないですが、作業場ならば、まあ‥‥。

ProRes

大体、どこの会社もWindowsをクライアントのOSとして採用してますが、これって、結局、管理の都合が大きいんでしょうネ。まあ、他にも色々理由はあるでしょうが、Win環境のワークグループだとProResが使えなくて、正直、困ります。

ProResと同等の性能(低容量・高画質・リアルタイム再生能力)を持つコーデックって、無いのかな‥‥。

最近Avid DNxHDを使う事も多いのですが、はっきり言って、あんまり奇麗じゃないよネ。特に、グレーディングなどの再加工に向いてるとは思えない。トーンジャンプ崖っぷちなのも怖いし、円滑な再生も環境を選ぶしで、面倒です。

画質で考えれば、「じゃあ、非圧縮で」とかになっちゃいますが、被再生能力とデータ容量の面で、つまずきます。

ProResって、便利なんですよネ。容量は小さいし、画質はもともと再加工を考慮して設計してあるし、簡単に再生できるし。私は前々から4444、もしくは422(HQ)を常用していますが、適切な使い方が解らなくて試行錯誤した事はありますが、使い方が解ってからは画質で悩まされた事はありません。以前に422(HQ)の横6000pxの変形サイズをiMacで再生した事がありますが、ローカルのSATAにデータコピーするだけで円滑に再生できたのは驚きでした。RAIDとか専用のボードとか無しで、ですからネ。

Adobe Creative Cloudがあって、ProRes4444があれば、ぶっちゃけ、テレビや劇場と「全く同じ」クオリティの映像クリップは作れます。まあそうなると、ツールよりも、当人の技術と作った中身が問題になってくる訳ですが。

なんやかんやの都合で、コーデックが足を引っ張るのは勘弁してほしいんだよなぁ。コーデックの尻拭いなんか、グレーディングでしたくないスよ‥‥。

ちなみにProResは今だとCompressorをAppStore(MacOSXの)で買うと、アプリ本体に内蔵(つまりパッケージの中)されて付いてきます。

AppleもProResをMac/Winともに全開放しちゃえば良いのにな‥‥。大層に「ProApps」なんてヒエラルキーなんか設けないでさ。

枯れたT-34

前の記事で、T-34(大祖国戦争の代表的戦車)の事を「性能の低さを物量でカバー」的な事を書きましたが、これはあくまでパンター(ドイツの高性能中戦車)と比べての話です。決して駄作だったわけではなく、総合的なジャッジでは高性能な傑作戦車と評価すべきです。

ソビエトは冷徹に自国の人的リソースおよび生産能力を判断していたと思います。ゆえに「夢のような」新型兵器よりも、枯れた(=良い意味で。手堅いと言う意味で。)技術要素でどんどん生産できるT-34を猛烈に戦場に送りだし、大量に戦死者を出しながらも、技術大国ドイツを圧倒していったのです。

私はドイツの技術も好きですが、ソビエトのある種の「粗野」なパワーに満ちた技術も好きなのです。ただ、自分は状況的にソ連のやり方をお手本にはできないので、小さな巨人たるドイツや日本の方法論を活かそうと思っているのです。

文献を読むと、一定時期のパンター・T-34の損害対比は、1:10。で、生産数もほぼ1:10。単純計算ではパンターの高性能は、10倍のT-34の物量に対して、10倍の撃破をもって、対峙していた事になります。まあ、ドイツ人の考えた理想が、短い期間は何とか成立してたんですネ。

ただ、ドイツは人の消耗には脆い側面がありました。車両を作るのもマイスター気質なら、運転するのもマイスター、整備するのもマイスター。マイスター気質は自分らの技術力の自負でもあり、そのような風潮の社会・組織が出来上がっています。マイスター的達人たちが徐々に減れば、その気質に実のところ依存していた組織のダメージもどんどん大きくなり、弱体化します。

一方ソビエトは、人と兵器をどんどん戦場に送り、その状況(運用が容易である事)に見合った設計をしました。稼働率の面で、生産数10倍以上の「のべ実働数」を、実現していたようです。これは既に設計段階で手堅く意図していたものです。またソビエトには、少数ですが女性戦車兵も存在したようです。とにかく、適応しそうな人間は、どんどん戦場に送る。‥‥凄まじいスね。

ここで、ソビエトのパワーを見習おう、とか、日本と似て国土が狭く技術の発達したドイツから学ぼう、とか、薄い論調を書きたいわけではありません。

双方の状況から、どのように教訓として取り入れるか‥‥という事ですネ。

わたし的には、技術に溺れたドイツの顛末は、常に自戒の強いベクトルとして作用します。また、ソビエトは戦争に勝ったけれど、人々は幸せになれたのか、ソビエトは果たして本当に「勝った」のか?(ソ連はもう消滅しちゃいましたし)‥‥もネ。

MacのAppleScript

私がAfter Effectsを駆動するアプリを作る際の「常套手段」は、AppleScriptと組み合わせるやり方です。GUIをAppleScriptに担当させて、After Effects上のスクリプトは処理に徹します。

Xcodeを用いて本格的なGUIを装備する方法もあるのですが、何だかんだと時間がかかるので、AppleScriptオンリーでGUIを調達します。AppleScriptはalert()的なものはもちろん、リスト表示、ファイル選択、フォルダ選択、新規ファイル指定、カラーピック、テキスト入力など、とりあえずひと揃えがあるので、開発上は特に困らないのです。一般的な開発環境と違って、自作のウィンドウ(インターフェイスビルダーで作るような)は作れませんが、対話式のアプリならストレスを感じずスイスイ作れます。

例えば、AppleScriptは、Finderで扱うファイルやフォルダをas unicode textで簡単にファイルパスに変換できますから、FinderでChooseしてファイルパス文字列に変換し、Adobeのスクリプトに組み込めば良いのです。ちなみに、HFSのパス文字列がイヤな場合は、POSIX Path of...でスラ区切りのパスを取得できます。quoted form of...を使うと意図せぬコマンドと文字列の衝突を防げます。

MacOSXでAfter EffectsをAppleScript経由で制御し、さらにWindowsに処理を渡す場合は、ちょっと工夫が必要ですが、出来ない事はありません。Windowsで「After Effectsサーバ」的なスクリプトを走らせておいて、MacOSXから投げこむ‥‥のような事も可能です。独自のキューファイル(ジョブファイル‥‥呼び方はどうとでも)を規定して、Mac/Win共通規格の書類とする事で、MacからでもWinからでもAfter Effects処理サーバに処理を投げ込む事ができるのです。After Effects処理サーバは、特別な事をしているわけでなく、単にスケジュールタスクを定間隔で走らせて指定フォルダ内をCrawlして、新規キューファイルを見つけたら指示通りに処理をするだけ‥‥です。

ぶっちゃけ、今の私は、ソフトウェアの開発にそんなに時間をかけられなくなっているので、AppleScriptくらいのレベルがちょうど良いのです。まあ、他の言語に馴れちゃうと、AppleScriptは冗長なコードになりやすく、タイプがめんどくさくて、たまに心が折れる事もあるんですがネ‥‥。theArray[0]で済むところを、item 1 of theArrayですからネ‥‥。

また、Windows作業環境グループでQuickTimeのProRes出力する場合などは、規模にもよりますが、Mac miniとCompressor、AppleScriptを使えば変換サーバを仕立てられます。AppleScriptのon idleを使って自動巡回変換ソフトを作っちゃえば良いのです。仮にAfter Effectsのライセンスがあれば、さらに高度な変換(スレートを自動生成するとか)もできます。AppleScriptベースなので、開発時間が最小で済むのです。

Macを使ってるんなら、今さら何ですが、AppleScriptを使わないのは、もったいないですヨ。

‥‥ちなみに、無理すれば、AppleScriptから直にビットマップデータを書き出す事が可能です。SGIなどの簡単な書式であれば、ですが。スクリプト文中にヘッダ部とビットマップを文字列で記述し、open for accessで書き出し、ファイル名に拡張子をシレッと付ければ、ちゃんと画像ファイルになります。

物量と品質の拮抗

新しい技法・技術は発展の渦中ゆえ、更新速度が速く、数ヶ月前のものでも旧さを感じ、1年前だと幼さすら感じるありさまです。データ量もどんどんエスカレートしてキツくなる一方で、線画に関しては今ではA3/400dpi相当(6K)が妥当・スタンダードと感じるようになってしまいました。線の質がA4/200dpi程度だと明らかに見劣りするのです。ベクターではなくビットマップの場合、ですが。

でもこうした傾向は、作業速度にモロに影響します。特にレンダリングの時間がヤバい。最近やった8K出力(もちろん素材も8Kオーバー)だと、私のMac miniの場合(この機種でやるのもどうかと思うが)、1フレーム10分かかります。でもまあ、ヤギが鳴かないだけ(After Effectsはレンダリングに失敗すると、ヤギがキューを喰っちまうのです)、マシなんですがネ。

ただでさえ人手が足らないのに、マシンまでスロースピードでは、見込みが困難です。「HDサイズでやれば」とか言われそうなんですが、2Kは如何にもミニサイズでツブシが効きません。しかも24FPSだった場合は、「その場限り」のクオリティです。例えるなら、地デジに切り替わる頃に、SDサイズで映像を作るようなものです。コンポジットして出力してしまったら、後ではどうにもならないもんね‥‥。今、SDサイズを見ると酷く小さく感じますが、似たようなものです。

8Kは非現実的だとしても、4K/60FPSでも相当キツいです。これは個人レベルでなく、プロダクションレベルでも、です。‥‥だって、作業機材の性能はどうにもならんですからネ。300〜600万もするような作業システムを何十セットも制作会社が気軽に調達できるわけないじゃん?‥‥都合、プロもアマも20〜40万のハードウェアで作業する事になります。ハッキリ申しますと、適切なチョイスをおこなえば、「機材面では」プロもアマももはや境界線はなく、腕前次第でハイクオリティな映像クリップは作れます。

4K/60FPSでキツいのは解っているのですが、だからといって、2K/24FPSでは如何にも旧い。何の目新しさも無いです。特に「作画と撮影」の二元論で突き進み、HDフォーマットで映像を仕上げた場合、どんなに大変な事をしても、「いつもの感じ」どまりです。

しかしね、大きな風呂敷を広げすぎて、完成できないんじゃ、これもまたNG。

何か、パンターとT-34の戦いを見るようです。私は当然の事ながら、ドイツ的指向が強いよな‥‥。基本的に技術偏向で、兵器同士の戦いには勝っても、戦術的な勝利以上には中々発展しない‥‥。技術的な優位性を、楽観論に結びつけるのも、良くない傾向です。

現在、新たなPVの準備をしていますが、素材は8Kで作るとしても、コンポジットを4K/60FPSでやるか、旧さを承知で2K/24FPSでやるか、ここ数日悩んでおります。「戦い」と言っても、量と量とのぶつかり合いではなく、技術の先進性をアピールできるか否かの戦いですから、やっぱり4Kか‥‥とも思うそのすぐ後に、「でも数が揃わないのでは戦いにならない」と悩んだりします。

愛読書「パンターvsT-34 / ウクライナ1943」には、こうあります。

・1943年〜ドイツ、2000両に満たないパンターを生産<->ソ連、1万5812両のT-34/76を生産
・未知の新型戦車にリソースを注ぐドイツ<->ぎりぎりまで生産を切り替えないソ連
・高性能により人的消耗の少ないドイツ<->性能の低さを人的消耗で補うソ連

‥‥やだなあ。

特に人的消耗(戦死です、つまりは)に関しては、目も当てられない対比が独ソにあります。兵器の撃破損失数も、ほぼ独1:ソ10(1943年の夏〜冬)。つまり、勝つために人を消耗品のように扱い、兵器もどんどん生産して送り込む‥‥というやり方で、ソビエトは優位に立っていたのです。

‥‥やだなあ。。。

2K、4Kの映像品質の選択・決定以上に、何か、制作全般の展望すら示唆していますネ。

少なくとも、私は、仮に消耗戦で勝てたとしても、使い捨てを宿命付けられた未来はやだな。消耗の限りを尽くして、戦争に勝ってウハウハなのは誰? 戦争をアニメ制作に置き換えてみましょうよ。誰がウハウハ? 消耗品のように扱われて、誰が泣く?

今の新しい方法を模索している大きな理由の1つに、アニメ業界の消耗戦体質・バンザイ突撃体質から脱却したい‥‥というのがあります。著作などの権利云々まで細かく分配できないでしょうが、だったら、それに変わる報酬の手だて・糸口を考えるべきでしょう。消耗するという事は大量に安く使われるという事です。それがいやなら、待っているだけでなく、何かアクションしなければネ。
*「業界を改善したい」とか言う人は多いけど、一方で消耗体質に関してはノープロブレムな態度を見ると、単に二枚舌にしか見えないのよネ。予算の分配方法を考え直そう‥‥とか、根幹にはメスを入れずに、取り分だけを操作しよう‥‥なんて、もう‥‥長屋の痴話レベルだよな‥‥。

なので、現在だけでなく未来のイロイロを考慮すると、戦域を縮小してでも、やはりPV的な映像は、最低でも4K/60FPSにすべきなのかも知れません。‥‥うーん。

デザインナイフの愛用品

私は立体工作も映像作りの一環としておこないます。絵作りの資料として用いるほか、素材として用いる事もあります。つまり、見て楽しむ趣味の用途ではなく、まさに実用品なので、壊れないように丈夫に作るのはもちろん、できるだけ「仕事に役立つ」ように作ります。「仕事に役立つ」とは、プロポーションやディテールが正確である事が理想、そして「必要な時に出来上がっている」事でしょうか。製作に凝り過ぎて、時間がかかるのは、何よりもNGです。

適度な正確さ、製作時間の短さを欲する時、製作に用いるツールは、非常に大きなファクタとなります。自分の思った通りに扱える道具の存在は必須です。なので、罫書き針やデザインナイフなどの「ミスの許されない」行程の道具は、特に気に入った愛用の品を使っています。

デザインナイフは、素材を削るのに必須の道具ですが、私の愛用するのは曲線刃のものです。よく見かけるオルファタミヤの細身のボディと刃ではなく、アートナイフプロというやや太めのボディに、弧を描いた形状の刃を装着したものです。

この曲線刃の何が良いかと言うと、先端は鋭角、先端からちょっと下は一般的なデザインナイフの刃、さらに下がると平刃のような使い心地‥‥と、1本で万能に使いわける事が可能な点です。一番下のほぼまっすぐな刃の部分は、カンナがけのように使えるので、はみ出しをこそぎ落とすのに重宝します。

オルファの曲線刃は、3本で300円と値段が張りますが、切れ味はよく、一般的な刃よりも長持ちします。材質が違うからなのか、広い刃の部分を使い分けるので全般として長持ちするのか、よくわかりませんが、デザインナイフの小さな刃よりは確実に使用時間は長いです。

罫書き針は、罫書きというよりは、モールドの彫り直しに用います。いわゆる、スジ彫りです。私はあまり器用なほうではないので、スジ彫りなんかは特に不得意だったりしますが、クレオスの専用品「ラインチゼル」を使うようになってからは、及第点くらいの事はできるようになりました。線を引く時はもちろんガイドを貼り付けますが、私はそれでも上手くいかない事がありましたが、ラインチゼルを使うようになってからは、奇麗な線が引けるようになりました。おそらく、素材上の断面が針を使った時に比べてシャープなので、ミクロの差ではありますが、仕上がりに大きく影響するのだと思います。

まあ、なければないで、困るものではないのですが、あればあったで「ひと皮むけた」ように作業の質と速度が上がります。ただ、道具は何と言っても「本人との相性」ですね。

絵も立体造形も、優れた道具を傍に揃えられたら、後は「視力」でしょう。実はこれ、かなり重要です。指先は歳を喰っても、意外に正確に動くものですが、視力が悪いと道具も手も思い通りに機能しません。「指先がおぼつかない」のは、視力の低下が原因だと、ここ数年で悟りました。なので、私の作業環境にはルーペ付きライトスタンドは必須なのです。


鳥と魚

アニメーター真盛りだった20代の頃、自分の画力に自信が備わっていく反面、自分の絵の下手さも認識し劣等感も増大していた時期があります。私はいわゆる「フォルム」重視の人間のようで、立体認識のしっかりとした絵が苦手な人間でした。でした‥‥というか、今もそうかも知れんですネ。

中規模・大手のアニメ制作会社に詰めて作業するようになると、それはもう、あらゆる方面の「巧い」人たちの絵を毎日のように垣間みる事になります。学校や地域で「上手い」なんて言われてた自分の過去なんて屁みたいなもので、恐るべき才能をいやと言うほど見せつけられる事になります。学生時代の成績や賞状なんて、何のよりどころにもなりません。

自分の持ち合わせていない才能に溢れた絵を見ると、羨望と劣等感のダブルパンチで、ほとほと気が落ちます。後天的(20代以降)に備わる類いの要素なら、それほど落胆もしないのですが、決定的に「生き物レベルで違う」事を悟り、その優位性を叩き付けられると、どうにもならない気持ちになるのです。

例えるならば、魚が水面から顔だけ出して空を仰ぎ、飛ぶ鳥をみて羨むようなものです。

「自分もあんな風に空を飛べたら、どれだけ凄いだろう」‥‥と羨望を通り越して、悲しくなってしまう。

で、魚は一生懸命、自分なりに飛ぶ訓練をして、「トビウオ」くらいには飛べるようになるのですが、鳥の飛行とは似ても似つかないものです。ヒレをどんなに伸ばしても、羽にはならんのです。

魚は、水面から顔を出して空を見上げるばかりですが、自分の体の下〜海の中に、おびただしいほど広大な空間がある事に一向に気付きません。空ばかりに憧れ、空を飛ぶ事だけを熱望します。

空の高さを羨み、海の深さに気付かず。

若さとは愚かなり‥‥ですネ。でもそれはしょうがない。自分に自信が持てない直中の年頃ですから。

私が空を見上げるのをやめ、深い海の中を自由に泳ごうと決心できたのは、20代の後半です。決心の後押しをしたのは、鳥は海の中深くには潜れない事を知ったから‥‥かもしれません。お互いの「姿」は、海面を境とした反転像だという事に気付いたからです。海に潜るウトウのような人もいますが、1〜2分間しか泳げません。私は何時間でも泳げます。‥‥それに気付くまでが、葛藤の連続だったんですネ。

海中でも、空同様XYZ軸があります。なので、空と違って海だと楽だ‥‥なんて事は一切なく、空を飛ぶのと同じ難易度の、高い技量が要求されます。しかし、自分は魚ゆえに、訓練すればするほど、海の中を自由に泳ぎ回れるようになります。魚が空を飛んだり、鳥が海を潜水するのとは大違いです。

でもまあ、自分を肯定して、自身の能力を活かす意識に到達するには、何度かの大きい敗北感や挫折が必要なのかも知れません。魚が鳥の飛ぶ姿を見て、「なるほど」と感じ入って、自分の泳ぎに応用する‥‥ような事ができるとすれば、それは猛烈に「空に憧れた」経緯があるからかも、知れませんネ。

まずは、おびただしい量の絵を描いて、「自分は何ものか」を知る事でしょうね。鳥か魚か‥‥なんて話は、気が狂れるくらい作画した、その先です。

最後のアップデート

現行のアニメ制作フローにおける、コンポジット支援アプリの「xtools」は、コツコツとアップデートを重ねてきたものの、まだいくつか改善の余地があり、そろそろ決着をつけようかと思っております。ここ1〜2年は、いわゆる「撮影」作業工程に関する仕事は以前ほどなく、別ジャンルの仕事が増えています。「xtools」の出番はかなり少なくなっています。

アニメのコンポジット周りの仕事は、どうやっても、価格破壊のイタチごっこのような構造から抜け出せないと、少なくとも私は実感しています。つい最近の仕事もそうでしたしネ。「xtools」は薄利多売のツールとして作ったわけでは無いですし、現状の風潮にさらに適応させたところで、状況は一層、悪い方にエスカレートするでしょうから、これ以上の開発はヤメるのです。

24fpsベースの作画を起点とする現行のフローの10年後、20年後の展望について、みんなどう考えているんだろうか。単に「このままの状況が続く」と思っているのだろうか。秒間60〜120フレームの世界に馴れた近未来の一般人からは、秒間8〜12枚の作画アニメは、さぞカクカク動いて不自然な、古びたものに見えると思います。昔のトーキー映画とまではいわないけれど、アンティークな風情をどうしても感じてしまう事でしょう。現行のアニメ制作の「手描きで1枚ずつ、動きを紙に描いていく」方法を、まさか枚数を2倍4倍に増やしてやり続けるのでしょうか。そうなると、今以上に予算が厳しくなりますよネ。‥‥未来のビジョンは?

そんなこんなを考えると、現行方式に対する技術開発にリソースを割くのは、あまり妥当とは思えないのです。「xtools」は自己開発のソフトウェアですが、ゆえに、限りある自分の時間を、これ以上「以前のツール」の開発にダラダラ消費されるのを防ぐためにも、最終のアップデートは完了しておこうと思っております。ソフトウェアの使用期限を2050年とかにセットして、開発を終了するのです。

「xtools」に関する最後のアップデートは、「アニメ制作でありがちな連番ファイル」の読み込みに関する一層の効率化・単純化、いくつかのバグフィックスです。After Effectsをグレーディング作業で使いやすくするように準備する「xtools」の「GX」(xtoolsはツールの集合体なのです)というのがあるのですが、それは今後も使うでしょうから、「分家」しても良いかもしれません。

でも、実のところ、「xtools」という名称はそのまま受け継いで、全く新しく仕切り直したものをゼロから開発しようと考えています。旧来アニメ制作対応型の「xtools」を開発終了するだけで、新型ツールは必要なのです。新しい制作方式は、人間の成すべき事以外の雑事は、全部コンピュータに処理させないと、到底実現できるレベルでは無いのです。

開発したツールを納めたフォルダを眺めていると、私の情熱と失望が見て取れます。この10年でアニメ制作のコンポジット周辺は、価格と時間の競争でズタボロになってしまった。まあ、これはアニメに限った事ではなくて、世の常なのでしょうから、誰を恨むわけではありませんが、教訓はしっかり胸に刻んで、次の新しい方法では「予防策」をいくつも張り巡らせようと思っています。

もしかしたら、今やっている作品が、最後の「昔ながらのアニメ」の作業になるのだろうか。セル絵具のアニメから本格的に離れた1996〜97年も、こんなキモチだったように思い出します。

ワスプ・メジャー

ワスプ・メジャーという、ピストンエンジンがあります。ピストンエンジンとは、一般的なバイクや車などに搭載されている普及したエンジンで、「何らかの力でピストンを動かし、そのエネルギーを取り出す」方式です。現在はほとんどがガソリンの爆発力を用いてピストンを動かす「ガソリンエンジン」です。

一般的に、原付バイクだと5〜6馬力、中型バイクだと20〜50馬力、軽自動車だと50〜60馬力、乗用車は100〜200馬力くらいでしょうか。

ワスプメジャーは何と3000馬力。しかも、最終型のスーパーチャージャー付きは4000馬力以上ありました。なんだそりゃ? という数値です。

B-29の改良型のB-50、そして後継機のB-36に装備され、巨大な爆撃機を高速で飛ばす原動力となりました。

4000馬力という、信じがたい、鬼のような馬力。気筒(ピストンの納まった筒)の数も半端無く、28気筒。7つの気筒を放射状に並べた星形エンジンを、4重に連結した強烈な外見です。Wikipediaによると「始動方法を誤ると56個全ての点火プラグが汚れて(「かぶって」)しまい、こうなると清掃または交換にかなりの時間を要することとなった」との事。別の文献によると、始動時にかぶるとエンジン清掃に時間がかかり過ぎるので、丸ごと交換する整備体制だった‥‥ともあります。

豪快です。豪快すぎます。

飛行機が飛ぶようになって、ピストンエンジン(レシプロエンジン)搭載機が花形となり、最後期、アメリカが究極のエンジン「ワスプメジャー」を作って、ピストンエンジンの開発競争は幕を閉じたかたちとなりました。

なぜ幕を閉じたか? ‥‥それはワスプメジャーを搭載した飛行機のスペックを見れば、明らかです。特に解りやすいのは、速度性能です。

B-36:最大速度685km/h

意外なほど、低速です。エンジン馬力の絶大な向上に対し、速度は気が抜けるほど向上しておりません。

とはいえ、戦時中のレベルから考えれば充分過ぎるほど高速です。しかし、時代はどんどん先へと進み続けており、数年前では素晴らしい性能であった速度685kmは、急速に魅力を失っていったのです。

ピストンエンジンの頭打ち、です。正確には、ピストンエンジン搭載の航空機の限界‥‥でしょうか。

ジェット爆撃機のB-52の出現によって、ピストンエンジン爆撃機最高峰のB-36は短い就役期間に終わります。プロペラ機最速(最高速900kmオーバー)のソビエトのTu-95は、ピストンエンジンに見えますが、ジェットの親戚「ターボプロップエンジン」です。

さらに時代は進化し続け、古本で買った1960年代初頭の航空誌では「ミサイル技術の進化により爆撃機は不要、F-104スターファイターが有人による最後の戦闘機となり、ミサイル全盛の時代になる」と言い切っておりましたが、‥‥残念ながら、そこまでにはならなかったですネ。

有人による飛行機はまだ飛び続けています。なぜ、これだけ進化した時代に、有人の軍用機が残り続けているのかは、簡単な事です。「人間が介在する必要がある」からです。20〜30万馬力相当のジェット推力を持つ戦闘機も、人が操縦し続けています。

航空機におけるピストンエンジンの愛好家は世界中に沢山居て、今でもピストンエンジンは愛され続けています。ただし、主流ではなくなり、数も激減しました。ある種の「伝統芸」としてのピストンエンジンが残り続けているだけで、主流に返り咲く事は「終末後に残された世界」にでもならない限り、訪れないでしょう。

最高峰を作り上げる‥‥というのは、もしかしたら、ろうそくの最後のまばゆい輝き‥‥なのかも知れませんネ。

脅威

何かしらの作品を世に出そうとする時、一番気にするのは、「やりたい事がかぶっている」他の作品です。ストーリー、絵、映像‥‥いずれの要素も、他人とかぶりたくはありませんし、もしかぶっているならば、他よりも先に世界に発表したいと思います。

私がやろうとしている新しいアニメーションの技術で、根底の技術が「もろかぶり」の映像を見た事があります。1年前の話です。仕事で接したものなので、内部の設計・構造まで見たのですが、「やっぱり、普通にコンピュータを手にしたら、この段階に進むよなぁ」と同感すると同時に、強い焦りも感じました。‥‥なぜなら、垣間みたその技術は、太平洋の向こうの国力のある某大国のものだったから‥‥です。国内だったら「意地比べ」で拮抗しますが、某大国は「底力の差」(70年ほど前、大負けしたよネ)が歴然です。

‥‥やっぱり、「向こう」の人間は往々にしてプロジェクトやシステムに対し思考が柔軟で、かつ合理的だよね。なんかね‥‥、米英独が相応の規模を投じてジェット機を開発している時に、日本ではジェット機などまるで頭になくて、既に限界の見えているレシプロ機で手一杯だった‥‥という、戦時中の状況がかぶって、やるせない挫折感を感じます。こちらは自己研究レベル、あちらは大手でちゃんと予算を投入してスタッフも割いている‥‥、何だ、また負けるんか。

唯一の救いというか、勝機もある事はあります。あまりおおっぴらに言えないですが、国民性‥‥ですかネ。同じ技術を手にしても、やりたい事が全然違うので、そこだけは安心です。ただ、その勝機も、同じ土台の上に立てた場合ですから、今の日本のアニメ制作基盤ではどうにもならぬ、です。

日本では「アニメとは、紙の上に絵を描いて動かし、それをセルに転写して彩色し、レイアウトをもとに背景を描き、それらをカメラ撮影台で撮影するのが、これすなわちアニメである」と信じ込まれており、今は彩色・背景がペイントソフト、撮影がコンポジットソフトにマイナーチェンジした状態です。いくらコンピュータがあろうと、その段取り、‥‥いわゆる「道」は変わる事がありません。

私が垣間みた「向こうのアニメ映像」は、「絵を描く、絵を動かす、今はコンピュータがある、だからこのようにアニメを作る」‥‥という、とても明快な思想を体現した内容です。日本だと前例が無い、で蹴られてしまうような事を、なぜ、欧米は具現化できるんだろう。

日本は、いわゆる「サムライ的思考」が、良くも悪くも残り続けています。悪く‥‥とは、自分の武器に対し過剰なまでに傾倒する事です。自分の武器を信頼するのは何も悪い事ではありませんが、反動として、他の可能性をあまりにも軽視するのです。

私はこうした「サムライ的思考」は、個々の技術の進歩や高レベル維持においては、非常に有用に作用すると感じますが、システム的観点では「変化する事を嫌う」「新しい要素を受け入れない」という「殻に閉じこもる」原因とも感じます。鎖国状態ならそれでも通用するんでしょうが。。。

私の最大の脅威は、国内ではなく、某大国です。1年前にあのレベルに達しているんだったら‥‥と考えると、とても不安な気持ちになります。あのやり方だったら、簡易ではあるけどステレオグラムにも対応できますし、4K,8K,60FPS,120FPSも段階的に対応できるでしょう。私が構想している事と基礎技術はほとんど同じで、このブログで書いてきた事は、「向こうさん」は既にプロダクションレベルでやり始めている‥‥とは、なんともやるせないし、悔しいよネ。

もしサムライが、新しいシステムを受け入れ、その中で卓越したサムライ魂を発揮できたら、どれだけ強力か、と思いますが、新しさを受け入れる事自体がサムライゆえにありえない仮定‥‥なのかも知れません。

70年近く経っても、結局同じ事の繰り返し、か。クールジャパンとかさ‥‥、今のまま自画自賛しているような状態じゃ、クールの意味が「クソサブい」に変化するような気もしますネ。


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