老眼

ここ最近、数人の方から「今、ベテランのアニメーターは、老眼になって、自信を喪失している人が多い」‥‥と言う内容の話を聞いた事があります。複数の別々の場所で聞いたので、局所的ではなく、そこそこ広範囲の話題だと感じました。

たしかに。‥‥ある日突然、老眼がやってきて、今まで見えていた鉛筆の先の絵が、極端に見え辛くなるのって、かなりのショックですよね。

老眼の「老」は、からだ1つで自分の運命を切り開いてきた絵描きにとって、耳にしたくない、目にしたくない、1文字です。仕事の受発注のシステム上、老いを受容できないのです。

しかも、今のアニメ作画は、キャラがどんどん細かくなって、余計にマクロ視力を必要とします。

視力低下と細密なキャラデザインを前にして、自分がどんどん取り残されていくような不安や苛立ちが、感情の圧迫するとしても、致し方ない状況と言えます。

老いぼれたらThe End‥‥という、暗黙の価値観がアニメ業界にはあると思います。特にアニメーターは、そういう強迫観念が強いのではないでしょうか。白紙に描線をひいて、絵をゼロから描き起こすプレッシャーとともに生きてきたわけですから。

ですから、どんなに自分の感覚を磨き続けても、体が勝手に老いぼれていく現実は、絶対に受け入れがたい事なのです。老眼を認めたくない、あるいは、周りに言えない事も多いのではないでしょうか。

私は以前、アニメ業界は「老いを想定していないシステムだ」とブログで書いた事がありました。アニメーターに限らず、撮影などの他のセクションであっても、「20代の君は、30年後にどうなっているか、想像できるか?」と聞いて、具体的に答えられる人はあまりいないと思います。個々の生き様の話ではなくて、業界に在籍し続けた30年後の状態の事です。‥‥おそらく「今のまま、作業を続けている‥‥んじゃないかな‥‥」という漠然とした答になると思いますが、身体は30年後に「今のまま」であるはずがない、です。

アニメ業界の標準作業システム・ワークフローは、「ベテランー中堅ー新人」の技能を無視したフローとも言えます。作業内容の難易度を無視して、単価を一律に設定しているのが、その何よりもの証拠。技能の伝授に対しても「適当に内輪でやってよ」的なスタンスで、システムとしては何ら考慮されていません。

新人にベテランと同じ作業内容を要求して「ダメなやつだ」と罵る。同じく、50代と20代の体力を同じに考えて、捌ければいいやと、内容無視で仕事を撒く。どちらも、「‥‥」ですよネ。

私は「工房型」のワークグループを計画していますが、それには「ベテランー中堅ー新人」の技能サイクルの構想も含まれています。‥‥普通さ、誰でもそう、システムを考えないかな。特に変な事を言ってるとも思えないんだけど。

しかし、現実問題として、業界は「そう」(=「ベテランー中堅ー新人」を一律で扱う)なのです。前にも書いた事ですが、業界の枠組みが「そう」だから、今までアニメを量産し続けられたのかも知れません。しかし、個人に突きつけられる現実は、老眼がまるで死刑宣告のように響く辛辣なものです。

旧来アニメ業界のシステムはもう変えられないと思っています。しかし、新方式でアニメを作る新しい場所は、老眼なんぞで気落ちしない、技能ピラミッドをベースにしたシステムを構築したいと考えています。

「けッ。口で言うのは簡単だろ」と罵る声が聞こえてきそうです。しかし、「口で言うのは簡単だ。実際は難しい。」と言ってる人も、結局は口で言ってるだけ‥‥ですよネ。達観してみせて、自分は何も動かない。誰かが変えてくれるのを待っている。誰かが救ってくれるのを待っている。自分はつぶやくだけ。

「会議」や「議論」するだけじゃダメなんです。「会議」ってコワいんですよ。会議だけで何か成し遂げた気分になりますから。実質は何も進展していないのにネ。

要は行動を起こしているか、否か、です。‥‥私は、もう数年前から開発を自己資金で進めてますがネ。達観できるほどの経験と技術があるなら、それを元手に、具体的に行動せよ!‥‥です。

老眼になった事で、絶望的な気分になる、今の業界。

‥‥実は私も、数年前から老眼が忍び寄ってきています。数年後には老眼フルタイムになる事でしょう。老眼の兆候をはじめて感じ取った時は「これが老眼と言うやつか」と少々ショックでしたが、まもなく「視力が落ちたのなら、そのように対処すればいい。『老いのスケジュール』を組むべし!」とキモチを切り替えました。嘆く事にカロリーを費やすよりも、どうやって未来を切り開くかにカロリーを活用したほうが、有意義じゃないすか。

外堀から

先月、米Amazonから新しい「Kindle HDX」が発売されました。7インチスクリーンの「iPad mini」相当のモデルが1920x1200、8.9インチの「iPad」相当モデルが2560x1600と、高密度な画素数を持つモニタを搭載しています。

7インチの大きさに、一般的な作業用モニタの解像度がギュッと詰まっていると思えば、その高密度ぶりがイメージできます。一方、8.9インチモデルは27インチモニタの画素が詰まっているわけで、これも中々に恐るべきスペックです。

順次、H.265などの次世代コーデックも取り込んで、次世代コンテンツの足場が形成されていく事でしょう。高解像度、ハイフレームレートのコンテンツが出てきた際に、現コーデックでは転送量が増大するばかりですから、映像の圧縮技術も比例して向上していくと思われます。H.265のスペックを読むと、「まだ圧縮する隙があったんか」と驚く事しきりです。

また、AdobeがEncore(DVDやBDのオーサリングソフトウェア)の開発をCS6で中止したのは、ご承知の方も多いでしょう。要は、AdobeはもうDVDやBDなどの光学ディスクを「レガシー(過去の遺産)」だとカテゴライズしたわけです。

水面下の動きって、アウトサイダーからはほとんど見えません。たまに水面に波紋がでたり、ちょっとだけ一部が水上へと露出するのみです。

一般の人々なら、地上から眺めているだけで良いでしょう。しかしねえ‥‥アニメ業界は、曲がりなりにも映像コンテンツのビルダー・ベンダーですから、水中に視野を持って然るべき‥‥なはずです。しかし実際はそうでもないですよネ。

「クールジャパン」とおだてられながら、実際は最新テクノロジの恩寵からは離れた存在。おミソです。しかし、アニメ業界自体も「これ以上のハイクオリティは必要無い」と言わんばかりの状況ですから、ある意味、バランスしているのかも知れませんが。

アニメ業界の「総意」がどうあろうと、外堀からどんどん埋められていきます。タブレットで2.5kの時代ですもん。その後、三の丸、二の丸と追いつめられて、内堀を超えられ、本丸に火がついた時点でようやく事態の深刻さに気付く‥‥なんて、イヤですよネ。自分たちがほとほとレガシーな存在に成り果てた事を、最後になってようやく悟り、まさか、「もはやこれまで」と腹を召されるご所存か。‥‥まあ、本丸まで篭城して生き残る事はあまりないですわな。

‥‥なので、篭城しては絶対にアウト!‥‥なんですが、今のところは、篭城路線を歩んでいるように思えます。機先を制す‥‥なんていうニュアンスは感じられない。

私はアニメ業界があったがゆえに、様々な技術を身につけ、現在に至りました。耳障りの良い事を書いてもその場限りの鎮静剤にしかならないでしょうから、こんな風な「耳に痛い」ような事を書いてますが、正直、業界への愛着は消えません。

私は過去25年の間に、3人の「戦友」と呼べる身近な人たちを死によって失っています。みな、アニメ業界にフリーとして在籍していた人です。その人たちは皆アニメが好きでした。その人たちの身体は無くなりましたが、技術や思想は私の中で生き続けています。‥‥私は命の代わりに、自費(1K万くらいはいってるんじゃないだろうか‥‥)をつぎ込んでいるようですネ。その3人が、私を後押ししているようにも思えるのです。

以前、48fpsテストの際にちょっとしたAfter Effects上の作業ミスから、紙の作画方式での「生き残り策」が垣間見えた事がありました。大幅な増強は必要ですが、「城」を存続させる可能性が感じられたのです。しかし、その城の当の住人・兵たちが、次世代フォーマットを意識しない限りは、どうにもなりません。新しい事に取り組むがゆえに、旧来技術の新しいメソッドも見えてくるのです。

機動力は、活用できる時期に用いないと‥‥さ。追いつめられた後では、機動戦も夾撃も遊撃も不可能なのですから。

デザインとモーション

絵のスタイルは、モーションにも深く影響します。絵の「カリカチュア度」は、動きの「カリカチュア度」と密接に絡んでいるのです。

新しい表現が可能な新方式によるアニメ制作においては、キャラクターのデザインの幅も広くなります。セル画時代のスタイルを踏襲する必要は「技術的には」必要ないわけです。

と言う事は、動きも呼応して変化していくはずです。「デザインが期待するモーション」または「モーションが期待するデザイン」とでも言いましょうか、何でも一律に今まで通りに動かせば好結果が得られるわけではなく、デザインに適した動きが求められます。

モーションが48fpsフルになった場合、絵に対する要求度も相応にシビアになります。時間軸の解像度が高くなったぶん、絵も動きもそのままでは済まされない‥‥という事です。24コマ時代に培った技術は足場にはなりますが、そのままでは全く使えません。

私もご多分に漏れず、24コマフィルムのマインドセットが強固なものですから、48fps以上の動きになると、どうにも持て余し気味になってしまう‥‥というか、使いこなせているとはまだ全然思えません。これから3年くらいのさらなる研究は必要だと痛感しています。

以下はいつもの「原画 to After Effects」‥‥というか「ラフ画 to After Effects」です。ちょっとした顔の動きですら、48fpsですと「取り扱いが今までと大きく違う」感が満杯で、一層の精進が求められます。







*たったこれだけの顔の傾きだけでも、様々な予備動作やリアクションを入れないと、著しくCG臭いモーションになるのが、48fps世界の特徴です。8〜12fps(今のアニメ)では考えられないモーションになるのです。
*髪のモーションは未付けです。髪の毛のリギングは結構面倒なので、ラフモーションでは手をつけない事が多いのです。
*上図の状態に淡彩風に着彩する事も可能です。‥‥という事は、絵のスタイルによっては、必ずしもレタスペイント互換の「スキャンに都合の良い線で描く」必要もないのです。新しい方式においては、絵・映像のスタイルは膨大なのです。

研究を進めて強く実感するのは、「デザインとモーションは一心同体」だという事です。「原案別人、キャラデザ別人、原画別人、動画別人」という作業スタイルは、今の分業スタイルに適した方法だと思います。しかし、モーションのシビアなハイフレームレート、ディテールの克明な4K以上の描画においては、デザイナーはモーションの知識を「それなり以上」に有している必要がある‥‥と実感します。「俺はキャラの原案を描くだけだから、それ以降の面倒は知らね」では、成り立たない‥‥というか、モーションが後付け感満載の「紙芝居」レベルになってしまいます。「動かす事」と「デザインする事」が常に2重連星のように引きつけ合い、軌道を運行していく必要があるのです。

そんな要求基準の高そげな事を‥‥と思うかも知れませんが、仕方ねいです。旧来の「知識」は色々な場面で応用可能ですが、「常識」は通用しなくなっていくのが、未来の特徴かも知れませんネ。

Kindle HDXの8.9インチは、もはや2560px〜2.5kの解像度を持つみたいです。27インチクラスのピクセル寸法が8.9インチスクリーンに収まる! ‥‥どんどん常識が変わっていく昨今です。

YouTubeがな

今の私の自己研究は、キラーカット(グッとくるカット)の研究、ひと通りの演技を網羅しメソッド化する課題、関連性のある作品群のPV的な映像、極少数人数による分担作業システムの開発、etc...といったところです。

私の甘い考えでは、そうこうしているうちにYouTubeの仕様がさらに高品質になる事を予想しています。

今のYouTubeでは、例えば前回のような絵作りの映像をアップしても、解像度とフレームレートの制限により、見た人に「何だ、イラストっぽいディテールのが動いてるだけか」と思われて終了!‥‥だと予測しています。スフマート技法による絵作りの映像がちょっと進化しただけだ‥‥と思われるのは、絶対に避けたい‥‥のですが、今のYouTubeのクオリティじゃどうにもならないですし、もっと言えば、Retina的な高密度液晶がある程度浸透した後でないと、こちらの意図するクオリティを伝えられないと考えています。

前回、前々回のサンプル静止画も、縮小サイズと言えど、できれば1000pxくらいでドン!と出したかったのですが、このブログのテンプレートが500pxちょいくらいの幅なので、仕方なくあのサイズになったのです。

実寸は以下のサイズで、500px前後だと指先しか入りません。



YouTubeでも、HD(2K)が出せるんだからいいじゃん‥‥とか思う事もあるのですが、フレームレートが30fpsどまりなのが、どうにも。

加えて、HD解像度で送信しても、YouTubeのサーバサイドで低解像度も同時に生成して、多くの場合は360とか480px幅がデフォルトとして提供されてしまいます。全ての人が映像スペックマニアなわけではないですから、いちいち解像度を切り替えて見るなんて事はしないでしょう。生粋の4K48fps作品においては、それはもう絶対にNG‥‥なのです。品質の格差が売りなわけですから。

ただ、YouTubeを悪く思う気はありません。現在の落としどころとして、YouTubeの仕様は妥当だと思います。4K48fpsは現インフラを考慮すれば、オーバースペック以外のなにものでもありません。

でもまあ、折角、テレビ放送網ではなく、インターネットという仕様の広がりのあるメディアなので、国営放送や民放に先駆けて、4Kで48〜60pのストリームを開始して欲しい‥‥とは思っています。今やYouTubeの影響力は絶大なものがありますからね。



相互フィードバック

私は、特別なオーダーが無い限りは、現アニメ業界の作品においては、言うなれば「猫をかぶるスタンス」に徹しています。張り切っちゃったら、和を乱す原因だしネ。‥‥なので普段はいわゆるアニメ撮影の標準的な仕事ではなく、私の本領を発揮しやすいオープニングやプロモーションビデオ、ミュージックビデオ、CMなどのアニメ撮影とは異なる映像内容のものを引き受けていますし、実写の仕事もそこそこ多いです。アニメの撮影と呼ばれる仕事では、もう私の出番は無いも同然なのです。

とはいえ、絵で話を紡ぐアニメが嫌いになったわけではありません。今でも大好きです。しかし、前回も書いた通り、もう致命的なくらいに現制作方式との溝が深まっており、昔のように撮影班を組むようなパッションは消失しているのです。

もしワークグループを組む事があれば、今の業界とは全く別の、新しいドクトリンを持ったものになると思います。新しいワークグループ〜工房に必要な人材は、多少あらくれ・偏屈でも、様々な才能を持った様々な人間が欲しい‥‥ですネ。何と言っても、最低4K48fpsの壁を持つ「強固な要塞」を攻略せねばならんのですから、羊よりも狼が必要なのです。ウルフパックを形成したいのです。

私の考える未来の方式では「聖域」はありません。現業界フローでは、原画など「紙作画」の部分は手を触れてはならないタブーですが、私の方式では線画の描き方も著しく変わります。撮影と呼ばれた行程も無くなります。ゆえに、今の業界の方式とは、共用できる部分が10%くらいしかありません。

前回とは違う例を挙げます。より一層、線画の描き方が変化し「線画と色彩の協和」が意識できるサンプルかと思います。

線画は、こんな状態です。



このサンプルは、「金髪のアニメーション表現に関するテスト」なので、髪の毛の描写に線を重ねています。顔はなんて言うか‥‥「大丈夫か」と思うくらいの「半完成」の状態ですネ。服は白いモコモコしたデザインなので、もはや線画では何一つ描かれていません。

これをスキャンしAfter Effectsに持ち込みメイクし、リギングを経て、コンポジット・ビジュアルエフェクト・グレーディングを施すと、以下のような完成画面になります。顔の印象など、線画の時と比べてまるで違う印象なのが確認できると思います。


TypeA ちょっと暗めの物憂い雰囲気


TypeB 金髪をフワッと軽やかに


TypeC 金髪のディテールを持ち上げたグレーディング

顔の中身を線画で描き過ぎないようにしたのは、実は「眼力(めぢから)」を実線にて集中させたかったからです。このやり方においては、「線画段階で絵の要素を描ききるのはNG」で、ビジュアルエフェクトに至るまでの「見越し作画」をおこなう事が重要なのです。
*見越し作画‥‥とは、マルセイユの偏差射撃のようなもので、映像の向かう方位を先読みして、適切な作画をおこなう技術です。

また、これは止め絵イラストを描くためではなく、キャラの演技〜髪の毛のニュアンスを活かしたアニメーションのための習作です。ゆえに髪の毛の実線は、After Effectsでのメイクで適切に処理される事を事前に予期し、「金髪になった時に、効果を発揮する描き方」を実践しました。髪を動かす研究は、もうかなり前からやっていましたが、日本人の黒髪ばかりだったので、金髪にチャレンジしてみたのです。

こんな髪の毛を動かすなんて、今の現場では「非常識」極まりない事です。二言目には「3Dで」とか言い出すでしょうネ(苦)。3Dと言えば、何でも大変なものが実現できると思っている人は、まだまだ沢山います‥‥よネ。「原画 to After Effects」ですら非常識なのに、こんないかにも複雑げなディテールを動かすなんて‥‥まあ、とても今の現場では無理なのです。

ちなみに、作品・商品レビューとか見てると、「作画じゃないっぽいものは、3D」と安直に判断する一般の人が多いです。そんな単純なものじゃないんですけど、DVD付録のメイキング映像の功罪の「罪」部分の影響と言えるかも知れませんネ。

このサンプルは、もちろん2Dです。髪の毛の1本ずつ、私が紙の上に描いたものを、After Effectsでメイクしているのです。髪の毛のアニメーションは、大変ではあるのですが、上手く管理できるようAfter Effectsで構成すれば、原理はそんなに難解ではないのです。
*もちろん、実際の運用では、こうした髪の毛などの共通パーツは、どんどんバンク化して効率化します。事実、私の手元には、既に数多くのバンク(黒髪用)が存在します。


*顔のデザインは、まだいくらでも作れると思います。今回はちょっとリアル風(でもやっぱりマンガバランスではありますけど)ですが、もう少しコミック寄りでも良かったかな‥‥と思っています。


*線画とAfter Effectsさえあれば、このような緻密な髪の毛も、表現可能です。

これは単に映像表現の絵面(えづら)上に留まる話題ではありません。この髪の毛が動かせるのであれば〜このキャラが演技できるのであれば、こんなシーンが作れる〜こんなストーリーがイメージできる‥‥と、実はシナリオや企画にまで遡る事柄なのです。

絵と話は、相互にフィードバックしていくものなのです。

今のアニメの企画やストーリーは、現アニメ表現に適した内容です。カットの割り方も、カメラワークも、尺も、みんな「現在のアニメ絵」の利点を最大に活かした様式なのです。もちろん、同時に欠点をカバーする様式でもあります。

と言う事は、絵が大々的に変わって絵画様式に大変化がおこれば、ストーリーの発想も変わる、尺も変わる、カメラワークも、カット割も、全て変わってくるわけです。

‥‥なので、こうした新しいやり方は、今の現場において、作業の枠組みとか作業者の意識などよりもさらに深い部分で、「根本的な企画として」大きな齟齬をきたしてしまうのです。現アニメの企画に、上図のような絵をブッこんでもサムいだけです。研究を進めるうちに、絵の様式の刷新は、実は「地盤のシフト」をも誘発する事が解ったのです。新しい方法の要素には、絵だけでなく、企画やシナリオも含まれる‥‥という事は、つまりは、新しい絵や映像を理解できなければ、的を外した企画しか作れない‥‥という事です。

前回と今回の記事で、線画とAfter Effectsでどのような絵が作れるのか、ちょっとだけ紹介しました。アニメとは現業界のワークフローで作るものだ‥‥と思考が固着している人も多いでしょうし、私もスタートはそうでしたが、「枠からはみ出す決心」さえできれば、実は数多くの広がりが開けているのです。

先人の模倣や踏襲を続けてマイナーチェンジで凌ぐ事が業界の「全体意識」になってしまった今、そこから何か「新しい未来」を見出す事は、少なくとも私にはできません。ただ、新しい技術と企画の「上昇スパイラル」を実感する時、例えそれが細い1本道でも、渋滞した幹線道路よりは遠くを見通せる気持ちになるのです。

どんどん開くギャップ

After Effectsを「アフターエフェクト」のツールとして使うのではなく、アニメーションのツールとして使うようになって久しく、ふと現アニメ業界の原画や撮影の作業をやると、もうどうにもならないほどの隔絶・ギャップを痛感します。

原画の描き方は、最終的に撮影の仕上がりにも、大きく影響します。あまりにも完成度が上下するのは好ましくないので、鉛筆の使い方から撮影の方法に至るまで、「クオリティのバラつきを抑制」しつつ生産性と分担作業性も兼ね備えた方式が定められています。そうして作られた映像作品を、一般的には「商業アニメ」と呼びます。

しかし、この方式の欠点は、24コマフィルム時代に形作られたものである‥‥という点です。48p, 60p, 96p, 120pなどの近い未来のフォーマットに、絶望的なほど、対応できません。ただでさえ、現場の予算が少ないと言っているのに、作画枚数が2倍4倍になったら、それはもう大破綻です。だからといって、96fpsのためにアニメ作品の予算が4倍になるなんて、今までの経緯からしてあり得ません。自分が「金を出す側だったら」と考えれば、容易に予算など上がらない事は想像できるでしょう。

今のままで良い。アップコンすれば良いんだから。‥‥と言う人もいます。しかし、ネイティブ60fps、120fpsの中に、1.5kで24コマアップコンの映像が同居した時の、クオリティギャップは相当キツいものがあるでしょう。著しく古めかしいものに見えると思います。昭和30〜40年代のアニメを見た時の「旧さ感」と同じ印象を受けるでしょう。

旧いものをリバイバル上映・再放送するのなら、映像の質が古くても解ります。しかし、作り立てのホヤホヤなのに、映像品質が旧いのは、単純に「何で今でもこんなに旧いの?」と疑問を感じさせる事でしょう。言うならば、最新のドラマをベーカムで撮るようなものです。

After Effectsの現アニメ業界での使いかたも、かなり限定されたものです。ゆえに、一生懸命、映像表現の才能を磨いても、ひとり相撲になりかねません。均質化した映像表現を踏襲して生産する事を求められ、自分の才能もAfter Effectsの機能も、未使用のまま封印し眠る事になります。アニメ業界未経験のこころざしのある人は、プロになったら、自分の手とコンピュータで新しい表現をどんどんやってみたいと思うでしょうが、それは枠組みの「和」を乱す事になるのです。業界の求める人材は、枠組みの中で「和と忍耐力」をもって地道に働き続ける人であって、才能を持った人はある種「ありがた迷惑」ですらあるのです。悲しい事ですが、それが現実です。

ただ、私はもう、そうした現業界との意識のズレ、ギャップを埋めようとは、思わなくなりました。ズバリ、無理、なのです。

現アニメ業界の「枠組み」があってこそ、業界は成り立っているのでしょう。だから、枠組みに手を加えてはいけないのです。たとえ、「未来展望ノーアイデア」の現実に危機感を抱いたとしても、枠組みへの介入は御法度なのです。「発展や改革」をする事は、すなわち「枠組みの破壊」と同義ですから。つまりは、「現業界では新しい事をしてはいけない」のです。許されるのは「枠組みから出ない範囲のマイナーチェンジ」だけです。極論に聞こえるかもしれませんが、現実が物語っています。

私はAfter Effectsをふんだんに使って、4k48fpsの実験映像やPVを自主制作していますが、そこでのAfter Effectsの使い方は現アニメ業界から見れば「非常識極まりない」ものです。

例えば、まず線画を鉛筆で描いてスキャンします。



既に、線画の描き方が現アニメ業界フローと違います(シャツは非常に淡白ですが‥‥)。普通は下図のような描き方ですよネ。



現アニメ業界の絵の描き方の多くは、「線画で完成画を想像しやすい」描き方です。線画の枠に沿ってペイントしていけばカラーになる‥‥という感じですネ。

しかし私は、新しいやりかたにおいては、「線画と色彩の協和」を考えた線画の描き方をしています。つまり‥‥



‥‥のような線画が、After Effectsで「Make(メイク)」されると、




‥‥のようなルックへと変化する事を見越して、「線画で全てを語らない」描き方をするわけです。

業界のフローを知っている人は、「線画スキャンのあと、いきなりAfter Effectsなの?」と疑問に思うかも知れません。その通り、線画スキャン以降はAfter Effectsで全作業をおこないます。動きも含めて、です。「原画 to After Effects」です。

紙の上で、鉛筆ニュアンスで作画した後‥‥つまり、



‥‥のような絵がスキャンされた後は、After Effectsで、



‥‥のようにメイクされ、さらにあらかじめ用意しておいた背景(この例では実写)を読み込み、After Effectsでリギング・アニメーション・コンポジット・ビジュアルエフェクト・グレーディングをおこないます。以下、3つのタイプを作ってみました。







自由で縦横無尽な映像作りを、After Effectsベースでおこないます。空気感や光、影の付け方も、After Effectsで自在にコントロールできます。演技内容に応じて、上図のキャラを1秒間96枚の動きで、こちらを振り向かせたり、微笑ませたりする事もできます。芝居場は立体的に組まれており、カメラを動かすと、キャラや背景の位置関係が立体的に推移します。
*現アニメ撮影では、フィルム撮影台を踏襲しているがゆえ、「カメラを動かす」(After Effectsで言うところのカメラレイヤーの活用)という意識が希薄です。動かすのは「台」のほうですネ。

線画以降はAfter Effectsのインソース‥‥なんて、現アニメ業界では、許容もできなければ、対応もできないでしょう。私もこのやりかたを現業界に持ち込むつもりは「全く」ありません。このやり方を許容し活用するのは、「アニメを作る新しい場所」だと思います。

上図の処理例は、ごくごく、ほんの一例です。現アニメ業界フローを全く無視した新しいやり方においては、私の残された寿命では到底やりきれないほどの表現の広がりがあります。上図はまだ現アニメの影響が色濃いですが、もっと違う事が「2D」でもいっぱいできるのですよ。

48〜120fpsフルモーションの動きは、現アニメと全く異質なもので、違和感も相当なものです。しかしそれは結局は、「表現様式の洗練」を待っているだけだと感じます。今のアニメだって、エコノミーな理由で2コマ3コマのポスタリゼーション(コマ落ち・コマ打ち)の動きがベースとなり、それに適した定番の様式を先人たちが生み出していったのですから。後から追随する人間は、「様式」について「所与のものと錯覚」し無意識・無頓着すぎるのです。新しい技術・新しいフロー、そして新しい表現様式は、言わば三位一体なのです。

作画法、ソフトウェアの活用方法、ワークフロー、運用予算、作業の意識、完成物の品質・仕様、著作に関する意識‥‥のどれをとっても、どんどん現業界とのギャップが広がっていきます。

今のアニメが作りたいのなら、雇用の条件がどうであろうと、今の業界の枠組みに加わるのが現実的な選択です。一方、新しいアニメを作りたいのに、旧い枠組みの中で活動する‥‥なんて、考えてみれば、変な話なのです。数年前はまだ幻想を抱いていましたが、今では、旧来の枠組みの中で新しい事を試行錯誤する事は、無駄だとハッキリ認識しています。「その枠組みがあるから、アニメ業界なんだ」という事を、10年かけて悟った次第です。

Adobe Audition

iTunesで2000年以前の旧い音源を聴いていると、音圧が低く、聴き辛く感じる事があります。最近の音源と連続再生した時に、特に差を感じます。

まあ、iTunesの各音声ファイルごとの音量調整機能を使えば良いのでしょうが、どのファイルをどれだけ音を上げ下げしたかが解らなくなりそうです。なので、私は音量の差をどうしても調整したい場合は、ファイルを複製して自分なりに調整したファイルに変えてしまいます。「自宅リマスター」みたいな感じ、ですね。

私は最近Mac miniを常用していますが、本格的な音楽制作環境はインストールしていないので、たまに音量が小さい楽曲に遭遇しても、そのまま我慢して聴いていました。いちいちLogic ProをインストールしてあるMac Proを起動するのが億劫なのです。

しかし考えてみれば、そのMac miniにはAdobe CCをインストールしてあるので、「Audition」というソフトを使えば、音圧くらいなら簡単に調整できるはず‥‥です。折角CC一式をインストールしてある事だし、試しに使ってみました。

結果。‥‥充分、使えますネ。あまり名前を聞かないソフトでしたが、特に扱い辛いと感じる事もなく、エフェクト類も充実してて、やりたい事が実現可能です。

Auditionって、何か、マイナーな扱いですよネ。もったいない。‥‥アドビって、色んな会社を買収してソフトウェアを自社化しても、どうも「持て余している」感がありますよネ。Speed Gradeとかもネ。

で、Auditionですが、パラパラッと流し見した感じでは、ひと通りの機能は取り揃えているようです。インターフェイスは最近のLogicなどに比べると、やや旧い印象を受けますが、特に困る事はありません。

音圧を上げる程度だったら、「エフェクト/スペシャル/Mastering...」だけで充分可能です。音楽制作の統合環境にはならなそうですが、軽めの波形編集やミックスダウンなら気軽にパパッとできちゃいそうです。

CCを契約しているのなら、Auditionはインストールしておくと、色々と重宝しそうです。機能限定版のGarageBandでマスタリングするより、積極的な事ができますヨ。当座、音楽制作環境がGarageBandオンリーでも、GrageBandでミックダウンした音声ファイルをAuditionでマスタリングするだけで、グッと音圧の詰まった聴きやすい音に調整できると思います。

でもまあ、Auditionって、ちょっと名前で損しているような気が‥‥。私も「オーディション?‥‥関係無さそ。」とスルーしてましたから‥‥。

Adobe CCには、音声の波形編集ソフト・マルチトラックミックスのソフトもついてくる‥‥と思えば、解りやすいかも知れませんネ。

大国とは言え

一昨年くらい、某映画大国の某大手の「新しいやりかた」のアニメを見て、技術的な根本が私の取り組んでいるやりかたと「モロかぶり」な事にショックを受け、さらにはその金のかけかたにも大きなショックを受けたのですが、その後全く情報が出てないところを見ると、どうやら「量産化」には手間取っている雰囲気を感じます。‥‥その点はちょっとだけ安心。

私も同じような悩みを持ちますが、新しい技術がてんこ盛りだと、アウトソーシングが難しいんですよネ。推測するに、大国が欲する物量は、実現がまだ難しいのかも知れません。

大国は、量で攻めようとするところが強みでもあり、弱みでもあると思っています。量の影に隠れた様々な要素を取りこぼしてしまうのですが、その事に無自覚でもあります。これは絵に描いたような「攻めどころ」です。

日本の職人気質と忍耐力を、物量にシフトするようじゃ、競う前から負けは見えています。日本の特性をどう活かすか‥‥ですが、そのためにはいつまでも万歳突撃してちゃダメだよネ。


レンダリングが忙しくなったら

レンダリングが忙しくなったら、もう1台くらいMac miniを買い足しても良いかなぁ‥‥と思ってますが、現行ラインアップは1年前の3GHz未満のモデルなので、もうちょい待ち‥‥です。

そんなこんな、「そろそろモデルチェンジの季節かな」と思ってアップルストアをチラっとのぞいてみると、即納ではなく2日待ちになってます。おやおや。

たしかに、微妙な時期ですね。以前この時期にeMacを買った事がありますが、ストアから「ご注文のモデルは在庫がありますが、ほぼ同じ値段でよりスペックの高い新モデルが出ますので、ご検討なさってはいかがでしょうか」的な連絡を受けた事がありました。

まあ、2.6GHzのi7のままでは、色が褪せてますわな。そろそろ入れ替えの時期、でしょうね。

レンダリング‥‥と言えば、私は最近、4K48fpsなどの影響で、「レンダリングが重いサイクル」に入りました。

 1・マシンの性能が上がり処理が軽くなる
       ↓
 2・性能向上に合わせて映像内容の各種レベルを上げる
       ↓
 3・マシンの速度が処理内容に追っ付かなくなる
       ↓
 4・マシンの処理速度を一時的にマシンの台数でカバーする
       ↓
 5・新型マシンの処理能力が向上したようなので買い換える
       ↓
 1にもどる...

いわゆるイタチごっこというヤツですが、今、私のいるフェイズは3、4あたりです。とにかく、速いマシンが欲しい‥‥のですが、速いマシンといっても、CPU、GPU、メモリ、HDDなどが全般的に高速化しないとダメな状態なので、多分、今のコンシューマレベルでは無理だと思っています。全体が底上げしてくるのを待つしかないと観念し、当座は分散処理で凌ぐしかないと考えています。

どんだけ重いかというと、1996〜7年のPentium200MHzやPPC604e/180くらいの性能で、1280や1920をやるような体感です。止め絵ならともかく、モーションピクチャーなので、ハードルがぐんと高いのです。320x240、640(720)x480の時代に、HDコンテンツを作る事を想像してもらえば、なんとなく解るかと思います。

しかし、ツールは色々と揃っているので、昔のような手も足もでない閉塞感はありません。単に重く遅いだけです。運用技術で何とかなるように思います。

私は現在、Adobe CCを2ライセンス契約しているので、4台のマシンを同時使用可能です。Mac miniもそこそこ速いし、Adobe CCありきのレンダーファームシステムをプログラムすれば、安価に「航空艦隊」が組めそうです。

まあ、後は映像表現の技術向上、でしょうかね。最近、ちょっとだけ当座の仕事(現行HD)に技術を流用しましたが、まだまだツッコめる箇所は山ほどあって、自分の技術の未発達さにヘコみました。各部、伸びしろだらけなのは嬉しいのですが、逆に大して伸ばせない自分にもどかしさを感じた次第です。まだ技術は未完成、発展途上にあるのを再認識しました。

私はもうプライベートでは4K/48fps未満の映像を作る事は無いと思います。2K/24fpsが欲しい時は、「スマートダウンコンバート」(単純な間引きではないダウンコン)で対応するでしょう。ほんとに強欲なもので、今では2Kをさして奇麗とは感じなくなってしまいました。

今度のAfter Effects 12.1は「HiDPI content viewers for Retina display on Mac」ですから、After Effectsも徐々に高密解像度に対応し始めている感じ、ですネ。

捨てられない

私の自宅では現在、Mac miniをメインで使い、サーバはUSB2.0時代のMac miniとQnapのホームサーバでネットワークの中枢を形作り、Mac Pro 2008、Mac Book Proを適宜使い分けています。そこにiPad2、iPad mini、Kindle PW、iPhoneなどが加わる形です。

昔のマシンはどうしたか‥‥というと、かなり大量に処分はしたのですが、まだ10数台は残っています。意図的にコレクションしているものもいくつかありますが、多くは愛着があって捨てられんのです。

アキアのWin機(珍しいですよね、今となっては)、UMAXのPPC603e機、Mac Plus、Mac SE、Mac SE30‥‥あたりはコレクションに近い存在です。

一方、PM8600/250、ツクモのWin機(改造多数)、Performa475 & LC475、Performa575、Performa630、Quadra650とかは、愛着が強いので捨てられない部類です。未来、どのような処遇にすべきかも、よくわかりません。ただ、倉庫で眠るばかりです。

どれも特に価値があるわけでもなく、下手すれば廃棄に金がかかってしまう事すらあるかも。投機目的なんて全く無く、愛着の問題なので、価値とかはどうでもいいんです。

私は20年近く契約している倉庫がありますが、これがまた、どうしたものか。

Fostexの1/4インチオープンリールデッキとテープ(AMPEX等)、LD(‥‥。)、MIDI機器など、レガシー過ぎる物品がラック内に積み上げられています。

ベータ&VHSテープは大量処分したのですが、まだなかなかキモチのピリオドが打てない物品は厳選して残しています。決してコレクターではないので、今以上にレガシーな物品が増える事はないのですが、捨てなければいつまでもそこに残り続けます。‥‥。

ちなみに、メガドライブ、セガサターンもまだあります。アドバンスド大戦略が捨てられないがために。‥‥ただ、もはやRCA入力を持つモニタがどんどん無くなっているので、映写環境的にヤバそうな予感ではあります。



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