ペスト

14世紀のペストの記事を読んでいると、東西の交易によってもたらされたペストが、やがて夥しい屍(ヨーロッパだけでも3000〜4000万人とも言われます)を積み上げた末に中世を崩壊させ、結果的に、新しいヨーロッパへと導いたようにも思えます。

悪魔・魔女裁判などに関連する猫の殺害(=ネズミが徘徊する)なども要因の1つとされますが、何よりも、上下水道などのインフラの未発達と旧時代の生活習慣が、ペスト大流行の原因だと思われます。つまりは、中世ヨーロッパにおいては、いつか大量死の引き金が引かれることは「宿命」だったのでしょう。

しかしながら、ヨーロッパで3000万人、全世界で8000万人とも伝えられる14世紀の大量死においても、生き残った人はいたわけです。

不吉な話‥‥ではありますが、アニメ制作の業界でも似たような事が起こるのではないか‥‥と感じるのです。20代のフリー時代に養った「勘」、もしかしたら幼少の頃から何となく身に付けていた「虫のしらせ」的な感覚で‥‥です。

これから先の近い未来、4Kの過酷な作画に耐えた人と、新しい作画習慣を身につけた人が、生き延びていくように思うんですよネ。インフラもままならない、作業費の見直しも棚上げした状態で、よりディテールの細かい絵をペンタブ作画で何千枚も動かす、厳しい状況に耐える人々、そして一方では、旧来の習慣を捨て新しいサバイバル能力を獲得し、新しい作画の概念で4K8Kの新世界にネイティブに順応していく人々。

中世でタフであった人が生き残るとは決して限らない。旧世界の強者も弱者も富者も貧者も、関係無く無差別に殺していく。それが新世界の特徴なのでしょう。

ペストがそうであったように、4Kの持つダークサイドは、人々を無慈悲にフィルタする役割を担うのかも知れません。

雑感

ガルムの作品終了後の現在、私らの作業チームで作業している内容は、とあるアニメ映像の「絵と音楽を作り変える」内容です。「エフェクトを追加して見栄え良く」なんていう軽いものではなく、「世界観を仕切り直す」レベルのものです。今後はこうした、かなり積極的なグレーディング(その際は従来のグレーディングと差別化する為にも役職名は変えたいですが)も請け負う事になるかも知れません。

アニメ作品にも、ファイナルビジュアルエフェクトやグレーディングで映像を左右する動きが「のっぴきならないニーズとして」見え始めた‥‥とも言えます。でもまあ、考えてみれば、タイムシート通りに撮影して完成‥‥なんていうスタンスのまま、映像技術が盛りだくさんの現代と未来に通用するはずもないのです。

相変わらずのアニメ制作工程、すなわち、線画からスタートして、背景を先に完成させて、そこに色を合わせていくような作業では、「映像の強い意志」など作品が体現するわけありません。作品に現れるのは、各作業者が自分のテリトリー内で「反射神経」でまとめあげた作業結果の寄せ集めです。その結果=完成映像を見て、「いまいちピンとこない」なんて‥‥当たり前の話じゃないですか。現アニメの生産ライン自体がもともと、明確な映像表現の到達目標に基づいて動いているわけではないのですから、「強い何か」を映像上に表出させたいのならば、作品に基づく強い磁界をフローに作用させるリーダーと精鋭スタッフ、そしてメカニズムが必要なのです。

私はBlood劇場版(2000年の)のスタンス、つまり、各セクションのキーマンが明確な映像表現の指針のもとに協調して作り上げる制作スタイルがベストだと考えていますが、一方で、色々なしがらみで「このままでは世に出せない」ような状態になってしまった映像を、監督を中心としたごく少人数の精鋭スタッフで「作り変える」方法もやむなし‥‥と考えてもいます。「ピンとこないものを、ピンとさせる」とでも言いますか。‥‥凡庸な内容のものを大量生産ラインで作っておいて、最後の段階で大改造を加える‥‥なんて、あまり良いやり方とは思えませんが、大量生産ラインの当事者たちが「今のまま変える気がない」状況なのですから、ぶっちゃけ「仕方ない」ですよネ。

映像表現は宝くじではないので、いかようにもで結果を導き出せるのに、なぜか、「いつも通り作って、たまに当たりが出る」みたいな考え方をする人は‥‥多いですよネェ‥‥。

4Kやペンタブ作画にトライする動きも各所で出ていますが、明確なビジョンがないと、「2倍にリサイズした2K」「紙と鉛筆の代用品」になるのは明確です。‥‥なぜそんな風に言い切れるかと言うと、ビジョンを持たずに周りに何となく流されてデジタルに移行した人々が、フィルム時代の代用品としてデジタルを「活用」している現状況と結果が、何よりもの「証拠」なのですから。

「2倍にリサイズした2K」「紙と鉛筆の代用品」で作り上げた作品が、「ピンとくる」作品になるわけがないですもん。4Kとペンタブに代えれば、宝くじの当選確率が上がる‥‥とでも思うのでしょうか。

新しい何かを始める時、扱っている自分自身が「(良い意味で)ヤバい」と感じるような要素を、いくつも含んでいるものです。強い何かを感じないまま「ペンタブと4Kにすれば、上手くいくんじゃないか」なんて愚かな思考そのものですが、「困った時は決戦兵器」の歴史が示す通り、人間の「性質」の一面でもあるようです。規格を4Kにして大変な作業を抱え込み、今以上に厳しい状況の中にスタッフを投じて、出来上がったものが「2Kのアップスケーリング映像」だなんて、悲劇を通り越して喜劇ですが、昔から似たような事は繰り返されてきてますよネ。少なくとも私は、一緒に作っていく仲間も含めて、そんな道へは進みたくはない‥‥と思い、色々と進めているわけです。

私の数年間の指針となる、技術的なスペックを簡単にまとめると、「4K/12bit/Log/48,60,96fps」と言ったところです。数年後の未来のアニメーションの土台として相応しいと考えていますが、その土台の上に何を築くかは、多種多様、色々なものを考えています。

新しいカンバスを前に、何を描けば良いのか想い浮かばなくて悩む人、描きたいものがいっぱいあってドキドキする人、それぞれの差は、確実に数年後にカタチとなってあらわれるんでしょうネ。

ガルム少々

映画祭での上映に合わせて、ガルムの情報公開が少しだけ始まりましたネ。ほんの少しだけ。

ガルムは、ファイナルビジュアルエフェクトやグレーディングが、世界観を作り得る事を強く実感した作品でもありました。もちろん、実写の撮影監督が良いショットを獲得してくれたがゆえに、後の工程で「世界観作り」が可能になったわけです。

ログの10bitによる運用も今回のガルムでは有効でした。今は、アニメの作業に戻っていますが、リニア空間における「中低域」のレンジの狭さが、いちいちやりづらく感じます。使わない帯域と使う帯域の傾向は明確に分かれているのだから、よく使う帯域のためにデータ領域を確保するログ運用は、至極、合理的ですよネ。

まあ、ガルムの詳細は公式の展開に委ねるとして、もし観れる人は映画祭で観ておくと良いかも知れません。何でも簡単にネットで情報やモノが手に入る‥‥と錯覚しがちな昨今ですが、実はそうでもないんですよネ。


しかし思えば、最初にガルムに関わったのは、1996〜7年のパイロットフィルムの頃だったので、今から18年前の事なんスね。その頃は、Quadra650とGatewayの100MHz前後のマシン、メモリは128MB前後、ハードディスクはSCSI(40〜80Mbpsくらいだったかな)で1GB〜2GBの時代でした。2014年のガルムは‥‥と言えば、3〜4GHzのプロセッサのMacPro、32GB(3万メガバイト!)メモリ、Tunderbolt2で20Gbpsの16TBのRAID0+1のハードディスクと、超弩級に性能はアップしておりますが、作風の根っこの部分は96年当時を継承しておるんですネ。もちろん、2014年の作品は、96年当時では絶対にできない事ばかり‥‥ではありますが。

 

MacBook Pro、よく堪える

8月に調達したMacBook Pro 15インチモデルは、スペックが示す通りに快活に動作し、典型的な劇伴スタイルの音楽制作によく報えてくれます。100GBものソフトウェア音源波形を内蔵しながら、簡単に持ち運べるので、制作環境をMacBookに集約して限定できます。

何十トラックもある、しかもソフトウェア音源の‥‥といういかにも重い作業を、特に破綻する事もなく、よく働いてくれます。

ぶっちゃけ、MacBook Pro&音楽制作ソフトウェア、USBのミニ鍵盤、ヘッドフォンはMDR-V6K240Studio(またはK240MK2)があれば、ラフミックスくらいまでは持ち込めます。昔に比べて、もの凄いコンパクトな環境ですネ。音源だけでなく、ミキサーとかDSPもLogicやNIやIKのソフトウェアでカバーできますので、MacBook以外は、入力用の鍵盤と出力用のヘッドフォンだけで当座はOKなのです。
*2種のヘッドフォンは必須です。私は特徴の違うソニー製とAKG製で聴き比べて、音の状態を把握しています。また、小・中・大の3段階の音量で聴き比べて、音の「姿」を突き放して見るようにしています。でかい音量で聴くとキモチ良いかも知れませんが、何でも迫力があるように感じるので、特にナマ演奏の魅力を持たない「打ち込み音楽」においては「ヘッドフォン大音量」での制作はキケンなのです。

最近、私が(自分でも意外なくらい)よく使うのが、AdobeのAuditionです。私は波形編集については、長らくLogicを使っていましたが、Auditionも使い慣れると、Logicとは違う方法を色々とチョイスできるので、近頃は何かとAuditionばかり使っています。折角、Adobe CCに含まれている事ですし。

とりあえず、懸案の音楽作業はラフミックスまで到達したので、今度は返す刀で別作品の原画をば。

しかし、MacBook Proの性能を日々実感するたびに、Mac mini(か、それ相当)の新型が望まれます。Mac miniって、MacBook ProからRetinaディスプレイと薄いボディを抜いて、安上がりにまとめたような製品なので、実力は高いのです。‥‥私の場合は、以前にMac miniを買って、かなり使い物になったので、MacBook Proも大丈夫だろうと判断したくらいです。

Appleが電話に時計か。まあ、今はもうAppleは、コンピュータで儲けている会社じゃないもんな…。

絵も音も

世間は3連休のようですが、私はどうにも隙間がなく、懸案の音楽の仕事を日月で自宅で作業できるかも‥‥くらいです。先月でほぼ作業が完了した実写ベースの作品が終わって9月に入ってみれば、鉛筆とペンタブレットと鍵盤が入り乱れる日々‥‥で、1日をジャンルごとで切り替えるのがめんどいです。今年のお盆休みはやっぱり10月以降になりそうな予感。

絵と音は、それぞれを手繰っていくと、根底に共通部分があるように思います。しかし音は、絵とは違うメソッドやインターフェースで具現化するので、あまりにも頻繁に絵と音を行き来していると、「頭の部屋」の模様替えが煩わしいです。簡単にはテンションが切り替わらないんですよネェ‥‥。

私の周りには、映像だけでなく音楽もやってきた人が多く、先月カナダのラボでグレーダーをやっていたパトリスも若い頃は音楽方面に進むか迷っていたらしいですし、音大出身のVFX&イメージコンセプトのスタッフもいれば、ドラムを叩く作画&演出の知人もいますし、米国の映画学校を出たスタッフも過去にエレクトーンをやっていたりと、偶然とは思えないほど「絵と音を理解する」人が多いです。幼少期から少年少女期に音楽に親しんでいた感覚は、映像表現の内層に通じるものがあるのかも知れません。「ここを明るくするといい感じになる」とか「光の抑揚のリズム」とか、後天的に理詰めでは会得しにくい「感覚的なもの」を10代までに身体に取り込んだ経験を持つ‥‥といいますか、映像規格とかAfter Effectsの機能とか「暗記もの」では得られない、表現における根本的な衝動が常に体内にある感じ‥‥です。

皆まで言うな」という感じで、そういう人々は「1から10を知る」というか、言わなくても「行くべき方向を察知する」ので、トントン拍子に作業が進んでいきます。カナダのラボでのグレーディングが滞りなく進んだのは、ラボの作業環境も貢献しているでしょうけど、やはりグレーダーのパトリスの能力に因るところが大きいです。その映画は何を求めているのかを何となしに気取って、まるでライブセッションで音を合わせるかのごとく、絵を合わせていくのです。

音大の声楽科出身のスタッフもいるのですが、自分の身体を直に楽器にする「歌科の人間」は、ダイレクトに色彩や明暗に関与するビジュアルエフェクトやグレーディング、さらにはカラーリールなどの作業に適しているようにも思います。色彩が法楽・法悦的といいましょうか、表現した者勝ちともいいましょうか。

言葉では言い表せない「何か」を、音にするのか、絵にするのか‥‥の出力の違いはありますが、脳ミソの根っこのコア部分は絵も音も共用しているのかも知れませんネ。

iMacの選択肢

私に限らず、映像制作でiMacを使っている人は、実はそこそこ存在するのですが、現在販売中の全てのiMacがプロの映像制作用途に適しているわけではありません。むしろ、5モデルある内の2モデル以外はスペックが不足しています。

21.5インチのiMacは、特に最下位モデルは「デスクトップなのにまさかのオンボードメモリ」で、8GB以上にはなりませんので、映像制作にはあまりにも不適合です。「Menu Meters」というメニュー常駐型のアプリを起動していると解りますが、メモリ消費量は8GBなどあっという間に超過してしまいます。最低で16GBは確保しておきたいです。

21.5インチモデルの中では、CPUをi7に変更可能な「21.5インチ最上位モデル」が映像制作には適当です。CPUをi7にBTOで変更、メモリは後でアマゾンで8GBx2のセットをアップルストアよりも安く買って装着‥‥というのが、21.5インチ購入の際の「落としどころ」でしょうネ。

27インチモデルも、CPUをi7に変更できる最上位モデルが適当です。メモリはやっぱり、アマゾンとかで8GBを4つ、安く購入したほうが出費を抑えられます。

‥‥という感じで、5つも選択肢があるiMacではありますが、実は映像制作で本気で使うには、2つに選択肢が絞られます。さらに、使いまくり・レンダリングしまくりの「遜色のないマシン」に仕立てるならば、27インチの最上位=一番高いiMacだけに絞られます。

スペックにあまり詳しくなく、現場での使用経験も少ない場合は、どんなマシンを買ったら良いか、迷う事しきりだとは思います。現時点での最優先ポイントは「i7」「16GB以上のメモリ」への変更が可能である事です。

アップルストアではディスプレイ寸法の違いで選択を即すような売り方になってますが、ぶっちゃけ、その点については「悩む必要はない」です。メモリ消費量を自分の用途に合わせて、16GBならば21.5インチモデル、32GBならば27インチモデルを買う事になり、画面の大きさは特に考慮しなくても良いです。‥‥なぜかというと、どっちにしろ、映像制作用途ではEIZOなどの特性の素直なディスプレイをメインモニタとして調達する事になりますから、iMac本体の癖のあるディスプレイは「サブモニタ扱い」になるので、アレコレ悩むのは不要なのです。もし悩む事があるとすれば、「オレの部屋の机には27インチ(メイン&サブ)を2台も置けない」とか、住宅事情のほうでしょうネ。

ちなみに、私の使用するiMac(27インチ, i7 3.4GHz, 32GBメモリ)は、「ジョバンニの島」では内容のヘヴィなカットの撮影(=マシンの処理能力が不可欠)と本編半数のグレーディング(=安定性が不可欠)をこなし、近作の実写ベースの作品では全カットのProRes4444変換やグレーディングのレンダリングを数多くこなしました。一年以上使って、既に「実績はお墨付き」です。最高位のiMacを使って重く感じる作業は、ゴミ箱型Mac Proを使っても重く感じます。つまり、現在の映像制作ニーズに耐え得る性能を充分持つという事です。

ただまあ、10月の後半とか、アップルの更新時期の1つでもあるので、買うタイミングは悩みどころ‥‥ではありますネ。

Mac Proは高すぎて買えなくても、iMacなら何とか‥‥と思っている人は、以上の点を考慮しながら購入プランを組み立てると良いかも‥‥です。

時計が出た

今日発表されたアップルウォッチは、結構前から予言されてた製品で、‥‥という事はどこかの誰かが内部情報をリークした‥‥という事ですね。アップルが時計型のガジェットを開発している噂は、結構前からネットで見かけましたもんネ。‥‥そんなこんなを考えると、アニメ業界の人々って、口が堅いスよね。例のジブリの件だって随分前から内側には流れてたのに、全然オモテには出なかったですもん。

アップルウォッチに関しては、スマートフォンの機能を使い倒している人ならば、魅力を感じるものなのかも知れませんネ。私はiPhone6が発表された今でもiPhone4SでiOS6、よく電池切れで放置してたりするくらいの人間なので、アップルウォッチに高い興味があるかと言うとビミョーです。ただ、お気に入りの登山用時計の電池が切れて久しいので、Mac/PCで管理できる時計があってもそれはそれで良いかも‥‥くらいには興味があります。あまり積極的に使っていないiPhone4Sだって、やっぱり便利なのは事実で、生活の一部と化していますもんネ。同じく、アップルウォッチが手元にあれば、それなりに生活に取り入れちゃうんだろうな‥‥とは予想します。「イノベーション」と呼べるまで私の生活がアップルウォッチで変わるとは思えませんが、確実に「あればあったで、使っちゃう」ガジェットだとは思います。



頻繁に外を走りまわる人にとっては、iPhone6やAppleWatchは魅力的なのかな。私はじと〜っと机にへばりついて、ものを作る商売なので、快活に動き回る「企業戦士」とは真逆のディテール。アクティブに動くのは頭の中がほとんどで、身体は運動不足が深刻なくらいに動かしません‥‥。‥‥なので、「室内で起こるイノベーション」をもたらす製品じゃないと、結構「隣町のお祭り」のような感じです。

‥‥で、やはりと言えばやはり‥‥、「放置プレイ続行中」のMac miniラインアップの更新はナシでした。昨日の時点でMac miniのアップルストアでの表示が「出荷24時間以内」になっていたので、「今回は無いだろうな」と思ってました。もしかしたら、ひっそりとクロック数だけ上がって、近々更新される可能性もありますが(アップルの更新パターンとして)、それも実際のところはインサイダーしか解らん事でしょうネ。

でもまあ、Appleに限らず、最近のデスクトップコンピュータは、派手な性能向上はご無沙汰です。ぶっちゃけ、ゴミ箱型のMac Proだって、見た目は斬新ですが中身とその性能は「見た目ほど」ではないですからネ。映像制作のプロ現場では、性能の小さな差が積もり積もって大きな差になりますが、一般家庭レベルではそもそも「積もり積もるような生産はしない」事がほとんどなので、iMacなどのコンシューマ向けのi7製品で充分です。40万円も出して個人が6コアのMac Proを買っても、その「対費用効果」は薄く感じられるでしょうネ。BTOでi7の最高速にしてメモリ満タン32GBにしたiMacはかなり速いですから(=「ジョバンニの島」の特殊撮影&グレーディングはそれで全て作業しましたしネ)

コンピュータ製品自体が行き詰まっているのかな‥‥。でも、家電業界でワサワサしてる4K8Kに対応(=高速な生産・運用)するならば、今のMac Proですら、性能が大きく足りてないですもんネ。しかしまあ、今までの10年間がたまたま「楽」(アニメ業界の映像スペックと比して)だっただけで、「マシン性能とやりたい事とのせめぎ合い」の状態にまた戻るのならそれでもOK。横ばいの現状が続いて「時間とお金の安売り」合戦を繰り広げて、「皆で貧乏になるのなら我慢する」という未来よりも、知恵を振り絞り、高い技術力を勝ち得たグループが、良い条件を獲得し頭角を現すほうが「苦労する甲斐があり」ますもんネ。

Mac miniの更新は、あるとすれば10月後半なのかな。‥‥小更新でもいいから、はよしてチョ。

MacBookって

先月のカナダ行き(情報が徐々に露出しているようなので国名くらいなら)に合わせて購入したMacBook Proは、Core2Duo以来の5年ぶりの機種更新となったのですが、処理性能が今のMac miniよりも優れているため、「デスクトップマシン」として積極的に使う予定です。過去のMacBookは、デスクトップモデルに比べて「格下」の性能だというのが私の印象でしたが、i7で16GBメモリのモデルならば、充分デスクトップモデルの代用として使えますので、旧式となった2008年のMac Proから代えようと思っています。

MacBookを以前より使うようになって、初めて気がついたのですが、今のMacBookって、外部モニタを接続してればフタを閉じても自動スリープしないんですネ。昔のMacBook(G3の黒いヤツ)とかはフタを閉じると有無を言わさずスリープしてたので、半閉じ状態で維持するクセが今の今まで、ずっと持続していました。

つまり、うまく立てて設置できれば、薄型のデスクトップマシンになるわけです。これは便利。

LANはThunderbolt経由のギガビットEthernetとWiFi、外部ストレージはLAN上の共有ディスク、USBハブを繋いでキーボード・無線マウス・ペンタブレット・ミニキーボード(鍵盤)などを接続すれば、充分使える環境になります。まあ、本体内蔵のSSDが250GBなので、あまり内部にはモノを詰め込めませんが、作業エリアを外部に逃がせば特に困りません。

ちなみに、Thunderbolt(Mini Display Port) to DVIのシングルケーブルで、2560pxの27インチモニタが「30Hz」で表示できます。HDMIは試してないので解りませんが、恐らくHDMI Ver1.4ならば2560pxはイケたはず(1920px止まりではない)です。これまた恐らく‥‥ですが、DVIもデュアルリンクならば「2560px/60Hz」がイケるんじゃないかと思います。‥‥まあ、DVIのデュアルリンクでMini Display Portに繋ぐのって、結構、選択肢が限られちゃうんですけどネ。HDMI経由の1920pxならば「60Hz」は普通にOKです(<確認済み)。
*モニタの接続は接続コネクタだけでなく、ケーブルの仕様も確認しないと、期待する結果を得られない事がありますので、注意!‥‥です。いくら2560pxの27インチモニタでも、ケーブルの選択をミスって60Hzがでないのは、映像制作用途的にアカンですよネ。

MacBook Pro 15インチモデルは値段が結構なモノなので、中々に悩みどころですが、中程度のPC(モニタと合わせて12〜14万くらい)とノートパソコン(10〜12万)で25万前後の予算になるのなら、「MacBook Pro (16GBメモリ, i7/2.5GHz〜) +27インチモニタ+キーボード&マウス」という変則技も案外「あり」かも知れませんネ。

明日の未明(2014年9月10日)は、アップルの催しがあるので、Mac関連でも新製品などの発表があるかも知れません。私は、Mac miniの新モデルかそれに代わる低価格帯Macを待っていますが‥‥、今回もスカのような気もしてたり。「iWatch」の登場なるか?‥‥が、ちまたで騒がれていますが、私はそれよりもアニメーション制作のパワーが欲しいのです。

ブログについて

私がこのブログで書く事って、ある人には突拍子もない荒唐無稽な事のように響くかも知れませんが、いずれも長い段階を経た上で発信している内容です。1995〜6年くらいからPhotoshopをイジり始めてから20年近い積み重ねの後の、今の状況に由来する事柄なのです。

私とて、紙と鉛筆だけを自分の道具としてた頃は、前回書いたような事はとても想像できませんでした。しかし、コンピュータで色々な事を実践するうちに、様々な視点を得るに至ったのです。After Effectsを使い込むような状況にならなければ、「中割りなしでも自分の絵は動かせる」なんて、とても考えつかなかったです。コンピュータを使ううちに、「あれ?‥‥考えてみれば、何で自分は中割りで物事を考えてるんだろう。コンピュータを使っているなら、コンピュータで動かすやりかたもアリじゃん。」と、思いつくに至ったのです。コンピュータを本格的に使い始めた1996〜7年頃では、全く思いもしなかったのに、です。

ブログと言うのは、「書こう」と思った事をおもむろに書くわけで、いきなり文面を目にすると過激に思えるような事でも、実は長い長い経緯があってのことなのです。そして、こうしてブログに書くということは、喋れる状態にある‥‥とも言えるわけです。

このブログをどんな方々が読んでくれているのか、調べる手段がないので解りませんが、わたし的には「アニメーション作品に携わる人」を想像して書いております。プロでもアマでも、予備軍たる学生諸君でも。‥‥なので、用語的なものは逐一細かく解説しておりません。たださえ、長くなりがちなので。

ただ、多少の配慮は必要だとは思っていて、じゃあ、どこまで書けばよいのか‥‥をいつも悩みます。前回、「タブレットでブルーナのミッフィまで描画できる」みたいな事を書きましたが、後になって、「まさか、ディック・ブルーナさん本人がタブレットで作画している‥‥という意味に受け取られていないだろうか」と不安になり、急遽、「ブルーナのミッフィ」から「ブルーナのミッフィのような可愛い絵柄」という記述に変更しました。わたし的には、ブルーナさんが生の画具で描いているのは「いわずもがな」の事ですが、絵に携わっている人全員の知識とは言い切れないので、書き加えたのです。

文を短く簡潔に、しかも伝える事はしっかり伝えて‥‥というのは、難しいですネ。プロのようには、とてもいきません。

略語の乱用、例えば、ペンタブだの、シート、2フレ、プリコン、ノンドロ‥‥と言った業界用語チックな言葉は、開口を狭くしているようで好ましくはないと思ってはいますが、書くのが楽なもんで、つい‥‥。
(ちなみに、ペンタブ=ペンタブレット、シート=タイムシート、2フレ=2フレーム、プリコン=プリコンポーズまたはプリコンポジション、ノンドロ=ノンドロップフレーム(NDFとも)‥‥です)

ペンタブの未来

私は、アニメーション制作で絵を動かして描く人は、今後、鉛筆と紙の他に、ペンタブレットとPCを「画具」の中に加えて然るべきだと考えています。紙でもコンピュータでも鉛筆でもタブレットペンでも、「絵を描く道具」として分け隔てなく、必要な時に必要なだけ活用しよう!‥‥という事です。

ただし、原動画をペンタブに置き換えた方式による「効果」に関しては、実はわたし的には懐疑的です。私の考えるところの、明確な理由は以下の2つ。

・ツールをペンタブに置き換えても、アニメ業界の積年の問題である、作業費(=コスト)の問題は解決されない
・既にペンタブ作画が一部作品に導入されているが、決定的な映像表現上のアドバンテージが見えない

アニメーターがペンタブに持ち替えて、果たして、大幅な収入増に繋がるか?‥‥というと、原画単価と動画単価の制度には変化がないでしょうし、「さらに詳細なディテールの作画」にエスカレートする可能性と相まって、むしろ収入減になるのではないか?‥‥という危惧すらあります。ペンタブ作画の作品は他に比べて予算が多い‥‥とか、ペンタブ作画によって制作全体の高効率化が実現できるので、その分、アニメーターに配分できる‥‥という話は、今のところ、聞こえてきません。

また、大予算を投じて作画方式を転換したに値する、「映像上の特質」が今のところ見えていない‥‥のも気になります。ペンタブ作画の威力を、作品を観るお客さんにどれだけのアピールが出来ているでしょうか。方式が違うだけで、結果は紙の作画と変わらないのであれば、業界のひとり相撲になりかねません。実はペンタブ作画って、2003年くらいには既に存在していましたが、どの作品がペンタブ作画だったか端からは見分けがつかないですよネ。ペンタブを使う「表現技術上のアドバンテージ」が作品上に示されて、かつ、作品の魅力に大々的に結実しているようでなければ、ペンタブは「業界の内輪の都合」どまりになってしまいます。

私は「動画枚数」に支配されたペンタブ作画は、あくまで「過渡的なもの」だと考えています。より多くのアニメーターがペンタブとPCに慣れる為の移行期間としての‥‥です。私はどのメーカーだったか忘れてしまいましたが、128諧調入力の初期のペンタブを1997年頃から使い始めましたが、やっぱりペンタブは鉛筆の次にアニメーターが持つべき画具の1つだと思っています。慣れるには数を描く必要がありますが、そういった意味では、ペンタブ作画でいっぱいタブレットを使って習熟するのはアリだと思います。

また、動きのスケッチをペンタブで描きとめて、即座に「QAR(クイックアクションレコーダー)」的に見れるのは、色んな場面で重宝しますから、たとえ「動画中割り」形式から離れた作品でも、使いどころは沢山あります。中割り形式ではない、私の考える新しいアニメーション技法でも、「モーションラフ」と呼ぶ工程で、鉛筆かペンタブによる作画セクションを設けています。

ただし、「原画を清書して、奇麗な線で中割りをして」‥‥というアニメ業界の従来用途でペンタブを使うのは、どれだけ有効なのか、どれだけ幸せなのか、つくずく考え込んでしまいます。

ペンタブはそれこそ、ブルーナのミッフィーのような可愛い絵柄からスタイリッシュなDCコミックのようなかっこいい絵柄まで、広範な描画をカバーできますが、今のところのアニメ業界の使い方は、「レタス線互換になるよう」非常に狭い範囲に限定されていますよネ。かといって、ペンタブを使う動画マンが自分の好き勝手にブラシ設定を作り出したら、分業で絵を描く現場では線質のまとまりなんて得られようもありません。あえて、ペンタブを一律の線質になるように「機能限定」する必要があるのです。

つまり、ペンタブ主観で見ても、今のアニメ業界の使い方では「ペンタブの折角の能力を殺すベクトル」に傾いているわけです。

実は航空機にも、設計思想は旧いまま、「エンジン」部分だけがすげ変わった時期がありましたが、今はちょうどそんな頃なのかも知れません。





上の戦後アメリカ空軍機の写真は、2つともジェットエンジンを装備していますが、見た目はレシプロ時代のデザインですよネ。特に上の単座機なんかは、どこがジェット機すらも解りません。(よく見ると尾部にジェット噴射口があるんす)

しかし、アメリカ空軍の軍部も結構イヤラしくて、本命の「革新機」が失敗した時のために、あえて旧態依然とした機体も開発してたりします。下の写真は、数々の革新技術を取り込んだ「B-47」と、「保険」としての「XB-48」です。「B-47」は現在のジェット旅客機にも通ずる先進的なデザインですが、この新旧の状態を克明に映し出す両機は、驚く事に、全く同時期に開発された機体なのです。





エンジンが変わっても、設計思想の新旧で「ここまで形に出る」わかりやすい例ですが、では「動画中割り」方式を「デジタル作画」で踏襲する事例は、B-47? それとも、XB-48?

私は、中割りの動画を一切必要としない、アニメーターが直にコンピュータで自分の絵を動かす技法の体系化を、着々と進めています。似たような例ではLive 2Dがありますが、近年は「真後ろから真正面へ振り向き」とか「走ったり転んだり」ような、アニメ作品で必須の動き〜位置や角度プロパティ、三角メッシュでは出来ない動き〜のメソッド化へと進んでいます。言わば「完全指向のデジタル作画」なのですが、60フレーム/秒でも120フレーム/秒でも「何でもフルで動かせる」のが強みです。
‥‥でも実は、フルで動かすには、従来のアニメキャラスタイルだと「もたない」ので、「フルに相応しい」キャラが必要になってくるのです。

同時に、現業界の至宝とも言えるハイスキル原動画マンのポテンシャルを最大限までブーストする「究極のアナログ作画」のシステムも発案中です。前述の航空機で例えるならば、「最強のレシプロ機を、最新鋭の空母と早期警戒システムで運用する」とでも言いましょうか。レシプロ機でも、兵法次第でジェット機を撃墜できるほどに勝るんよ。新しいアニメーション技法を研究するうちに、ふと「紙と鉛筆をインプットメソッドにして、周囲を今日的な映像技術で強力に固める」方法が副産物として得られたのです。劇場スペックの作品で有効な手法ですが、用紙はB4の劇場レイアウトサイズでOK、タイムシートも24コマのままでOK、それで4K/48〜60fpsに対応できます。ベテラン勢の豊富なパワーを、紙の作画のまま、最新の技術に投入できるのは、まさに「日本の強み」だと思うんですけどネ。

私は、旧来のフローのまま作画の道具をペンタブに置き換えた「折衷案」ではなく、「究極のアナログ作画」と「完全指向のデジタル作画」の「2強」の方針が、日本の特質を活かすのに最適だと考えています。この辺は皆さん、考えかたも色々だと思うので、あくまで、私の考えです。

ペンタブは確実に、今後の「必須のツール」です。しかし、そのペンタブ+PCを「鉛筆と紙」に置き換えた思考は、過渡的なものと思われてしかたないのです。航空機の歴史を参考として紐解くまでもなく‥‥。



ちなみに、Live 2Dと似たような動きは、もしAfter Effectsをお持ちなら、AfterEffectsの基本機能だけですぐにでも試す事ができますヨ。After Effectsには、随分前のバージョンから三角メッシュを始めとした各種変形ツールが装備されていますからネ。各要素をヌルレイヤーにエクスプレッションで関連付ければ、多少はインタラクティブ風な事もできますが、縦横無尽に反応するLive 2Dのようにはいきません。しかし、普通の演技付け(対話式ではない映像作品)なら、After Effectsだけでも可能です。

数年前に学生向けに「After Effectsで動かす」例(つまり手描きの中割りは無し)として紹介したのが、前にもここで載せた事のある、下のGIFF画像です。これはトランスフォーム各種、3Dレイヤー、ディストーション各種だけで作った、初歩的なスキルの例です。影移動とかがないので固い感じですが、このくらいの内容なら、原画・ペイント・背景・コンポジット・ビジュアルエフェクト全部をひとりで作業して、4〜5時間前後で完成できます。(うろ覚えですが、夕方に作り始めて、夜8〜9時くらいには完了していた記憶があります)



でも、こうした「セル塗り」のキャラでは、未来の‥‥とは全然呼べないのよネ。あくまで、After Effectsの機能紹介です。

未来のアニメーション方式では、もはや「セル塗り」に限定する必要はありません。例えば、手で描いた髪の毛が何百本と自在に動く、中割り不能の狂気としか思えないキャラクターデザインが、未来には相応しいと考えています。アニメに絵柄を合わせるのではなく、自由に描いた絵を自在に動かす‥‥という積極的なスタンスが、私の考える未来のスタイルです。


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