Numbersのスクリプト制御

NumbersはそこそこにAppleScriptで自動制御が可能なので、使う気になれば、色々な場面で役立ちます。Numbersの関数と、AppleScriptの各種コマンド、AppleScript上で作った自作の関数などを組み合わせると、日々の作業や日常生活で特に不満を感じる事なく、便利に使えます。

表計算ソフトウェアとしてのExcelの優位性は疑う余地の無いものですが、前に書いたエディットシート程度の内容や、バーコードなどのラベル作成、当座の集計表くらいならば、Numbersで充分こなせますし、レイアウトの自由度が高く、フォントが(お金をかけずに)奇麗なのは、Numbersならでは特徴です。おそらく、Numbersの開発意図も、Excelと「ビジネス分野で競合するつもりはない」のでしょう、Excelのビジネス寄りの盲点を突いた設計思想になっていますネ。

Numbersをスクリプト制御する際のコツは、「ある程度、Numbers内で作っておく」事です。要は、Numbersの関数と協同してスクリプトを実行するわけです。例えば、行番号はNumbersで「row()-1」(1行目が見出しの場合)で自動表記するようにしておいて、コンテンツはAppleScriptで流し込む‥‥みたいな。そうしておくと、後で「この行は不要だ」と削除した時に、いちいち行番号を書き変えなくてすみます。行番号までAppleScriptで流し込むと、任意の行を削除した時に面倒な修正が必要になります。

レイアウトもスタイル(フォントや文字サイズ、字体や装飾)も、Numbersであらかじめ作っておきます。スタイルや行揃えまでAppleScriptで制御しようとすると、無駄にスクリプト作成に時間がかかります。行を追加した時などは、Numbersはスタイルを前の行の状態を継承しますので、スタイルもひな形で事前に作っておけば、AppleScriptでの手間を省けます。

ただ、スタイルは「セルに1種類」と考えて、ひな形を作る必要があります。Numbers上では、セル内で内容文を改行し、行ごと(文字ごとでも)にスタイルを使い分ける事は可能ですが、AppleScriptで単純に値を流し込むと、行頭のスタイルで全て統一されます。スクリプトに対応するひな形のデザインをおこなう事で、最小限の手間でNumbersを思いのままに自動制御できるようになります。

私は、NumbersとAppleScriptを用いて、倉庫収容物のデータベースからバーコード付きラベルを印刷したり、QTファイルのレンダリング速度のアベレージを一覧表にしたり、「手でやると面倒な」作業を自動化しています。

アニメ制作においても、制作さんからCSVファイルを提供してもらい、自分の作業内容と照合して、結果をNumbersの表に出力するような事もできます。

人間の時間は限られたもの、24時間から睡眠時間を除いた時間しか与えられていなので、コンピュータでもできるような仕事は、どんどん自動化して、人間でしか出来ない事柄に時間を費やすべき‥‥と考えているのです。

このあたりの記事は、「片手間スクリプト」的なコラムにまとめて、もっと詳しくコードとかも書いて、リファインすべきかな‥‥とは思っております。Macを使ってるんなら、AppleScriptやiWork、XcodeやObjective-Cを使わないのは、もったいないもんネ。

QuickTime Player 7 と Numbers でエディットシート

今更ながらの話題ですが、QuickTime Players 7とNumbers、そしてAppleScriptがあれば、QuickTimeムービークリップの基本事項を記した一覧表、いわゆるエディットシートを自動で作る事ができます。最近、必要に迫られて昔のスクリプトをブラッシュアップした事もあり、忘れないうちに書き留めておきます。

NumbersはMacOSXの定番表計算ソフトウェアですが、システム標準装備の奇麗なヒラギノフォントなどを用いて作表できるので、見栄えの良いドキュメントを作成できます。AppleScriptを用いて、セル内の値の書き換え、行や列の追加などが自動処理できるので、ひな形ファイルでスタイルを作っておけば、最小限の手間で、スタイル付きの読みやすくて奇麗な表を作る事が可能です。

一方、QuickTime Player 7 は、AppleScriptを用いて様々な操作を自動で処理する事ができます。フルコマ〜数コマ毎の連番書き出し、映像の変換、字幕やインデックスの挿入、映像のカット&ペースト、サイズの変更など、自動処理できる内容は盛りだくさんです。もちろん、ムービーファイルの情報取得も可能です。

Numbersはひな形ファイルをまず作ります。タイトルのテーブルを作り、一覧表のテーブルも作ります。表に名前をつけておけば、「table "お好みの名前" of sheet 1 of front document」で任意の表へとアクセスできます。セルの指定はとても単純で、1行目左からカウントしていくだけです。例えば、8列2行の最終セル〜つまり一番右下のセルは「cell 16」となります。

行を下に追加したい場合は、add row below cell [セル番号] で簡単に追加できます。例えば、先ほどの8列2行の表に行を1行追加したい場合は、add row below cell 9、または、add row below cell 16などで下に追加されます。命令自体はとても簡単。

セルの内容を書き換えたい場合は、set value of cell [セル番号] to "ほにゃらら"で書き換えられます。空欄にしたい場合はvalueを""にすれば良いですネ。

ひな形ファイルはFinder上で複製して日付でリネームするのが楽です。日付けは、do shell script "date +%y%m%d"で、容易に省略した年月日が取得できます。"130510"のような書式は、下手にdateクラスを使うより、shellのdateコマンドを使ったほうが断然楽ですネ。

表の操作が可能になれば、あとはQuickTime Player 7で取得した情報を各セルに流し込むだけです。

QuickTimeはDuration(いわゆる尺ですネ)をタイムスケールの単位で表します。タイムスケールが480だった場合は、10秒は4800という値になります。タイムスケールは大きな数値の事もあれば、24という素直な数字の事もあるので、実際のファイルから取得して計算するのが安全です。duration / time scale で秒数は取得できますが、24コマ表記にする場合は、ちょっと頭をヒネって、変換式を作ります。

ビデオそのものの情報については、「ビデオトラック」の情報へアクセスします。コーデックを知りたければ、「data format of track 1 of document 1」です。
*これはPlayer上で一番手前のドキュメントで、かつトラックがビデオトラック1つだけの時に有効なスクリプト文です。トラックが複数ある場合は、track 1 でビデオトラックを指定できるとは限りませんので、trackの種別を調べてから情報を得る必要があります。でもまあ大概、After Effectsでレンダリングした「撮影上がり」QT は、トラックは1つだけです。

ビデオトラックよりもさらに細密なframeにアクセスすると、フレームレートなどが計算できます。ただし、23.976fpsはちょっと厄介です。「例の誤差」はご多分に漏れず、QTでも発生しますので、めんどくさがらずにサックリ対応します。

QuickTimeの場合、1分につき0.06の誤差が発生し、情報ウィンドウにも本来「60秒」であるはずが、堂々と「60.06秒」として表示されます。しかし、これではNG。しかと本来の尺になるよう工夫します。例えば、以下みたいな。

tell application "QuickTime Player 7"
    set dur to duration of document 1
    set ts to time scale of document 1
    set f to duration of frame 1 of track 1 of document 1
   
    set fps to (round (ts / f * 1000)) / 1000
    set sec to dur / f / (round fps)
end tell

duration of frame 1 of‥‥の下りは、After Effectsで言う「frameDuration」ですネ。fpsはそのまま計算すると「23.976023976024」なんて数値が返るので、野暮ったいやり方ですが、下3桁に丸めています。

上記スクリプトで処理すると、60秒のムービーはちゃんと60の値を返します。60.06(60+1)とかにはなりません。

fpsは23.976ですが、実際は24(四捨五入で)で計算をし、60秒ジャストの尺が返るようにします。せめて未来の120fpsは120.0であって欲しいですが、59.94なんてレートが存在するから、やっぱりダメだろうなあ。

そんなこんなで得た情報を、Numbersの表に流し込むと、整然とした書式の一覧表が出来上がります。

ブログなので、細部の説明はかなり端折っていますが、いつか本家サイトで詳しく紹介できたらと思います。



お役所仕事と萬屋仕事

私が以前書いた「作業区分を作業基盤で明確にすべし」という論調は、ともすれば、柔軟性を欠く、お役所仕事(と一般に言われている)に終止する危険性をはらんでおります。

かといって、あまりにも何でも対応すると、些末な事や前例のない事を大量に「タダ」で引き受けて自滅しかねません。

難しいものです。

私の場合、まず、「今回の作品の自分の役割」を明確にして、キャパシティと作業費目を確定します。撮影監督と撮影一式を自分と自分の部署で引き受ける場合は、人員と一日あたりの作業消化ピーク、各スタッフの技量などを考慮して計画を立てます。撮影監督としては、カット内容の監督・演出さんとのやり取りはもちろん、カットの詳細を記録・照合するデータベースも稼働し、作業記録もとっていきます。コンポジットの映像表現者だけでなく、作業事務も兼任するわけです。高品質な映像をコンポジットし、編集入れで尺やカット漏れがないように厳密なチェック機構を設け、かつ納期にも間に合わせるように、体制を敷きます。可能な事と不可能な事を、監督・演出さんに理解してもらう折衝もおこないます。

エスカレートする要求を抑えつつ、枠内でクオリティを最大にしようと努めるのです。枠内でできない作業内容は事情を説明して断る事もします。

一方、特殊なコンポジット内容を集中して引き受ける時は、撮影監督の意識とは全く変わります。納期を守る事はもちろんですが、全体視野ではなく、引き受けたカットのクオリティを特に重視するスタンスへと変化します。監督・演出さんの難易度の高い要求も、できるだけ期待に応えるべく、通常の撮影ではクオリティオーバーな内容も積極的に引き受けます。

現在のソフト・ハード性能を最大に活用しようと努め、従来の枠から飛び出たオーダーにも、積極的に対応します。今までにない作業内容でも、できるだけ引き受けて実現できるようにします。

つまり、引き受ける役割〜作業費目によって、私は「お役所」と「よろずや」の側面を使い分けている事になります。

しかし、こうした使い分けは、私だけの自己操作で成り立っているとは言い切れません。むしろ、私を使う監督・演出さんとの日頃の付き合いがあってこそ‥‥かも知れません。「使いどころ」を知っている人と一緒に仕事してこそ、最大限に能力が引き出せるだと思っています。

つくずく、自分は「工場型では無い」なと思います。「工房型」なんでしょう。

私が工場型をどうしても受け入れられない理由はいくつもありますが、解り易い理由としては、「工場の生産ピークに合わせて体制を組むと、工場はそのピークを保つように仕事を回さないと、立ち行かなくなる」と言う事です。

アニメって、工場で作るような需要が、未来まで継続するんだろうか。6年後、12年後、24年後、需要は維持されるのか。需要が減った時、どこにしわ寄せが行くのか。

そんなわけで、私は今は、「その時必要だから」という理由で、安易に人を増やせない、増やすべきではない‥‥としみじみ実感しているのです。「勝ちのパターン」が明確に、具体的なものとして、見えてこない限りは。

‥‥話題を元にもどして、この「お役所」と「よろずや」のバランス感覚、使い分けは、実はかなり重要な要素だと思います。

作業に目の回る日々を重ねていると、使い分けなんて面倒でできなかったり、12年後の自分を想像して今から準備するなんてやる気が出なかったりしますが、これは自分をプロデュースする上で、どうしても必要な行為・取り組みだと考えています。

ぶっちゃけ、タイムスリップして、30代の私に強く言い聞かせたい気分なのです。

使い分けなどの運用面、6年毎の近未来への準備、12年後へのインフラ構想などは、実は30代くらいのキャリアを積めば、充分行動開始できるものです。要はどれだけ、そこに意識を向けられるか‥‥です。

私はあと6年、はやく行動できてれば‥‥と、やや後悔。6年の意識の遅れはキビしいですが、取り戻そうともがいております。

HDDのプチ整理

連休中作業の代休に、自宅のHDDを少しだけ整理しました。新たなハードは買わず、既存の中でやりくりして、データをカテゴリごとに整理したのです。

作業環境がMac ProとMac mini i7の2つに増えてからというもの、今まで以上にデータの置き場が混乱し、合理的とは真逆の方向へ邁進しておりました。そこで、Mac mini Serverに増設済みのHDDへとデータを移動し、特に速度を問わないデータはファイルサーバ管轄へと変更したのです。

で、久々にMac mini Serverのデスクトップに遠隔ログインしてみて、驚き。半年前に、「データ混乱への危機感」から、既に5TB(=バックアップ含めて合計10TB)のディスクスペースをセットアップ済みだった事を思い出しました。‥‥半年も空のディスクがサーバで常時稼働してたとは、我ながら、マヌケ。HDDを増設したのは記憶してましたが、5TBも用意してあったとは‥‥。

Mac Proには、PowerMac8600(1997〜98年発売)からのデータも継承されており、ドキュメント、映像、音楽、アーカイブなど全部入ったマシンでしたが、サーバへとデータを移動し、Mac Proは作業端末としての「第2の人生」へと移行しました。

Mac mini Serverは、3時間ごとのバックアップにセットしてあり、間違ってサーバ上のデータを消去しても、3時間以前の履歴から復活できるようにしてあります。本当は1時間ごとのバックアップにしたいところですが、私しか使わないサーバなので、3時間ごとで充分と判断しました。ちなみに、作業端末上は1時間ごとのタイムマシンバックアップが動作しています。

以前書いたQnapのNASは、もう少し未来まで待って、今はMac mini のUSB接続のHDDの共有で凌ごうと思っております。


環境をどうする

私は去年のAdobe CC(Creative Cloud)サービス開始と同時に、予約までして使い始めたクチなので、今回のCCへの一本化は特に大きな衝撃なしに受け止められました。

ただ、最初から「旧ライセンスは破棄しても良い」なんて思えたわけではなく、CCを1年間使ってみて、「過去のライセンスを諦められるキモチになった」のです。さすがに1年前の段階では、「CCを契約したから、今までのライセンスはもういらない」とは決断できませんでしたネ。長い事、継承し続けたライセンスだもの。

アドビはアップグレードの「有効期限」がありますので、あまりにもアップグレードしないでいると、アッブグレードの権利を失効してしまいます。これは言わば、「アップグレード料金の定期支払い」を仕組まれているわけで、実は以前から、「ソフトを買えば安泰」なわけでは無かったのです。

私はCS5のままで止まっており、去年CCを契約した頃は、CS5.5に対応できずやりずらさを感じていたのですが、CCを導入した途端に、最新&全開でソフトウェアを使えるようになりました。

ただ、必ず新しい環境を導入すべきかは、考える余地がありそうです。

自社の作風を持ち、ブランド戦略が通用するところならば、あえて「環境を凍結」して手堅い制作環境でブランドを維持するのもアリ‥‥かも知れません。

実は私も、「環境の固定」を考えた事がありました。2005年頃で、まだ業界フローに光明を見いだそうとしていた頃です。野方図に新しいものを導入して環境が崩れるよりも、手堅く制作できる環境を考えたのです。

私はMacOSを昔から使っているので、「いつ、土台が無くなるか、わからない」強迫観念とともにありました。つーか、未来もそうか。‥‥Windowsユーザの人からは「可哀想に」と思われるかも知れませんが、土台がひっくり返るかも知れない危機意識を持ち続ける事は、あながち悪い事ばかりではありません。「どのように土台を形成するか」に、絶えず意識が働きますからネ。

しかし、業界の動向が「本撮は3日あれば良いほう」みたいな意識へとどんどん流れて、作業は過酷になる一方、このまま業界フローに巻き込まれていると「早死に」は必至と思うに至り、安住の土台など無い事を悟り、新しい制作方法を模索し、環境も新しいハードとソフトを求めるようになったのです。

私の取り組んでいる制作手法は、新生児のごとくの制作スタイルなので、ブランド力などありませんし、フローを育て上げるためにも、新しいハードとソフトは必須となるでしょう。なので、CCベースの環境は必然的です。

しかし、アニメの旧来スタイルやブランド力を継承し、CCを必要としない作業グループ・流派も、有って良いと思います。本当にCCへ移行すべきか‥‥を問うてみるのも、必要だと思います。特に、CCは「使い始める時に、全てのアプリが提供される」ので、移行を悩む間は、従来のCSで作業するのもありでしょう。

恐らく、業界全体としては、成り行きでなんとなくCCを導入して、やっぱり成り行きで作業区分が今以上に曖昧になり、ギャラ据え置きでコンピュータを使用する作業者の仕事が増える‥‥ような未来へと進むように思われます。これは未来の予言ではなくて、過去のいくつもも業界の事例を言い換えているだけです。業界の歴史を振り返れば、黙示録が浮かびあがります‥‥よネ。

各自、各グループ、各社、どのようなポリシーで環境を構築していくのか。そしてどのような未来になるのか。

私は覚悟を決めておりますが、‥‥皆はどうなんだろうか。そもそも、覚悟なんてしない‥‥のかな。

CC、よく考えてみれば

CSラインを廃止‥‥というか開発終了して、Creative Cloud〜CCへと移行する事をアナウンスしたアドビ。「今までのCSユーザはどうするんだ!」と困惑する人も多いのではないか‥‥と思います。

CS6の、新しいOSへの対応などは、アップデートで対応する‥‥としていますが、まあ、どこまで対応が継続するかは怪しいところです。今までのアドビの「物腰」を見ていれば、旧システム、旧バージョンのユーザーへの対処が「手厚かった」印象は薄いもんネ。

結局は、アドビの製品群を未来も使い続けようとする限り、CCへの移行を余儀なくされるのでしょう。今までのアドビ製品で充分‥‥という人は、システムとソウトウェアのバージョンアップを停止・終了して、「環境を更新しないで使う」工夫が必要になり、新しいアドビ製品を使いたい人は、CCを契約する事になります。

CCは「使い続ける限り、必ずお金を払い続ける」システムですから、歯に衣を着せずにぶっちゃけて言うと、「アドビをどこまで信用できるか」に尽きるでしょうネ。

そんなこんな状況を前にして、アニメ業界の事を考えてみれば、CCを各社・各フリーランスが導入した場合、様々な未来の状況が思い浮かびます。

まず、目先の事で考えてみましょう。今までソフトウェアの導入費用と更新費用を「倹約」して、限られたソフトウェアの旧バージョンを使い続ける事も多かったのですが、CS7(相当)以降を使う場合は「新製品導入とバージョンアップ費用が月額利用費の中に含まれている」ので、いつでも「MAXの状態」でアドビ製品を維持できる事になります。

‥‥これって、アニメ業界にとっては、大革新だよネ。まあ、もしCCへ移行すれば、ですが。

CCが導入されれば、バージョンの相違に悩む事も無いし、誰かのお下がりの旧バージョンを使う必要も無い。IllustratorやPremiereも使いたい時に自由に使える。アニメ現場では「夢のまた夢」だった事が、当然のように、普通に可能になるわけです。

ただ、この大革新が、近い未来のアニメ業界に「吉」とでるばかりとは限りません。

アニメ業界のセクショナリズムは、ソフトウェアによって「結界を張っていた」側面も多いからです。

すぐに考えつくシチュエーションは以下。

 演出「悪いんだけど、このTargaをaiファイルに起こしてから、撮影してほしんだけど」

 撮影「えー、aiファイル化なんて、撮影の仕事じゃないですよ」

 演出「でも、Illustratorもインストールされてるんでしょ?」

 撮影「それはそうですが」

 演出「毎月利用料払って、せっかく導入してるんだからさ。やってよ。」

 撮影「‥‥‥」

‥‥みたいな。いわゆる「ソフトがないから出来ない」という断り方はできなくなります。これは単に作業上だけの問題ではなく、「作業の対価」という面でも重大な問題を引き起こします。

今でさえ、「グラデーション背景なら撮影でできるからタダになる」とか、「作画の枚数減らしを撮影に負担させればタダになる」などのやり方が、様々な作品で散見されるのに、今以上に、作業費を「うやむやにしてカットする」行為がエスカレートして、「酷い事」になる‥‥と思うんですよねぇ‥‥。

今のアニメ業界の体質にCCが導入されると、はじめのうちは「何でも最新で使えて嬉しい」と喜ぶかも知れませんが、その後からじわりじわりと、「何でもやらされる」過酷な日々がのしかかってくるように思います。

要は、ソフトウェアによる区分けでなく、作業区分による区分けをハッキリさせておかないと、マズい事にいくらでもなる‥‥という事ですネ。


 演出「悪いんだけど、このTargaをaiファイルに起こしてから、撮影してほしんだけど」

 撮影「aiファイル化は別セクションの作業項目ですので、そちらに作業依頼してください。」

 演出「でも、Illustratorもインストールされてるんでしょ?」

 撮影「Illustratorに限らず、編集ソフトのPremiereなど、全てインストールされていますが、作業区分が違うので、お引き受けできないのです。」

 演出「毎月利用料払って、せっかく導入してるんだからさ。融通効かせて、やってよ。」

 撮影「それでは、新たに作業品目として費用と、作業にかかる期間を設定して、作業依頼してください。内容を精査し、お引き受けできるか、検討します。」

 演出「何でもできる環境なのに、引き受けてくれないの?」

 撮影「ではあなたは、紙と鉛筆が使えるからと言って、原画や動画を引き受けますか? 要は技術基盤の問題なのですよ」

 演出「ソフトがあれば、誰でもできるのが、コンピュータじゃないの?」

 撮影「‥‥というのであれば、あなたがご自分でおやりになれば良いのでは?」


ハイ、終了〜。これ以上続けても、どちらかが折れない限り、平行線ですのう。この状況をフォローする制作さんの苦労は如何ほどか‥‥。
*ちなみに、上記の想定会話は、デジタルを「タダで簡単に使える」と思っている、少数のダメな演出さんを模しています。色々と配慮して動いてくれる、監督・演出さんも大勢いらっしゃいます。

アニメ業界って、強烈なセクショナリズムで総合的な品質を維持してきたとも言えます。しかし、デジタルが導入されて、セクショナリズムに小さな裂け目ができて、ちょいちょいショートカットする行為が増えました。CCの導入は、その裂け目を大穴に広げる可能性(危険性?)がある‥‥と感じます。ただし、その穴は、4〜6年くらいで徐々に広がってくるので、危機管理をすり抜けて、「いつのまにか、辛い事になってた」という結果になるかも知れません。

道は2つ。

安易にソフトウェアでセクションの境界を作るではなく、あくまで「技術基盤で境界を形成し、「作業費目を明確にする」事です。これは現場が理性的であれば、成し遂げられるんじゃないですかネ。既に実践している現場もあると思います。

もう1つは、「現在保有する技術基盤をもとに、デジタル時代の新たな制作ドクトリンを考案し、ゼロから組み直す」事ですが、これはほぼ無理(=昔のままで作りたい人が大多数)だと思っているので、実質的な対処案は前者のほうですネ。

‥‥で、日頃私が取り組んでいる新しい方法(道で言うと、3番目の道)は、技術基盤すら変わる内容なので、CCとの相性が抜群に良いのです。アニメーターは、素でPhotoshop・After Effects・Illustratorを使いこなし、色彩設計はPhotoshop・After Effects・Illustratorに加えてPremiereをも使うかも知れませんし、ペイント行程ではPhotoshopだけでなくIllustratorも活躍します。アニメーターがモーションを作った時点で「線撮・タイミング撮」相当の出力が可能になりますし、レイアウトを組む時点でコンポジットの「素組み」になるので、撮影と呼ばれていた行程は、ビジュアルエフェクト要素だけ残して、各セクションに分散吸収されます。ビジュアルエフェクト行程は、After Effectsに加えて、Photoshop ExtendedやPremiereなども併用します。アニメ業界とは異なる全く新しい概念が基盤となっており、CCはその骨格を豊かに肉付けする役割を担う事になるでしょう。

‥‥なので、私は去年早々にCCへと乗り換えたのです。ツールの有機的な使い方を考案するために、CC(つまりはAdobe全製品)はどうしても必要だったのです。

アニメ業界はどのような選択をするのか、‥‥といっても、アニメ業界という人格があるわけではないので、「全般的・最終的にどのような結果となったか」があるだけですが、私は過去10年の業界の様子を見るに、あまり良い方向には向かわないような気がしてます。なんだかんだと、自発的に「窮状」の方向に向かうのは、‥‥誰も望まない事でしょうけど。。。

しかし、変換ミス

こんな感じで、文章は書くけど、文字は書かない私。

簡単な変換ミスがあっても、なぜか、それにしばらく気付きません。

前のブログのタイトルの「移行」を、「以降」と書いたまま、半日くらい気付かなかったし。

CSを廃止、CCへ移行。とな。

"米Adobe、Creative Suiteの新機能開発を中止〜Creative Cloudへ移行"

うひょー。

ここまでバッサリ行くとわ。

前々回書いた私の杞憂、「ソフトウェアバージョンと、CSバージョンと、さらにCCのバージョンも、全部一緒に平行移動するんか?」と言うのは無くて、CSが廃止され、CCに移行だったのネ。

これを受けて、危機感を募らせている人も、少なからず存在するようです。

「ハードウェア環境もアドビのソフトウェアに合わせてアップグレードしなければならない」

‥‥う〜んと、これは別に今、始まった話じゃないよネ。かなり前、前世紀の頃から、そうなんじゃないですかネ。

新しい機能が増えて今まで以上の事ができるようになったソフトウェアが、より一層のハードウェア性能を求めるのは、そんなに理不尽な事かいな?

アドビに限らず、何でもそうなんじゃないかな? 映像フォーマットだって、音声フォーマットだって、デジカメの写真だって、スマートフォンの録画機能だって、皆、どんどん新しくて高性能なハードウェアを求め続けていると思いますよ。

アドビって、叩かれやすいよネェ。いつも。

‥‥思うに、尻切れトンボで消失したソフトウェアなんて山ほどあるし、そんな「いつの間にか消えた会社のソフト」に私も結構なお金を費やしてきたけど、アドビは今でも健在なだけ、マシなほうだと思うんだけどな。

人それぞれ、感慨はあるとは思います。私としては、ハードウェアを何年か毎に高性能なものへと買い替えていく負担は、「コンピュータで飯を喰う以上、避けられない」と覚悟しております。だってさ‥‥、自分のマシンが「やりたい事に見合わなくなる」のは、年々実感できる事ですから、アドビに頼まれなくても、新しいマシンは必須なんですよネ。

でもまあ、このCS廃止は、今後の流れを分岐する「キッカケ」かも知れないですネ。これでアドビを見限る人が出てもよいでしょうし、CS6を最後にバージョンアップしない流派が出ても良いでしょう。旧来の初期導入費用を用意できなかった弱者が、月額の低さを上手く利用して野心を叶えるのでも良いでしょう。

「自分たちはどのようにお金を使い、どのように道具を使って、どのように映像を作って、お金を手にするか」と言う「映像作りのライフサイクル」を見つめ直す、プチきっかけになるのだとしたら、アドビの極端な方向転換によって、流れがシャッフルされるのは悪い事ばかりではない‥‥と思うのですけどネ。

フリッカー

アニメ制作でたまに出てくる用語の1つに「フリッカー」というものがあります。カクカク、カタカタとぎこちなく不快に動く様々な状態・状況を総称して「フリッカー」と呼んでいますが、これは現場で解決できるものもあれば、現フォーマットではそのままでは解決不可能なものもあり、中々に悩ましい「問題」です。

現場で解決できる類いの多くは、作画のレイアウト作業時に予防する事ができます。有り体に言えば、大判作画を控える事が、フリッカーを予防する「何よりもの解決策」です。大判作画でないと構造上どうにもならない場合は別ですが、単にキャラを追い写しするなどの目的ならば、大判にせずにスタンダード作画で「BG引き」扱いにすることで、簡単にフリッカーを防げます。

なぜ大判作画でフリッカーが発生するかは、カメラワークと作画の「フレームレートのズレ」によるものです。違う言い方をすれば「コマ落ち」「コマ打ち」の差によるもの、でしょうか。

カメラは1コマで動くのに、セルは3コマごとにしか動かないと、「セルがカメラに、引き離されて、追いついて」の繰り返しが発生します。以下の動画を見てもらうと、何となく、その意味が解るかと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=aKIMKmjl-vY&feature=youtu.be

*HTML5試用機能をオフにしないと再生できない事があるみたい、です。

大判作画であっても、止めプラスアルファの内容や、オール1コマ作画なら、フリッカーは発生しない、または目立たないので、結果オーライです。フレームレート、動きのズレが発生しなければ、フリッカーとは「感じられない」のです。

「青空にボールが飛んでいく」とか、「飛行機をフォローする」などのシチュエーションで、大判で2〜3コマ作画にすると、「必ず」フリッカーは発生します。輪郭のはっきりでてしまう状況(例えば青空と飛行機シルエット、とか)だと、余計目立ちます。

つまり、カット内容をちゃんと把握して、「これは大判で作画すると、フリッカーがかなり目立つと思われる。なので、スタンダードサイズの作画でやる。」‥‥のような判断をレイアウト時に下す経験と技術が必要なのです。

「俺らの頃はそんなにフリッカーって問題にならなかったけどなあ」と40〜50代のアニメーターや演出家が思うのも、実は無理も無い事で、現在はテレビが格段に高性能・大画面になっているので、「フリッカーが誤摩化せない」のです。昔と今とでは、状況が大きく違う事を、意識しなければなりません。

アニメ制作関係者だけでなく、一般の人々も、「どんどん目が高性能に馴れてきている」事も、明確に意識すべきでしょう。

今のアニメ制作現場では解決できない類いのフリッカーもあります。まあ、「フリッカー」という言葉が俗称、総称みたいなものなので、とりとめもないのですが、「映像フォーマットそのもの」に起因するフリッカーは、どんなに現場が経験豊かでも、防ぐのは中々に難しいです。

でも実は、「演出を仕切り直す」くらいの気持ちを持てれば、ある程度は防げるのです。「絵コンテ」段階での予防、つまりは、「映像のアイデアやイメージ」段階で防ぐ方法です。「映像フォーマットの限界を心得てコンテを切る」という事ですネ。‥‥まあ、言うのは簡単だけど、実際にやるのは、相当難しいですわな。

例えば、直立した被写体が並ぶ情景を、速い横PANで狙うと、それはもう、目に痛いほどの「フリッカー」が発生します。実写だったら、像が流れるのでフリッカーにはならないのですが、アニメは像は流れませんので、切り立った輪郭が目にチカチカする辛い映像となります。

「だったら、アニメでも移動ブラーをかければ良い」とか思うのですが、大概、そういうカットは「被写体(キャラなど)を短い尺で見せる」ために速いPANにしているので、ブレて見えなくなると「カット内容を喪失」するのです。

実写でキャラ見せの場合、カメラ装置の関係上、アニメとは違う捉え方で、映像に収めると思います。速いPANを使う事は、像が流れる事と同義なので、そもそもキャラ見せでは使いません。実写とアニメが大きく違うところです。実写は、実際の事象をどのようにカメラに収めるか‥‥ですが、アニメーションは描かれた絵をどのように映像化するか‥‥です。全く、「足場」が違うのです。

回避策は簡単で難しいです。速いPANなどによるフリッカーが嫌なら、「フリッカーが出るようなカメラワークは避けて、もっと違う見せ方でシーンを形成すべき」という事です。

ちなみに、速いPANによるフリッカーは、悪い事だけではありません。逆に「パンチが効いて」映像に力が出る事もあります。ロボットヒーロー物とかは、ブラーなんてかけずに、豪快に残像をバラまいてPANすると、ノリが出るように思います。‥‥やはり、どれだけ、「使う人間が使いこなせているか」だと思います。

‥‥しかし、未来の60,120fps、4k,8kになると、状況は一変します。映像フォーマット上のフリッカーはどんどん抑制されるベクトルへと進みますが、アニメがいつまでも24fps(作画の実質は秒間8〜12コマ)のままだと、「アニメだけカクカクしている」風に感じられるようになるでしょう。ハイフレームレートに取り残されたアニメだけが、骨董的なルックス見えてしまうように思います。

現に、地デジの切り替えの時期に、地デジに見慣れた目でアナログ波放送を見たら、すんごい品質が低く見えましたしネ。昔は特にローファイとも思わず見てたのに、ハイファイに馴れると、旧来の品質が恐ろしく目減りして見えてしまうのです。‥‥これは一般の人ほど、そう思うでしょうネ。

私が今、着々と準備しているのは、そうした、ちょっと先の未来の映像制作の事‥‥なのです。その際、今までの映像制作の経験は活用できますが、「昔のまま、これからも」とは行かないように思います。

After Effects CC

本日情報解禁になった、新しいアドビのアプリケーションSuite。After Effectsは「After Effects CC」と言う名称で6月くらいから入手可能、C4Dとの連携の他、クラウド機能をちょいちょい取り入れてのリリースです。

クラウド‥‥とか言うと、何かイマっぽいですが、要は各所の異なる環境をネットワークを利用してシンクロさせる機能‥‥ですネ。力技を使えば、今までも似たような事はできましたが、ソフトウェア自体が自社のサービス経由でシンクロに対応したわけです。

映像表現上の機能向上は、主に3Dと実写関連。実はわたくし、After Effectsの最近のバージョンアップの傾向を鑑みるに、開発元(=アドビ)のアニメ制作に対する関心が年々、離れているように感じております。‥‥う〜ん。あいそ、つかされたかな?

まあ、実際、今度出るAfter Effects CCの機能を、今のアニメ制作スタイルでどれだけ使いこなせるのか、考えるまでもないですもんネ。ぶっちゃけ、タイムシートの内容を全うするだけなら、After Effects 4〜6.5くらいで充分ですし。ごく普通に考えて、旧来の手法を主張するアニメ業界と、アドビの思惑が噛み合うはずもない‥‥ですネ。

「業界のアニメ制作」ではなく、「アニメーション制作」という原点に立ち戻ってAfter Effects新バージョンを見つめ直せば、様々な機能から制作テクニックのアイデアが思い浮かびます。旧来のマインドセットから脱するか否かで、新しいソフトウェアの使い道も雲泥の差となって表れます。もしかしたら、12年前と似たような大きな分岐点に差し掛かっているのかも知れないですネ。

で、CC。

Photoshopなどのその他のアプリケーションも「CC」という新名称でユーザに配布されます。まさか、ソフトウェアバージョンとCSバージョンと、さらにCCバージョンまでバージョン表記に追加されるんですかネ。今でさえ、「After Effects CS6は、バージョンいくつだっけ?」と思い出すのが面倒なので、上手い取り扱いを期待しますヨ、アドビ様。


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