シャーシの性能

前回、「戦車」に例えて次世代映像制作の「ハードルの高さ」を書きましたが、例えば、次世代の「戦車」は以下のような速度。

 

 

 

 

 

数値は「MB/s」、1秒あたりのメガバイト転送速度なので、「Gbps」=ギガビーピーエスに変換すると、

 

書き込み:1.5Giga x 8 = 12Gbps

読み込み:2Giga x 8 = 16Gbps

 

‥‥となります。8ビットが1バイトですからネ。

 

2160p60でも「Write/Read」が「OK」ですネ。ん〜、凄い余裕。理論値ではなく実測ですからネ。

 

 

ちなみに、RAID5のSSD8発(!)、Thunderbolt3です。

 

まあ、個人ではとてもじゃないですが買えないですわ。完全に業務仕様です。機材代理店さんのご好意で、テスト目的でお借りした機材で計測しました。

 

 

このくらい速度に余裕があれば、4K24pの複数トラックはもちろん、60pでも何とかなります。

 

しかし、今度はCPUやGPUです。シャーシが大馬力になって、重い装甲と砲を積めるようになると、今度は装甲と砲の「次世代性能」が必要になります。

 

イタチごっこ。ですネ。

 

 

 


戦車戦

4Kは、2Kの4倍の面積‥‥という数値だけでは計り知れず、実際に扱ってみてわかる、様々な困難・ハードルの連続です。

 

4Kのハードルは、機材面だけ見ても、かなり高いです。わかりにくい例えで申し訳ないですが、HD=2KがIII号戦車なら、4Kはティーガー、4K60pはヤクトティーガーです。IV号戦車を一気に飛び越してネ。

 

味方同士で撃ち合うことはないので、違う例えにすると、2K時代にIII号戦車でスタッフが今まで撃ち合ってきた相手がBT-7やT-34(相当強敵ですが)だとするのなら、4K時代の相手は‥‥

 

 

‥‥のような恐ろしい「アニマルキラー」、重装甲&大火力のソビエト戦車と撃ち合うことになる‥‥ということです。装甲も火力も全てにおいてIII号戦車を大きく勝るJS-2や3を相手に、です。

 

ちなみに、III号戦車はコレ。

 

 

 

かっこいい戦車ですが、‥‥まあ、どんな工夫をしようが勝てません。豆鉄砲とブリキの棺桶です。技術の世代が違い過ぎます。

 

ですから、最低でもティーガーやパンター、もっと火力を強化したパンターIIやヤクトパンター・ティーガー、E-50や128ミリ砲のE-75、スーパーパーシングやセンチュリオン‥‥と、強固な敵を打ち破る「戦車開発」が必須になりましょう。

 

III号戦車を何台揃えても、JS-2やJS-3が相手では、かすり傷を負わせるのも至難の技です。III号戦車に乗車している場合じゃないです。

 

 

強い敵が現れた? ‥‥だったら、こちらも新型戦車と新戦術で迎え撃ち、打ち破って進み、新たな領土獲得に向けて侵攻するのみ、です。

 

終わりの見えない血みどろの塹壕戦が続くより、そっちのほう(=強い敵が出現して膠着状態に終止符が打たれる)がまだ勝機が見えるだけマシ‥‥だとも思います。

 

 

 

 

 

ちなみに、「ファニー4K」、いわゆる2Kで作ってアップコンで4K‥‥という戦法もありましょう。同じ戦車で例えるならナスホルンのような、旧世代の車体に大火力の砲を積んだ「自走砲」的な考え方。

 

 

しかし、撃たれればあっけなく撃破される弱装甲の自走砲のと同じく、アップコンはあくまで「間に合わせ」の戦法です。絵がどうしてもボケますし、総合的なバランスが「2K感たっぷり」なので、世間の目が次世代の高品質映像に慣れてくればすぐに「見破られ」ます。

 

次世代技術を実用化するまで、一時しのぎとしての「自走砲」はアリですが、少なくとも制作費は2Kと同等で4Kの予算を獲得することは困難でしょう。出資者や視聴者をナメてはイケません。

 

自走砲は新型戦車の前線配備までの「つなぎ」と心得るべし。

 

 

 

「次の戦争」を見据えて、様々な「兵器」「戦法・戦術」、そして「戦略」を準備しましょう。

 

私らはアニメ映像における「戦いのプロ」なのですから。

 

 


メカニズムがあってこそ

「飯がマズい!!!」‥‥と、どんなに叫んでも、残念ながら、料理は自動では美味しくなりません。「なぜ、この飯がマズいのか」をどんなにあらゆる方向から分析しても、やっぱり、料理は自動では美味しくなりません。

 

ツイッターで繰り広げられているのは、まさにそれ。どんなに的を得たツイートでも、言うだけでは状況は進展しません。

 

状況が実際に進展するのは、実践のメカニズムが存在し正常に機能していればこそ、です。

 

PDCAだ、OODAだと、どんなに自己啓発的に発起して行動しても、全体の状況変化のメカニズムを有していなければ、ただの「気分」だけに終息します。ライダーが走る気満々でも、バイクのエンジンが止まったままでは、1mだって前進しませんよネ。‥‥それとも、ヤケクソになって、バイクを人力で押して走る?

 

口でものを言って、頭の中で考えた後は、実行しなきゃ。

 

ツイッターやブログは、「言ってやった」と、プチ達成感を得やすい性質があり、何かしら行動した錯覚を得ますが、残念ながら、言葉を放っただけで人や状況が変わるのなら、世界はこんな様相ではないです。もしツイッターで発言することで、人々が善き方向に進めるのなら、それは有史以来の快挙です。‥‥まあ、過度な期待なのです。

 

私もこうしてブログを書きますが、あくまで累積戦略の1つです。順次戦略にはなり得ないことは重々承知しています。累積と順次には、それぞれの役割があって、混同すべきものではないです。

 

順次戦略は、ちゃんと「順次」に事が進展するように、メカニズムをあれこれ作り出して、実践しています。頭で考え、口で言った後は、体を動かせば良いだけ‥‥です。

 

ツイッターでみかけた図

 

 

 

わかりやすい図ですネ。

 

今から10年以上前、当時同じ危機感を持つ同志と「新しいアニメーション技術」を模索し始めた頃は、まさに図で指す20〜30%の「やりかたがわからない」「できたらいいのに」のレベルでした。

 

そしてこれまた図の通りに、40〜80%と段階を登って行って、今は「できる」「やっている」の段階です。図でいうと、80〜90%なんだね。

 

ですから、「やらない」「できるわけない」なんて今でも愚痴ってイジけている人は、この先、長い‥‥スよ。

 

「やらない」「できるわけない」なんて言ってる人は、もう山を登るのやめて隠居するか、考え方を変えて歩き始めるか‥‥です。もしくはどこかの誰かによってケーブルカーが敷設されるのを待つ手もありますが、その時はもう山頂は人々でごったがえして「レッドオーシャン」ならぬ「レッドマウンテン」〜火の山‥‥でしょうネ。かつて、未踏の山頂を制覇した人々は、さらなる銀嶺を登りはじめていることでしょう。

 

山を登っていくメカニズムはまさに自分たちで作るメカニズムです。待つだけでは何も始まらないです。口で言うだけで、行動しなければ、メカニズムなんて生まれる兆しすら見えないです。

 

 

 

では、どうすれば、メカニズムを作り出せるのか。

 

これは中々難しい題目です。なにせ、既存の強固な制作メカニズムが、これまた強固な作業慣習によって防御されていますから、新しい改善のメカニズムを導入するのは困難がつきまとうでしょう。

 

改善できそうな部分から徐々に取り壊して、断片的に再構築していくか。

 

もしくはゼロから再設計して新時代の現場を形成するか。

 

 

まあ、どちらにせよ、言葉から実行へ‥‥と何らかの「実践メカニズム」を導入しなければ、状況は変化せず、世間話の域どまりです。

 

私は、作業フロア自体を、実践を後押しする環境に仕立てようと思います。分業化して外注化した現場では、高サイクルなエラーリトライのループは実践不可能でしょう。小規模であっても、いわゆる「海兵隊」のような「陸海空」を内包した現場こそ、フィードバックが迅速かつ成長速度も速い、新しい世代・時代の技術体系を形成できると確信しています。これはもう、経験上からひしひしとネ。

 

アニメを未来も作り続けたい? ‥‥だったら、その願いを叶える、相応のメカニズムが必要です。

 

 


WWDC2018

毎年恒例のWWDC。今年はどんな製品の発表があるのか、そして、ないのか。

 

私らの作業環境を、2020年代を見据えた近代化改修を進めていることもあって、Apple製品が刷新されるのか、マイナーアップデートなのか、そのへんを見極めた上で機材調達をせねばなりません。でもまあ、WWDCという明確な切り替わりポイントが事前にわかっているだけでも、計画は立てやすいですけどネ。

 

新型Mac Proはなさそうですネ。なので、Late2013はもうしばらくは現役です。

 

iMac Proのマイナーアップデートがあるのか、ないのかは、気になります。ないならないで良いですし、CPUのクロックアップなど少しでも熟成されればそれで良いです。ぶっちゃけ、2020年代視野で4Kに取り組むならiMac Pro程度の性能は必須です。アップコンなら今のままで構いませんが。

 

iPad Proは13インチはどうか。これも、刷新やマイナーアップデートが、ないならない、あるならあるで、とっとと状況を知りたいです。iPad Proは直に作画作業の中心なので気になりますし、スタッフの育成にも重要な機材です。

 

Mac mini。今回もまた放置プレイなのか。Mac miniを4K60Hzに対応させて、メモリを64GBまで増設できるようにすれば、十分、2020年代の自宅作業にも耐えるでしょうが、まあ‥‥それはなさそうな予感。

 

Mac BookやiPhone。それはぶっちゃけ、私にはあまり関係ないので、興味は薄いですが、iOSアプリがmacOSでも動作するようになる噂は、気になりますネ。

 

Home Pod。すでにアレクサさんがいるので、あまり興味を惹かれませんし、作業場にはミキサーから各種特性のスピーカーで音出しできるので、よほど何かの利点がなければ(例えばiOSやmacOSからスマートホームをシームレスに操作できるなど)、わたし的には、HomePodの出番はなさそうです。

 

 

仮に、今回何ひとつバージョンアップやマイナーアップデートや刷新がなくても、十分、未来の環境作りは可能な計画なので、導入してすぐに新製品が発表されるイタい事態を防ぐことだけを考えております。

 

すべて理想の機材を揃えられるわけではないですし、私らの作業部屋には色々な事情で今でもFireWireで動作するHDDもあったりしますので、目標を達成するには何が必要かを精査し、重要度の高い機材を厳選して導入し運用するのみ‥‥です。

 

でもまあ、初夏と秋のAppleのイベントは楽しみで良いです。

 

最近、新製品が発売されても無感動なことも多いですもんネ。製品発表が楽しみな企業って、やっぱり稀有です。

 

 


根性依存

「根性作画」。要するに、どんなに大変な内容や状況でも根性で乗り切る作画です。「根性撮影」なんて言葉もありましょうか。

 

「根性」で苦難を突破する度量、気概、自己への確固たる信頼は、持つに値するスキルや経験だと思います。いざという時の火事場の馬鹿力は、どんな工程にも役職にも必要だと思います。

 

ただし‥‥‥。「根性に依存」しちゃだめなんですよネ。

 

根性そのものに害はないのです。根性って、当人の能力やバイタリティの証でもあります。しかし、ワークフローや生産システムが「根性ありき」で計画され運用されるのは、その時点で破綻しています。

 

 

「一人十殺、一人百殺の気概であります!」

 

その気迫は良いでしょう。他人がどうこういうものでもなく、あくまで本人の気概・気迫なのですから。

 

 

「一人十殺なら、敵を打ち破るのに、敵の1/10の戦力で大丈夫だ」

 

‥‥アホでしょ。本人の気迫を計算に組み込むなよ。

 

しかし、アニメ現場はいつしか、そのような見積もりが常態化して久しいように思います。80〜90年代に作画技術をスパークさせたベテランの惰性だけでなく、若い世代の監督や演出もカジュアルなノリでテレビシリーズの通常単価で「一人十殺」を現場に要求します。

 

そういう時にね。「そんな馬鹿げたことはヤメようよ」と言うのは、実は効力がほとんどないことは、ツイッターが広く普及した現代が証明しています。「言ったって、治るもんじゃない」わけです。

 

じゃあ、どうするのか。‥‥仕切り直すしかないでしょ。

 

「一人十殺」が常識になってしまった現場に、いまさら「一人一殺ですよ」と訴えても、「今までソレでOKだったんだから、これからもソレで良い」で、ハイ終了です。旧来現場の中で改革を格闘するだけ無駄なんですヨ。

 

現場を完全にバラした後、用語辞書や技術体系もゼロから組み直して、システムも作り直して、新しい技術もどんどん導入して‥‥と、それでようやっと、慣習や常識を変えることができると思います。

 

口で言って、変えられた試しなんて、ないでしょ。思い出してごらんよ‥‥です。

 

 

「根性は何のためにあるのか」

 

‥‥その「根性の根本」を定義し直すのは、今までの現場では無理です。キッパリと言いますが。

 

日本人だって、無条件降伏=戦前戦中意識の強制解体という通過点を経なければ、今でも「進め一億火の玉」「一億玉砕」「一億総特攻」「日本は神州」とか言い続けてるでしょうネ。

 

 

 

今までのアニメ現場で「根性依存」から抜け出すのが困難な理由は、「根性意識」の習慣が根強いのと同時に‥‥

 

「根性に頼らざる得ない、技術体系の旧式化」

 

‥‥があることです。

 

思い出しましょう。旧式化した零戦で、特別攻撃隊が編成された70年前の日本を。

 

大戦末期の日本は、根性に依存するだけでは飽き足らず、根性をもって命を差し出すことまで強要したわけです。旧式化した技術、遅れをとった技術を、根性と命で挽回しようとしたのです。

 

ああ、まるで、今のアニメ業界じゃないか。‥‥いつまで「根性作画オンリー」の考え方を続けるつもりなんだ?

 

根性を戦況打開の戦術に組み込んだ時点で、その戦争は、たとえ一時的な優勢を得ても最終的には負けましょう。73年前の1945年に根性を捨て無条件降伏を受け入れ、翌年に「コロネット作戦」が発動されずによかったね‥‥と思うばかりです。

 

「忍び難きを忍び、耐え難きを耐え」

 

‥‥で、結局負けてんじゃん。どんなに忍んで耐えても、負けてりゃ意味ねーよ。です。

 

当時の人々が、ある時には命まで差し出して、根性で忍んで耐えたのは、一体、何のためだったのでしょうね。

 

 

 

ではアニメ業界は?

 

アニメ業界に投下される「新型爆弾」は何でしょうか?

 

アニメ業界も、どんなに「忍び難きを忍び、耐え難きを耐え」ても、いつかやがて忍びきれず耐えきれない日が確実にやってきます。

 

根性依存をいつまでも続けている場合ではないでしょ。‥‥と、少なくとも私は思いますし、実践を開始しています。

 

 

 

 

私に限らず、幅広い見識をもった人々は、もう気付いているのです。「今までの技術体系では立ち往かない」と。

 

ベテランだって新しい意識をもっている人は何人もいます。どうしようもない石頭ばかりではないです。

 

各々、自分が関われる範囲で状況を進めて、未来計画を開始しているでしょう。

 

 

私は根性を信頼しますが、依存はしません。当人の根性・ポテンシャルがいかんなく発揮される技術体系や技術開発に重きをおき、「一人一殺」でもその「一殺」の中身を高効率化することで、制作運用の全体像を根本から変えていきます。

 

中堅・若手の、若いゆえの覇気に満ちた根性・度胸は、実に頼もしい。‥‥しかし、その根性や度胸をあてにして生産計画に組み込むのは具の骨頂。

 

根性や度胸は、本人の内に在って、じんわりと作品作りに滲み出すべきもの‥‥なのですから。

 

 

 


HS5

ヤマハのHS5。最近見たときはペアで2万3千円で売ってて「安っ!」と思ったのですが、今日見たら、普通の値段に戻ってました。あれはただの特売だったのか。

 

 

 

このスピーカーは音を気持ちよく聴くのとは正反対で、音をチェックするのに適しています。特に定位はバツグンで、1つ1つの音が箸で摘めるように錯覚するほどです。

 

アマゾンのレビューはなかなかビミョーですが、運搬トラックに乗用車の価値観を説いても的ハズレなのと同じく、このHS5はあくまでモニタースピーカーであってリスニングスピーカーではないので、そのへんをわきまえれば、かなりのコストパフォーマンスの製品だと思いますヨ。

 

安いところ(サウンドハウスとか)で買えば、ペアで2万5千円ですもん。

 

アニメ会社もさあ‥‥、ラッシュチェック環境くらいには、せめてこうしたHS5やMSP5 Studioを設置してもバチはあたらんと思うよ。大した金額じゃないんだからさ。

 

ちなみに、HS5は、ヤマハの音叉ロゴが光るのが可愛いですヨ。

 

白いのも出てて、これがまた可愛い。

 

 

 

 

私らの作業部屋では、MSP5 Studio、ALESISのPC用ミニスピーカー、ヤマハのサブウーファー、そしてHS5を、適宜チョイスして鳴らせるようにセッティングしてあり、様々な制作場面で活用しています。雰囲気を聴きたい時はMSP&ウーファー、定位を確認したい時はHS5と、ニーズに合わせて使い分けています。音の崩れを確認するために、Bluetoothの無線スピーカーや、ラジカセで鳴らすこともできます。

 

ヘッドフォンは、おなじみのCD900ST、同じソニーのV6や7506、AKGの240、JTSの535、KOSSのスポルタなど、様々な出音を確認できるように、ヘッドフォンアンプに繋げています。

 

普及価格帯の製品ばかりですが、アニメ会社の作業部屋としては充分だとは思っています。私らの作業は、単一工程ではなく、最初のイメージ出発から最後の着地まで、幅広い範囲を引き受けることが多いので、安価な製品でもしかるべき性能の機材が必要です。

 

 

 

 

6月は、環境の性能増強に合わせて、音周りも合わせて向上する予定‥‥というか実行します。長らく未使用で眠っていたサブバス付きのミキサーを導入して、明確にコントロール送りとメイン送りを分けた配線にして、例えば私のヘッドフォンでは音を出すが、監督やプロデューサーの聴いているスピーカーからはミュートする‥‥という、ごく普通なメイン&コントロールを分離できる環境(=安いミキサーでは中々難しい)をようやく実現します。安いミキサーは個人で使うことが前提ゆえにメインもサブも一緒で、各チャンネルのMUTEすらなかったりしますもんネ‥‥。

 

 

ヤマハが、HS5のような「貧者の味方」(=価格的に)のスピーカーを販売し続けてくれているのは、嬉しい限りです。自分の部屋で音楽を聴くのならともかく、作業部屋でチェック目的で聴くのなら、HS5は文句なしに安くて高品質なスピーカーです。

 

 


F-15

作業部屋の模様替えの下準備をしてたら、しまっておいた「嘘のF-15」が出てきたので、飾りました。

 

これ。‥‥数年前の作品で実際に使用しました。

 

 

 

アカデミーの1/72のキットを、水平&垂直尾翼を切断し、角度を変えて接着し直しました。‥‥なので、実在しない嘘のF-15です。作った当時は、アカデミーのキット価格は1200円前後だったと記憶しますが、今は絶版らしくプレミア価格になっているようです。今購入するなら、容易に入手可能なハセガワのスジボリキットで良いですネ。

 

マグダネルダグラス〜ボーイングのF-15は空想だけでなく性能向上案として尾翼の角度を変えた計画案が存在したようで、モックアップの写真を見たことがあります。逆ハの字のF-15は、アニメの世界だけではなかった‥‥ようです。

 

カナード翼をつけたり、ベクターノズルに変更したり‥‥は、なんだか上手くいきそうもなかったので(私の工作技術では)、尾翼のアレンジだけです。それだけでも、随分と未来チックになりますネ。

 

 

ちなみに、100円ショップで買った釣り糸で吊っています。透明の細いナイロン糸なので、簡単に(PhotoshopやAfter Effectsで)消せます。

 

国籍マークや部隊マークはあえて貼らず、ステンシル関係のみ貼っています。国や軍隊の固有マークを貼っちゃうと使い回しするときに面倒なのです。

 

サーフェイサーは下地で使うのがほとんどだと思いますが、私はフィニッシュとしても使います。適度にマットな仕上がりが光の反射を抑えて影をしっとりと描写し、立体把握がとてもしやすく、後処理するスチル撮影にも汎用性が利きます。

 

*私が標準仕様として使っているのは、クレオスの1200です。1200のグレーが光源の反射でも白飛びせずにちょうどよく、タミヤカラーでクレオス1200のグレーを再現するために、XF−80「ロイヤルライトグレイ」XF-83「ミディアムシーグレイ2」を調色して常備するほどです。

*ちなみに、アマゾンだとこの辺の具材は割高です。私はヨドバシを常用しています。

 

立体造形は、日頃平面ばかり相手にしていると、実際に実物(模型であっても)を目にすると、とても新鮮で良い刺激になります。模型に縛られて理屈ガチガチになる必要はないですが、思わぬ発見も少なからずあるので、アニメスタジオに常備しておきたいアイテムの1つです。

 

 

 

 

 


設計図

私は最近、アニメ制作上において、キャラ「設定表」、メカ「設定表」などの「設定」という言葉は避け、「設計図」という言葉に変えています。もちろん、私がメインで関わる場合は‥‥ですけどネ。

 

私が子供の頃に見たクレジットは、「設計」という言葉もそれなりに使われていた記憶があります。なぜ今は、ほぼ全て「設定」になったのか、理由はよくわかりません。

 

ぶっちゃけ、「設定」だと、少し柔らかいニュアンスになるように思います。一方、「設計」だと厳格な印象があります。

 

私が思うに、髪の毛が透けるデザインで多重組みが頻発するのは、キャラのデザイン時点での甘さが大きな原因だと思います。ツイッターでは、各種作画上の障害を原画マンの責任にする発言を多く見かけますが、原画マンはキャラ表を見ながら描いていますから、そのキャラ表に明確な「障害抑制」のデザイン上の工夫が示されていなければ、いくらでも事故は発生するでしょう。

 

私が子供の頃にみた「キャラクター設計」のデザイン画は、想定される場面においてどのように処理すべきかも併記してありました。サイズによっての描きわけかた、髪の毛の下の処理など、色々と。

 

「作画注意事項」として別立てで書かれたものではなく、「キャラクター設計の一環」としてキャラデザインに盛り込んでありました。‥‥当然ですよネ。‥‥だってさ、アニメ制作運用において、キャラを描画する際の規定書・作業の拠り所なのですから、デザインに最初から盛り込まれていて然るべきです。

 

昔はセル画でしたから、デザイン上の迂闊さは、モロに仕上げ不可、撮影不可に直結しました。

 

 

キャラ表は、デザイナーが自分の好みやクライアントのオーダーに準じてただ漠と描くだけのものではないはず‥‥です。作画スタッフに対して、どのように描けば良いかの指針やメカニズムを示す設計図であるべきでしょう。

 

多重組みが発生しやすい場面での回避策もキャラ表には必要となるでしょう。作画作業以降での多重組みなどの諸問題は現場のみんなで上手く処理してよ‥‥なんて、設計図としては欠陥設計図と言えます。設計図にミスがある‥‥ということです。キャラ表は単品のイラストじゃないんですから。

 

でもまあ、そうした「各スタッフへの対応がめんどくさい」ことを回避するためにも、厳格な印象を持つ「設計」よりも、やんわりとした「設定」の呼び表しのほうが好まれるのでしょうかね?

 

 

新しい技術においては、キャラやメカ、美術、プロップ、そしてエフェクトにも、現場での実用・運用を周到に計画した設計図が必要になります。設計が甘いと、技術が新しいがゆえに、作業に支障が出やすいからです。

 

「そうか‥‥、こういうデザインにしちゃうと、このようなシチュエーションで破綻するんだな‥‥」という経験値をどんどんデザインにフィードバックすることが、これから未来の取り組みです。作画技術だけでなく、コンポジットや色彩設計などあらゆる工程の現場のノウハウをどんどん反映した「アニメーションキャラクター設計図」を描くことが必要です。

 

立像、キャラの基本表情、表情バリエーション‥‥を描けば済むような「設定」ではなく、様々な技術を用いる時に、また、様々なシーンのシチュエーションで実際に用いられる時、どのようにキャラをデザインしておけば成立するのか、まさに「設計」することが求められます。髪の毛の分け方、パーツ・リグの分け方など、作業上に必要な設計図を、できるだけコンパクトにページに収める知恵も必要となりましょう。

 

現在のアニメ制作はクオリティも相当に上がりましたが、アニメ制作黎明期の「運用するための知恵」もかなり多く忘れ去られています。得たものも大きいが、失ったものも大きい。‥‥そしてそれが、作業上の障害にも通じています。

 

これから先、若い人間たちと共に様々な映像技術の変遷を経験する上で、設定ではなく、設計という意識で現場作りを志したい‥‥と思っています。年長者の見識の甘さや迂闊さが、若い人間にも伝染しちゃうのは、できる限り避けたいですもんネ。

 

 


アニメの絵柄

今のアニメの絵柄は、言うまでもなく、以前のアニメ彩色用の塗料=アニメカラーの名残りを大きく引きずっています。アニメの絵柄は、そもそもデザイン視点で今のスタイルを選択したのではなく、彩色上の制限を反映したゆえのスタイルです。塗料を混ぜ合わせることが実質不可能だったので、「色は混ぜない、ぼかさない」制限の中で、アニメの絵柄は工夫を重ねて発展してきました。

 

しかし、現在は色を無段階に混ぜ合わせることも可能になり、アニメカラーの制限は形骸化しています。つまり、今はもう、キャラデザインの時点から、「絵柄の考え方」を変えても良いわけです。

 

一方で、多重組みの問題や、髪の毛の色分けが7色にも及ぶ‥‥など、作業の混乱や複雑化など、様々な問題が増えています。

 

形骸化した制限を今でも慣習的に踏襲して、昔の足枷をハメたまま、障害走や全力ダッシュで今まで以上のパフォーマンスを得ようとする。

 

‥‥色々と、仕切り直しの潮時ですネ。

 

思うに、仕切り直しの第一歩はキャラのデザインからです。デザインが2020年代の現用技術を意識できていなければ、続く工程が全て影響を受けます。

 

例えば、プロペラ機からプロペラだけをとって、ジェットエンジンをくっつけたような機体では、次世代を体現するスタイルにはなりません。

 

 

 

上図はエアラコメットというアメリカ陸軍航空隊時代のジェット機ですが、性能は散々だったようです。

 

ジェットエンジンで心臓部が変わったのならば、ボディデザインも応じて変わってこそ、ポテンシャルが発揮できようというものです。洗練の余地が残されていようと、古い慣習や常識から抜け出すことが何よりも必要です。

 

 

 

 

 

 

‥‥で、これは飛行機での例え話。

 

アニメのデザインは、どのような変化が、2020年にふさわしいのか。有効なのか。そして、受け入れられるのか。

 

戦後のジェット機開発と同じで、トライ&エラーの繰り返しです。頭の中だけ考えて、何も実践しないまま、解答が導き出せるわけ、ないです。

 

 

 

ただ1つ、わかっているのは、今までの尺度だけで物事を考える人々は消え、新しい尺度で物事を推し進める人々が台頭することです。様々な歴史が証明しています。

 

実際、今のアニメだって、1960年代の初期テレビアニメのアトムやロビンの常識のまま‥‥ではないですよネ。もし1960年代のアニメーターがタイムスリップして2018年現在のキャラ表や原画を見たら、「こんなの非常識だ」と絶句するでしょうしネ。

 

そして、タイムスリップした1960年代のアニメーターは、こんなことも思うかも知れません。「絵柄は複雑になったけど、基本的な段取りは大して変わってないんだな」と。

 

 

 

2020年代を迎えるにあたって、認識を新たにすべきは、「今のアニメの絵柄は何に由来するのか」です。

 

枚数量産の制限、セル絵具の制限、フィルム撮影台の制限が、まさにアニメの絵柄に強く影響していたのです。とかく、「アニメはアニメの絵柄だから」なんていう無自覚で間抜けな認識に陥りやすいですが、ちゃんと物理的な理由がありますし、黎明期のアニメスタッフはその制限を強く意識していたことでしょう。

 

アニメの絵柄を所与のものとして認識するのではなく、なぜ今までのアニメはこのような絵柄なのか‥‥を改めて深く考えた時、未来に繋がる「温故知新」が得られるでしょう。

 

昔の人は、物理的な理由ありきでアニメの絵柄をデザインし、その制限を逆手にとって、魅力的なものへと変えていった。

 

では、今を生きる私らは、どのような物理的な理由があって、どのように絵柄をデザインすれば良いのだろう。

 

 

絵柄の好みは色々あって良いし、もっと様々な「旧来アニメ絵以外の絵柄」が増えるべきとも思います。要は「昔」に縛られずに、「昔」の「切り拓いた精神」に学ぶべき‥‥なのでしょうネ。

 

アニメを通例や慣習で扱う人々は、やがて過去に消え、アニメを新しい技術基盤で「再発明」できる人々こそが、今後のアニメ制作の未来を担っていく‥‥と私は思います。

 

 

 


雑感

以前、「After Effectsで作業するのは撮影処理」だと言っている人がいた‥‥と耳にして、そんなアホな、いつからAfter Effectsは撮影ソフトになったんだ?‥‥と思いましたが、After Effectsに限らず、一定数の人は「ソフトウェアで工程を考える」ようで、それこそがコンピュータ活用術の限界を自ら生み出す大原因ですし、新しい映像技術にも追随できない理由でもある‥‥と考えています。

 

なので、そうした意味でも、After Effectsだけで作ったキャラのテストを以前紹介した次第です。キャラの描線からペイント、背景に至るまで、すべてAfter Effectsだけでゼロから作っていますが、これって「撮処理」なんでしょうかね。

 

 

 

まあ、違いますよね。明らかに作画カテゴリです。もっと根本的な表現で言えば「絵を描く行為」です。

 

After Effectsでキャラが描けるから、After Effectsを用いた場合は撮処理だ!‥‥なんて、誰も思わないでしょ。エフェクトアニメーションにおいても、After Effectsでゼロからビームや波の動きの素材(=原動仕に相当する)を作りますが、それは撮影処理じゃないですよネ。

 

 

*After Effectsにも「ペンツール」があるのですから、絵は描けますわな。

 

まあ、上図はイジワルな例ではありますが、実際、After EffectsやPhotoshopなど様々なツールを「何用」と定義するのは、ソフトウェア、ひいてはハードウェアや制作行為そのものに自ら重い足枷をハメるようなものです。

 

誰がいつ、After Effectsを狭義の撮影ソフトということにしてしまったのか。少なくとも、前世紀からAfter Effectsを使っている人々は、撮影専用ソフトだなんて思っちゃぁいないですヨ。実際、After Effectsは2005年くらいまで撮影ソフトとしては認知されておらず、コアレタスじゃないと撮影は無理だなんていう風潮が支配的だったんですから。

 

思うに、後から参入した人々は、「ソフトウェアを何用と決めつける」傾向が強いように感じます。何も定型がないところから試行錯誤して作った人々は、ソフトウェアがどのように使えるかを制作過程で経験しますから、発想を様々に転換して柔軟にツールを使えるのですが、先人の事例を踏襲してスタートした人々は「これは何用」と思い込んでしまって、使い方を限定して狭めていく傾向があります。

 

ゆえに、アニメ業界のAfter Effectsの使いかたは、正直なところ、After Effectsのポテンシャルを20〜30%くらいしか活用していないように思います。After Effectsの中に、アニメの撮影作業で使ったことのない機能が多ければ、まさにそれが論より証拠。

 

 

おそらく、2020年代の最初の動きは、2000年代後半から現在までに決めつけられてしまったツールの使い方を一旦バラして、新しい時代の映像産業が欲する品質と性能に合わせて、組み直す・考え直すことではないか‥‥と感じます。10年かけて凝り固まってしまった認識を、10年かけて解きほぐしていく‥‥のでしょう。

 

じゃないと、先には進めんですもんネ。今までの使いかたを一新するからこそ、新しい映像を具現化できるのです。

 

 

道具の使い方は、巡り巡って、未来の命運を分けると思います。大げさな話ではなく、将来の生産力を左右してしまう‥‥でしょう。

 

まずは、世界規模で進行する映像技術進化との足並み。4KとHDR、そしてインフラの更新とともに60pなど、道具の使い方次第で対応の可否がわかれます。

 

アニメに4Kなんて不要だ‥‥なんていう人は、今までのアニメの映像しか頭に思い浮かばないからです。4K60pHDRを駆使するアニメは必ず現れます。そして、時代に進行に合わせて、アニメに対する認識が変わっていくのです。‥‥今までと同じように。

 

さらには労働力。

 

現在の「アジアの労働力」は、果たして、これから10年20年変わらず、日本の制作会社のオーダーに対して、同等の処理能力と受注金額を維持してくれるのでしょうか。

 

おそらく、アジアの生産力は、「金の切れ目は縁の切れ目」でしょう。日本の仕事を「義理と人情」「友情」で引き受けているわけじゃないのですから、もっと良い条件の仕事が他から受注できれば、日本からの仕事は少なくとも今までの条件では引き受けてくれなくなる‥‥のは誰でも想像できることです。

 

アジアの労働力を、採掘すればいくらでも湧き出す無限の油田みたいに思い込むのは、そろそろ考え直した方が良いと思います。それは労働力的にも、日本の技術者育成の観点でも。

 

ボロボロにダメージを受けた国内の労働力・生産力を再生し、新しい時代と共に歩むには、道具の使い方が何よりも第一歩でしょう。新しい時代のニーズに合わせて道具を使えてこそ、生産力と呼べる流れ・勢いも具現化しましょう。

 

 

道具の使い方〜コンピュータとソフトウェアの使い方は、未来を切り拓く上での、最重要なキーワードです。

 

手元に存在する道具に対して、昔の使い方しかできない集団は、時代の変化についていけず徐々に力を削がれ、どこかの時点で1つ消え、2つ消え‥‥と淘汰が進むと予想します。

 

でもまあ、普通に考えて、誰も「淘汰される側」にはなりたくない‥‥ですよネ。

 

だったら、時代の変化の大波小波にさらわれて溺れ死ぬのではなく、むしろ、その波のエネルギーを活用して波乗りするのが良いです。

 

活用するには、まずは「After Effectsは撮処理だ」とか言ってちゃあダメす。この10年で固まった意識は、ほぐしていきましょう。

 

作画用ソフト、撮影用ソフト。そんなことを考えるばかりでは、未来など過去の刷り直しに過ぎない‥‥のです。

 

 

 

 



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