再帰処理

スクリプトを他人に説明する時、一番説明しにくいのは、再帰処理です。「自分自身を呼び出す処理」とか言っても、即座には何のことやらイメージできないですもんネ。

 

前回記事のレイヤーをファイルとして書き出す処理も、「もしレイヤーがレイヤーフォルダだったら、レイヤーフォルダの中身に潜って、同じ処理を繰り返す」再帰関数を作って処理していましたが、スクリプト文の引用を避けたのは、再帰関数の説明が長くなりそうだったからです。

 

レイヤーフォルダは、Photoshopの内部では「LayerSet」と呼ばれています。typename(当該項目がどんな種別かを判別する文字列)を調べると、普通の画像レイヤー(背景レイヤーやテキストレイヤーも含む)は「ArtLayer」、レイヤーフォルダは「LayerSet」という文字列が返ります。もし処理するレイヤーのtypenameが「LayerSet」だったら、中身に潜って処理を続行しないと、1階層しか処理できないポンコツスクリプトになってしまいます。

 

かと言って、前回のニーズだと、「レイヤーフォルダ階層の底まで潜ると潜り過ぎ」という条件がありましたので、「セルごとの連番レイヤーフォルダなら潜る。そうでない場合は潜らない。」というIF分岐を設けました。IF分岐はレイヤーフォルダ名で判別しました。

 

 

 

再帰処理は、私がスクリプトを覚え始めた20年前の初心の頃に、ウンウン唸りながら理解を進めました。まあ、普通の日常に、再帰処理なんて意識することはないので、もしかしたら「オブジェクト指向」よりも解りにくいかも知れません。オブジェクト指向的アプローチは、日々の料理のバリエーション展開など、身の回りに豊富ですが、再帰ルーチンは日常ではイメージしにくいです。

 

例えば、レイヤーフォルダに含まれるアートレイヤーの数を数えるスクリプトを考えた場合、レイヤーフォルダの階層が3階層までだったら、以下のように3回「for」ループで中身を総当たりで潜って処理できます‥‥が、まあ、こういうやり方は逆に大変です。

 

var artLayerCount=0;
for (var i=0;i<app.activeDocument.layers.length;i++){//第1階層
    if(app.activeDocument.layers[i].typename=="LayerSet"){
        for (var ii=0;ii<app.activeDocument.layers[i].layers.length;ii++){//第2階層
            if(app.activeDocument.layers[i].layers[ii].typename=="LayerSet"){
                for (var iii=0;iii<app.activeDocument.layers[i].layers[ii].layers.length;iii++){//第3階層〜これ以上潜らない
                    if(app.activeDocument.layers[i].layers[ii].layers[iii].typename=="ArtLayer"){artLayerCount++;}
                }
            }else{
                if(app.activeDocument.layers[i].layers[ii].typename=="ArtLayer"){artLayerCount++;}
            }
        }
    }else{
        if(app.activeDocument.layers[i].typename=="ArtLayer"){artLayerCount++;}
    }

}
alert(artLayerCount);

 

 

最大3階層までのレイヤーフォルダの中身のアートレイヤーをカウントして‥‥

 

 

‥‥と、一応は正確なレイヤー数はカウントしてくれます。

 

しかし、この3階層分の入れ子を直に文で書いてしまうと、正直、「今、何階層目か」、文を書いてて解らなくなります。非常に煩わしくて面倒です。ループを回す「i」変数を ii iii と切り替えるくだりは、煩雑そのもので書いてて混乱します。

 

書くのが面倒で読みにくい深い構造で、メンテナンス性(後で書き換えるなど)が最悪なのに、第4階層以下は潜ってくれず、処理してくれません。大変なわりに機能がショボい。

 

第4階層以上は潜れないので、

 

 

‥‥のような深い階層を持つレイヤー構造に対応できず、あくまで第3階層までしかカウントできません。

 

 

 

なので、再帰関数の出番。

 

var artLayerCount=0;
alert(artLayerCounter(app.activeDocument.layers,artLayerCount));

 

function artLayerCounter(_layers,_count){
    for (var i=0;i<_layers.length;i++){
        if(_layers[i].typename=="LayerSet"){
            _count=
artLayerCounter(_layers[i].layers,_count);//自分自身を呼びだす
        }else{
            if(_layers[i].typename=="ArtLayer"){_count++;}
        }
    }
    return _count;
}

 

 

「artLayerCounter()」という関数の中で、処理対象のレイヤーの種別がレイヤーフォルダだった場合は、関数自身にレイヤーフォルダの中身を入れ子で投げ込んでいます。

 

この構造ならば、階層が10階層だろうが、延々と中に潜って処理します。

 

しかも、文字数も少なく、見た目の階層は1階層なので、メンテナンス性も高いです。

 

 

 

 

ちゃんと、テキストレイヤー、画像レイヤー、背景レイヤーの合計を正確にカウントできています。

 

 

 

再帰処理を使わないと、文が長く読みにくくなる上に、処理対象の階層が深くなると機能は限定されて、いいとこなし‥‥です。

 

私は、一回でも再帰的な入れ子の処理が出てきた時は、迷わず再帰処理を使います。「潜るのは一度きりで今回限り」とは限らない事例が多いからです。後日に、もっと階層を潜れるニーズが発生した時に、再帰処理であらかじめ組み立てておけば、簡単な手直しで対応できます。

 

Photoshopに限らず、After Effectsのプリコンポーズした入れ子にも使えますし、OSのフォルダ階層にも応用できます。再帰処理を使えば、どんなに深いフォルダのファイルでも総当たりで一覧を作成できますから、過去作品のディスクアーカイブの内容一覧にも使えますネ。

 

再帰処理は、プログラムを覚えて色々な自動処理のパワーを実感する中で、「これは人力では不可能だ」と特に感じるものです。

 

アニメ制作における様々な事務的な雑事は、まさに再帰的な処理、反復処理の連続ですから、コンピュータを「絵や映像を作る時だけ」でなく、「作る前と作った後」にも活用して、全体的な作業効率を高めましょう。

 

アニメの映像そのものを作るのに精魂を使い果たした後で、事務的な処理にさらに1〜2時間居残りで作業‥‥なんて、できるだけ回避したいですもんネ。

 

 


原画PSDファイルから書き出し

Photoshop形式の原画上がり=各セルの連番をまとめたレイヤーフォルダやレイアウトやフレーム指示のレイヤーなどを、あたかもタイムシートに挟んだ原画上がり一式として別ファイル出力するPhotoshopのスクリプトを今日必要に迫られて作りました。前々から作っておくべき!‥‥と考えていたのですが、ようやく重い腰を上げて作った次第です。

 

今回作ったのはコレ。

 

 

書き出すファイル形式は、当座の都合でTargaにしていますが、レイヤーなしのTIFFでもPSDでも可能です。絵が荒れるのでJPEGは使う予定はないですが、JPEGでもGIFでもPNGでも可能です。アルファチャンネルはファイル形式と状況によって適宜。

 

そして、(いつ作るかはニーズに応じて未定ですが)コレも用意しておくと、特定のプラットフォームやソフトウェアに縛られず、ファイルとレイヤーの行き来が可能になりましょう。

 

 

もはや、PSDファイルのレイヤー構造は、AdobeのPhotoshopでの使用に限定したものではなく、「レイヤー付き画像フォーマットといえばPSD」というくらい各所で普及していますから(ProcreateでもPhotoshopのレイヤー構造を保ったまま読み書き可能)、この2つのスクリプトは便利に使えると思います。

 

スクリプト自体には何の難しいところもないです。レイヤーの表示(=visible)を出力の基準にして、レイヤーの種別(ArtLayerやLayerSet)に応じて、当該のファイルフォーマットで複製保存するだけです。まあ、「常時表示するレイヤー」とかをちゃんと見分ける仕込みは必要ですが、基本的には難しいことはないです。

 

難しいのは、そのPhotoshopの「レイヤー構造の成り立ち」のほうです。

 

階層の深さの規定は、絶対に必要です。また、レイヤー名に基づいて出力するので、レイヤー名とその親フォルダの命名規則は極めて重要です。

 

でも、そういう部分が一番ルーズになるものです。人間が介在する部分が、一番「揺れ」ます。

 

なので、当座はスクリプト処理の都合も含めて、以下のように定めました。

 

  • スクリプトが掘る階層は、レイヤーフォルダの第1階層まで。
  • 静止画としてのレイヤーフォルダと連番格納のレイヤーフォルダは名前で判別する。
  • 連番レイヤーは、親フォルダ名とレイヤー名を連結してセルのファイル名とする。
  • 常時表示のレイヤーはレイヤー名先頭に判別文字を付与する。

 

 

とはいうものの、私のメインはあくまでCO/KFアニメーションなので、「従来作画のタブレット化・データ化への関与」はやんわりと距離を置くべきと考えており、上記程度の決め事で様子見です。

 

 

 

「デジタル作画」のここらへんの決まりって、誰か決める人、いないのかな‥‥。「デジタル作画」を自分のメインにしていこうと思っている人たちが、自分たちで決めていくのが良いと思います。私がフガフガ鼻息荒くして言う立場じゃないです。

 

一方、CO/KFアニメーションでの線画作業については、徐々にガイドラインを構築しつつあります。レイヤー名の命名規則も、

 

object.line

object.shadow.region

object.shadow.line

 

‥‥など、何度かの紆余曲折を経て、固まりつつあります。コンピュータで用いる規則ですから、プログラム・スクリプトでも処理しやすいように考えています。

 

 

 

Photoshopのスクリプトは久々に書きましたが、After Effectsとは似ているようでちょいちょい異なるので、多少混乱しました。

 

「layers」って、リファレンスには「The collection of layer objects」って書いてありますが、After Effectsでは「collection」は「コレクションオブジェクト」といいまして、

 

インデックス番号1から始まり()で呼び出す集合

 

‥‥なのに、Photoshopでは、

 

インデックス番号0から始まり [ ] で呼び出す配列

 

‥‥なのは、当初混乱しました。

 

また、Targaを書き出す際に用いる「TargaSaveOptions」のプロパティに、

 

resolution :The number of bits per pixel

 

‥‥があって、「タルガって解像度があったんか!」と一瞬驚きましたが、よく読むと、

 

1ピクセルあたりのビット数

 

‥‥で、初期値は「TargaBitsPerPixels.TWENTYFOUR」=24bitとありますから、いわゆるピクセルの色深度(各チャンネルの深度)のことですネ。1ピクセルあたりに使えるビット数という定義なのか、depthとは言わんのネ。

 

スクリプトの内容は、普通なら手作業でレイヤーのオンオフを切り替えて別名保存するのを、自動処理するものなので、何の特別な技も必要ないです。ただ、段取りが面倒なだけ‥‥です。

 

スクリプト動作中は、Photoshopが固まったようになるので、スクリプトが動いているんだかエラー停止しているのかイマイチ判別ができませんが、Finder上でフォルダが自動で作成されて、その中にファイルがどんどん増えていくのを見ながら、動作を確認しました。

 

 

 

なんとなく手作業のまま処理して、結構な時間を消費していた作業が自動化できました。今回はTarga書き出し版ですが、TIFF書き出し版(dpi〜解像度をもつ)も一部変更するだけで作れます。

 

必要なマニュアルは、以下のPDFにて。

 

Photoshop CC JavaScript Reference

 

フォルダなどファイルシステム管轄の操作は「JAVASCRIPT TOOLS GUIDE」(ESTKのSDKフォルダの中にあります)で「Folderオブジェクト」の項を読めば解ります。

 

 

 

 


オマエとオレ

業界関係者のツイートで、罪の重さのシーソーゲームを演じているのを見ると、まずはそのシーソーの上から降りることが必要なのかもな‥‥と思います。

 

若い人間は、

 

ベテランが教えてくれないから、自分たちはできない

年長者が今の低賃金の元凶を作った

 

‥‥という一方で、年長者は、

 

若い人間は待っているだけで自分から学ぼうとしない

自分が若い時も同じで元凶は年上の責任だと思っていた

 

‥‥と、「自分は悪くない合戦」を見ていると、「ああ‥‥。この考えに囚われているうちはどうにもならんな‥‥」と妙に観念します。

 

「罪の重さのシーソーゲーム」「自分は悪くない合戦」は、アニメ業界というよりは、人間の業なのかも知れませんネ。

 

罪をなすりつけ合うのも、これまた共依存の1つのカタチでしょう。

 

共依存が成立するのは、当然ですが、依存する対象があるからです。それが憎しみの対象であろうと、憎む対象がいる時点で依存しています。そもそもアニメ業界のシステムにどっぷり浸かって、原画の仕事をしている時点で、かなり強い依存性が生じます。ストックホルム症候群と言っても良いくらいです。

 

では、もし業界のシステムなどない、新しいシステムでアニメを作る場合はどうでしょうか。未開の荒野に鍬を下ろすとこから始める場合、どこの誰に依存できましょうか。

 

新しいシステム作り、新しい技術の構築、新しいプロジェクト‥‥は、自分たちだけが頼りです。誰のせいにも出来ません。自分ががんばらなきゃ!‥‥のそれだけです。

 

共依存状態が本当に嫌で抜け出したいのなら、シーソーから降りてみてはどうでしょうか。合戦から抜けてはどうでしょうか。原動仕の枠組みから抜け出てはどうでしょうか。

 

 

 

 

未来の映像技術、映像の品質基準は、上がることはあっても、下がることはありません。

 

現場の今の作りかたを続けると、破綻するのは目に見えています。

 

馬の時代に、2頭立て、4頭立ての馬車だ‥‥と言ってたのが、これからは100馬力必要です‥‥と言って100頭立ての馬車にはしませんよネ。「動かす力」について概念から変えなければ、時代の変遷に取り残されます。

 

「4頭立ての馬車」の中で、「罪の重さのシーソーゲーム」「自分は悪くない合戦」を繰り返しているうちに、世界はどんどん変わっていって、馬車に乗り込んでいたメンバー全員が馬車の外に出てみたら、すっかり世界は変わっていた‥‥なんてことだって、普通に予想できます。「いまどき、馬車に乗ってるなんて、珍しいですね。さぞ馬の維持費などお金がかかるでしょう。ひょっとして凄いお金持ちの方々ですか?」とか言われて呆然するかも‥‥知れませんヨ。

 

狭い馬車の中で、「お前が悪い。自分は悪くない。」合戦を続けて、‥‥さて、その馬車はどこに向かうのでしょうか。

 

馬車から降りてアスファルトの地面に立った時、「やべェ。自分たちは長いこと、罵り合うことに時間を費やしてしまった。もっと違うことに時間を使うべきだった‥‥」と後悔しても時間は戻りません。

 

 

 

年長者、ベテランは、自分たちが獲得した技術だけに凝りかたまるのではなく、様々な技術の可能性や発展性を考慮し、技術に対して常に謙虚であり続けること。

 

若い人間は、教えてくれるのを待つだけでなく、自分からアクションを起こして、新しい方法論を日々模索し実践すること。

 

年長者が若い人間から聞かれた際は、自分の経験と技術の全てを動員して答えるべき。

 

若い人間は待ってばかりいないで物怖じせずに、年長者に積極的に質問しにいくべき。

 

年長者は答えることに対してめんどくさがらないこと。若い人間は聞くことに対してめんどくさがらないこと。

 

‥‥ただ、これだけで良いんだけどネ。

 

でも、双方が双方、何だか腰が重いし、面倒くさがり屋だよネ。

 

 

 

若い人間は、自分でトライして考え抜いて、どうしても解らないことを、年長者に聞けば良いのです。「検索エンジン」みたいに安易に他者を扱うような態度の人間に対して、誰だって誠意をもって応える気にはならないものです。当人の考え抜いて頑張りぬいた痕跡が読み取れるからこそ、教える側は自分の過去がフラッシュバックして、「ここで自分が教えなきゃ誰が教えるのか」というキモチになるのです。年長者を「知りたいことへのショートカット代わり」にしていると、年長者は当人の傲慢さを見抜くものです。

 

年長者は、若い人間を糞味噌一緒で捉えず、個人個々の要素と向き合うことです。味噌を糞として扱うような年長者は要りません。若い人間の描いた絵を見れば、何に注意深くて、何に浅はかかは、年長者なら見抜けるでしょう。自分が浅はかな若者だった時、年長の先輩は、自分の何を褒めてくれて、何に対してさらに観察せよと教えてくれたのか、自分が年長になった今、よくよく思い出して若い人に接するべきです。

 

人との出会いは、人生を変えていきます。

 

私は20代の頃にいくつもの制作会社に詰めましたが(フリーランスが会社に席を借りて作業することを「詰める」と呼びます)、内容は様々でした。単に作業が終わるまでの期間だったこともありますが、自分に深く影響を及ぼす濃厚な学びの期間だったこともあります。全く馴染めないこともありましたし、馴染みすぎるくらいに馴染んだこともあります。

 

社員で終身雇用で‥‥みたいな働き方だと、アニメーターの視界は社内に限定され見識を広められないようにも思いますが、一方で、全ての人にフリーランスの報酬形態が適しているとも思えません。

*社会の大人の多くは、色々な手続きを所属組織まかせ(給料天引き)にしているので大人ぶっていられるだけで、皆がフリーランスになったら申告漏れ・納付漏れの続出でしょうネ。

 

なので、留学生ならぬ留学スタッフのような仕組みってできないものかと、最近考えるようになりました。まあ、会社間の取り決めが必要なので簡単にはできそうもないですが、アニメ会社は自力で全てを作れるほど、社員数が大規模ではないですし、例え大規模であったとしても技術指向に偏りが生じやすいですから、技術提携的なしっかりとしたスキームで、会社間を超えた連携協力体制もアリかと思います。

 

昭和はゴールデンタイムの子供向けアニメ、平成はオリジナルビデオアニメーション(OVA)と深夜枠のアニメ。‥‥であるならば、新しい元号には、新しいアニメの形が現れるでしょうし、その片鱗はすでに見え始めていますよネ。

 

新しい未来の状況を前に、誰しも未知のフィールドに進むのなら、年長者だからとか、若い人間だからとか、「罪はオマエにあり、正しいのはオレ」とか、足元を突きあってツベコベ言ってる場合ではないです。

 

皆が知らない未来へと、皆が進むのですから。

 

 

 


かわいいアトモス。

作業場にいよいよ5.1.2のスピーカーとアンプを設置開始します。といっても、まずは荷物の整理から。

 

ラボのような専門の部屋ではなく、あくまでも作業部屋の2.1を5.1.2にグレードアップするだけなので、いわば「かわいいアトモス」です。

 

去年の夏頃まで、アニメ制作環境のチェックルーム(やチェックスペース)に、ヤマハのそれなりのスピーカーと0.1=ウーファーがあるだけでも、相当リッチと思ってました。しかし、新たなプロジェクトの新たな基準だと、2.1などドラフトもドラフトで、最低5.1だということにショックを受けました。

 

色々調べると、ドルビーのAtmosを鳴らすには最小限でも5.1.2が必要で、前方天井の高い位置に設置する「0.0.2」のスピーカーは欠かせないとの事。今はHDMIでなんでも送り込む時代なので、MacからもHDMIでサラウンドアンプに送り込むことになります。

 

でもなによりも、まずは作る人間の耳です。

 

作っている人間の耳が、ステレオ2チャンネルしか馴染みがないのでは、「感じ」が掴めません。当然の体験として、5.1.2に日頃から馴染むことが必要だと痛感しております。

 

 

私の常駐する作業場は、私の色々な野望ゆえに、物品が多くて、音響特性的にみれば、左右前後非対称で「下」の部類です。ゆえに、デッド(残響が響かない)ではありますが、色々と問題があるだろうなあ‥‥。

 

スピーカーケーブルを部屋じゅうに這わせるのが、まず憂鬱です。スピーカーの音が通るように、物品も整理せねばなりません。

 

4KHDRの線画をiPad Proで描き、コンポジットをiMac Proで日々進める傍、音関係も徐々に整えて進めていかねば。

 

全て映像がらみではありますが、同時進行が多くて、悩ましいです。

 

しかし、「苦悩を経て歓喜に至れ」。ベートーヴェンを口ずさみながら、一歩ずつ進めて参りましょう。


Targaが終わる日

最近、Retas Studioを作業フロアのマシンにインストールしました。開発元によって開発終了がアナウンスされたmacOS版のRetas Studioは導入するつもりはなかったのですが、いろいろ事情がありまして、内容確認用と色彩設計さん用に2ライセンス期間限定で導入したのです。

 

Retasを改めて使ってみて思ったのは、「使い方によっては次世代にも使えるほど完成度が高い」ことです。Retasを1.5Kの、しかも、いかにもアニメっぽい絵柄で使うと、いつもの感じのままで目新しさはないですが、使い方次第では4K時代にも通用するポテンシャルを秘めているように思いました。最初からタブレット作画で4K寸法ならば、二値化でも線はかなり綺麗になります。

 

旧来アニメに特化した設計や機能は、たとえ次世代技術視点でも、線画とペイントの基礎作業をするのに作業性が充実していて、「1.5Kで使うから画質に古さを感じるのであって、4Kでリフレッシュすればまだまだイケそうなのに」と思いました。

 

‥‥ただ、macOS版の開発が終了したのでは、もう使い続けられないので、クリスタの方に目を向けようと思います。

 

そう言えば、先週、私的にもう1つ追加でクリスタライセンスを使い始めました。クリスタを4Kで使うために、どのように使えば良いか、KF/COアニメーション技術ではどのような使い方が有効か、新しい制作技術において色彩設計さんや仕上げさんとの連携を図るためににはどのようなフローや決め事が良いのかを、複数のマシンにインストールしてどこでも使えるようにして、まずは大まかな基本方針を探ろうと思います。‥‥ライセンス追加と言っても月500円ですから、全然無理なコストじゃないですネ。

 

 

 

Retasと言えば、タルガ。

 

アニメ業界で使ってきたタルガ:Targa:TGAのファイルフォーマットは、そろそろ終わりの時期を迎えると思います。

 

Targaは1984年に登場した、相当古い画像フォーマットです。

 

アニメ業界以外で「タルガ」とかいうと、ビックリされたりします。古すぎて、知らない人すらいます。

 

であるがゆえに、内容がシンプルで、プログラム初心者でも入門に適しているファイルフォーマットです。なぜRetasがTargaをメインにしたのか、内部事情は知りませんが、仕様がシンプルで扱いやすかったからかも知れません。ちなみに、ほぼ20年前に「イノセンス」を作った時に、ラボに入れるフォーマットはSGIで、それも相当シンプルな内容だったがゆえに、当時の私でもツールを作れた(SGIバイナリデータ書き出しのモジュールや変換ソフトを作りました)次第です。

 

Targaは基本仕様から大きなバージョンアップすることなく、

 

  • 各色8bit止まり
  • プロファイルを内包できない
  • 解像度(dpi、ppi)がない

 

‥‥という欠点をひきずったままです。おそらく、Targaが今後バージョンアップする可能性は低いでしょう。

 

開発元以外の会社が独自に拡張しても、その拡張内容が公開され認知されなければ、ちまたの画像映像ソフトウェアで扱えるようにはなりませんしネ。

 

 

 

Targaが未来に消えゆく理由。

 

まず、各色が8bit限定なのは致命的です。8bitの階調では、HDR時代の各種色域に対応できません。8bitでは、PQカーブなんてとても対応できるものではないです。トーンジャンプの嵐になりましょう。

 

未来の現場でプロファイルを運用する機運が生じた時も、LUTは持てるけどカラープロファイルは持てない仕様が、同じく致命的になるかも知れません。未来のHDR時代は、しばらく「モニタのnit数」がバラバラで混在することが予想されますが、カラープロファイルで運用することが求められた際にTargaでは対応できません。‥‥まあ、日本のアニメ制作現場は今までずっとカラープロファイルを拒絶してきた経緯があるので、なんとも言えないところはありますけどネ。

 

解像度は、ペーパーレス時代では不要になる(=ピクセル寸法だけ)ように思えますが、解像度という考え方をうまく使えば、異なる解像度の素材を混在させつつも、キャンバスでは一致させるテクニック*脚注)が使えますから、解像度がそもそも規定されていないTargaは不利になることも考えられます。最初から解像度自体がないことは、弱みの1つです。

*100dpiの1000pxと、200dpiの2000pxは、同じ寸法の見た目として表示される機能です。Animoにはありましたが、After Effectsにはありません。After Effectsの開発者の人に「解像度の概念を入れて欲しい。せめてカメラの寸法の表記だけでも。」と要望しましたが、「なぜ、それが必要なのか」と理解してもらえませんでした。

*以下の図は、2つとも「実寸」が254mmになっています。ピクセル寸法と解像度は違いますが、実寸は同じです。‥‥こういうことは、実写だけしかやってないと、あまり解らないことなのかも知れません。まあ実写かアニメか以前に、そもそもアドビ自体、アニメの現場の人たちには冷たいよネ。理由はなんとなく解らないでもないが‥‥。

*ちなみに、macOSのPhotoshopでTargaを開くと、みんな72dpiになっていますが、Targaが72dpiの情報を有しているのではなく、「未定義」=undefinedなんすネ。

 

 

Targaはアニメ業界の制作事情をよく支えてくれたフォーマットです。

 

しかし、あまりにも、仕様が時代とズレ過ぎています。

 

未来に対応できないことだらけなのがTargaです。

 

「なぜアニメ業界は、そんなに古いフォーマットを、今でも使っているのか」と他の映像分野の方々に不思議がられますが、答えは簡単で「RetasがたまたまTargaだったので、その習慣が今でも続いているのです」というだけです。そう言えば、Mac版は昔、「PICT」だったような記憶もあります。

 

古いから悪いのではなく、仕様の不足が目立つのです。もし、仕様が現代にも通用するのなら、Targaを使っても何を気後れする必要もないですが、通用しないのでは「余命」をカウントするばかりです。

 

古さでは負けていないTIFF(=1986年に1.0)は、ファイルの仕様が現代にも通用するので、実は現在作業中の4KHDRでも現役だったりします。妙にDPXを使うよりタフだったりもします。8bitはもちろん16bitや32bitが普通に使える、カラープロファイルを持てる、解像度はもちろん持てる‥‥と、Targaとの設計の違い(Tagged Image File Format=タグで拡張可能) が、2019年の今、際立っています。

 

TIFFは強いなあ。

 

 

 

でもまあ、ぶっちゃけ、線画時点では、8bitでSDRで解像度がなくても、ペーパーレス(=プリントレス)運用なら、大丈夫といえば大丈夫です。PQカーブは線画のニュアンスも丁寧に扱うデリケートさが求められますが、ニュアンスを調整するのは作画作業後でも可能です。つまり、Targaの設計の古さが顕著に露呈するのは、ペイント作業以降です。

 

アニメ業界は、Retasに占領されたと言っても過言ではないですが、その影響で、ペイント作業ほどTargaへの依存‥‥というか作業慣習が色濃いので、今後の課題は、ペイントに関わる作業で、どうやってTargaから抜け出すか‥‥でしょう。

 

3DCGの出力でもTargaで出力する事例を見かけますが、「アニメ業界はTarga」という認識を変えてもらっても構わないです。久々に、アニメ制作現場で3DCGの上がりを受け取って作業を引き継ぐと、Targaのあまり圧縮の効かないファイルが素材別に書き出されていて、サーバストレージにもローカルストレージにも人にも厳しい「Targa合わせ」は、そろそろやめるべきと思います。

 

4K時代に3DCGの各レイヤーを個別にTargaで出力したら、サーバはあっという間に容量を食いつぶしますヨ。

 

 

 

直近の課題は、色彩設計さんを始めとしたペイントに関わるスタッフと、どのように新時代の「作画>ペイント>コンポジット」工程の作業流通性・作業規約を、使用するファイルフォーマットも含めて落とし所を探るか‥‥です。

 

昔のやり方から学ぶのも重要です。しかし一方で、

 

今まで無かった事から、今から在る事へと、変えていく

 

‥‥という意識も重要です。

 

今までタルガを使ってきたから、今までこうだったから‥‥だけではなく、「ないこと」「なかったこと」をあえてしないと、新しい何かなんて、何も始まりませんよネ。

 

みうらじゅんさんの本にも、そういうのがありましたよネ。

 

*90年代中頃、みうらじゅんさんの「VOWでやんす」は枕の脇に置いて愛読してました。その後に世間で話題となる活動の数々が、既に「VOWでやんす」に収められています。

 

 

 

 

答えはいくつもありましょう。

 

「何か1つだけの正解」などという幻を抱くと、ドツボにハマるように思います。

 

頼りになるスタッフとともに、いくつもある答えを探して集めて、やがて洗練させていくのが良いです。

 

細部をいきなり精密に描き始めるのではなく、全体が徐々に浮かびあがるようにすれば良いと思っています。デッサンの授業で習ったことは、他にも活きますネ。

 

 

 

Targaが時代についていけなくなった。

 

それならそれで、いいじゃない。

 

無理に使い続ける必要はないです。

 

 

 


HDR

4KHDRの制作に集中するようになって、改めて、HDR PQ1000のパワーにたじろいでおります。今までの100nitsのsRGB/Rec.709とは桁違いの色域の広さと輝度のレンジ、加えてPQカーブというピーキーな特性を前にして、いわゆる「パワーを制御するアクセルワーク」1つ1つを見直す毎日です。

 

*Rec709とPQ1000を切り替えながら作業します。PQ1000の白は目が焼かれるほどに眩しいので、色を見る時以外は、709にプリセットを変えます。

 

 

映像の解像度にSDとHDがあるように、SDRにはHDRがあって、HDRはその「H」が示すように従来のSDRよりも「High」なダイナミックレンジ「DR」を有します。その差は、3倍から10倍で、私ら作業グループが取り組んでいるのは従来の10倍の1000nits(千ニッツ)のアニメーション映像です。

 

現在、アニメ業界で作るアニメの99%以上は、SDRです。HDRを絵作りのゼロ時点から導入するには、何よりもまず、HDRの作業モニタが必要ですが、そのモニタをアニメ制作現場のほとんど全てが設置してないので、そもそも作れる状況にないのです。

 

むしろ、会議室の4Kテレビのほうが、HDRで500nitsだったりします。

 

今、アニメ業界では「デジタル作画」でモヤモヤ騒ぎ始めていますが、HDRには全く言って良いほど無関心です。しかし、世間で言えば、アニメ業界のデジタル作画なんて「業界の内部事情」に過ぎず、4KとHDRのほうが広く一般に注目されています。

 

現在、アニメ作品で「HDR」として出回る作品は、「後付けのHDR」です。レンジの広いフィルム作品ならまだHDRの特性も活きますが、フィルムよりもレンジが狭いsRGB・Rec.709でデータを作ってしまったSDRのアニメを、グレーディングでHDRっぽい映像演出を加味して成立させている状態に甘んじています。

 

 

 

生粋のHDRで作るアニメ。

 

後付けではない、正真正銘のHDRネイティブなアニメ。

 

私らが取り組んでいるのは、まさにソレです。

 

今までの色の扱いとは全く異なる、P3-DCIで1000nitsでPQカーブの「色の世界」で映像を表現して完成させることが求められます。必要な要件は以下の通りです。

 

  • 各色10bit以上、できれば12bitで、300〜1000nitsのHDRモニタ
  • 各色10bit以上、できれば12bitのムービーファイル形式
  • 各色16bitのPSDかTIFFの連番
  • ビデオ信号を正確に扱うソフトウェアとビデオ出力
  • 適切なモニタ色校正(PQカーブを正確に映し出すための定期的なモニタ調整)

 

さらっと書いていますが、このハードルは相当に高く厳しいです。アニメ業界では、モニタは今でも8bitで100nitsのものが多いでしょうし、今でも使われるQuickTimeのロスレス圧縮(アニメーション圧縮)はそもそも8bitですし、いまどき連番ファイルを使うなんて嫌がる人も多いでしょうし、ソフトウェアごとの色の変化を測定して検証することなんてしないでしょうし、こうした多くのことを理解する作業スタッフもメンテナンススタッフも今はまだ現場には皆無に等しいでしょう。

 

作画の現場で紙と鉛筆をタブレットとコンピュータに移行するのと全く同じレベルで、美術や仕上げや撮影の「色関連」作業もHDR時代には大変動を余儀なくされます。

 

例えば、作業モニタにおいては、現在の私ら作業グループでは、デュアル作業モニタの片方をEIZOのCG-318および319にして、HDR映像制作作業を進めていますが、このモニタの導入には相当苦労しました。普通のアニメ制作現場ではあり得ないスペックとお値段ですからね‥‥。

 

 

正直、人数分の導入には相当お金がかかります。しかし、5〜10万円の廉価なHDRモニタは、細かい調整が手動でできない上に、外部から映像と一緒に送信されるメタ情報(「この映像信号はHDR10です、Dolby Visionです」という情報など)がないと特定のHDR機能が使えないものが多いのです。いくら安くても、役に立たないものを買うのは意味がないですよネ。‥‥実は、現時点で4KHDRを作ろうと思ったら、EIZO CG-319Xが妥当な選択肢なのです。

*「マスモニ」をどうするかは、また別の話です。マスモニクラスはSONYEIZOも‥‥‥高いよお‥‥。

 

作業スタッフと同じ重要度で、システムメンテナンス・エンジニアのスタッフの存在も重要です。現場の作業スタッフだけでどうこうなる技術内容ではありません。システムスタッフも映像を作っていく仲間として、共に技術知識をHDR時代へと更新していく必要があります。作業スタッフがシステムを理解する重要性と等しく、システムスタッフが作品表現技術を理解するのも重要なのです。

 

 

 

おそらく、HDR時代の機材基準・環境基準を前に、アニメ制作会社の多くは困難な状況と直面するでしょう。HDRの仕事を請け負いたくても、機材環境とそれを扱うスタッフが存在しない状況は、容易に想像できます。

 

それによって、淘汰が発生することも考えられます。時代の流れに対応できない会社は、会社を畳む‥‥という状況。

 

でも私は、それでも良いと思っています。なぜなら、「古くて安い機材でもアニメで商売できる」という性根の集団を掃討できれば、業界にはびこる「安普請根性」を正して、「技術に対する相応の対価」の意識が高まる可能性があるからです。

 

「安普請根性」が現場や業界に蔓延しているうちは、皆が一蓮托生、安普請に巻き込まれることになります。

 

そうした意味で、映像の中身もさることながら、現場の意識が強制的にでも改善されないと成り立たない=安普請では対応できないHDR映像制作は、未来の現場の試金石とも思えてきます。

 

我々アニメ制作に関わる人間は、アニメを作る人でもありますが、それ以上に映像を作るプロでもあります。その意識は今後、アニメーターに特に必要になりましょう。線画だけの世界に没頭しているからこそ、全体の安普請構造を客観視できず、高度な技術を持つわりに騙されやすい体質に陥るんだと思います。アニメーターが安い単価で仕事をする一方で、アニメーター自身ができるだけ安く機材(ソフトやハード)を買い叩こうとしたり無料で使い続けようとする姿をみると、根こそぎのトータルリコール・仕切り直しが必要なんだと痛感します。

 

世界規模の映像技術の中での、自分たちの工程、技術、経験と知識の「存在意義」を考えていきましょう。「アニメ村」の視点に終始せず、自分の作業部屋を通過して、世界の映像技術フィールドを見据えるように意識しましょう。

 

 

 

HDRは困難も多いですが、希望も多いです。

 

それに、そもそも、HDRは絵作りが楽しいです。今までのヌルい「SDR100nits村」から抜け出して、格段に広い視野をHDR1000nitsはアニメに与えてくれます。アニメーション映像表現の海の向こうに新大陸が現れた‥‥と言っても言い過ぎではないです。

 

HDRなんて何のことやらサッパリ‥‥という人でも、時代が進むうちに馴染んで普通に受け入れることでしょう。その時に、私らは「生粋HDRの美しいアニメ」を既に作れる体制を築いておきたいです。

 

絵としての美しさを発揮できるのは、過去機材性能の妥協の産物であるSDRではなく、HDRです。

 

映像表現主導で考えれば、HDRを拒否する理由なんて、どこにも見当たりません。

 

 

 


Z。

私らの作業グループでは数年前から、After Effectsの3Dレイヤー&カメラ機能は、コンポジット作業の標準になっています。コンポジションの中身のレイヤー個々をXYだけでなくZ軸も使って配置します。舞台セットのようなコンポジションを最初から組むのですが、それはすでにレイアウト作業時点からZ軸ありきのプランとして組み込まれています。

 

当然、旧来のアニメ作画や撮影の仕事ではNGです。そもそも従来のタイムシートにはZ軸の欄も、数値の基準もないので、旧来基準のアニメの作画と撮影には本格的に導入できないのです。まあ、従来枠の作品でも、「このカット内容はZ軸向きだ」と判断し、自分で原画を描き自分でコンポジットするカットは、自己完結できるのでZ軸を内部使用することはあります。

 

Z軸を持つコンポジションの縦横寸法はすなわち視界で、カメラでいうところのレンズを通過した撮像面となるので、大判を組んだ時の画角と、スタンダードフレームで切り取った画角が変わります。平面にペタッと素材を置いてコンポする旧来撮影技術では、大判だろうが画角が変わることはないですが、Z軸を使って大判を組む時には寸法の差異を吸収する微調整が必要になります。

 

また、位置だけなく、「方向」も制御しなければ、予期せぬ素材バレを生じます。Z軸コンポの縦PAN時に水平線がバレるのはよくあることです。一方で、大判の舞台に生ずる台形歪みをうまく利用するテクニックは、今までにない表現を可能としますが、ほどほどのさじ加減が必要です。つまり、今までのアニメ撮影とは異なる、新しい技術基準が必要になります。

 

コンポジションサイズを変えると、遠近感や画角の広さの見栄えが変わる‥‥のが、Z軸導入後のアニメのコンポジットです。

 

*今までの「作画サイズ」という考え方のままでは通用しない、「画角」「焦点距離」「レンズ口径」「フィルム面積」というフィルムカメラ時代の知識が必要になります。ドローン・クレーン・GoPro風な表現が可能になる一方で、素材サイズの計算はかなり難しくなります。

*平面の世界から抜け出て、奥行き=Z軸を手に入れるということは、平面では意識せずにスルーしていた色々な要素を制御する必要性が生じるということでもあります。平面のレイアウト用紙で「密着引き」を指示していたのとは別次元の、周到な計算・計画が必要です。

 

 

Z軸の距離感をそのままに、プリコンポーズして重箱にして、コラップストランスフォームで重箱ごとカメラワークを組むのは、新しいアニメ技術の定番です。レイヤーをグループ化した重箱を複数組んで、内部のZ軸の関係性をそのままに重箱単位で制御することが可能です。10〜20も重なる背景・前景を個別にXYZ軸を制御してカメラワークを推敲してたら日が暮れてしまいますから、Z軸を含めたレイヤーのグループ化は欠かせません。

 

‥‥とまあ、Z軸とコラップストランスフォームをちょっと使うだけでも、相当、色んなことができます。After Effectsは、設計が古いとは言われますが、After Effectsと同じことが完全にできるようでなければ、他のコンポジットソフトウェアには移行する気にはなれない‥‥のは、そういうわけなのです。

 

しかし一方で、After Effectsのこうした機能は、旧来の現場では、過去から現在まで封印し続け、未来も封印したままでしょう。タブレット作画が普及してタイムシートが電子化しても、撮影指示上でZ軸を扱えないので、実質手も足もでません。使い方に慣れてきた私も、原画だけ担当する場合は、Z軸なんてとてもではないですが使う気にはなれませんし、実際不可能です。

 

Z軸のカメラの動きは全て「TUとTB」に頼ることになりますが、TUとTBはズームと同じですから、クレーンやドローンやGoProのようなカメラワークにはなりません。

 

私は以前、導入の可否を考えてみたことがありますが、どうも無理っぽいです。「タイムシートと撮影指示」という旧来のスタイルが続く以上、Z軸の扱いは困難です。

 

どのような機能追加を今までのタイムシートと撮影指示に追加すれば良いか‥‥という思考のスタンスは限界に達しており、「分業の考え方」をゼロから仕切り直す大掛かりな取り組みが必要になります。

 

また、4Kのテレビは、今までの2Kテレビの解像度では隠れて誤魔化していた素材個々のクオリティがかなりダイレクトに映し出されてしまうので、作画サイズ云々だけでなく、アニメ撮影・コンポジットでの素材の組み方が問われます。

 

 

 

「デジタル作画」だけが未来ではありません。1000nits時代のHDRやPQカーブにはどう対応しますか? 各家庭の4K HDRテレビでの見栄えに対してどのような表現のアイデアがありますか?

 

未来は今までと違う映像品質基準へと移り変わっていきますから、当事者がどのように未来を生き抜こうと思っているのか、まずソコが問われましょう。

 

 

 


After Effectsの手前と奥

After Effectsは古い設計だ‥‥とか言われますが、After Effectsを使っててしみじみ「使いやすなあ」と惚れ惚れすることも多いです。

 

例えば、絵の中の、手前と奥。

 

レイヤーの見かけ上の「奥と手前」を、タイムラインの上下関係でも、Z軸の値の大小でも、そして、それらを混在させることが可能なのは、アニメのコンポジットには有利で機転が効きます。

 

 

レイヤーの3Dスイッチが入っていない場合は、レイヤーの上下関係で、奥と手前が決まります。

 

レイヤーの3Dスイッチがオンの場合は、レイヤーの上下関係よりもZ軸の位置が優先されます。

 

レイヤーの3Dスイッチがオンの場合で、Z軸の値が同一の場合は、レイヤーの上下関係が奥と手前に反映されます。

 

3Dスイッチがオフのレイヤーは、Z軸に従わずに、他のレイヤーのZ軸を無視して、レイヤーの上下関係にて、奥と手前の位置関係を強制配置できます。

 

 

アニメは、脳内で立体を意識はしていますが、縛られてはいません。絵に「真実味」をもたせるために、暗黙の立体は常に意識しながら作業しますが、「ここぞ!」という時は、立体や現実を超越した映像表現が可能です。人が絵を描いて作るアニメの醍醐味と言えましょう。

 

そして、レイヤーの上下関係とZ軸を縦横無尽に混在させることが可能なAfter Effectsは、まさにアニメの表現主義にうってつけ。

 

完全にXYZ軸に支配されちゃうと、融通が利かないですよネ。

 

立体の理屈を証明するために映像作品を作るわけじゃないですから、たとえ破天荒でも、「時には立体を尊重し、時には立体を無視する」スタンスは、アニメの素晴らしいアドバンテージと考えています。

 

他のコンポジットソフトウェアにココロが動かないのは、After Effectsの、まあ‥‥成り行きとも言える現在の仕様が、アニメの「空想空間」に適しているからです。

 

いくらノードで連結できて見た目がスマートでも、やりたい表現を手加減してボルテージダウンさせるのは「嫌なこった」です。結局、ソフトウェアは道具ですから、使う人と道具との二人三脚なのです。

 

 

都合の良い時にはZ軸を活用し、都合が悪い時はレイヤーの並び順でツジツマを合わせる。

 

After Effectsのそんな「C調」なところも、気に入っているのです。

 

 


集団思考

現在はWikipediaなどのインターネットの辞書・百科事典のようなコンテンツが豊富で、内容の信頼性の問題はつきまといますが、概要を即座に検索できる、恵まれた時代です。まあ、印刷媒体であっても必ず信憑性の高い情報とも限らないですから、複数の情報を総合的にジャッジする習慣があれば、今は便利さが際立つ時代とも言えます。‥‥そのインフラ充実のために、間接的に相応の対価を支払っていますしネ。

 

「集団思考」というコトバも、調べればその意味を色々と知ることができます。

 

集団思考とは、Wikipediaによれば、

 

集団で合議を行う場合に不合理あるいは危険な意思決定が容認されること、あるいはそれにつながる意思決定パターン

 

‥‥とのことです。会社などの組織に限らず、業界全体にもあてはまる事柄です。

 

アニメ業界は、実はとても団結力が強いです。国民的某アニメ会社が解散することになった時も、世間一般に対して情報公開される少なくとも半年以上前から業界では噂になっていましたが、業界外の人には全く漏れませんでしたよネ。ツイッターとか気軽な手段があるにも関わらず漏れませんでしたし、業界の人々の「口が固い」ことに改めて驚きました。

 

思うに、集団思考的な観点では、アニメ業界は2020年代の転換期において、「集団思考の罠」にハマりやすい状態と言えます。

 

  1. 団結力のある集団が、
  2. 構造的な組織上の欠陥を抱え、
  3. 刺激の多い状況に置かれる

 

まさに2020年代のアニメ業界。

 

Wikipediaではさらに、以下の「集団思考の兆候」を挙げています。これもアニメ業界にピッタリはまります。

 

自分たちの集団に対する過大評価

>集団固有の倫理に対する信仰

 

閉ざされた意識

>集団による自己弁護、集団外部に対する偏見

 

均一性への圧力

>意見が集団内の合意から外れていないかを自ら検閲する行為、全会一致の幻想

 

  1. 目標を充分に精査しない
  2. 採用しようとしている選択肢の危険性を検討しない
  3. いったん否定された代替案は再検討しない
  4. 情報をよく探さない
  5. 手元にある情報の取捨選択に偏向がある
  6. 非常事態に対応する計画を策定できない

 

 

本来、様々な人間の、様々な思考が集まることによって、合理的な決断を見出せるはずが、集団思考の典型に陥って、結果的に大敗北・大崩壊を喫する‥‥なんてことは、70年前にもありましたよネ。「みんなで意見を出し合えば、きっと、みんなにとって良い方法が見つけ出せる」‥‥なんていう小学校の学級会ノリを、イイ歳した大人が討論番組のまとめで言っちゃうのが、日本の国民性の良いところでもあり悪いところでもあります。

 

 

 

知識の乏しい集団が、まるごと誤ったジャッジをして、丸まんま皆で誤った方向に進む‥‥なんてことだってありえましょう。

 

例えば、小学校のクラスで「この楽譜はおかしいです。フラット記号が2つもついています。シを2回半音下げるのなら、ラと書けば良いと思います。」と誰かが言い出して、担任の先生も音楽には詳しくないので、「たしかにおかしいね。シではなくラと最初から書こう。」なんて言い出して、ほぼ全会一致となった‥‥とします。

 

ピアノと学理を学んでいる、たった一人の子が「おかしくありません。音階における臨時記号としては正しい記譜法です。」と言っても、「実際に鳴っている音はラでしょ? だったら、最初からラと書くべきだ」と子供たちも担任も聞く耳をもたず、その場では「ダブルフラットは誤りだ」で決着しました。

 

後日、音楽の先生に聞いたところ、「ダブルフラットで正しいです。たしかに即物的に鳴っている音はラですが、作曲者の意図と音階上の理屈ではシのダブルフラットになります。」と言われて、一人を除く全員の子供たちはおろか、担任の先生まで間違っていたことが判明しました。

 

*例えばEフラットマイナースケールの上記の「シのダブルフラット」で言えば、実際に鳴っている音の問題ではなく、II7 > V7 > I という2段のドミナントモーションの過程での第4音(Vへの導音)と見るか、気だるく上がりきらない第5音と見るかで、作曲上の意図やスケール上の解釈が異なります。ラの音か?…ではなく、4のシャープか、5のフラットか…が重要なのですネ。

*初心の頃は、ダブルシャープもダブルフラットも、いわゆる異名同音・エンハーモニックの理屈がわからないものですが、和声進行やスケールを学ぶようになると自ずと理解できるようになります。

 

 

集団思考の危ういところはまだ先があって‥‥

 

「音楽の先生まで巻き込んで正当化を謀るとは、なんという恥知らずめ。皆だけでなく担任の先生にまで大恥をかかせやがって。」

 

‥‥と全くメチャクチャで合理もクソも見境いのない「感情論」へと推移し、皆と異なる意見を述べた子供一人が悪者に仕立て上げられます。

 

 

 

いやだね。うんざりするね。‥‥でも、ありがちだよねぇ〜〜〜。

 

分析や理屈よりも思い込みや感情を優先する、さらには、合理性よりも習慣性を優先する、外界と途絶し閉鎖された集団の「悪い部分」の見本みたいなもんです。

 

多数決や全会一致が有効なのは、あくまで、各個人独自の「色々な価値観や知識や経験」のバリエーションが集まった場合です。皆が似たような意識を持ち、経験も知識も共通した状態では、集団そのものに偏向が生じて、多数決は単に「総意の確認」にしかなりません。

 

何を選ぼうが他愛のない案件ならともかく、正否をジャッジする案件、または、未来の運命を決する案件において、「多数決」はあまりにも危ういです。多数決は万能ではなく「時と場所を選ぶ」のです。

 

 

 

まあ、だから、集団の全会一致はそもそも危うきと意識して、「採用しようとしている選択肢の危険性を検討」して、「いったん否定された代替案は再検討」して、「情報をよく探」して、大多数の意見が果たして合理的な選択足り得るかを自己批判する「戒め」が必要です。

 

そして、指導者も「全知全能を気取らないこと」が重要です。何でも知っているフリをしたら、引っ込みがつかなくなるでしょ。‥‥かっこ悪いのを取り繕おうとして、さらにかっこ悪い勘違いや見識不足を上塗りする必要はないです。年長者だからって、何でも知ってるフリをする必要はないです。

 

自分、そして自分たちは、「何を解っていないのか」をまず認識することが大切でしょうネ。

 

年長者の重要な役割は、「解ってないことを自覚できる謙虚さ」を若い人間に継承することでしょう。現場慣れすると、とかく何でも知ったような気分に陥りがちですが、それがとても浅はかで視野の狭い事だと意識できるようになれば、新しく押し寄せる状況にも柔軟に対応できましょう。

 

知ったかぶってると、未知の新しい物事を前に、素っ頓狂な醜態を演じ、さらには、自分らの未来を潰すきっかけともなります。

 

成功体験に酔いしれるままでは、未来は拓けません。従来のパターンでは通用しないことも多いです。

 

 

 

この世には「集団思考」というものがある‥‥と、自らを意識することができれば、集団思考の落とし穴へと呑気に落ちにいくようなことは、最低限防げる‥‥‥と、思いたいですが、一方で、あまりにも大きな集団は意識を浸透させる事自体が難しいのも事実ですよネ。

 

 

 

 


アレクサ。エコー。

現在時刻、タイマーやアラーム、天気、簡単な四則演算。ちょっとした情報を得るために、アマゾンのアレクサは、今や、生活にすっかり馴染んで、無いと不便に感じるほどになりました。

 

 

2の16乗は「6万5千‥‥なんだったっけか?」みたいな計算はアレクサに聞けばすぐに「答えは、65536です」と答えてくれます。16bitのRGBの色数を知りたい場合は、「65536の3乗は?」または「2の48乗は?」と聞けば、「281兆4749億7671万656です」と息継ぎ無しに答えてくれます。‥‥もう少しゆっくり答えさせたいんですけど。

 

最近、水槽の濾過器のスピンドルとインペラを交換したのですが、「結局、このパーツは、何回転したんだろう?」と回転数/秒x分x時間x日x年数をアレクサに聞きながら順を追って計算したら、15億回転。‥‥まあ、かなりゆるい試算なので、実際の回転数は定かではないですが、少なくとも億単位であることはわかり、日常生活に用いる製品の信頼性にしみじみ思いを馳せました。

 

職場にもEchoが設置してあり、さらに私は自分用にすぐ近くにEcho Dotを置いています。天気予報やタイマーは重宝しますし、打ち合わせなどのイベントをカレンダーに登録しておけば事前に読み上げてくれますし、リマインダーが「そろそろ終業です」と教えてくれます。

 

同じ部屋に複数のEchoを置く場合は、ウェイクワードをEchoごとに変えないと、同じクラスに同じ苗字の子がいる時みたいに同時に反応してしまいます。

 

Echoは、「Alexa(アレクサ)、Echo(エコー)、Amazon(アマゾン)、Computer( コンピュータ)」の4つがウェイクワードとして使えますが、「Amazon(アマゾン)、Computer( コンピュータ)」は一般的過ぎて使えません。

 

なので、実質「Alexa(アレクサ)、Echo(エコー)」の2択になります。

 

私の傍のEchoは「エコー」の呼びかけに反応するように設定していますが、これがまたそこそこ誤反応が多いのです。

 

おそらく、日本語の会話の中に「えこ」という一連の響きが存在するのでしょう。例えば、「OOへ、こんなXXで」と喋れば、「エコー」と呼びかけたことになるのでしょうかネ。

 

部屋での会話の途中で、いきなりEchoが喋り出して、時には延々と語り続けます。「こんな説明が見つかりました。OO O XX XX 、 、 、 、」と静止するまで御構い無しに喋り続けます。

 

 

 

アマゾンさん。

 

ウェイクワードをもう少し増やしてくれんかの。

 

部屋に1台あれば十分‥‥と思いがちですが、自分の仕事のペースに合わせて、30分や50分など小刻みにアラームを都度仕掛けたい場合は、部屋の共用のEchoだとダメなんすヨ。

 

なので、部屋に複数台あっても正常に動作するように、ウェイクワードの数を増やしてもらえると便利なんですがの。

 

 

 



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