老眼と1/700

「老眼」は嫌でも忍び寄ってきます。毎度毎度の修羅場に打ち勝って、ある種、若さを売りにしてきた人間にとって、また、目を使う職業の人間にとって、老眼はかなりショックなもの‥‥のようです。

私の老眼の進行度はかなり軽い方ですが、今までごく普通に見えていた作画用紙上の細かい部分が見え辛くなっているのを自覚した時は、「うわ〜‥‥来たか」と思ったものです。ただ、あまりショックではなく、自分の体の「中古」的な箇所として、また1つ、眼も加わった‥‥という認識でした。私は若い頃から中古のバイクのメンテなどをしてたので、経年変化でヘタるのは当たり前‥‥というサッパリした感慨なのです。

老眼はピント調節時に動作する「毛様体筋」の衰えが原因だとか。確かに、アニメーターは目のピントは作画机に置いた作画用紙との距離に固定され続けているし、コンピュータで作業する作業者もモニタとの距離に長時間固定されています。そこに経年変化の自然な性能劣化が重なれば、否が応でも老眼になるでしょうネ。

ネット上の情報では、「近くのものを見続けるのが原因」的なことも書かれていますが、必ずしも近くのものを見続けるのがNGではなないように思います。私の実感として、「同じ距離の近くのものを長時間」というのがNGなんじゃないかな‥‥と思うのです。

その点、紙の上に鉛筆で描く作画は最悪で、一定の距離を長時間維持し続けたまま、細かい部分は拡大することもままならず、より一層筋肉を緊張させ、しかも強烈な透過用のライトの光を見続ける‥‥という、「老眼促進」とすら言える状態です。コンピュータモニタを見続けている私ではありますが、紙の作画にたまに戻ると、あまりの辛さ〜特に「拡大できない」「光を直視する」の2点に厳しさを痛感します。

コンピュータモニタだって光を直視するじゃん?‥‥とか言われそうですが、輝度はかなり落としています。まさか、映像業界でモニタの輝度設定をMAX=100で仕事している人はいないでしょう。私(のEIZOモニタ)は30〜40の間です。さらに細かい部分が辛ければ、拡大すれば良いので、目の筋肉をさらに酷使することは防げます。

細かいものを近くで見続ける‥‥というのは、資料用のプラモデル製作も同じです。しかし、驚いたことに、プラモデル製作をしていると、見えにくくなっていた近距離のものが見えるようになってきます。ルーペに安易に頼らず、裸眼で作っていると、相当細かいもの(0.2〜0.3ミリ)まで裸眼でイケるようになります。

例えば下の写真、1/700の「アラバマ」「Oクラス」「初月」は裸眼だけで作りました。キットの状態が良かったので、0.1ミリクラスのバリ(=プラのはみ出し〜カッターやヤスリで整形する必要がある)が無く、作りやすかったのも理由だとは思いますが、小数点1ケタ刻みの細かいアンテナや単装機銃などを裸眼で取り扱って組み立てることが出来ました。


*久々に作った1/700。手始めにアラバマを作ってみました。‥‥作った後で、「このモールドは削った方が良かったのでは?」と思う箇所(例えば、艦首の連装機銃座のガイド)を発見したものの、「まあ、実物と見比べたら、いろいろなところが気になりだすだろうな」と15秒後くらいにはあっさり諦めるあたり。

日頃仕事でコンピュータモニタばかり見続けていると、1/700の細かいパーツなどは見え難くて辛いだけなのですが、まずは比較的大きなパーツから作業していると、不思議と細かい部分も見えるようになってきます。

プラモデル製作は、アニメの作画やコンピュータモニタと違って、ピントの遠近を頻繁に動かします。例えば、アンテナが前後左右に直角で立っているか‥‥とか、重箱のように積み重なっていく艦橋部分はちゃんと綺麗に積み上がっているか‥‥とか、全体のプロポーションの印象はバランス良くまとまっているか‥‥とかを、自分の腕の長さの範囲で遠近上下左右で何度も頻繁に確認します。特に私は、速乾タイプの接着剤を使うので、視点が1箇所に長時間留まり続ける余裕がありません。ゆえに、同じ近距離でも、目のピントの移動が頻繁なのです。

ですから、私は習慣的に、「プラモを作ると、自分の眼が復活する」ことを昔から知っています。

目のピント機能の回復には、遠近を交互に見て、筋肉を動かすのが良い‥‥的なことを聞きますが、考えてみれば、平面を対象に作業するか、立体を対象に作業するか‥‥の基本的な作業上のアクションの違いが、眼に作用しているのかも知れませんネ。

パーツを切り出す=近距離、ゲート処理(切断跡を消す)する=近距離、処理跡が目立たないか確認する=中距離、摺り合わせを確認する=近距離〜遠距離、接着する=近距離、接着後のプロポーションを確認する=遠距離‥‥のような感じで、頻繁に距離を移動します。まあ、遠距離と言っても腕の長さではありますが、全く変わらぬ距離を維持し続ける作画机やコンピュータモニタとは、状況が大きく異なります。

でも一方で、模型製作をしている人でも、メガネをかけている方は結構いらっしゃいます。‥‥なので、「プラモ製作で目が復活」というのは、あくまで私の「実感」だとは思いますが、勘違いでも思い込みでも無く、何度も確認したことなので、何かしらの「目のピント機能が復活する」理由があるのでしょう。

最初はネ‥‥、プラモ製作して細かいものが見えるようになったのを、何かの錯覚か思い違いかと気に留めず流していたんですが、老眼を自覚し始めた数年前から、プラモを作り始めると老眼がかなり回復することに気づいた次第です。

アラウンド40、アラウンド50、アラウンド60。老けていくことが強迫観念になりやすいお年頃ではありますが、だからこそ逆に、自覚的に、大雑把ではなく細かく、色々な物事に当たっていくべきだとは思います。

だって‥‥さ。老けたら老けただけの人生なんて、佗しいばかりじゃないですか。

最近1/700の艦船モデルを作り始めましたが、思い起こせば1/700を作るのはもしかしたら小学生以来で、細かいパーツ群を改めて見た時には作る前から挫折しそうな気分になりました。しかし、作ってみると案外サクッと作れちゃうもんです。細かいパーツが功を奏して、「作った感」も充実しています。
*サクッと作れるのはもちろん、ディテールアップや改造はなしの素組みだから‥‥ですが。

1/700のアラバマなんて、アマゾンで1200〜1500円ですヨ。でも、そのたかだか1200円のキットを前にして、容易く心が折れちゃうような老けかたはしたくないなぁ‥‥としみじみ思うのです。


 


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