安く揃えるにはコツがいる

アニメーションの映像制作を志す学生さんは、作品作りを何から何までひとり〜数人で作業し、Mac/PCで完結させることも多いでしょう。そうした場合、それこそ絵から音まで関与する必要に迫られ、都合、制作一式を体験できます。ただし、学内の機材に触れても、あくまで一時的に操作しただけで、自分のツールと呼べるほど馴染めないことも多いかと思います。

直にアニメ業界で働き始めた人は、一層、音楽制作に触れる機会がありません。

前回書いたように、「アナログ」の昔と違って、コンピュータが飛躍的に進化し安価になった現在は、Macを買えばその日から音符を打ち込んでオリジナル曲を作ることもできます。さらに幾つかの安価な機材を足すことで、簡単に音の世界に近づくこともできます。ただ、世の中には安くても良い機材もあれば、安いなりにダメな機材もあり、安く機材を揃えるにはソレナリのコツが必要です。

例えば、音響機器では、AppleのGarageBand、Logic Pro、AdobeのAuditionで、たいていのことはできてしまうので、よほどのマニアでもない限りは、コンプレッサーなど音響機器を買う必要はありません。かと言って、得体の知れないカラオケマイクを、これまた怪しいUSB IFにおもむろに接続して録音するのは、なんとも心もとないものです。

昔はいろいろとラックマウントの機材を揃えたものですが、音楽で商売するスタジオならともかく、個人でスタジオ機材をいくつも揃える必要はないです。個人なりの安価な機材でも、コンピュータ内部のソフトウェアの格段の進化によって、高いレベルの制作は可能です。

ただ、私がたまに引き受ける短尺の音楽制作などでも、ごく稀に効果音も楽曲扱いになることもあるので、一応は音声収録用のマイクも所有しておくと、いざという時に役立ちます。いずれにせよ、最低限の設備と安価なチョイスが肝要です。

色々と機材を買ってきた私ではありますが、2016年現在、「個人レベルではこれで十分」と実感している機材はこちら。

オーディオIFを兼ねたミキサー「Q502USB」



入力数が5チャンネルで、ひときわコンパクトな可愛いミキサーです。

価格は大体7千円前後。USBでMacと繋ぎ、マイクなどアナログ音声信号をMac上で収録したり、Macの音をヘッドフォンやアクティブスピーカー(電源付きのスピーカー)に繋いで、モニタすることもできます。こんな可愛いミキサーでも、Macのアナログ音声周りを集中管理できるのが良いです。マイクをつなぐ「1」チャンネル専用にコンプレッサーが付いているのも特徴的で、このミキサー自体がマイクのプリアンプ(マイクの音声信号レベルを増幅する)になってくれます。

マイクは、SM57とか定番がありますが、私はAUDIXのi5。8〜9000円前後で買えます。



SHUREの57と同じく、オールラウンドに使えて、少し値段が安いのも魅力です。i5をQ502USBにバランスケーブルで繋いでおいて、卓上マイクスタンドに挿しておけば、手元の音声ならすぐに「一時収録」可能です。雑音をシャットアウトしてデッドな音で録るのはそもそも普通の居室じゃ無理なんだし、このくらいの割り切りで良いと思います。

鍵盤なしでも音楽は作れますが、やっぱり用意しておいた方が何かと便利です。鍵盤演奏するのでもなければ、ミニ鍵盤のコイツで十分です。





KORGのmicroKey2-61。この鍵盤から音は出ず、MacのGarageBandやLogic Proの音源を鳴らすためのコントローラです。Macに内蔵された豊富な音源を、鍵盤で自由に鳴らして弾くことができます。

どうせミニ鍵盤で小さいのですから、49鍵(4オクターブ)か、この61鍵(5オクターブ)のものを買っておくのが良いです。また、レイテンシーの恐怖を未然に防ぐためにも、Bluetoothではなく素朴なUSBモデルにした方が良いかと思います。

このmicroKeyは、「2」型からUSBハブ機能が廃止され、代わりにサスティンペダルの端子が装備されました。ミニ鍵盤でどれだけサスティンペダルが活躍するかはおいといても、ペダルは試し弾きの際にも結構役に立ちますから、1000円ちょいの値段ですし、揃えておくと良いです。

KORGのPS-3



‥‥とまあ、その昔では考えられないほどコンパクトな追加装備ですが、Macには強力なソフトウェアと音源があらかじめインストールされ、しかも追加音源がアップデートによって無償で入手できますから、これで必要十分です。

さらに「MainStage」というソフトをApp Storeで追加購入(3600円)すれば、Logic Proと同じ、山のような音源数もMacに装備できます。ふとクールに、昔と比べれば、なんともスゴい時代になったものです。

そして欧米の音源を追加購入すれば(AEプラグインと同じで、そこそこお金はかかりますけどネ)、さらに本格的な音楽スタジオをMac内部に「設立」することができます。でも、見た目はこんな感じ。


*毎度、雑な説明図でスマンす。青い線で囲んだ機材がなくても音楽は作れますが、あると便利です。

前回書いたことの繰り返しになりますが、「デジタル」、〜パーソナルなコンピュータによる様々なソリューションは、「アナログ」より格段に身近な存在です。映像制作において、アナログの時代には諦めていたことを、コンピュータが可能します。

‥‥と言うようなことを書くと20年前のパソコンの宣伝文句みたいですが、何だか最近は、コンピュータがあまりにも身近になりすぎて、コンピュータの存在意義や利点を忘れはじめている気配を感じます。「アナログの時代は良かった」なんていうテキストのデジタルデータをネットワークでツイートする、その滑稽さと言ったら‥‥。1/4インチ磁気テープや35ミリフィルムの品質的・技術的制約を今一度よ〜く思い出せば、やっぱり「アナログ」は思い出として心にしまっておくのが良い‥‥と思うのです。

私は、今から30年前に、1/4インチオープンリールマルチトラックレコーダと8チャンネルミキサーを30万円のローンで買ったことがあります。AMPEXのテープは3000円前後で20分前後しか録音できず、機材的にも運用的にも制約だらけでした。その頃の経験も芸の肥やしではありますが、その時代に戻りたいとは全く思いません。

そして現在。GarageBandは、何十トラックまで増やせるんでしたかネ。DBX NRでテープノイズを減少させる必要もありません。LINE6のギターIFとソフトウェアをかませば、ギターアンプなしにヴィンテージサウンドもエミュレートできます。‥‥で、そのソリューションはおいくら? 30万円出す覚悟があるなら、コンピュータを足場にして色んなことができちゃうよネ。

まあだから、今の時代の優位性を活かさない手はないわけです。コンピュータで色々な事ができるのなら、色々な人々の、色々な才覚が発揮されれば良いのです。「アナログ時代」の因習を踏襲する必要はありません。

自分が「何用」かを早々に決めて、限定して生きるのは、まあ、単純に、もったいない話なのです。

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