宮川泰・賛

「ヤマト」の本放送が小学1年、「さらばヤマト」が小学5年の頃だった私は、「ヤマト世代の下のほう」と呼べる世代です。私はどちらかというと、999の方が好みだったのですが、ご多分に漏れずヤマトにも親しんでいました。ヤマトのメンコは今でも保管してありますし、小学生の頃に出版されたヤマト設定資料集も現存所有しています。

なので、ヤマトの音楽にも深い愛着があり、それはやがて作曲者の宮川泰氏の他の楽曲への愛着にも繋がっていきました。単に惰性で‥‥ではなく、もともと気になっていた楽曲が、実は宮川泰氏の楽曲だったという事が後年になって解り、より一層愛着を増したのです。例えば、カリキュラマシーンのちょっと悪ノリした軽快な音楽は、氏によるものです。もちろん、ゲバゲバ90分の音楽(今はビールのCMでおなじみ)も。

また、氏のもつ節回しや和声感覚が、私の琴線を大きく揺さぶった事も大きいです。私は小学校に進学する前の随分小さい頃から、家にあった「ヨーロッパ映画音楽集」(=父が購入)のレコードを愛聴しており、ミシェル・ルグランやフランシス・レイ(当時はもちろん、作曲家の名前まで気がまわりませんでしたが)などの半音階進行を伴ったアンニュイな響きにわけもわからず親しんでいました。また一方で、「ホームクラシック全集」(=母が購入)に収録されていたチャイコフスキーの東欧的な響きにも親しんでいました。R&Bやジャズのリズムの上で、滑らかで色気のある主旋律と内声がたゆたう、氏独特のスタイルが、少年時代の私を自然と虜にしていったのは、ごく自然な流れだったと思います。

氏は、とてもシンプルな構成のスコアを書く反面、響きを濁らす寸前のギリギリの内声を用いてスリリングでエロい(=賛辞として)テンションを醸し出す事も往々にしてあり、その多様性も魅力でした。

例えば、カリキュラマシーンのイントロでは、あっけらかんとしたペンタトニックスケールの下降フレーズを、3オクターブにわたるユニゾンだけで強烈に、半ば悪ノリ的に、印象付けます。さらばヤマトのメロディアスな楽曲(後述の「想人」など)において、テンションノートを駆使し、しっとりとした気怠さを表現したのと、まるで真逆のテンションです。

氏の多彩さはこれに留まらず、攻撃的な戦闘シーンの音楽や、朗らかでのどかな音楽など、カリキュラマシーンのサントラを聴くだけでも、氏の音楽の幅広さ、そして楽しさが伝わってきます。

最近息抜きに、昔から興味のあった、カリキュラマシーンのテーマ音楽と、さらばヤマト・サウンドトラックの「想人」を、実際にガレージバンドで耳コピしてみました。当時のスタジオミュージシャンの演奏に及ぶべくもないですが、どんなからくりで「宮川メロディ」が成り立っているのか、ガレージバンドで打ち込んで分析してみた次第です。


カリキュラマシーン

*「シャバダバ」なんて鳴る音源はないので、少年合唱は一般的なクワイア音源です。


さらば宇宙戦艦ヤマト「想人」

*主旋律は、川島和子さんの美声に似るわけもないので、ハナからあきらめ、シンセ音で演奏しております。‥‥つーか、弦セクションにしても、金管木管にしても、生演奏には遠く及びませんが‥‥。

YouTubeさん、著作権周りのアレコレ、ありがとうございます。(ユーザ本人の自演に限り、YouTubeが著作権周辺の面倒を見てくれます)
*詳しくは、JASRAC Webサイトの「動画投稿(共有)サイトでの音楽利用」をご覧ください。



両極端な音楽のように聞こえますが、カリキュラマシーンの中間部の和声進行は、メロディアスな展開を得意とする氏ならではですし、「想人」の「場面転換」時に奥で聴こえるマイナー6th7#9の響きは、クラシック音楽ではなくR&Bやジャズなどのスモーキーな感触を巧みに活用しています。

「想人」に見られるテンションノートの扱いや内声の半音階進行は、シンプルで素朴なものが好まれる昨今ではあまり耳にしないものなので、若い人には耳慣れない響きかも知れません。今どきのスッキリした循環コードによって構成された楽曲とは一線を画す響きです。実際、耳コピにおいても、音を拾うのは難しく、6,7,9,13と言ったテンションノートに耳をとがらせつつ、内声の動きの経過音も聴き逃さないようにします。

ぶっちゃけ、私も全部は拾いきれておらず、CD900ST(ヘッドフォン)で原曲を聴き直したら、まだ随分と拾えてない音が聴こえて、ちょっと落胆。でもまあ、とりあえず、アップしました。原曲はもう少し、エロい音(=響き的に)が入ってます。


耳コピする時は、AKGよりもソニーのCD900STの方が向いてるかな‥‥

「想人」のもつ女性的な美しさは、単にお人形的に整った可愛い美しさではなく、何か憂いを帯びた大人の美しさが魅力です。まさに、「ドミソ」だけで終わらない折り重なった和声やアレンジが、大人の女を表現しているわけです。‥‥そうか、今はそういう大人の美しさを表現するアニメがほとんど消え失せたから、こういうしっとりした音楽も必要とされないのかも知れませんネ。

また、さすがに現場の経験が豊富な氏だけあって、ミュージシャンの演奏性を活用したアレンジも豊富です。その辺はもう、サンプリング音源やシンセ音源による打ち込みでは太刀打ちできませんネ。

ちなみに、ガレージバンドは、Main Stageという3000円の追加ソフトを買い足せば、今回のような豊富な音源が使用可能になります。素の状態のガレージバンドでは、ヴィブラフォンもハープも無いですし、木管も金管も、何もかもが足りません。ハープがなければ、「想人」の1小節目から苦慮します。(一見、ピアノだけに聴こえますが、ピアノとハープのユニゾンです)

Main Stageで音源数を増やした後は、現在のiMacの処理能力をもってすれば、50パート以上の編成もごく普通に処理します。

カリキュラマシーンの主題曲は、ドラム、ベース、パーカッション(カウベルのみ)、ピッコロ、トランペットが2人くらい、トロンボーンも2人くらい、サックスが1人、シロフォン(木琴)、ピアノ、アナログのモノフォニックシンセ、そして少年合唱といった構成だと推測されます。打ち込みでは吹奏楽器の単体では中々勝負できないので、さらにクラリネット、チューバ、その他の金管を増強しています。弦楽(バイオリンやチェロなど)は無しのようです。

この頃(カリキュラマシーン)の楽器編成では、「弦楽無し」のケースは結構あって、例えば三沢郷氏作曲のデビルマンのサントラは弦楽無しですネ(主題歌は弦楽ありです)。

さらばヤマトはさすがに「お金」が豊富だったのか、弦五部と金管、木管、パーカッションなどのいわゆる「オーケストラ編成」にバンド編成を加えた規模になっていますネ。「想人」ではトレモロをたっぷり効かしたヴィブラフォンも必須です。

ちなみに‥‥、需要があるかはどうかは解りませんが、トラックをオフにすれば簡単にカラオケが出来るので、上記2曲のカラオケも出力しました。ヤマト世代の方は、ぜひどうぞ。

カリキュラマシーンのカラオケ(需要があるとは、思えませんが)



さらば宇宙戦艦ヤマト「想人」のカラオケ(これは女性ならば、歌って心地良いかも?)



こういう「打ち込みによるコンピュータミュージック」を作っておいてナニですが、生楽器演奏の「再現」「模倣」というのは、音楽そのもので考えれば、不毛な行為だなとは思います。生楽器の演奏性を期待して作曲された音楽は生楽器で演奏するのが一番ですし、そもそも曲を聴きたければ、オリジナル楽曲をCDなどで鑑賞すれば良いのです。シンセの音はシンセの「一番得意な音」を使えば良いので、代用品的扱いはあまりにも「不利」です。

ただ、「ファン心理」として、また「プラモ的ホビー」として、たとえ「ミニチュアスケール」でも手元で「鳴らしてみたい」というのがあります。ここで公開したガレージバンドによる「模倣」の演奏は、演奏の意義云々というよりは、ホビー的な楽しみのほうが強いです。実際、こうした「耳コピ」の演奏プログラミングは、スケールモデルのプラモの作り込みに似てて、どこまでディテールアップするか、買い足すパーツ(音源とか)や制作時間が底無しで、まさにホビー的な魅力があります。手の届かないものを、ミニチュアであっても、自分で作って手元におきたい‥‥という。

一方、プロ現場の作品制作においては、生楽器は生楽器の良さ、シンセはシンセの良さを活かした楽曲が良いなと感じています。代用品的発想は、決して本物を上回る事はなく、ショボいベクトルにしか傾きませんもんネ。(コストの問題で仕方なく‥‥という事はあるとは思いますが‥‥)


話を戻して、宮川泰さん。

小学生の頃に聴き始めた、氏の音楽は、おそらく私が爺になっても、聴き続けているように思います。長い付き合いは、まだまだ続きそうです。


*注)色々と問題の多い、著作権絡みですが、「自演のカバー曲」は、「著作権利用包括契約」を締結した動画共有サイトでのみ、公開する事が可能です。自演であっても、動画共有サイトを通さずに、演奏曲のデジタルデータを無許可で直接リンクする事はできません。もし、自分のWebサイトに直接データを貼りたいのなら、権利者(の代行)に公開規模に応じた金額を支払う必要が生じます。動画共有サイトにおいて、投稿ユーザが無償で済んでいるのは、金銭を含む権利関係もろもろをサイト主宰者が面倒見てくれているので、他人様の曲でも「自演ならば」公開できるのです。もし、無償で自由に公開したいのなら、自分で作曲した音楽を自分で演奏して、すべてオリジナル状態で作り切るしかありません。


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