100円のプラモ

脳裏に鮮烈に焼きついた記憶‥‥とは言いますが、実際のところ、焼きついたから記憶に残っているというよりは、何度も思い返しては再確認する、いわゆる「LoadしてSaveし直し」と同等のプロセスを脳内でおこなっているからこそ、他の記憶に比べて残り続けるのかもしれません。保存しっぱなしで放ったままの記憶は、よほどの事がない限り思い出しませんが、衝撃的な体験の記憶は何度もLoadとSaveを繰り返すので、しぶとく残り続ける‥‥のかなと思います。

私は特に誰に勧められるわけでなく、時代の雰囲気で小学生の1年生の頃に、初めて100円のプラモデルを買いましたが、40年を経た現在でもその当時の情景を思い出す事ができます。雨が降っていた空の色や、文房具屋さんの室温(昔は文房具屋さんでプラモデルを販売していたのです)、プラモの箱の並ぶ情景、そして初めてプラモを買うドキドキ感など、様々な要素が思い浮かびます。

しかしそれは、何年かごとに定期的に思い出して、また記憶にしまいこむからこそ、断片的ではあれ、普通だったら忘れてしまいがちなディテールを思い出せるのでしょうネ。

私が生まれて初めて、自分のお小遣いで買ったのは、レベルの「Me262A-1a」という100円のプラモデルでした。私がレシプロ機よりも、どちらかというとジェット機に肩入れするのは、もしかしたらこの時の体験が元になっているのかも知れません。「風立ちぬ」では九六艦戦試作機の逆ガル翼のシルエットが印象的でしたが、私はまさに60〜70年代の子なので、レシプロ機と同等かそれ以上にジェット機にも郷愁を感じるのです。センチュリーシリーズ(米軍の戦闘機=FighterのFの100番台)などは子供の頃の懐かしい思い出そのものです。
*正確には年代がズレている(センチュリーシリーズは50〜60年代)のですが、70年代にはF-100Dスーパーセイバーなどの50年代機のプラモがいっぱい売ってたのです。

そして何よりも、今、アニメや実写などの作品作りを生業としているきっかけが、このMe262のプラモだったのかも知れない‥‥と考えると、子供の頃の体験というのは、とても重いものなんだな‥‥と感じます。

文房具屋さんのガラス越しの、外から良く見える場所にプラモは並んでおり、その当時、プラモがどれだけ子供たちに人気だったかが伺い知れます。私の手の中には100円玉1枚しかありませんでしたが(もしかしたら50円玉2枚だったかな…)、100円はその当時のプラモの「売れ筋価格帯」でしたので、色々な種類が選べました。その中から、私があえてMe262Aをチョイスした理由は、実は自分ながら、よくわかりません。

おそらく、「ジャケ買い」だったのでしょう。小学1年生の私が軍用機のアレコレを知るわけもないですから。

‥‥というような感じで、レベル社の「1/72ファイターシリーズ」のMe262は、私の頭の中で何度もロードされてはセーブされる記憶の1つなのですが、苦節ン10年、ようやく、中古流通による当時の実品を入手する事ができました。以下です。



どう見ても、かっこいい箱絵。実際、Me262が一番スマートに見えるアングルでもあります。Me262は真上から見ると、ペタッと平べったくて印象が大きく異なるのです。





デカールは黄ばみやカビが生えて使いものになりませんが、そんなのはこのクラスの中古プラモではあたりまえの事なので、気にしません。水に浸すと、ひび割れて粉々になるでしょう。チューブ入りの接着剤も既に固形化して使用不可です。そもそも、現在作るのなら、こんなハミガキみたいなチューブから練りだして作りませんし。




私が小学1年生当時に買ったのは成型色がダークグリーンのキットなので、少々内容は異なるのですが、価格表記も100円で当時のままですし、子供向けに安全であることを謳った「ST」マークもないので(STマークが貼られはじめたのはもう少し後の年代だと記憶しています〜私の記憶ではプラモで見かけ始めたのは、初代ガンプラの頃だったかな‥‥)、これはまさに1973〜76年くらいの「デッドストック」品です。

このレベル社のMe262を、よくチェックする中古プラモ通販サイトの新入荷ラインアップで見た時は、「やっと出たか」と喜び勇みました。値段はプレミアがついて1000円しましたが、5000円や1万円するわけではないですし、もっと高い中古品も見たことがあるので、むしろ安い部類と思って即決済しました。

40年経った現在、製品を手に取ってみると、まず何よりも、私が「ジャケ買い」したであろう理由が判ります。雰囲気たっぷりの夜景は、Me262という大戦機の中にあって異質な存在感を、より強調しています。ルフトヴァッフェの終焉を予感させる終末的な色彩(濡れた路面もその雰囲気に一役買っています)は、理由はわからなくとも、子供心を惹きつけた‥‥のでしょうネ。遠くの空には、3本のコントレールが描かれており、夜間空襲に対抗する多勢に無勢の迎撃戦のストーリーも感じさせます。‥‥実際に、A-1a型が夜間迎撃能力を有していたか‥‥といった考証は置いといても。




現在、4K60pベースで、PV映像を色々と準備していますが、その中にはミリタリーアクションも含まれます。‥‥考えてみれば、このMe262のプラモが近くの文房具屋さんに置いていなかったら、私の人生はその時に少しズレて、現在4K60pでメカメカしいミリタリーなカットを作ろうなんてしていないのかも知れませんね。

あの時、100円のMe262のプラモを買わずに、他の事に100円を使っていたら、情景を含めたメカ描写に執着するには至ってないかも知れません。私が線画で満足できずに、撮影やビジュアルエフェクト、グレーディングにまで手を伸ばした原点が、このレベル社の100円のプラモだった‥‥とも言えます。

であるならば、店頭からMe262が売り切れていたり、100円を駄菓子に使っていたならば、違うタイプの人生を歩んでいたのかも‥‥と思うと、100円のプラモの存在は小さいようでデカいですネ。

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