アニメで想像するのをやめる

新しいアニメーション技法やシステムを準備しつつ、現アニメ制作にも関わっていると、新しい表現を盛り込んだ作品を作り上げるためには、「アニメで想像するのをやめる」ところまで意識をリビルドしないとダメなんだな‥‥としみじみ実感します。

アニメを作るのに、アニメを想像しない‥‥なんて滑稽に思えるかも知れませんが、今までのアニメのカット割りや尺の感覚を引きずったままでは、新しい技法の真の威力は発揮できないと感じます。アニメの絵の内容が変われば、「今までのアニメの感じ」をことさらに継承する必要はないのです。

アニメはその「略画」スタイルゆえに、尺を短く切って、カット割りの軽妙なテンポで見せる手法で発達した経緯があります。しかし、絵をイラストのように作り込んだ上で動かせる新技法においては、旧来のアニメ技法のテンポでは「尺が短すぎ」て、折角の絵の綺麗さや重厚さが活きません。

例えば、火の玉のように爆発するカットは、旧来の感覚でいえば、爆発の描写は3秒くらいで止めてカメラを切り替えます。その理由は、2色ケムリ+透過光マスクの長回しは絵的にも作業量的にもリスクが大きいからですが、新技法では10〜20秒の大爆発の描写も無理なく可能で、長回しになればなるほど有利になってきます。キャラも同じで、間をたっぷりともたせて、微妙な表情変化を長回しで追うような描写は、新技法では有利になります。


*ハセガワのWebより、ジャギュアの箱絵。
トゥーン処理でなければ実写方向しか道はないのか?‥‥と思いがちですが、ボックスアートのような「リアル表現の絵」という方向性だってあります。絵とは不思議なもので、描く人間の感情が反映されると、端々はリアル描写でも「写真」ではなく「絵」になるのです。



新技法においては、絵の表面だけでなく、動きも、尺も、アングル・レイアウトも、あらゆる映像感覚の刷新が求められるのです。‥‥すくなくとも私の開発するところの新技法においては‥‥です。

実は、現アニメ制作においても、ちょいちょい、新技法の流用はおこなっているのですが、旧来のアニメ技法の中にあっては、あまり効果的とは言えない使い方だな‥‥と思っております。現在のアニメに組み込んでも効果は薄いのです。ちょうど、大戦末期に少数のMe262(ジェット機)が戦列に加わっても、戦況を逆転するには至らなかったように。

新技法で勝ちを取りにいくのなら、戦い方、すなわち、「戦争のやりかた」そのものを変える必要があるのでしょう。それは「今までのアニメ」を頭の片っ端から排除する事なのかも知れません。

ですから、子供時代から慣れ親しんだアニメを作りたい‥‥という考え方とは、真逆の位置に立つ事になります。

盲目的に「アニメ」をとらえない事。‥‥慣れ親しんでいるからこそ、難しい事ですが、旧来の技術体系の「箱入り息子・娘」のままでは、決して新しい世界には踏み出せないと実感します。誰しもが新しい世界を目指す必要はないですが、「なんか新しい事ないかなあ」みたいな事を言うのであれば、自分の足で「旧世界」から踏み出す必要があります。

ただ、「アニメを想像しない」事が、「実写を想像する」事に短絡してしまうのだとしたら、笑い話以外のなにものでもありません。「2+12」とか「6+0」といった「アニメっぽい」尺を習慣で想像するのではなく、一方で「実写はこうだから」というダイイン・思考停止に陥る事も避けて、「まっさらな状態で」尺をとらえれば良いのです。要は、「新技法に基づく、新しい時間感覚と絵の見え方」を想像するという事です。

定番のスタイルや完成された様式に頼るのは確かに安心できますし大ハズシする事もないでしょうが、その結果、「大体誰でも想像できる内容」にこじんまりと収まってしまうのです。その限定されたフィールドの中で、どれだけ技術を高められるか‥‥を皆が競ってきたわけですが、そもそも、フィールドを限定し続けてきた囲いを取り去って「想像力・技術力を外に解放」してみたらどうだろうか‥‥と思うわけです。

私は数年前、ようやく「原画脳」から解放され、原画視点とは別の見方でアニメ映像を捉える事ができるようになりました。過去のブログで「作画至上主義」と何度か書いた事がありますが、私自身がつい5〜6年前まで結局は作画至上主義者だったと言えます。そして今度は、「アニメ脳」からどうやって解放されるか‥‥のまさに只中にあります。「アニメ絵」は絵全体の視野からすれば、ほんの1スタイルに過ぎませんが、商業アニメ制作の経緯ゆえに「アニメ絵に拘り続けて」きたのがアニメ業界です。これから先の未来、商業制作とは言え、アニメ絵とは違うスタイルの絵が動かせる素地がありますから、それをどのように制作技法や演出技法として確立するかが、これからの「お楽しみ」なのでしょう。

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