パーティクルを作画する

「何をとぼけた事言ってるんだ」と嘲笑されそうですが、私にとってパーティクルは「作画カテゴリの技術」です。

タイムシートに「パーティクル」と書いておけば、撮影さんが何でも引き受けてくれる‥‥と信じている事のほうが、的外れのとぼけた認識だと思っています。昔は作画でやっていたような事を「誰か」に任すのであれば、それは「作画スタッフ同等の技量と責任」を内包するからです。

「でもさ、何かプラグインとプリセットを使って、誰でも簡単に出来るんじゃないの?」と考えている人もいるでしょう。確かにそういう仕事をする人もいるでしょうし、まさに「プラグイン開発元がアニメーター」だと思うような使い方もたまに見かけます。現場に表現者不在‥‥という状態です。しかし、多くの場合、パーティクルの制御は「誰でも簡単に」できるようなものではありません。

「絵として成立している状態」をパーティクルで作るには、それ相応の知識が必要となり、さらに「自分の思うがままの絵を作る」のであれば、絵(と動き)の才能がどうしても必要になります。

After Effectsをモーション(アニメーション)に用いる時、アニメーター同等の技量を持った人間が必要となります。「アニメーター至上主義」を唱えたいわけではなく、たとえアニメーターの役職を通過してこなくても、「絵を動かすのであれば、絵を動かす技量は必須だ」‥‥という当たり前の事を述べたいわけです。

絵は、絵を描くだけでなく、絵の仕事を引き受けた責任も負うのです。パーティクルの撮影上がりを見て、「もっと、絵と動きをかっこよく」みたいなリテークを撮影さんに出すのだとしたら、どんな責務を撮影さんに課した事になるのか、よくよく考えたほうが良い‥‥ですよネ。

私がここで書く事柄は、鉛筆もコンピュータも自分の手のように扱える、未来のアニメーターに向けた内容です。要は、鉛筆線もベクター線もパーティクルも、自分の手のうちで同列に扱う能力を持てば良い‥‥だけの話です。コンピュータの中に入った途端に、自分の管轄外だと敬遠する意識とキッパリとお別れすれば良いのです。

「パーティクルを作画する」とは具体的にどういうことか、炎のサンプルで説明してみます。(ちょうど別で使った教材があるので)

炎の描き方には様々な方法がありますが、今回のサンプルは「変形した三角形の集合体」でマッス・フォルムを捉える方法です。

このアプローチでは、炎の最小単位を三角で捉え、その三角が集合して炎全体の姿を形成します。アプローチはこれだけではないですが、今回は三角形で捉える事にします。ひし形や四角形も、三角形が2つ組み合わさったものだと考えれば良いですし、円状のアウトラインは三角の一辺が丸く湾曲したものだと考えれば良いです。

今回のアプローチを一文でまとめますと、「湾曲した三角形の集合体が、気流に煽られて、ちぎれて変形しながら、上昇し消滅する」‥‥となります。



海中のワカメみたいなビラビラを漠然と描くのではなくて、何かしらのメカニズムの基にして、炎を描くわけです。



三角の集合体も、輪郭線をなぞれば、炎のように見えてきます。



色がつけば、さらに炎っぽい感じに。



‥‥ということは、幾つもの三角形をパーティクルで生成して、自分の思うように変形させながら飛ばせば、「作画の時に想い描いていた炎のプロセスと似る」のでは?‥‥と思いつくわけです。After Effectsには「パーティクルシステムズ」というシンプルなパーティクル生成のエフェクトがありますので、それで実践してみます。



こんなの炎じゃない‥‥と思うかも知れませんが、絵を描いて動かしている人の中には、「極端に言えば、そういう事だ」と理解できる人もいるんじゃないでしょうか。実際に、湾曲させて色をつけると‥‥



随分と炎っぽくなり、さらに手を加えると‥‥



‥‥ほぼ完成形が見えてきましたネ。フォルムの推敲にもうひと踏ん張り必要ですが、プロセスとしてはこんな感じです。

パーティクルを作画として扱う場合、手で描くのではなく、頭で描くのです。鉛筆で描くのではなく、プロセスで描く‥‥とでも言いましょうか。

さらに作り込んで、実際に動かしたものをGIFFで書き出した動画は以下です。10秒のムービーが、3種類あります。
*60fpsでも動かせるんですが、GIFFには荷が重そうだったので、とりあえず24fpsで書き出しています。


アニメのT光風〜やや大ぶりなフォルムにまとめたもの


もう少し細かいディテールにしたもの


背景美術を動かしたようなテイストに仕上げる事も可能〜元が三角形の単純なネタでも


このように、如何様にでも炎を表現する事が可能です。三角形でアプローチする方法だけでなく、ひも状に描いたり、透明感のある描写にしたりと、まだまだ色々な表現や方法があります。元は単純なパーティクルの粒でも、作画的思考を当てはめれば、その自由度は計り知れません。実写作品ではないので、作品のイメージに合う「絵の世界」を展開していけば良いので、「リアルに見えれば正解」というわけでもありません。パーティクルの扱いが、まさに「作画管轄の技術」だと言う理由です。

私は上の3種類の炎の作画を、手描きでも描けますし、パーティクルでも作れます。手描きのほうが圧倒的に時間を要しますがネ‥‥。要は、作品制作に最適なツールと技法のチョイスをすれば良いだけです。もう20年前の「ジョジョ」で似たような思考で炎を描いてましたしね‥‥。

でもまあ、今のアニメ業界の「面倒なものは作画以外のCGに‥‥」という風潮はどうにもならんとは思います。この風潮が行き着くところまで行って、色んな作画要素をコンピュータを扱うスタッフに投げて放棄して、アニメーターの能力がどこまで減退するのか、見届けてみれば良いと思います。

あくまで私の考え‥‥ですが、アニメーターがペンタブレットを含めたコンピュータ環境で作業をする意義は、「紙からデジタルへ」なんて瑣末なポイントではなく、「『デジタル』の機能をアニメーターが使いこなす」点にあります。他人事のコンピュータから、自分事のコンピュータへと、意識を変える事です。

「デジタル」を「紙と鉛筆の対極として」とらえている限りは、先には進めないのです。アニメーター像を旧態依然としている限りは。

アナログだデジタルだとゴタゴタ言わずに、手描きもベクターもパーティクルもタービュレントも三角メッシュも、全て同列に作品作りのジェネレータとなる状態。コンピュータが当たり前のように存在する未来において、「アニメを作る」とはそういう事だと私は考えています。


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