日々の駄文

ふと気がついてみれば、いつのまにか、ハードなスケジュールになっております。先週、短期で仕上げるのが1つ追加されたのですが、それは通常のアニメではないので、現場の進行は自立的に制御しなければなりません。加えて、自宅では水槽の濾過器がクラッシュし水浸しになって抜本的な対応を迫られるわ、兄は入院(大動脈解離というキツい病気です)するわ、冷静に評価してみると結構大変な状況に。

でもまあ、自分のシフト・アクションで如何様にでも状況をコントロールできますし、計画発案時点からアイデアをひねりだして状況を変えられるのは、それがどんなに大変であっても光明が見えるので、ネバって戦おうというキモチになるのです。

何を提案しても、どんなにアイデアを考えても、ほとんど状況が動かないのは、私のような類いの人間からすれば、絶望しか感じません。同じ「キツい」事でも、自分次第で状況や事態を変えられる事のほうが、数百倍「救いがある」と思うのです。

マンパワーが低い事は、全てにおいて不利であるとは限りません。キャパシティを肌身で感じながら、そのキャパで実現可能なある種「突飛な」アイデアを考え出す。‥‥しかしそれが、生産規模が拡大し分業化が極度に進んだ状態では実現できない事‥‥であるのは、アニメ業界で散々学んだ事です。

そう言った観点では、欧米ってやっぱり巧妙ですよネ。大規模になっても、企画のフットワークを失わないように、アイデア力・デザイン力と、生産力をきっちり分けてプロデュースしているもんね。多くの日本人は「中国製品は云々」とマイナスイメージを持っていますが、質実剛健なドイツ製品も美麗なApple製品も中国製なんですよネ。「デザイン by ドイツ」「デザイン by Apple」でも、工場はアジアにある‥‥という。

今、私はアニメ業界フローの本筋とは離れて、様々な仕事をしていますが、それは未来に通ずるとても良い「お勉強」になっていると実感しています。アニメ業界のフローに組み込まれていた昔は、単に「自分の仕事をどうこなすか」が支配的となり、フロー全体の取り回しや設計には手を出せない状況でした。それは行動力・発言力云々以前に、「原画しか知らない」「撮影しか知らない」人間は、全体を設計する事など「物理的に」できないから‥‥です。現ワークフローのマイナーチェンジや微調整はできても、新しいプロダクトとフローを生み出す事は「セクションの中に引きこもっている」がゆえにできないわけです。

しかし標準の制作フローから離れて、小規模でも映像制作全体に直に関わってみると、「あのセクショナリズムは何だったのか?」と不思議にすら思えてきます。学校を卒業すると学校そのものがある種の異様な空間だったように思えるのと同様に、業界が一丸となって踏襲するアニメ制作フローは、一度離れて客観的に見ると、「特定スタイルのアニメ映像を作る為に特化した業界のシステム」である事が冷めて目に映ります。似たストーリー、似たデザイン、似た動き、似た映像処理‥‥、運命共同体のように互いを縛りつけ合って生きていく様は、映像作品・映像商品をつくる本来の目的とは別のベクトルに動いているようにも見えるのです。

ですので、たとえ当該のミッションが「無茶振り」であっても、お膳立てなど丸で無い乱暴なスタートでも、映像全体をゼロから作り出す事を何度も経験すれば、どんなにキツくて目が回ろうが、アニメ業界フローでは決して得られない、映像制作の濃い経験として蓄積されていきます。局所のディテールではなく、制作構造全体に対するデッサン力が自ずと養われていくのです。「大変だった」仕事が大変な「だけ」で終わらず、栄養素として確実に血肉となっていくわけですネ。

ゼロからフィニッシュまで一貫して制作する作業経験は、アニメ業界に30年在籍しようが、既存のフローの既存セクションに収まっていたままでは、蓄積できない経験だ‥‥と己を振り返って見ても、強く実感します。単一セクションに在籍し続けて得られるのは、単一作業に対する耐久力や忍耐力がほとんどなんですよネ。むしろ、セクションに囲われる事によって、プロダクトに対するアイデア力やデザイン力は、急速に衰えていくように思います。(セクション限定・小エリアのアイデアやデザインは蓄積されていくんですけどね‥‥)

「しんどい時」って2タイプあるように思います。「変えられない構造の中で消耗して疲弊する」しんどさと、「手探りゆえに判断力と計画力と行動力を求められる」しんどさ。

自宅の水槽の水漏れ事件も、「今までの水槽の状態を維持せよ」というミッションならば、単に水漏れの後始末と復旧作業に追われるだけです。しかし、「お魚や貝、水草と今後も一緒に暮らしていきたい」というミッションならば、「なぜ水漏れがおきたのか」「水漏れが経年劣化により回避できないのなら、その対応策をどうするのか」「そもそも水槽設置プランを見直すべきでは?」という色々なアイデアやデザインが浮かんできます。

これをアニメ制作に置き換えて考えると、現アニメ業界は前者、私がやろうとしているのは後者‥‥という事になります。どちらが悪で善か‥‥みたいなチャイルディッシュで馬鹿げた話をするつもりはなく、どちらの道を選択するかという単純な話です。

今の自分にある見識や知識が、20代の頃の自分に持てていれば、少なくとも自分周辺の未来をもっと変えられたのに‥‥とは思いますが、そこはそれ、上手くいかないもんです。‥‥なので、年長と成った私の知識や経験の「フィードバック先」は、自分自身はもとより、志を同じくする若い世代へも意識的に作用していくべきなのでしょうね。

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