シャーマン

私はたまに模型雑誌を買って読むのですが、アーマーモデリングの6月号は「アメリカ戦車特集」だったので、アマゾンで即買いしました。模型ではドイツ戦車が昔から人気ですが、各国の戦車も負けず劣らずの持ち味があります。

兵器は何よりもまず、「戦って、負けちゃダメ」なわけですが、そうした闘争本能に関する各国の「お国柄」や「死生観」がデザイン上に「良くも悪くも」反映されます。子供の頃は、強くてかっこいい「キングタイガー」や「P-51ムスタング」「ゼロ戦」「F-15イーグル」ばかりに目がいきがちですが、マイナーな機種から醸し出される「様々な機微」が、大人になってからはある種の「味わい」として感じられるようになるのです。

アマゾンから届いた本を眺め、「アメリカ戦車は垢抜けなくて泥臭いのが魅力だなぁ」と満足しつつ、読み終えて本を閉じたら、タミヤのニューリリースの「ファイアフライ」と「イージーエイト」が表四(裏表紙って言うのかな?)にドンと掲載されていました。「2014年の今、誰向け?」「萌えアニメに出てくるのか?」と思いましたが、まずは素直に製品リリースを喜ぶ事にします。

よく調べてみると、純タミヤ製ではなくASUKAモデル製らしいですが、組み立ての楽なベルト式の履帯(=「キャタピラ」)みたいなので、発売されたら「買い」確定です。現在の私はプラモデルを作るのは趣味ではなく、資料目的なので、完成までに要する時間は短ければ短いほど良いのです。
まめ知識:「キャタピラ」は企業名・商標で、同社の履帯式トラクタが有名なので、世間でいつの間にか「履帯=キャタピラ」となったみたいです。同じような例で「ステープラー=>ホッチキス」「接着剤=>セメダイン」(これはちょっと世代を感じる?)「卓上の旨み調味料=>味の素」などがありますネ。

実は、ファイアフライもイージーエイトも、資料用に手元に置きたくて、ごく最近、サイバーホビー社製のキット(私にとっては憂鬱な、組み立て式履帯)を買ったり、ベテラン過ぎるタミヤのキット(70年代だと思われ)を倉庫からひっぱり出してきたのです。そんな中、タミヤから2つとも新製品としてリリースされるとはまさに奇遇も奇遇。いや‥‥ホントに、渡りに船。

「ファイアフライ」と「イージーエイト」はM4中戦車「シャーマン」から発達した戦車で、まるっこく背の高いボディに強力な主砲を搭載しているのが特徴です。WW2でのアメリカ陸軍首脳部の認識は、あくまで「戦車は歩兵の支援兵器」だったらしく、ドイツやソビエトに戦車開発で何歩も遅れをとっていたようです。そんな状況がまさにM4シャーマン戦車にデザインとして表れているわけですが、首脳部の認識がどうであれ「戦場の時計が止まる事はない」ので、M4シャーマンはヨーロッパ戦線においては「やられ役」のような窮状に瀕してしたわけです。まあ、戦車は必ず戦車同士で正面切って戦う事ばかりではないので、M4シャーマンがエブリタイム弱かったわけではないみたいですけど。

そんなこんな、ボディはともかく、主砲だけでも何とか強いものに変えたい‥‥と、普通過ぎる成り行きの思考のもと、作り出されたのが「ファイアフライ」であり、「イージーエイト」(型番のE8の愛称)です。下図のかわりようはどうだ。

この子が、



こんなになった。




イギリスがアメリカ製のM4シャーマンをイジくって、自国の強力な17ポンド砲を載せたのが、ファイアフライです。有無を言わさぬ長砲身が、森のくまさんのようなシャーマンのボディに、何ともいい感じで不似合い。



ちなみに、砲身の「白い波の模様」は、「遠くから砲身を短く見せる」ためのカモフラージュ〜迷彩です。こうしておけば、ドイツ軍に「普通のM4戦車だ」と勘違いさせる事もあった‥‥のでしょうネ。「シャーマンの砲じゃ、大した事ない」と油断してノコノコとファイアフライに近づこうものなら、17ポンド砲の手厳しい一撃が待っていた事でしょう。また、ドイツ側からみれば、刺されたら死ぬかもしれない毒バチのようなものですから、見つけ次第「始末」したいのは当然の事、‥‥「クマバチ」と「スズメバチ」を見誤ったら大変な事になりますもンネ。逆に、イギリス側はその「見つけ次第を回避」するために、迷彩を施していたのでしょう。

* * *

兵器が登場する「戦記物」ストーリーは、かなりの難易度があります。「時代考証が大変だから?」とか聞かれそうですが、それ以上に、「兵器を取り巻く状況や要素がドラマトゥルギーにもろに影響する」からです。逆の言い方をすれば、「戦記物でドラマを描くには、兵器をよく知っていなければならない」のです。

ストーリー上の都合良いタイミングで「新兵器」「高性能兵器」が登場すれば、人々の葛藤なんて生まれないですもん。辛いフリや勝ったフリを繰り返す、あまりにもウソっぽい演技を重ねるだけです。困った時にドラエモンのポケットからアイテムが出れば、兵器開発や戦場のドラマなんて生まれるわけもないし、銃後のストーリーも存在しません。

ファイアフライを見て、「イギリスは自国で、タイガーに対抗できる戦車を作っちゃえば良かったじゃん」なんて安易に簡単に考えるのは、「背後のドラマを感じられない人」です。なぜイギリスは、シャーマンに17ポンド砲を積むハメになっちゃったんだろう?‥‥と考え始めるのが、まさにドラマの始まり‥‥なのです。人それぞれが自分を思い通りにできず、様々な困難に立ち向かうのと等しく、鉛筆から戦車に至る様々な物品もまた、苦悩や葛藤の固まりなのです。

子供の頃は、単に造形や戦歴だけで熱中していただけの兵器プラモですが、さすがに大人になってイイ歳になると、否が応でも「デザインの奥に秘めた様々なドラマ」が目に飛び込んできて、それが創作意欲を掻き立てるのです。

ちなみに私はファイアフライが昔からお気に入りで、20年前にドラゴン製のキットを稲垣さん(私の事実上のエフェクト作画の師匠‥‥ですネ)と一緒に作った事がありますし、その他、1/72スケールの完成モデルが1つ、1/48が3つあります。今は作りかけの1/35もありますが、タミヤから発売されるなら、そっちに乗り換えようかな‥‥。


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