歴史は繰り返す‥‥とは言うけれど

4K8Kに揺れ始めた現場を見ていると、1995〜1998年あたりの雰囲気が思い起こされます。いわゆる「デジタルアニメ」の発端となった頃ですネ。当時の人の動きも、今と似たような感じで、大半は暢気に構えていて、ごく少数がそれぞれの未来の方針を模索していました。

1995年頃の「デジタル」アニメは、「絵が薄っぺらい」「ビデオ合成のように絵作りがぎこちない」「3Dとの違和感がものすごい」といった問題点が指摘され、決してフィルム&セルによる旧来作品表現に勝るものではありませんでした。

では、「デジタル」の性能が劣っていたかというと、そんな事はありません。単に「使い方」の問題、もっと言えば、「使う人間」の問題で、「デジタル」を絵画表現の道具として上手く使いこなせなかったのです。

「デジタルを導入してアニメを作る」という事にテーマがすり替わって、いわゆる「本末転倒」状態に陥っていたフシを、私は1996年に「デジタル」の現場に入って感じました。「デジタルを導入する」のがテーマとなり、肝心の完成物たるアニメ作品は、まさにテーマ通りに「デジタルで作りました」という絵になっていたのです。
*もしかしたら、元から、作品よりもワークフローの方がテーマだった可能性もありますが、ワークフローが目的の作品って‥‥さ‥‥、現場の都合優先で、「絵」を受け取るお客さんの存在はガン無視だよネ。

私は当時の「出始め」の「デジタルアニメ」を見て、「何か思惑はあるんだろうけど、絵自体が新たな魅力で溢れてなかったら、誰も振り向いてくれないじゃん」と冷ややかに見ていました。同時に、その頃Photoshopをイジりはじめていた事もあり、「デジタル」で如何様にも絵画的・映画的表現が可能だと確信していましたので、「デジタル云々ではなく、作り手の表現技術の問題だ」とも感じていました。ゆえに、私が「デジタル」の現場に入って、まず手がけた事は、「絵を不在にしない」ための大量のイメージボード作りでした(〜その辺の話は長くなるので割愛します)。イメージもないまま、段取りだけで作るのはヤメましょうよ‥‥と。

そして2014年現在。この構造は、4Kに対応しようとするアニメ業界にピッタリあてはまるように思います。「4Kを使う」という事がお題になってしまって、「こういう絵を作りたいから4Kのスペックが必要だ」という必然性は全く感じられません。皆一様に「どう対応すべきか」なんて困った表情ばかりです。何だか私だけヒートアップしてるような孤独感すら感じます。‥‥ほんとに皆、アイデアが無いんか??

「欲するものがなく、形だけが先行する」という状況。歴史を振り返るに、アニメ業界に限らず、古今東西の「ダメなパターン」の典型です。
 
4Kをどうやって使うつもりか、質問されて困ったりしてませんか?

4Kを現アニメ業界フローで使って、絵的に「お得」な部分はどれだけありますか?

4Kのアニメは、「これが4Kか。凄い!」と、観る人を興奮させることが出来そうですか?

‥‥思うに、結構多数の人が、「4Kなんて、やってみなければわからない」と考えているんじゃないですかネ。ですから、事前にこんな事を聞かれても、まるで実感をもてないと思います。でもそれは、未来の迷走ぶりを予感しているようなものです。

「4Kのアニメ制作フロー」だけを考えようとして、「絵」を考えないのなら、私の意見としては、「失敗確定」だと思っております。‥‥だってさ、そんな「フローがどうだこうだ」なんて、「観る側」には関係のない事ですもん。残酷かも知れませんが、業界の苦悩や困窮なんて製品を購入するお客さんにとってはどうでも良い事で、単に「出来映え」で判断されるだけです。「絵的には以前の2Kとほとんど変わらないですが、苦労して4Kで作ったので、売価を高くします」なんて、お客さんにしてみれば「えー!」ですからネ。だからといって、予算が今までと同じなら現場が「えー!」だし、予算倍増・売価据置だったら出資者が「えー!」だと思います。現アニメ制作にとって、4Kで嬉しい点なんて、あるんすかネ? 2K24fpsでちょうどピッタリなのでは?

歴史は繰り返す‥‥と言いますが、「デジタルアニメ黎明期」当時の記憶が甦るのです。しかし、失敗する構造だけでなく、成功する構造も、歴史は反復します。

私がいつも自分を戒めるのは「技術バカにならない事」です。お客さんは、技術にお金を出すのではなくて、技術を用いた完成物にお金を出すのです。4Kという技術を使って、どのようなキャラをどのような情景の中に立たせて、どのようなストーリーにて、お客さんに披露するのか。そこが見えてなければ、4Kはまさに技術バカ・スペック馬鹿の巣窟になってしまう‥‥と私は考えます。

* * *

‥‥とまあ、今まで色々と感じる事や考える事を書き綴ってきましたが、私もそろそろ本格的に、4Kの取り組みにリソースチャージ!‥‥すべき時期が来たので、文章書きもほどほどにしようと思っております。‥‥文章って、時間かかりますもんネ。

私は4Kの1ピクセルも、48fpsの1フレも無駄にするつもりはないです。持て余す…なんてあるわけもなし。

ただし、私は新しい技術を、日和見層に選択肢として提供するつもりなどありません。過去、日和見層がなだれ込んだ結果、どのような顛末となったのか。「デジタルアニメーション」の「成功と失敗」を歴史から学んで、二度と同じ轍は踏まない所存です。

安易にメイキングを商品付録にしたり、作った傍から技術公開なんて、終局的には「安売り」「夢潰し」にしか繋がらなかったのです。マジックのネタなんて「ナゾ」なままでいいじゃないですか。コピペで広く伝播した技術は、安売り合戦を加熱させるだけです。「窮状の自作自演」に陥らないための、明確な技術運用理念が未来には絶対に必要だと、やはり過去の歴史から学びました。業界で誰もが知っている共通の技術ではなく、独自技術こそ「ブランド」を形成する大きな土台なのです。そして、各々が高い独自技術を持つがゆえに、お互いを尊重し合えて、技術を高め合う事も可能なのです。

4K対応の機材も身近になりつつある2014年は、今までの研究の成果を未来に繋げる重要な戦いの年〜「Red Sky」になりそうです。

 

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