国民的アニメ

つい先ほど、たまたま実家リビングのテレビで流れていた「デジタル化」した「サザエさん」を見たんですけど、長年のシリーズ制作で培った「サザエさんスタンダード」は「デジタルペイント&撮影」導入後も全くブレておらず、敬服してしまいました。

デジタルを導入して小ズルい作画ショートカットで誤摩化す作品が多い中、サザエさんは昔と変わらぬ作劇法を貫いており、デジタルが全く鼻につきません。デジタル導入による改善点だけが際立つ結果となっています。

今日見たサザエさんで、デジタルによって確実に改善された点を思い起こすと‥‥
 
  • 塗りムラ
  • トレスマシンの粒荒れ
  • セル影
  • セル原料のくすみによる退色
  • フィルム由来のシャープネスの低さ
  • フィルム由来のグレインの荒さ
  • フィルム由来の狭い色域
  • 編集点のたわみ
  • パーフォレーションのガタ

‥‥など、多くの点が挙げられます。逆に言えば、16mmフィルム(未確認〜テレビなので16mmだったと思います)撮影台を基軸とした制作システムは、ちょっと挙げただけでも上記の劣化要素を抱えていたわけですネ。

デジタルフローを導入したサザエさんは、まず、全体の色調がフィルム時代の落ち着いた色調を引き継ぎつつも、くすみのないクリアな発色なのがとてもきれいですし、動きの要素もデジタル臭い部分がありません。ワイプマスクもちゃんと手描きで3コマ動画。画面に出る文字もデジタルフォントを使わない手描き。‥‥こういう部分を過去からニュアンスを変えずに一貫できているのは、とても凄い事です。そしてそれが、ちゃんとサザエさんの作風を護る事に繋がっているのが素晴らしいですネ。

ワイプや文字など、他のアニメだったら、みんな「デジタル任せ」で済ませて、結果、出てくる言葉は「今は楽になった」‥‥だけです。単に楽な方に流れるベクトルに身を任せる現場が多いですが、もしかしたら‥‥いや、確実に、今のアニメ現場は急速に、過去の高度な技術を継承する意識も低く、安易な価値判断で廃棄処分しているのでしょう。例えば、メカを3Dスタッフに任せて「作画が楽になった」だなんて、それはすなわち、メカを描けるアニメーターを率先して減らしているわけです。今や、細かい模様は全て「撮影貼り込み」ですが、それは言うならば、「動画なりに、サイズなりに、省略して描く知恵を放棄している」のです。

そんなアニメ現場の風潮を目の当たりにして、サザエさん本編をふと見ると、「デジタル時代のいやらしさ、まるでゼロ」で、伝統を継承するとはこういう事か‥‥と感動に近い感情が生まれます。原料的ノイズ・装置的ノイズだけが除去され、作品表現はそのまま残った今のサザエさんなら、大画面テレビで見ても全く気にならないですし、もしかしたら、未来にも24コマが生き残る1つのケースになりうるかも知れません。

前回「原動画とセルがなくなるフロー」を書いた私ではありますが、それは「デジタルを用いたアニメーション作品制作」のドクトリンの1つであり、サザエさんのような「伝統的表現を維持する」アニメ制作手法も多いにアリだと思います。私が幻滅しているのは、技術や表現を場当たりに使い捨てする風潮であり、新旧そのものは関係ないのです。

サザエさん。‥‥表現技術は確立し得る事を、まさに体現している作品です。やはり、なんだかんだ言っても、作品表現のみなもとは、アニメーターから撮影・制作進行まで現場全ての人間の「志」なんでしょうネ。

*ちなみに余談ですが、故意に16mm時代のTVアニメ質感が欲しい場合は、前述の「改善された点」全てをAfterEffectsでシミュレーションして追加すれば、かなり「それっぽく」なります。細かい点ですが、編集点(カットの継ぎ目)のたわみは是非入れましょう。「フィルム傷エフェクト」でフィルムっぽさが出るなんて、今は素人さんでもやらんですもんネ。
 


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