4Kを喰らう

4Kは、ハコだけあっても、中身が無い‥‥と各所で耳にするようになりました。また、8Kの足音も、ちらほら聞こえます。しかし、今のアニメ制作現場は、「4K」をイメージする事もままならないのではないでしょうか。2008年前後にD1時代からHD時代への移行が各所でおこりましたが、アニメ制作の基本はほとんど何も変わらなかったし、変えようともしなかった、変えなくても特に大混乱は起きなかった‥‥事を思い出せば、「同じノリ」で4Kに対処できると考えている人も、もしかしたら多いのかも知れません。

思うに、
 
1・今後も作り方は変えずに、アップコンバートだけで済ます
2・フォーマット拡張に合わせて、制作規模も相応に拡大する
3・フォーマット拡張に完全対応できる、新しい作り方にゼロから仕切り直す

‥‥という大まかな3つの選択肢があるわけですが、私のスタンスは前々から書いているように「3」のスタンスです。8K120fpsだろうが対応できるし、未曾有の16K240fpsだって制作構造的には対応可能です。もちろん、良い事ばかりではなく、リスクは相当なものがありますが、その辺は過去に何度も書いてきたので、ここでは省略します。

では、「1」はどうか。過渡期の4K24pなら、なんとかなるかも知れません。ただ、48fpsに人々の視覚能力が慣れ始めたくらいから品質的に苦しくなるでしょうし、2K未満の画像を2倍拡大(面積比4倍)したフォーカスのぬるい絵は当初から問題になるかも知れません。「品質的に苦しくても、今はそれで凌いで、誰かが新しいフォーマットを淘汰の末に確立したら、それに追随すれば良い」なんて「漁夫の利」を企んでいる人もいるかも知れませんが、それが可能かどうかはわたし的には疑わしく感じます。徐々に4K8K適応能力をつけていかずに、いきなり転換しようとしても、その頃には「老い過ぎていて」もはや対応する事は不可能かも知れません。浦島太郎が玉手箱を開いて瞬時に老化するような、堪え難いギャップと喪失感を体験する事になるやも知れません。

では次に「2」。4Kに合わせて2倍近い予算増強を果たしても、「線が若干細くなった‥‥?」程度の効果しか発揮できない事は容易に想像できます。作画用紙を大きくしてスキャン解像度を大きくしただけじゃ、世間は「4K」とは認めてくれないスもんね。「キャラの線が細くなったように見える」程度、背景美術のシャープネスが若干増した程度の品質向上で、倍予算の獲得は「お金を調達する側」にとって、正直キツいと思います。「売り要素」があまりにも地味ですもん。かと言って、現在の予算枠で抑えるとしたら、作業ギャラに大きく響くのは、電卓があれば簡単に試算できます。現予算で4K対応は現場が保ちません。

「2」の場合は、4Kの解像度、48fpsの高フレームレートに対応しつつ、実は、4K48fpsに相応しい新しい作画アニメ表現技術も盛った上で、ようやく世間に「4Kの作画アニメ、ここにあり!」とアピールできるのだと思います。4Kのフォーマットに対応しただけでは、現場の人間にしか解らない「僅差」しかアピールできません。

スタンダードB4作画(=今の劇場サイズ)、より細密なキャラ設定、48コマタイムシート、動仕枚数2倍弱、最新マシンへの機材入れ替え(これは段階的投資ですが)、絵の密度を上げるためのより一層の撮影時のハリコミ作業、グラデーション処理の多用、3Dチームの出力解像度やfpsも倍増、絵の完成度を版権イラストレベルにフィニッシュするためのより高度なビジュアルエフェクト&グレーディング‥‥。制作規模を想定すると、30分枠1話分で現場予算4〜5,000万とか、途方もない試算すら出てきそうですが、それって「商業的に成立する」のでしょうか。1クール13話で6億5千万スよ、現場予算だけで。

そして、何よりも厳しいのが、4K48fpsは「最終到達目標」ではなく、過渡的なフォーマットだと言う事です。4Kよりもうちょっと未来の8K96fpsなんて、もはや8Kテレビ1話が現在の1本の劇場予算…になりかねません。未来の人々のお財布が、札束で溢れているなんて事はないのですから、明らかに破綻しています。

こんな風な事を書いてばかりいると、「不安ばかり煽りやがって」「上から目線で物を言いやがって」と思う方もおられるでしょうが、極めて重要な局面を前にして、「心配ない」「下から目線」なんてあり得るんでしょうかネ。状況や趨勢を俯瞰視して、舵取りを見極める必要があると思います。誰もが、現在より一段目線を高くして視界を広げて、自分の進路方向を見据える必要があるんじゃないでしょうか。「どうせ自分なんて」と、卑屈に凝り固まってはいけないのです。

正直、私も4K8Kは不安で怖いです。今までの常識や勝ちパターンがほとんど通用しないのですから。でもそれは、逆に考えれば、障壁を突破して技術を掌握した際には、かなり強力な武器を手に入れた事になる‥‥とも言えるのです。限界を自分に叩き付ける事で、どんどん強靭になっていったのは、どんな時だって同じだったはず。

「でもじゃあ、どうすれば良いのよ」と言う事ですが、頭で4Kに怯えるより、まずは体で4Kで絵を作ってみて、「試し喰い」するのが一番良かろうと思います。実感の全くないまま、4Kの巨大な影に恐怖してても始まらないですもんネ。とりあえず、「かぶりつけそうな部位」から喰えば、味もなんとなくわかってきます。

アニメってさ‥‥、実写と違って、機材的な束縛が少ないので、「4Kカメラ」が無くても、「4K映像」は作れるんです。高価な4Kカメラセットを購入する必要がないので、実はアニメのほうがフットワーク軽く、4K映像制作をテストできるんですヨ。個人がMac miniでもテスト可能なんですから。

でもまあ往々にして、その「テストの第1歩」が踏み出せない人、「ひとくち目が食べられない」人が多いのよねェ‥‥。本人の気概次第なんだけどネ…。

まあ、耳障りの優しい事を言うのが喜ばれて、キツい事を言うのが疎んじられるのは、しょうがない事だと思っています。イタい事を言われても、自分の意志が固い人だけが、未来を志せば良いとも思います。そういう人は、一緒の戦場で戦おうって気になるじゃんか。…実は、そういう事もあって、最近はキツい事ばかり嫌われ覚悟で、書いておるのです。このブログの文面だけで辟易する人は、未来の映像制作に堪えていけないですもん。

 


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