アニメにとって4K8Kが深刻な理由

4K8K。画面の密度が今の4倍16倍になる次世代のフォーマットです。画面が大きくなるのではなくて、平方あたりの画素数が増えて、より一層現実世界とのルックの差が狭まって鮮明になる‥‥という事です。4K8Kになったって、日本の居住面積〜リビングルームが自然に広くなるわけではないので、100インチとかの大型テレビではなく、日本のリビング・部屋に収まる27〜50インチクラスの中型テレビに技術が活かされる事になると思います。

4K‥‥と画素密度の事ばかり謳われてますが、同じくらい重要なのはフレームレートです。どんなに絵の密度が細密でも、フレームレートが低ければ目に残像が残って不快な映像になります。しばらくは60pあたりでしょうが、本命は24fpsの4倍の96fps、30fpsの4倍の120fpsでしょう。

まあ、このあたりのスペックを聞いただけでも、アニメ業界関係者は背筋がゾッとする‥‥かも知れません。アニメは実写カメラと違って、動きの1枚ごとを作って映像を作るので、絵が大きい・1秒間に必要な絵の枚数が多い‥‥となると、直接的なダメージを受ける事になります。

仮にフレームレートが96fpsになった場合を、現状の24fpsと比べると、

1  .  .  .  2 =1歩あたり12K〜3コマ作画で4枚(=中3枚・24fps)
1  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  2 =1歩あたり48K〜3コマ作画で16枚(=中15枚・96fps)

‥‥となります。

これはあくまで、3コマタイミングを96fpsでも貫いた場合の話です。では、今までと同じ中3枚のタイミングにすると、なんと12コマ止めのタイミングとなります。1枚の絵を12コマも止めてから次の絵に切り替わるわけです。

こんなタイミングが、実写の96fpsのフルフレームレートになれた近未来人の目に「カクカクしてツラく」映るのは容易に想像できます。さぞ、陳腐な動きに見えるでしょう。

じゃあ、中枚数をフレームレートの増大に合わせて増やす? ‥‥動画の予算は相応に増大しますし、スケジュールも大きく延ばす必要があるでしょう。仕上げの枚数も増えますし、サーバの容量も増やさなければなりません。もちろん、検査の人がチェックする枚数も増えます。‥‥今の予算じゃNGだよネ。

フレームレートの面だけでも、これだけの問題がドカンと山積みになります。

さらには、まさに4K8Kの謳い文句、画素数の増大に対応しなければなりません。

「でもさ、版権イラストでは、6〜8Kくらいの寸法で作業してるから、4Kくらいなら、何とかなりそうだよ」‥‥と思う人もいるかも知れません。‥‥が、それは読みがアマ過ぎです。

アニメには大判がいっぱいあるのです。

確かに、4Kサイズは一見、現行HDサイズの2倍程度に見えます。実写だったら、それで良いでしょう。実写カメラで収録した4Kサイズオンリーのものを編集すれば良いですし、実写のビジュアルエフェクトも4K実写素材からスタートすれば良いので、4Kちょいオーバーくらいで丸く収まります。

でもアニメは、人物をちょっとフォローするだけでも、背景はいきなり大判になります。全てのカットがフィックス(カメラ固定)の作品なんて、よっぽど奇をてらった演出でも無い限り、存在しないでしょう。必ず、何かしらの大判作画は存在すると思います。

アニメにとって4K8Kは、スタンダードフレームの時ではなく、大判フレームの時にとんでもなく大サイズ・大容量ファイルになって、現場を苦しめる事になるでしょう。例えば今までは横2倍の背景の時は、4000x1200くらいで済んでたのが、8000x2400になります。HD時代に8000x8000の背景を使った付けPANは、4K時代では16000x16000、8K時代では32000x32000‥‥。

アニメの場合、画素数をスタンダードサイズ「だけ」で計算してはいけないのです。素材サイズで作業見積もりしないとダメっすヨ。

「よし! 4K時代はカメラは全てフィックスにする!」という剛胆な演出さんだったら、4K画素数で計算しても差し支えないかも知れませんが、そんな人・そんな現場はよほどのチャレンジャーですよネ。PAN、フォローは必ず存在するでしょうから、4Kフレームでも1万ピクセル幅の画像を取り回すノウハウとマシンパワーが必要です。

そしてさらには作画。A4用紙に鉛筆で絵を描くスタイルでは、鉛筆の粒子の限界が見えてしまって、荒さとして絵に映ってしまいます。レタス互換の作画法は、徐々に行き詰まりを感じるようになるでしょう。実は私、この辺を散々テストしてきまして、鉛筆で描く事の「意味」を深く考えるに至りました。紙だとパラパラと動きをチェックできる‥‥だとか、鉛筆線だと消しゴムで簡単に修正できる‥‥だとかの理由で鉛筆を選ぶのではなく、「描線の表現」の次元において鉛筆を駆使する必要があります。‥‥でなければ、単に鉛筆の欠点ばかりが絵に浮き出てしまうのです。

A4という用紙は、あまりにも小さく、どんなにスキャン解像度を上げても、「元絵の小ささ」が映像に出てしまいます。だからって、4K時代以降は、B4やA3をスタンダードにする?‥‥いやァ、どんどんコストと苦労が増大するベクトルにしかならんですネ。

ですので、私はもはや「今までと同じ作り方では、4K以降の世界には対応できない」とすっかり観念しています。以前に紹介した下図のサンプルは、現アニメ業界とは全く異なる手法で作った絵・映像です。




4K時代に現アニメの「代用品」を作るつもりはないですし、代用品はいつか消え去る運命にあります。ですから、4K8Kにふさわしい、4K8Kだからこそ表現できる、新しい技法のアニメを作りたいのです。

まあ、自分の思いはおいといて、‥‥どうする、どうなる、4K時代のアニメ。

日本のアニメ制作技術が、世界ナンバーワンなのは、誰もが認める事でしょう。しかし慢心するがあまり、自らを落ちぶれさせてしまう事だってあるのです。

4Kモニタで10万円を切る製品が、来年あたりからどんどん増える‥‥とも聞きます。4Kは未来の夢物語ではないようです。もうすぐ発売のMac Proは、4K Ready です。

そんな2014年の幕開けを目前にして、新しい映像フォーマットの波に、自分たちがどうやって波乗るか、考える時期が刻々と近づいているように思う‥‥のです。

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