ふさわしいキャラ

女(じょ)キャラはまさにアニメ作品の華‥‥ですが、そのキャラのデザインは、紙で作画してペイントするという工程上の制限を反映して「今の感じになっている」のは、周知の事実です。ですから、現アニメワークフローとは全く異なったフローでアニメを作るのであれば、今のデザインを踏襲する「技術的必然性」はありません。もし必然性があるとすれば、「慣習」があるのみ、です。

慣習とはなんだろう?‥‥と考えると、まずは「描き手の慣れ」があり、さらには作品を受け取る人々の「慣習的な嗜好」もあります。「アニメっていえば、コレだよね」という暗黙の合意とでも言いましょうか。

現在のキャラデザインのアプローチとして、目を大きく描く「ロリ顔」が慣習化している‥‥というか、発想する時点で幼女顔にデフォルトがセットされちゃっているように感じます。ごく少数、「普通顔」「大人顔」のキャラも存続はしているようですが、大半は「ロリ顔」ですよネ。

「アニメと言えば、目のデカいキャラ」という認識から、少なくとも私は抜け出したいと思っています。萌え絵もあっていい、しかし、それ以外の作風も沢山あればいいのに‥‥と思うわけです。

‥‥なので、アニメのトレンドとか慣習とか、1度リセットした上で、
新しい方式で表現可能なキャラとはどのような広がりがあるのか、目の大きいキャラも小さいキャラも選り好みせずに、色々とテストしています。私が素で描くと、目の大きいキャラは敬遠がちになりますので。


以下は、同じポーズによるルック&デザインのバリエーションで、原画を描いた後に直にAfter Effectsに持ち込む「原画 to After Effects」の作業スタイルで作成したものです。オリジナルは「4.5k x 6.5k」のサイズですが、1/10サイズに縮小しています。

【1】それ系

線画をAfter Effectsに持ち込んだ状態が以下です。鉛筆画をAfter Effects上でベクタートレスに変換しています。




これをさらに、After Effectsでアレコレと作り込むと、以下のようになります。



‥‥無理しております。借り物のスタイルです。自分から素でこういう絵は出てきません。色んな箇所に無理が見えます。こういう絵は、「好きこそ物の‥‥」で、何も無理せず素で描ける人が描くべきですネ。

このスタイルは、今の業界フロー〜特に撮影部門に自動化を取り入れ技術向上させれば、今のままの作画スタイルでもとりあえずは実現可能でしょう。48fps以上に対応するには、かなりの効率化が求められますが、できなくはない‥‥と思います。

‥‥ですから、新方式でこれをやる意義はかなり低いと判断しています


サンプルを作ってみて‥‥、こういうスタイルの絵は、所詮、私には不似合いだと言う事を改めて確認しました(苦)。出来のマズさを承知で晒しております。パッションの薄さが、絵に表れており、小手先のテクニックで誤摩化そうとしているさまが、過装飾によってモロバレだ‥‥という事もゲロしておきます。大いなるパッションを持って、もっと上手く描ける人は大勢いると思います。

目の処理(下図)とか、色々試してみたんですが、
どうイジっても一定以上にはならんですネ。昔から解っていた事ですが、情熱が無いのなら、やらないに限る‥‥と思いました。



わたし的には‥‥



‥‥のくらいで充分だと思えてしまうのです。スッキリしてて、私はこっちのスタイルのほうが好きです。‥‥でも、この絵柄なら、なおさら、旧来の作り方で全く問題無さそうですネ。



【2】ちょっとそれ系

今度は目を大きく描く事をあまり意識せず、頭身も少し高くした絵柄です。とは言っても、充分、目は大きいですが、2013年現在の風潮では控えめなほう‥‥でしょうか。技術的には、鉛筆のニュアンス活かした、いわゆる諧調トレス線で処理してみました。今のアニメ業界は、ほとんどが2値トレス線(白黒オンリーで中間調を殺す方式)ですが、私の考える方式のデフォルトはこの諧調トレス線です。




After Effectsで色づけやら、グラデーションを加味します。今回の絵は、影の半分以上がグラデーションによる表現です。顔の影のディテールは、後のビジュアルエフェクトなどの効果を先読みして、適度な影付けをおこないます。原画・彩色で「ドンピシャ」にする必要はありません。照明によって顔のニュアンスはかなり変わります。

ビジュアルエフェクト・グレーディング等を追加して完成させたのが以下のサンプルです。3パターン作りました。


・柔らかいトーン


・色、濃いめ〜やや逆光


・逆光

1番目の「それ系」と似たような感じですが、私としては、こちらのほうが素に近い状態で描けます。おそらく、目の面積の問題なんでしょうね。あと、頭身や首の太さ、髪の毛の量など。こちらは、普段より目を大きめに描いて鼻や口を淡白に処理すれば良いので、ココロの負担が軽くて済みます。

グラデーションを影付けに多用して各所を処理しているので、今の業界フローではちょっと難しいかも知れません。グラデーションがキャラのニュアンスの大きな要素となっていますが、紙の作画時には指定のしようがありません。各所のグラデーションは、それぞれ濃淡の幅が違っており、
単純にボカせば良いというものではないので、今の業界フローでは「誰がグラデを操作するのか」が特定できず、フローが頓挫します。

私の考える新しい方式では、絵を描いた本人がグラデ操作をおこなうので、特に不都合は発生しないのです。線画だけを描くアニメーター‥‥という概念は、新方式においては、もう存在しないのです。



【3】私の素のスタイル(特に流行を意識せず)

特に何かを意識するわけでなく、気楽に描いたサンプルです。流行とは全く無縁のスタイルだと思います。前の2点に比べると、リアルバランスに見えるかも知れませんが、全然、マンガのバランスです。
諧調トレス線の持つ強弱を活かして、手描き感をより一層強調した方式です。




この方式では、もはや「トレス線が途切れないように、一定の濃さで無機質に描く」必要はありません。むしろ、たっぷりとした黒鉛(鉛筆やシャーペン)の表情が要求されます。これをAfter Effects上で、いくつかのアプローチにて作った3種類が以下です。


・中庸なニュアンス


・逆光&ソフトフォーカス〜彩度の高いパステルカラー


・荒びたフィニッシュ&線画の味わいを強調〜彩度低め
〜寄るとこんな線画のニュアンスです(下図)


私が無理せず、このスタイルの絵を描く時、いつも頭に想い浮かぶのは、ラッカムデュラックなどの、ほぼ100年前の絵本画家たちです。時代性からすれば、私の頭の中では「何百年も古くて良い」感じなのです。現在の特徴的な萌え絵や作画スタイルだって、10〜20年後には相応に古くなっているはず。‥‥であるのならば、仕事で設定に合わせて絵を描くのならしょうがないとしても、自分の絵を描く時は、流行に振り回されて絵をかくのではなく、ウソをつかずに絵を描くのが良いと思うんですよネ。ブームの尻馬にのって描いた絵は、廃れた際にファンが離れるのもはやいですもんネ。(もちろん、尻馬ではなく、ブームの本家本元は、根強いファンがつきますけども)

技術的には、2番目のサンプルとさほど変わりません。ペイント時にグラデーションを多用する事、ビジュアルエフェクト時に照明や陰影をコントロールする事、フォーカスの操作など、キャラの感じは違いますが、技術の基盤は同じです。もちろん、After Effectsで48fpsなどのハイフレームレートで動かせます。

線画の行程から微細なニュアンスが要求されますので、今のような夥しい人海戦術による量産には不向きだと思われます。一方、新方式は極めて少人数で制作が可能なので、キャラ崩れを起こす事なく、作品を作る事は可能だと思います。




【4】淡彩風

新方式の守備範囲の広さが発揮されるルックです。私は
いわさきちひろさんも大好きなので、こういう方向性も考えてみました。

線画はかなり自由な描き方です。こんな描き方でも、新方式は対応できます。以下は、スキャン後の状態です。




線がかすれて輪郭の曖昧な描き方は今の業界では御法度(というか対応不可)ですが、新方式では全然構いません。これをAfter Effectsに読み込んで、ちひろさんを思い浮かべながら、あれやこれやと作り込んでいくと、以下のような淡彩風の絵になります。After Effectsが単なる「素材ありきの画像合成」のコンポジットツールでなく、「絵を描く」という積極的なアプローチにも充分使える事がお解りだと思います。



これを背景と一緒に、ビジュアルエフェクト・グレーディング(‥‥この作業内容をVFXやグレーディングと呼ぶのはやめたいんですが)で「絵を描いてフィニッシュ」すると、以下のようになります。3パターン作りました。







ドロー風なテイストですが、描画ツール(ブラシなど)は使わず、すべてAfter Effectsのパスやエフェクトで作っていますので、48fpsだろうが96fpsだろうが動かせます。‥‥ただ、この絵柄に48fps以上のハイフレームレートモーションがしっくりくるかは、検討の余地があるでしょう。また、長尺には適さないのでは‥‥とも思います。絵本くらいのボリュームがちょうど良いかも。

このくらい「アニメ絵」と遠くなると、もはや今の業界フローでは全く対応できないスタイルです。もちろん、業界内に在籍していても、業界フローを用いなければ、色々な事はできる‥‥んですけどネ。現業界フローから「決別」しないと、こういう絵の表現の広がりは得られません。

また、「ペイント」という作業の呼び名も、もはや過去の意識となってきます。領域をクリックしてベタヌリするペイントではなく、水彩画と同等の神経を費やす作業ですから、「彩画」と呼んだほうがしっくりきますネ。今のレタス互換方式とは、似ても似つかない技法なので、一緒くたに「ペイント」と呼ぶのは、あまりにも大雑把過ぎます。

絵の特質からして、やはり、今のような夥しい量産には不向きだと思われますが、短尺ならば問題ないでしょう。



‥‥とまあ、色々と試してみました。まだまだ画風・スタイルはいくらでも模索できるでしょう。視界一面が水平線のように広がる未開拓のフィールドは、セル画時代の制限に縛られる事のない自由な広がり‥‥と言えますが、逆に「自由過ぎて何から始めたら良いかわからない」とも言えます。また、自由を支えるための、平野を開墾するための、しっかりとした技術基盤が必要でもあります。


つまりは、絵を描きたい・動かしたいという何にも代え難いパッションが根底にあって、それをどのように実現させるか‥‥という事に尽きるのでしょう。新方式においては、「アニメとはこういうもの」という固定概念はなく、「どんな絵を動かして、どんな話をつくりたいか」という、アニメーション作品における「Root」(根っこ・出発点)が何よりも重要なのです。それがなければ、何も始まらない、です。

私が未来に作りたいと思うアニメは、おそらく、萌え顔好きのファンの人々には、アピールできないものと想定しています。自分にウソをついて萌え絵ぽい絵を描いて、現在のファンの人々に取り入ろうとしても、そんな浅いウソはすぐに見破られるでしょうからネ。

私の考える未来の方式は、マンガと同等まではいわないまでも、初動段階のコストをかなり低く抑える事ができます。つまりは、リスクを抑えつつ、今までとは違う層に、違うカタチでアピールできるチャンスを持つ‥‥という事です。
60代に至る老若男女まで、もはや鉄腕アトム以降のアニメ世代だと言う事は、忘れてはならない事実です。

そんなこんなを考えた時、やり方はまだいくらでも開けていると感じるのです。「
サルまんの予言」がどんどん的中していく昨今、アニメはもはやティーンのものだけではないと、今さらながらに考えるのです。

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