ジレンマの中で。

ちょっと前、放送仕切り直しになった作品があったようで(最終2話が作りきれないために、来春に1話から放送し直し‥‥とのこと)、どこの会社も大変だな‥‥と思ったのですが、ツイッターのファン層の反応を見て、さらに「相変わらず、世界はジレンマだらけ」と、ふと思いにふけりました。

 

ツイッターで、

 

放送延期はむしろ良い作品を望んでいるファンにとっては良きこと。焦らずゆっくり作って、神回を放送してください。

 

‥‥のようなツイートをいくつも見ました。

 

業界の人間なら、憂鬱な気分になるはず。たとえ、当該作品の当事者ではなくても。

 

ゆっくり作っても単価は同じだからネ。1ヶ月を3ヶ月に伸ばされたからって、1カットや1枚の単価が3倍になるわけではないです。アニメ業界では多くの作業者が単価受けの仕事で、アニメ制作を支えています。学校の部活やサラリーマンとは違います。

 

でも‥‥です。

 

だからって、ファンの人たちに‥‥

 

テレビに期待するのはナンセンス。テレビはテレビ程度のクオリティしか作れません。期待するのは間違い。

 

‥‥だなんて、言うわけにはいかないでしょう。

 

ファンなら期待して当然

 

だと思うのですよ。

 

「期待するな」‥‥だなんて、公にアナウンスする作品制作など、存在するはずもなし。

 

‥‥ですよネ。

 

もちろん、深夜放送でタダで見て、劇場作品のクオリティでなければクソ作品とか吐き捨てるファンには、ムカつくこともあるでしょうが、だからといって、ファン心理を全否定するのは極論過ぎますよネ。

 

アニメ制作に関わる前のアマチュアだった頃の自分、または自分の他の趣味(私だったらギターやバイクなど)に置き換えて考えれば、好きだからこそのファン、好きだからこその期待‥‥は当然です。

 

ファンの人たちに期待されてこその、娯楽産業

 

‥‥ですよネ。

 

もし、アニメ作品作りを、アニメ業界人の生活のためだけ、テレビ放送枠を埋めるためだけ、‥‥として関わるのなら、それはもう、娯楽産業・大衆芸術としてのアニメの「終わりの終わり」です。

 

 

 

評判のラーメン屋さんに行って、醤油ラーメンを頼んでも、出てくるのは、チャーシューが1枚の質素なラーメンです。大評判の店に行けば、無条件になんでも「全部盛りのスペシャル」ラーメンが醤油ラーメンの値段で食べられるわけじゃないのは、誰だって解ることです。

 

では、店側は何で競うか?‥‥というと、採算度外視のスペシャルラーメンを650円で提供することではなく、一番質素でスタンダードなラーメンの「味わい」で勝負するわけです。

 

大盛り全部盛りの神価格の神ラーメンではなく、スープに麺にチャーシュー1枚メンマとネギ、質素な構成の中に「美味いねえ‥‥」としみじみ思わせる底力こそが、ラーメン屋さんの真骨頂ですよネ。

 

一方、アニメ制作は、テレビでのサービスの方法を、どこかで間違えてしまったのでしょう。劇場クオリティをテレビ放送枠で作ることが、ファンの期待に応えることだと勘違いしたまま、どんどん自分たちの首を絞めている‥‥とも言えます。

 

盛って期待に応えるのではなく、基本性能で期待に応える

 

劇場並みの物理的に大変なカットで構成することではなく、演出的な味わいや妙味で応えてこそのテレビ作品‥‥とは思います。

 

‥‥が、近年はそれがどんどん難しくなっているので(=味わいを支える作画力が確保できない)、劇場並みのハデさでごまかそうとする制作者側の苦しい問題もあるのでしょうネ。

 

 

 

3日待ちますから、最高の具材を最高の調理で、最高のラーメンを作って食べさせてください。あ‥‥代金は650円のままで。

 

‥‥という客に、いちいちイライラしてもしょうがないのです。美味しいものを安く食べたいのは大衆の心理でしょう。夏の空気に向かって「暑いよ!! 少しは涼しくなれ!!」と怒るほうが馬鹿なのです。

 

アニメ制作は直接的にはクライアントへの納品でしょうが、間接的には大衆向けの客商売です。名を売るために特売もすれば、定期的に大売り出しもしますが、1年中を特価販売するわけにもいかないですよネ。

 

長期的な戦略を立てて、どこで大売り出しするか、どこで儲けるか、アニメ制作の現場の人間といえど、意識しておく必要がありましょう。部活ノリで仕事するんじゃなくて、あくまでビジネスとしての中長期の視野も踏まえて‥‥です。

 

アニメ制作は客商売が難しい側面もありましょう。トッピングで価格を設定できるような商売ではないですもんネ。

 

しかし、クオリティコントロールは何かしら必要です。

 

上述の通り、ファンは期待して当然なのですから、それに合わせて馬鹿正直に何でもかんでも劇場クオリティで作ってたら、どんどん制作現場は「昇天」(解散・倒産)するでしょう。タダで見れるテレビ放送と、有料配信や劇場や商品パッケージとを、映像品質面で差別化するコントロールは、今後絶対に必要だと思いますヨ。

 

2020年代の現代。ジレンマの解消を夢見るのではなく、ジレンマの中でどう生きるかを考えた方が、現実的です。‥‥というか、歴代のものつくりの人々も、そうして「世情と融和しつつ」生きてきたのでしょうしネ。

 

 

 

 


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