相互にオフライン

つまるところ、あくまで紙を主体として運用したい派にとって、コンピュータ関連のリソース(「デジタル」の俗称でしばしば呼ばれる)が「オフライン」であって、逆に、ペーパーレスを目指す派にとっては、紙が「オフライン」となり、両者の溝は埋まる気配を見せない‥‥のが、実際のところでしょう。

 

私は、映像技術、そして世界全体の技術転換の傾向から、やがてペーパーレスへと移行するのは必然と思っていましたが、日本のアニメ業界はどうもそうはならない‥‥のを数年のスパンで実感し始めています。

 

 

 

2010年代のアニメ業界の実勢を見続けるうちに、特に私と同世代の「アニメブーム世代」のアラウンド50、世代的には40代〜60代、1960〜1979年の20年間の世代は、ペンタブに移行しないだろうと、悲観視するようになりました。

 

おそらく、「道具に馴染む」余裕・余白・余地がもうない=「今さら新しい道具に変えるのは無理」だと、体がついていかないと諦める人が多いのでしょう。

 

加えて、収入の問題。私の試算では、ペンタブ作画の環境をゼロから整えるには、基本環境で45万円前後必要ですし、Adobe CCなどのサブスクリプションの月額負担も加算されます。「ただでさえ、カツカツなのに、これ以上はもう無理」と諦める意識に拍車がかかります。

*2〜3年後に使い物にならなくなる安いPC一式(10〜20万円)を買っても無意味ですよネ。

 

どんなに目の前に大地が広がっていても、開墾して畑にするまでの気力が40〜60代にはキビしいのです。大きなリスクを犯すくらいなら、今以上の稼ぎができなくても、今稼げている状況を手放さずに持続していこう‥‥と思うのを、誰が止められましょうか。

 

 

 

ただ、現実は現実。

 

アニメ業界の人々のキモチとは全く関係なく、世界的な技術転換、技術進化は、歩みを止めません。

 

現在、フィルムでアニメを作ろうと思うアニメ業界人は、どれだけいる? ‥‥なぜ、フィルムで作ろうと思わない? フィルムでなくても、では「D1サイズ」で作らないのはなぜ? D1だと720x486でものすごく軽くて取り回しも楽ですよ?

 

理由は明白ですよね。‥‥2019年現在の映像産業には、16ミリフィルムでアニメを作ることも、地上アナログ派時代のD1サイズでアニメを作ることも、映像技術の基盤として適合しないからです。

 

時代の経緯を見れば、2020年代に世界規模(世界のネットワーク)で4KHDRへと移行するのは、誰もが容易に想像できます。いきなり、2KSDRで全世界がストップすると予測するほうが難しいです。

 

アニメ制作工程の中で、作画だけが紙のまま残されてきました。作画が紙のままなので、都合、制作進行も紙をどう取り回すかを考え、カット袋運用は続いています。制作終了作品の大量の紙は、制作会社の空間を徐々に、そして確実に、占有していきます。紙の管理コスト(保管場所やスタッフの人件費含め)はかなり高いです。

 

今までのままの意識では、紙運用が時代の進化と逆行し、現場の改善を間接的に阻むのは必至‥‥というか、宿命と言えましょう。

 

 

 

ここで「紙を悪者」とする短絡思考に陥るのではなく、むしろ、紙を使う必然性を考えてみましょう。

 

まずは現在、紙はどのように扱われているか。

 

二値化トレス線を作り出すための、「低解像度インプット」に過ぎません。どんなに紙に絵を描く人間が、描線にこだわりぬいても、そのこだわりのほとんどは処理の過程で喪失します。

 

つまり、紙の「品質面」「表現として」の良さは、ほぼ全て破棄されます。

 

紙だからこそ、この表現ができる

 

‥‥という必然性が全くと言ってよいほど「希薄」なのです。

 

紙を使うことが、技術的・品質的必然ではなく、単に慣習においてのみ必要とされるからこそ、紙を使う説得力が失われるのです。「紙以外では、俺は描きたくない」>「あなたの慣れの問題なのね」‥‥と、簡単に会話が終了するだけです。

 

自分は紙以外は使いたくない‥‥という主張ではなく、紙だからこそこの表現とクオリティが可能だという主張

 

‥‥のような他者を同意させる根拠が、紙の現場には2020年代は必要になってくるでしょう。

 

‥‥だってさ、世間はどんどん先に進んでいくんだから、「自分は昔の方法に慣れているから」という理由では限界はありましょう。

 

確かにこれは紙じゃないとできないことですね。

 

‥‥と周りを納得させる決定的な根拠が、「未来社会の紙」には必要です。

 

 

 

このことは、「デジタル作画」にも全く同じことが言えます。

 

現在、テレビ作品において、ペンタブ作画と紙作画が混在することも多々あるでしょうが、さて、どのカットがペンタブ作画でどのカットが紙作画か、見分けがつきますか?

 

つまり、

 

どっちでもいいじゃん

 

‥‥と言われるような状況に、ペンタブ作画は甘んじているわけです。せっかく、金をかけて環境を用意したのにネ。

 

だったら、紙のままでもいいよね。

 

ペンタブ作画が「紙作画の代用品」である限り、ペンタブ作画は停滞したまま先に進めないでしょう。

 

 

 

紙作画は紙でしかできない次元を実現し、2020年代にふさわしい品質を確立する

 

ペンタブ作画はペンタブでしかできない次元を実現し、2020年代にふさわしい品質を確立する

 

私は、両者ともこれに尽きると思います。

 

どっちかが、どっちかを「オフライン」と認識しているような状況では「共食いして、お互いを殺しあう」だけです。共食いを自覚なしに、2020年代も継続するのでしょうか。‥‥そんなの誰だって避けたいですよネ。

 

自分のメインウェポンのポテンシャルを発揮して、2020年代の映像新基準に立ち向かっていく気概が求められます。

 

 

 

私はiMac 5Kが発売された2014年秋以前は、どのように紙で4K品質を実現するかに取り組んでいました。なので、実は、紙が4K時代に生き残る「基本コンセプト」は私の中では出来ています。

 

私は今、ペンタブ〜iPad Pro 12.9インチへとメインの道具を持ち替え、どのようにペンタブで4K時代を切り開くかを考えています。紙に戻ることは、少なくとも仕事上ではありません。紙を4Kに活かす方法は封印しました。

 

紙を使い続けたい人が、4KHDR時代の紙運用を、自分で考える。

 

紙をどうしても使いたい人が、どうやったら2020年代、4K時代に、紙を使い続けられるか、紙のポテンシャルを4Kにふさわしく活用する方法論を、「自分ごと」として考えるしかないです。他人任せではどうにもならんスよ。

 

「デジタル」のことは誰か面倒見て。‥‥なんてやってるから、紙はどんどん劣勢に追い込まれるんじゃないですかね。

 

 

 

セル時代のアナログの絵はいいよなあ‥‥なんて、何を見て言ってるのか。

 

今、目にする画像・映像は、よほど特殊な環境でもない限り、全てデジタル標本化された「デジタルデータ」ですよ。

 

つまり、人目に晒される時は、すべてデジタルデータになっていることを、改めて認識し、どうすれば昔の方法の良さを最終的にデジタル画像映像データに定着できるかを、冷静に突き放して思考することが必要です。

 

昔のアニメ〜セルとフィルム時代の映像の風合いが良い‥‥と思うのなら、プロジェクトとして立ち上げて再現方法を確立すれば良いのですが、そこまでしようと思う人はいませんよネ。ツイッターで昔話に花を咲かせて終了です。

 

おじいちゃん・おばあちゃんのノスタルジーに終始するから、進展しないのです。井戸端の外には、実が本人たちが出たがらないのです。

 

 

 

業界がなんとかしてくれる。でなければ、政府がなんとかしてくれる。‥‥もうそういうトコロに頼って依存するのはヤメましょう。

 

貧困から脱し、未来も紙を使い続けるのなら、自分たちのアイデアと実行力で、紙運用派は、紙を2020年代の4K時代に魅力あるものへと変えていけば良いです。

 

ペンタブも同じです。紙の代用品どまりで、明るい未来など想像できないでしょ? 今は代用品扱いでも、水面下では着々と準備と強化を進めて、ペーパーレス派は、近い未来にはペンタブでしかできないアニメを作りましょう。

 

双方が双方をオフライン認定して食い合うよりも、自分らのポテンシャルを活かして競い合ったほうが、作品作り、ひいては産業としても活気付くと思います。

 

考えを変えていく勇ましいココロを、2020年代は皆が持てると良いですネ。

 

 

 

 


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