生き残る

1996年から2005年に至るまでに、業界がどのように変化したか、もっと言えば、どのような仕事が生まれて、どのような仕事が消滅したか、さらには、どのような人が頭角を現し、どのような人が去っていったかを、よ〜く思い出して考えれば、2020〜2029年がどのようなことになるのかは、全く同じではないにせよ、想像に難くありません。

 

1996年からの10年間で、淘汰された人は、消滅した工程の作業者だけではなく、コンピュータの知識を持つ人も現場から姿を消していきました。「コンピュータにちょっと詳しい程度では、やがて淘汰される」という事例です。

 

クリスタの使い方がわからない、TVPの使い方がわからない。‥‥そんな状態で何年も停滞するわけがないです。やがて使い方を皆が覚えて、覚えた後は自力でもっと突っ込んだ使い方を実践して、「現場の自己同期」よろしく、先発隊の人間が後進の指導をするようになります。

 

つまり、中途半端な知識では、やがて用済みとなって、技量を獲得した新しい人々に駆逐される‥‥ということです。現場が「もっと高度な技術を」と求めた時に、中途半端な立ち位置のアドバイザーやインストラクター(開発元所属ではなくあくまでユーザ側のアウトサイダー)では太刀打ちできなくなるからです。

 

アニメ制作会社側のスタッフでは、ソフトウェア会社の開発部門と直接の組織関係をもつわけではないですし、内部的な発言権も影響力も実質存在しません。強く働きかけたり、一緒にソフトウェアを盛り上げることは可能でしょうが、立場はあくまでアウトサイダーですし、アウトサイドだからこそ、開発元に対して忖度なしに要望も出せましょう。

 

例えば、私は今、4KやHDRで、業界より先行している立場にいるでしょうが、その「先行していることそのもの」で商売できるなんて、全く考えていません。他人よりちょっと先行しているからって、それで生きていけるなんて、甘い考えは抱けるはずもなし。‥‥まあ、2000年前後の「デジタルアニメーション」の時にそうした感慨は経験済みですし、そもそも過酷なアニメ作画現場出身なので、簡単に夢を見る気にはなれんのですヨ。私が考えているのは、もっと全然違うところにあります。

 

他人より、少々ソフトウェアの扱いが先行している程度の立場で、生き残れるわけがないのです。

 

 

 

では、生き残っている人はどんな人か。

 

たとえ「いまどきで最新」ではなくても、確かな技術力を身につけた人は、部署を変えても生き残っている人が多いように感じます。

 

どんな状況であれ、作画なら絵の巧さ、コンポジットなら画面作りの美しさ・かっこよさは、当人のスペシャル=技術の「底力」を他者に認識してもらうのに極めて有効です。

 

もちろん、あまりにもオールラウンダーゆえに「浅くて広い」人も、スペシャリストと呼べるでしょう。「対応力の鬼」のような人も、1つの専門ではなくても、スペシャルと言えます。

 

 

 

何かのスペシャリストであることは、生き残りの必須条件です。

 

作画を自己流でちょっとかじりました、並撮にT光とディフュージョンをつけることくらいならできます‥‥なんて、長い目で見れば、当人にとって役に立たんのです。周りが初心者の頃に、少々頼りにされるだけ(マニュアルのショートカット代わり)で活躍期間は終了し、「いなくても良い人」認証されます。

 

残酷ですが、1996〜2005年を見てきた事実です。

 

 

 

スペシャルな技能は、生きていく上で、頼りになるんですよ。

 

皆が憧れるスペシャルでなくても、何らかのスペシャルで良いのです。一家言で良いのです。

 

スペシャルを獲得した後は、そのスペシャルをどのように自己プロデュースするかです。

 

スペシャルを持たないのに、自己プロデュースしても早々に頓挫しますから、何よりも「原動力」となるスペシャルな要素を自分の内部に形成することです。

 

そして、スペシャルを獲得した後は、錆びないようにメンテすることです。

 

 

 

パソコンが社会に浸透してきた頃、「あなたもプロなみ」「皆がクリエーター」なんてはしゃいだものですが、そんな簡単にプロのクリエーターになれるわけないじゃん。

 

厳しいこと、辛いことは、極力回避して、中途半端な知識と技量のままで、周りから頼りにされるはずがないです。もし頼られるとすれば、町内会とか親戚筋の素人集団の中でのみ‥‥です。

 

業界の技術転換時には、業界の多くの人が「一時的に素人」になるのですが、やがて皆が技量を身につけますから、「クリスタの使い方」「TVPの使用法」みたいな知識だけのアドバイザーとして生き残っていくのは長期的には難しい‥‥というか、不可能ですよネ。過去が物語る通り。

 

アニメ現場におけるコンピュータ活用のスーパーバイザーになるのなら、誰よりも映像技術の動向に敏感で、メーカーさんとも仲良くして最新の機材に触れるような立場にならないとダメです。そのためには、アニメーションの技術をまず大量に身につけていないと、その立ち位置には立てないないですよネ。‥‥ゆえに、コンピュータを昔から使っていた程度の経歴、アニメファンの延長線上では太刀打ちできません。

 

2020年代の10年間に、いつものように、淘汰が繰り広げられましょう。どんなに今、クリスタやTVPに詳しくても、それだけでは生き残れません。小手先の知識ではなく、アニメファン心理の寄せ集めだけでもなく、技術として確立された一家言を持てば、頼りになる存在となりましょう。

 

 

 



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