台とカメラ

4Kドットバイドットでアニメ作品のコンポジットをすると、大判は「何も工夫しないで組む」と2〜3万ピクセルに到達し、「内部制限」のエラーで進退極まります。なので、コラップストランスフォームを賢く使った「撮影ではなく、コンポジット」の技術で対処することが求められます。

 

*アニメは実写と違って、カメラを大きく振れば振るほど、大判になって、コンポジションが広大になる。

 

 

 

 

 

*かと言って、カメラワークのなすがままにコンポジションサイズを単純に大きくすると、以下のような「内部制限」に引っかかる。

 

こうした限界を突破するには、巧妙に「巨大サイズを避ける」コンポジット方法が必要です。拡大縮小によるラスタライズを避け、元素材の情報量を殺さずにコンポジットするわけです。After Effectsですと、コラップストランスフォームを賢く使うことで、野放図に大判サイズの素材を作らずとも「2〜3万ピクセル相当」の大判コンポを組むことが可能です。‥‥まあ、大変なのは変わりないですけどネ。

 

「コラップストランスフォーム」とは、他のソフトウェアでは「パススルー」とか「通過」などとも呼ばれ、プリコンポーズしてもラスタライズしないでそのまま扱うオプションです。大きな解像度の素材を大きな解像度の情報を保ったまま縮小したり、ベクターをベクターのまま扱ったり、内部のレイヤー構造やZ軸をそのまま受け継いだりと、コラップストランスフォームはAfter Effectsを使い慣れてくると非常に便利で高品質なオプション機能です。

 

コラップストランスフォームを使いこなす技量は、After Effectsの高度なコンポジットを目指すなら獲得しておきたいものです。

 

 

 

しかし。

 

コラップストランスフォームで、通常なら3万ピクセルのキャンバスを4Kのまま抑えて「内部制限エラー」を回避しても、After Effects自体の設計の古さが仇となって、「できるのにできない」障壁にブチあたることがあります。

 

フィールドが広大過ぎて、拡大プレビューが追いつかず、制御のハンドルが掴めない‥‥です。

 

4KでXYの平面でコンポジットしているうちは気がつかないのですが、Z軸を使って立体的な「寄り引き」のカメラワークをおこなうと、Z軸の距離は2万3万、時には10万ピクセルに到達することがあります。

 

数万ピクセルになってくると、オブジェクトのワイヤーフレームも小さくなり、制御ハンドルも比例して小さくなります。‥‥つまり、「掴めなく」なります。

 

「プレビューを拡大すればいいじゃん」と思う人は、まだ未体験の人。

 

After Effectsには拡大やスクロールの制限があり、Toon Boom Harmonyのようにユーザの思うままに拡大したりスクロールすることができません。おそらく、After Effectsの開発者の方も、1%以下の拡大率など想定していないのでしょう。

 

4Kになれば、XYだけでなく、Z軸も大きくなります。むしろ、Z軸のほうが巨大な数値になりやすいです。‥‥まあ、アニメで4Kのドットバイドットを作る事例自体がほとんど存在しない現在、Adobeにもフィードバックがかなり少ないのでしょうネ。

 

 

 

なので、アニメ撮影台風の「台を動かすカメラワーク」ではなく、「カメラそのものを動かす方式」で切り抜けることになりますが、カメラのコントロールは、台を動かすのとは一味も二味も違って、様々な「思考の切り替え」が必要になります。

 

画角の湾曲は、一番厄介です。

 

今までの「アニメの撮影」では画角の湾曲を意識することなく、フレーム指定に合わせて上下左右前後(前後は拡大縮小の場合もある)に台を動かしてカメラワークを実現していました。

 

しかし、その方法ですと、3万ピクセルのZ軸ともなると、制御ポイントが遥か彼方に遠くなって、前述の通り、ハンドルが掴めなくなり、実質制御不能に陥ります。

 

なので、カメラのティルトは最大限に抑えて、カメラの画角による湾曲を抑制しつつ、「カメラオブジェクトを動かしたカメラワーク」を実践して切り抜けることになります。

 

 

 

カメラを動かせば、カメラに制御ポイント・制御ハンドルが追随するので、掴んで操作することが可能です。

 

仮想のカメラとはいえ、ちゃんと「広角レンズで近寄って収める」「望遠レンズで離れたところから収める」のようなバリエーションも可能です。レンズの口径を変えれば、当然、Z座標ゼロから離れた前後の「見た目の大きさ」も変わってきますし、F値と被写界深度によるボケも変わってきます。

 

ちなみに、「Z軸なんて使わずに、スケールの拡大縮小でいいじゃん」と考える人もそれなりに多いように思います。ただ、それだと、全くの平面の拡大縮小になってしまって、奥行きがでません。昭和テレビ作品のアニメ撮影技術から脱して、2020年代にふさわしいコンポジットをおこなうには、XYZ全軸の舞台セットの奥行き表現は標準技術とすべきでしょう。

 

 

 

現在のアニメの現場は、ペイントマン一択でペイント作業をしていますが(昔はアニモとか色々あった)、ペイントマンが動作しなくなる未来の恐怖は潜在的に持続しています。レタススタジオが動作しないOSにMacもWinも切り替わった時、アニメ業界はどのように切り抜けていくのか、各所のリーダーたちの手腕が問われます。

 

同じく、アニメの撮影は、延々と「フィルム撮影台の模倣」を基本としたまま、パーティクルとかテクスチャ貼り込みなどの上乗せ機能追加で現在に至っています。タイムシートがまさに物語っているように、2019年の今でも、全くもって、Z軸の活用はできないまま停滞しています。

 

作画に限らず、ペイントも撮影も、旧態依然とした状態から抜け出せず、2020年を迎えることになりますが、社会全体は刻々と未来へと進んでいきます。

 

 

 

旧態化した現場にXデーが来る‥‥なんて考える人もいるようですが‥‥。

 

Xデーなんてありません。徐々に、一社消え、二社消え、あの人が去り、この人も去り‥‥と、時代の変化、世代交代は、緩やかに進行します。

 

例えば、VHSが消えた時、ある日を境に全世帯で一斉にVHSが廃棄されたでしょうか? 徐々に少しずつ、VHSは消えていきましたよネ。

 

フィルム撮影台を廃棄した時だって、「決行日」を決めて、全社一斉に廃棄したわけではないですよネ。

 

個人Webサイトのジオシティーズだって、何かを発信したい人はSNSに移行して、2010年代前半には各所で更新が滞るようになって、徐々に過疎化して放置されていったのです。Yahooブログ(ジオシティーズ含む)の終了は決してXデーではなく、廃墟化する中で、いよいよサービスも止まった‥‥というだけのことです。

 

ユーザがたくさんいるのに現行の状況を強制的に停止したのは「地上アナログ」テレビ放送くらいしかパッと思い当たりません。アニメ業界の場合、OSの更新やセキュリティアップデートをストップしてでも、旧32bitソフトウェアを使い続ける現場は多いと思います。

 

Xデー、審判の日で、何かが一斉に滅亡するなんて、アニメかマンガかSFアクション映画の話です。実は気が抜けるほど緩やかにのんびりとしたペースで衰退は進んで、数年単位で滅ぶものです。後になって、「あの出来事が、終わりの始まりだった」と述懐することはあっても、判りやすい「裁きの日」が来るわけじゃないですヨ。

 

必要なのは、一見のんびりとした移り変わりの兆候を見逃さず、然るべき準備と布石を打つことです。

 

 

 

誰かが新しい道筋を最初に開いたとして、その道に進めるのは、既に似たような準備している人、もしくは変化に順応できて柔軟性の高い人であって、全員参加で新しい道を歩いていけるわけではないです。

 

After Effectsを「アニメの撮影」どまりのツールにするか、未来の様々なコンポジット作業の足場とするかは、まさに当事者の意志次第、未来のビジョンそのもの‥‥ですネ。

 

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM