アニメを作れる自分

私は20代の前半の頃には、「アニメの作画しかできないカラダになるのは危険」と感じ始めていました。絵を描くのではなく、あくまでアニメの線画を描く自分に対し、「絵描きとして」の危機感を強く感じたのです。

 

絵を描ける自分、画を作れる自分、映像を作れる自分を目指さなければ。‥‥と強く思ったものです。

 

なので、20代の頃に仕事とは切り離した自分の時間で、レイアイトを描き、線画を描き、コピー機で線画をセルに転写し(油がつくけどできるのです)、セル絵具で色を塗り、背景をアクリル絵具で描き、一眼レフカメラ(もちろんフィルム)とカメラ固定スタンドで撮影台を組み、市販の光学フィルタや自作のレンズフィルタをカメラにセットし、撮影して現像(現像だけはカメラ屋さんにお願いしました)して、ひと通りの工程を実践してみました。

 

動く映像が作れたわけではないですが、スチル(静止画)でも自己完結できるノウハウを得ようと考えて行動したのです。‥‥その行動がそのまま「お金」に直結したわけではないですが、現在アラウンド50になった私の強固な足場になっていることは自覚できます。20代のその頃の行動が、間接的にせよ、今の自分に恩恵を与えていることを実感します。

 

 

 

自分の役職‥‥というか「存在価値」が、作業工程の部分的な1箇所に留まる‥‥というのは、もしその作業工程に変化が生じた際は、自分の存在価値を失うことでもあります。

 

例えば、第2原画。

 

原画ではなくて、第2の原画。

 

第1原画がなければ成立しない役職です。誰かが動きのおおもとを考えて、誰かがポーズを考えた上で、その後で初めて仕事が発生する役職です。

 

いわゆる「2原」に、自分をどっぷり浸からせて、本当に良いのか、‥‥少なくとも私は、もし「2原をメイン」にしてしまったら、自分の将来が危ういと強く感じるでしょうネ。

 

第2原画は、あくまで近年の「作画を手分けしないと間に合わない制作事情」から生じた役職・作業工程であって、この先の何十年にわたって存続する保証などどこにもありません。

 

何もないところから絵を描く能力があれば色々とツブシが効きますが、制作事情に合わせて2原の作業経験をどんなに積んでも、絵をゼロから描くことに奥手なままでは、応用も発展も困難です。

 

第2原画は現在の制作体制には都合が良いですが、絵を描く本人の未来の糧になるかというと、「絵をゼロから考えて、動きをゼロから考える」という面では弱いです。第2原画だけやりたい‥‥という人もそこそこ居ると聞いたことがありますが、人手不足を埋める方便に自らの能力と時間を率先して差し出すのは、私の感覚ですと、あまり好ましくない‥‥と思うんですよネ。

 

第2原画の作業内容は、絵を描くこと全般から見れば、かなりの「下位分岐」であることを実感すべきと思います。第2原画は今や、現在の制作体制を支える重要な工程かも知れませんが、制作体制など時が変われば姿を変えます(実際、私が原画を描き始めた1980年代は第2原画なんてなかったです)ので、時代の変化に耐えて生き残る資質を獲得すべきと考えます。

 

第2原画の立ち位置を考えてみると、絵を描く、絵を動かすという様々な要素の、恐ろしく限定的な1部分であることがわかります。

 

絵を描く人間、絵を動かす人間、さらには映像を作る人間として、自分を見つめ直した際、以下のような広がりを得たいと考えても、全然「欲深」ではないです。

 

 

「そんな、ひとりで一度に、何でもできるわけない」‥‥のは、その通りですが、「自分の能力の選択肢」を増やしておいて、様々な場面で「使い分け」ができるようにしておくのです。

 

第2原画しかできないのと、色々出来る中で今は第2原画を作業している‥‥のとでは、大きな差があるのはお判りでしょう。

 

‥‥まあ、第2原画だけしかできない人なんていないでしょうが、アニメ業界の枠内の、しかも線画の作画オンリーでは、自分の未来は果たして順風満帆となるかは、よ〜く自問自答してみるべきです。来年からの30年間は、1990〜2020年の30年ではなく、2020〜2050年の30年であることを、しっかりと自覚しましょう。

 

制作現場のブラックを批判すると同時に、現在の制作体制にどっぷり浸かっている自分自身にも、批判の目を向けたほうが良いです。

 

ゼロから絵を描ける。

 

ゼロから映像を作れる。

 

まず自分の中の大きな「アニメを作る」エネルギーの出力源を有した上で、その先に、原画だコンポジットだイメージボードだデザインだのを連結させていけば良いのです。

 

完成した絵をゼロから作り出せることを目標にすべきです。線画だけに終始するのではなくて。

 

 

 

何らかの制作工程があって、その中で自分の能力を発揮して報酬を得るのは、それで良いと思います。

 

危ういのは、特定の制作工程の中でないと、生きていけない状態です。「それしかできない」状態です。

 

「絵を描いてくれませんか」‥‥と依頼されて、原画マンゆえに線画だけ描いて渡したら、「あれ? これは作業途中の下書きですか? 色は塗らないんですか?」と言われて、「いや、自分は作画の人間なんで」としか答えられないのって、非常にアニメ現場ズレしていて一般の認識から外れています。そして、とても不甲斐ない状態でもあります。

 

「自分は線画を描き続けてきたけれど、絵は描いてこなかったのかも知れない‥‥」

 

絵を描く‥‥とは、普通は背景も人物も色を塗るところまでを言うのです。キャラの線画だけで済んでいるのは、アニメ制作現場の中のかなり特殊な状態です。

 

 

 

もし、アニメを作れる!‥‥と言うのならば、線画だけしか描けないのはウソになりますよネ。文字通り、アニメを作れる状態、背景を作って、キャラを描いて塗って動かして、コンポジットもする‥‥という全ての工程をできるようになってはじめて「私はアニメが作れます」と言えるのです。

 

そんな無茶な‥‥。全ての工程を自分ひとりで‥‥なんて‥‥。

 

であるのなら、「アニメが作れる」と言ってはダメなのです。あくまで「アニメ制作現場の線画を描いています」と言うべきでしょう。

 

たったの1カットだって、ひとりでアニメ映像を完成できないのなら、アニメが作れるとは言えませんよネ。

 

 

 

うわ〜、ヤベェ‥‥、俺って、アニメを作っていた気になっていたけど、実際のところは、たとえ1カットでも自分ではアニメ映像を完成できない奴だったんだ‥‥

 

実は、こうした自分に対する限界を痛感したからこそ、20代の頃の私は、自分で描いて塗って撮影までしてみましたし、After Effectsの機能が発達した2003年頃にはカットアウトのようなことも考えはじめましたし、2000年代では2K、2010年代では4Kをゼロから作る取り組みもしてきました。

 

真の意味で「アニメーターでありたい」と思ったのです。

 

絵を動かして映像として完成させる人間。

 

原画マンにとどまるのではなく。

 

 

 

で。

 

こんなに苦労してきた。こんなに頑張ってきた。‥‥なんて自慢話をしたいのではなくて。武勇伝なんかどうでもよくて。

 

皆さんも、やりませんか?

 

現在の技術をふんだんに活用して、自分の能力を広げていきませんか?

 

絵全般、映像全般に対して「ツブシ」の効く人間になって、アニメ業界だけでなく、色々な活躍の可能性を広げてみませんか?

 

機材は適切なものであれば構いませんが、例えばiMac 5KとiPad Pro 12.9で、自分で描いて塗ってコンポジットすれば、業界の都合に左右されず、「アニメを作る基礎能力」を手に入れて、自分の資質をどんどん広げていけますよ。

 

自分の資質を広げておけば、結構色んな場面で「あ、それ、私できます!」と名乗りを上げて、新しい道を開拓できるものです。

 

依頼があったら‥‥なんて考えていても、そもそも自分の資質が広がってなければ、依頼なんてどんなに待っても来ませんヨ。

 

ぶっちゃけ、現在の制作現場のアニメーターには、新しいプロジェクトや新しいタイプの仕事は、かなり振りにくいです。原画や動画の流儀は、新しい技術には要らないですし、逆に邪魔になることもあるので、「原画を描ける人」ではなく「絵を描いて動かせる人」を欲しています。

 

仕事のチャンスは輪番制だと勘違いしていると、いつまで経ってもチャンスは巡ってきません。チャンスはどんどん他の誰かにスキップしていきます。

 

作画専門です。今は2原メインです。‥‥という人と、作画を主にしていますが、色々と自分なりに試して絵を作って貯めています。‥‥という人のどちらに、新しいタイプの仕事がいくのか、ちょっと考えただけでも判りますよネ。

 

前にも書きましたが、今までのキャリアはそれはそれで良いのです。

 

従来アニメ制作現場でのキャリアは既に獲得しているのですから、そこにプラスして、「自分だけでもアニメを作れる」状態へと進めていけば、様々な場面で活きてくると思います。

 

 

 

アニメ業界に「忠誠」を誓って、では、アニメ業界は「恩賞」をあなたに与えてくれますか?

 

アニメ業界はアニメ制作現場で働く人々の「影」であって、実体が存在して何かの保証をしてくれる存在ではないです。

 

アニメ業界をあてにしたところで、ボロ雑巾になってしまった自分の未来がまっているだけですよ。

 

なのに、依然として、アニメ業界のシステムに大きく依存するだけでしょうか。アニメ業界の成り行きに漠然と期待するだけでしょうか。

 

せっかく絵や映像を作る仕事(それが部分的な工程であれ)を身につけたんだもん。それを様々な角度に向けてさらに育てて活かすのが、自分に対しての良き発展の方法だと思うのです。

 

今、2原を描いている人、アニメの撮影をしている人は、自分の20年後、30年後を思い描いてみましょう。

 

自分から原画作業をとったら、何も残らなかった。自分からアニメの撮影をとったら、何も残らなかった。‥‥なんていう未来を望みますか?

 

今から自己能力開発に着手して、自分が40や50になった時に幅広い活躍ができているように、自分の未来を変えていきましょう。

 

 

 


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