技術の選択肢を増やす
新しい技術を導入するとき、意外に多くの人は、「次はソレに完全転換」と思い込みがちです。まるで「改宗」でもするかのごとく。
しかし、技術の運用面から見て、今まで蓄積した技術経験をあっさりと全て破棄して、新しい技術へ乗り換えるのって、かなりリスキーです。
カットアウトの導入に関しても、完全にカットアウト化するのではなく、ハイブリッドで従来方式と並列で導入すれば良いです。実際、欧米のカットアウトは、完全に入れ替わって運用しているわけではないそうです。カットアウト7割、従来方式が3割と聞いたこともあります。
日本の場合、1枚ずつ描き送って動かす方式が現役で、しかも高度に発達していますから、欧米の割合を鵜呑みにする必要もないですし、そもそも完全に移行する必要も感じません。
問題なのは、
何をやるにも、今までの方式、1択。
‥‥という状態です。
今までの方式しか選択肢がないのは、様々に映像制作技術が発達した現在において、ひいき目に見ても偏った状態であり、まるで「時代の旨味」を活かせていません。
何を動かすにも、1枚ずつ描く。そうでなければ「3D」。‥‥大雑把すぎる運用方針だとは思いませんか?
日本のアニメ業界は、もっと世界の風を体に感じて、心を洗うべきだと感じます。
欧米に感化される必要はないですが、あまりにも「殻に閉じこもり過ぎ」なのは、自覚すべきでしょう。
殻に閉じこもっていると、色々な機運を逃します。例えば、報酬の問題。‥‥動画の単価は、あまりにも安いままですが、今までの殻の中では、単価の改善の機運などどこにも存在しませんよネ。
1枚ずつ描く方法に囚われていては、「報酬の改善など絶対に不可能」です。1枚ずつ描くのは、とても手間とコストがかかることを、改めて認識して、他の技術も取り入れた上で、従来作画の報酬を格段に向上させる方法を考えるのが現実的です。
過去の方法論のまま「単価が上がれば」とずっと念じていても、一向に単価など上がりません。念じればいつか願いが叶うなんて、ファンタジックな宗教みたいなものです。ファンタジックではなく、プラグマティックに、未来を考えましょう。
*まあ、新しい技術を模索しない人々にとっては、過去の方式に執着することがプラグマティックなのかも知れませんが。
全部を変える必要などないです。
新しい方法を取り入れてみれば良いのです。
自分たちがどれだけ「思考的に硬直しているか」を自己批判し、新たな方法論を増やせば良いです。
思考の柔軟さを、意識的に取り戻すこと。
アニメ業界の窮状は今に始まったことではないにせよ、昨今の濫作状態に追い詰められていると、何かとこわばってしまいがちですが、追い詰められている時こそ、年長者の柔軟性・しなやかさが問われます。
年長者は「若い頃の意識のまま、歳だけとった」状態に甘んじるのではなく、意識的に「年長者は何をすべきか」を踏まえて、お互い頑張りましょうネ。