流儀に思ふ

フィルムやセル時代のアニメ制作技術の「流儀」に軸足を置いたまま、コンピュータの様々な機能を欲張ると、現場での指示や取り扱いや運用も混乱が生じますよネ。センチミリとパーセントと0F〜240Fとピクセル寸法‥‥と、コンポジット(撮影)のカメラフレームを指し示すのに、どんだけ単位が混在すれば気が済むのやら。‥‥もはや、フィルム時代の「100F」という言い方は、もう廃止しても良いと、少なくとも私は思いますけどネ。

 

実際、現在作業している4KHDRフォーマットでは、「100F」「80F」なんていう呼び方は全く使っていませんが、フレーム指示で支障をきたしたことは皆無です。拡大縮小のパーセントで問題なく運用できます。

 

新しい技術を基盤としたアニメ制作は、試行錯誤の連続ですが、ゆえに、旧来の形骸化した作法や、今や踏襲する必要もなくなったフィルムや紙時代の技術的慣習をきっぱりと断ち切れます。何ミリ何センチとか、100Fだ80Fだなんて使わずに、フレーム指定か比率指定なので、とても明快です。

 

 

 

フィルム撮影台時代の用語を廃止しないまま踏襲し、一方で「デジタル」時代の「便利そうな」機能を場当たり的に取り込むことで、「何をどのように作業すれば適正か」がわかりにくくなって、結局「何をやろうとしてるのか」直感的に状況を把握できず、作業事故も増えます。

 

もうフィルム撮影台は無いのですから、コンピュータでのコンポジットの扱いを「ネイティブ」として、フィルム撮影台時代の用語はそろそろ引退させてあげても良いんじゃないですかネ。

 

例えば、After Effectsでコンポジットする時に、どのような素材の状態になっていれば適しているか、古くて形骸化した用語や段取りなど間に挟まないで、あくまで「今の技術の合わせて、ネイティブに」思考すれば良いのです。

 

 

 

ネイティブなアプローチ。

 

例えば、After Effectsでは、旧来の「TU、TB」のカメラワークと同等の効果を実現する方法は、少なくとも3つあります。

 

まさに、TU、TB。トラックをアップダウンさせる方法。背景やセルなどを配置した「トラック=土台」「芝居場」そのもの(=プリコンポーズして1つのレイヤーにまとめたもの)をZ軸移動でカメラに近づけたり離したりする方法です。まさにトラックのアップダウンです。

 

次にトラックに対してズームする方法。スケール(拡大縮小)でトラックの絵の内容をズームする方法です。XYZ座標「0,0,0」に全ての素材を配置している場合、スケールのキーフレームでTU、TBを処理しても何ら問題は生じません。私は位置のキーフレームだけで3軸(左右上限前後拡大縮小)を制御したいのでスケールは使いませんが、スケールでTU、TBを処理する人は結構いらっしゃいますネ。

 

3番目は、カメラを動かす方法。アクティブなカメラをトラックに近づけたり離したりして、絵の内容を大写ししたり引いたりするやりかたです。私はマルチプレーンな芝居場で、カメラをクレーンやドリーやドローンのように動かしたい場合は、この方法を使います。

 

 

 

もう20年近く、After Effectsを「撮影台の代用品」として使ってきましたよネ?

 

そろそろ、脱却しても良いように思います。

 

 

 

回りくどい手数を踏んで、大して効果もなく、手間だけがかかるやり方に、「もっとストレートにシンプルに組めば良いじゃん」と感じる人も徐々に増えていると想像するんですけどね‥‥。

 

Z軸の前後の奥行きを「TUとTB」で操作することに、限界を感じているアニメーターもそこそこ居ると思うんですけど‥‥どうでしょう?

 

Z軸に限りません。コンポジットのレイヤー構造や処理についても、フィルム撮影台感覚を踏襲し続けるあまり、セルワークだけで解決しようと、思考が凝り固まっているようにも思えます。

 

例えば、複合組みの髪の毛の作画やコンポジットに付き合わされるのは、正直ウンザリしてませんか?

 

髪の毛に眉や目を透けさせるなんて、新しい技術では何のストレスもないです。透かしたいように自由に透かせます。しかも綺麗に透明感を表現できます。どんな風に透けさせたいか、濃さやエリアや色彩変化などいくらでもコントロールできます。

 

*こうした処理は、アニメ制作技術の根本が変わらないと無理なんだよね。

 

 

「髪の毛のなびきと目パチのジレンマ」はそもそも、髪の中に直に眉や目を描き込む時点でアウトなんスよ。そのやり方を変えなくちゃ、延々と「目パチするごとに髪の毛のセル素材を調整する」方法に追われるだけです。キャラ表で髪の毛が透けているデザインで、さらには目パチのタイミングは演出さんでも変えるのですから、原画マンに文句言ったって何の解決にもならんです。

 

未来のアニメ制作現場は、「変える」んじゃなくて、「作り直す」必要があるのかも知れません。

 

でなければ、昔の流儀のマイナス部分を多く引き摺り続けましょう。現場のスタッフが他の工程のスタッフに向かって、あーだこーだ苦言を呈しても、そもそも土台が腐ってそこらじゅうで地盤沈下しているのですから、ひどく荒れた災害現場で家庭用掃除機でゴミやホコリを吸い取るようなものです。

 

欧米のアニメ制作において、カットアウトが台頭したのは、昔ながらの描き送りの作画が一旦滅んだから‥‥と、欧米スジの人から聞きました。

 

カットアウトに限らず、Z軸のカメラワークも、複合組みなど発生しない明快シンプルなレイヤー構造も、旧来の現場に導入するのは無理でしょう。一旦バラして仕切り直して、人を集めて教育も新たにおこなって初めて、新しい技術の導入は成功するのかも知れません。古い思想のままの現場に、新しい技術を導入したところで、さらなる負担増を招く結果になるでしょう。

 

さて、未来のアニメ制作現場。

 

どうなっていくことでしょうね。

 

 

 

 


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