いこか、もどろか

4Kフォーマットでアニメ制作の作業をしていると、つくづく2Kの現行フォーマットが負担の軽いものだったか思い知ります。ミッフィやのらくろのようなキャラを4Kで作るのは、さして困難にはならないでしょうが、いわゆる「ジャパニーズクオリティ」を体現しようとすると、4Kのピクセル寸法は作業速度に痛烈な負担となります。

 

わたし的には、まるで時計の針が20年前に戻ったような感覚です。マシンやソフトのことごとくが、役不足、能力不足となって、問題直面と乗り越えの日々です。

 

例えば、下図。‥‥‥ここまで痛快にレンダリング失敗してくれると、かえって清々しいわ。

 

 

 

メモリ64GB、Vegaの16GBのGPUの、iMac Proでオペレーションして、ゴミ箱型Mac Proにレンダリングを投げたら、このありさま。

 

「1秒」で失敗とか、「付け入る隙もなし」という感じですが、上図のエラーはGPUのメモリ不足ということが判明したので、プロジェクト設定のGPUの設定を変えれば「時間は余計にかかるものの」成功します。

 

 

 

 

8時間とか17時間とか、2Dのアニメだと、懐かしいレンダリング時間だよネ。1990年代後半〜2000年代前半を思い出すわ〜。72時間とか昔はあったから、17時間でもマシだと思います。

 

1フレーム5分のレンダリングは、重い表現内容をカットアウトでやってるので、相当時間がかかっています。しかし、線を一本ずつ全コマを作画してたら、こんな時間では済むはずもないです。

 

iMac Proでは以下のような賑わい。

 

 

棒グラフが真っ黒な時は100%の使用率です。

 

20個のスレッドが「働いてまっせ!」とアピールしておりますネ。After EffectsもマルチコアのCPUを賢く使えるようになったんですネ。

 

 

 

* * *

 

 

 

映像制作が「4Kあたりまえ」になる時、アニメの制作技術は大きな曲がり角‥‥というよりは「進むか、戻るか」の二択を迫られると感じます。これはすなわち、アニメーターやスタッフ個人の問題だけでなく、アニメ制作会社の「未来の進退」に直接的に作用します。

 

つまり「経営を存続するか、廃業するか」です。

 

アニメ制作会社は、10年後、20年後においても、1.5K前後の絵をアップコンして作っているのでしょうかね?

 

色々なケースを考えてはみるものの、それはないと思います。淘汰され廃業することになると思います。「昔のアニメの作り方は、もう時代に合わなくなった」と。

 

旧作品をスマートスケーリングで綺麗にリマスターして、4K時代に復活させることは今後増えると思います。

 

しかし、新しく作る作品を、今まで同じように、A4用紙150dpi前後でスキャンして作る方法は、4K8K時代には通用しなくなるばかりか、昔の方法で作ったとしても未来の社会的な背景ゆえに継続が厳しくなると思います。

 

現在はまだ、1.3〜1.6Kの完成映像、2Kにアップコン‥‥という方法がアニメ制作会社のスタンダードですが(実は2Kでもドットバイドットではないことが多い)、2020年代以降においては、多大な人件費をかけて、2K程度の映像を作る事自体がナンセンスになるように思います。

 

ちょっと先の未来に「小サイズ」「昔のサイズ」と認識される2Kの映像を、アニメ制作大軍団でお金をかけて作る「生産効率」の低さは、様々な場面で問題化するでしょう。大軍団で制作し続けるなら、最低でも4K制作能力を持たないと、2K未満では魅力が乏しいです。

 

 

 

「機材が進化すれば」

 

‥‥と思いがちですが、機材の進化の恩恵は、「レンダリング時間が速くなって待ち時間が改善される」「レンダリングが失敗しない」ことであって、絵を描いて動かして塗って完成画を作る「人の手で生み出す」工程にはほとんど関係しません。

 

描く内容も4Kに合わせて変わりますが、機材の進化は描く内容まで直接的には関与しません。「ふさわしい絵」を作り出すのは、あくまで人間です。

 

どんなに機材が進化しても、描いてないディテールが自動で足されることはないです。4Kにふさわしい絵は、人間の手で描かないと生成されません。機材を更新したからといって、4Kの絵の内容が自動で出来上がるわけではありません。

 

人間の手だけが、4Kの絵を描き得るのです。

 

つまり、大変だったアニメの絵作りが今まで以上に大変になり、もはや1枚200円程度で描いて塗っていた「アニメ業界の業態」自体が立ち行かなくなります。‥‥2Kの今だって、水面ギリギリを飛び続けて、いつ水面に接触して墜落・水没するか、ヒヤヒヤの状態なのですから、4Kになったらどうなるかは想像に難くないでしょう。

 

機材が進化することで、今まで通りの方法で4K以降の映像制作に対応できると考えるのは、まさに不勉強、無知そのものです。そんな簡単な話ではないです。

 

 

 

絵を描いて動かす‥‥という本質を問われましょう。その本質に迫ることで「そんな大変な事は‥‥」と尻込みするのなら、博物館用途で「昔のアニメの作り方」による作品を細々と作るしかないです。

 

でもまあ、今の業界のシステムが廃れたら、昔ながらのアニメの作り方も不可能になりますけどネ。‥‥だってさ、今、フィルムとセルでアニメを作れます? ‥‥もう、システムが滅んだので作れないでしょ。

 

戦後に形成されたアニメ業界ではありますが、その「戦後」がようやく令和になって終わり、全てのツケを払う時が来るように思います。

 

 

 

来る時が来たら4Kに対応すれば良い。

 

‥‥そんな簡単な話ではないです。「対応」なんて軽く言いがちですが、無理ですよ。今のアニメ制作の感覚のままじゃ。

 

「対応」って、つまりは「ビジョンなし」と言っているようなもんだな‥‥と最近は思います。私も「対応」という言葉をつい使ってしまいがちですが、何か問題が出たら対処する‥‥というのは、遅かれ早かれ行き詰まるように思います。アニメ業界は「当座の対応」ばかりしてきたから、1枚200円代で動画を描かせ続けているわけだし。

 

 

 

4Kに世界が塗り替わるまでの「余命」を謳歌した後に、廃業して昔話に花を咲かせるか。

 

状況を冷静に受け止めて、苦しくても4K以降の映像産業に食らいついて、やがて自分らのディファクトスタンダードと成すか。

 

 

 

今からでも、4K以上のアニメ制作技術について、自費を投じて進めたほうが良い‥‥と、私は思うんですがね。未来もアニメを作り続けたいですもん。

 

過去のノスタルジーに囚われたら、それはもう、引退間近、廃業間近‥‥ということです。私もたまにメランコリックな感情に苛まれますが、それに浸ったら「終わり」です。

 

未来を目指しましょう。

 

 


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