ビット。

アニメ制作におけるキャンバスサイズは偶数が良い‥‥というのをツイートで見かけましたが、なぜ偶数が良いのかを併記していないので、理由を知らない人は「単なる暗記」になってしまって、これまた事故の元にもなりましょう。テクニカルエラーは、そのテクニカル部分の「理屈」「理由」を知ることが大事です。

 

コンポジット技術、いわゆる「撮影」の観点で言えば、偶数ならば「0.5」が生じるリスクが減るので、スムージングエフェクトを処理した際に「処理不良」を未然に防げるからです。

 

座標に0.5のような小数点、もしくはエッジ部分に小数点の処理が生じると、二値化の素材にアンチエイリアスが生じて、その後のスムージングに支障をきたすケースがあります。

 

*アンチエイリアスが生じた二値化素材の図。

*奇数寸法の素材を、偶数寸法のキャンバスに配置すると、エッジが小数点処理となり、アンチエイリアスが生成されます。After Effectsの場合、「ニアレストネイバー」の補間法をコンポジション設定等で選択できないので、二値化の素材を二値化のまま取り扱いたい時は、配置する座標(トランスフォームの位置やアンカーポイント)に気を使う必要があります。

 

 

しかし、奇数だと無条件にスムージング不良が発生するわけではなく、読み込んだ二値化素材をレイヤー配置して直にスムージングを処理すれば奇数だろうが偶数だろうが正常に処理されます。

 

プリコンポーズしたり調整レイヤーでスムージングする際(ABセルをまとめてスムージングするなど)に、問題が生じやすいです。

 

After Effects側で自動でアンチエイリアスが処理されるようなレイヤー座標をユーザ側で回避しておけば、奇数でも問題はありません。

 

また、どんなに偶数のピクセル寸法でも、配置した際の座標に小数点が含まれていて、その上から調整レイヤーでスムージングを処理すればテクニカルエラーになります。

 

結局は、ちゃんと仕組みを解った上でコンポジットしないと、偶数でも奇数でもエラーは発生する‥‥ということですネ。

 

とはいえ、お約束として偶数にするのはベターだと思います。全ての素材を偶数にする必要がありますが、偶数の習慣はあって悪いものではありません。

 

実は現在、私は偶数のキャンバスサイズに拘ってはいません。二値化トレスをあまり扱わなくなったので、スムージングのテクニカルエラーを考慮する必要がなくなったからです。

 

他にも「素材のサイズは、8の倍数にしておくと良い」みたいなツイートも見かけましたが、それは全くないです。2の倍数、つまり、偶数で十分です。

 

カットごとのキャンバスサイズと、映像フォーマットのフレーム規格サイズを混同しないようにしましょうネ。

 

 

 

何かしらの物事の黎明期に関わると、基準もノウハウも存在しないので、「どうすべきか」「なぜ、そうなるのか」を理解しないと前に進めません。

 

黎明期に関わった人々がタフなのは、理屈や理由を我が身をもって理解することが、どうしても必要だったからです。誰にも頼れなくて、「仕組みや原理を自力で覚えざる得なかった」ことが大きいでしょう。

 

黎明期は困難の連続ですが、ゆえに、得るものも極めて大きいです。困難を克服した経験と知識は、その後の仕事で大いに役立って、ぶっちゃけ、「金を生み出すもと」になります。

 

 

 

コンピュータの仕組みや特性が解らなくても、ただ単に数値やメニュー項目だけを暗記すれば作業できる‥‥のは、知識やノウハウというよりは「段取りの暗記」です。つまり、暗記が通用しなくなる「新たな場面」を前にすると、問題を解決できずにハードルを越えられなくなります。

 

映像制作に従事し、かつコンピュータを毎日使う仕事ならば、基本的な知識は覚えておいたほうが良いです。

 

たとえば、ビット。

 

ピクセル寸法は8の倍数が良いだのと、ウワサでも聞こえてくるのは、8というよりは2の倍数、つまりコンピュータにおける「ビットの扱い」の流れを汲んでいます。

 

コンピュータ的に「切りの良い」数字

 

2,4,8,16,32,64,128..... という2の倍数の数字は、コンピュータでは頻繁に登場します。96は、32と64を足した数値ですし、96の20倍は1920でおなじみの数値ですし、現在のコンピュータのデータは0と1の二値=ビットを最小単位として構成されるので、640も512も、1920も2048も3840も4096も、とても切りが良い数値なのです。

 

8ビットは2の8乗で256、10ビットは2の10乗で1024、12ビットは2の12乗で4096。‥‥コンピュータを扱っていると、色々な場面で目にする数値ですよネ。

 

逆に、コンピュータ慣れすると、「500」「2000」「3000」「4000」という数値は「ものすごく半端」に感じられます。職業病かも知れませんが、「500だったら12足して、512が落ち着く」と感じますネ。「250」「650」なんかは、ものすごくハンパ感があってキモチ悪いです。3000とか5000とかの数値を使う際は、あえてハンパで良い!‥‥と思って使いますし。

 

「2で何回割っても、まだ偶数のまま」の癖は、私も染み付いていますネ。ビット計算の影響が強い‥‥。

 

 

 

今から20年以上前の話。

 

コンピュータでアニメを作る際に、使える色数は、なんと1670万色! ‥‥と、大いに盛り上がったものです。

 

しかし、それは‥‥

 

数値のトリック〜ビットの組み合わせの単純計算値

 

‥‥であって、実際に画面に使っている色数は圧倒的に少ないです。どんな場合でも1670万色をフルに使っているわけではないのです。

 

グラデーションの中に縞模様が見えるので、ガウスブラーでぼかして滑らかに‥‥と考える人は、今でも多いでしょう。しかし、それでは縞模様は消えないことがほとんどです。‥‥なぜかというと、根本的な色数が不足しているので、ブラーをかけても色が混ざらないからです。

 

例えば、コレ。

 

これは色数をいくつ使っているでしょう。

 

 

見ての通り、1色ですネ。1670万色の中の1色です。

 

つまり、どんなにコンピュータが膨大な色数を扱えても、使う色が1色ならば、1色どまりです。1670万色のスペックは「描画内容」とは関係ないです。

 

次にコレ。

 

この色数はいくつあるでしょう。

 

 

32色です。赤のモノトーンの32階調です。1670万階調ではなく、赤一色の20から51までの32階調です。

 

皆がその昔「ありがたや〜」と拝んでいた「1670万色の神話」とは、つまりはパレットの色数が1670万色あるだけの話です。あくまでパレットの中であって、画面の中に1670万階調が存在するわけではないです。

 

赤のモノトーンになった途端に最高で256階調、上図のように薄暗いグラデーションだと32階調しかありません。

 

原理を知っていると、RGB各色8bit=256x256x256=16777216の低い限界が理解できますが、原理を知らないと「1670万色もあるのに色数が足りないなんておかしい!」と口にしがちです。

 

赤のモノトーンだと最高で256色ですから、1670万には程遠いですよネ。「1670色のふれこみ」に、原理もわきまえずに踊らされると、映像制作の様々な場面で問題にブチあたることになります。

 

 

 

ちなみに、「絶対に1670万色使う」絵はどんなものか。

 

After Effectsの色調補正ツールだと結構作るのが大変そうですネ。プログラムで総当たりで色を生成し、左上から右下に埋めていった方が正確かつ簡単に作れそうです。

 

なので、構造だけ考えます。

 

1670万色全てを使うには、当然の事ながら、1670万画素のキャンバスが必要ですよネ。

 

1670万画素のキャンバスは縦横何ピクセルでしょう。正方形のキャンバスなら簡単に算出できます。

 

4096x4096=16777216

 

縦横4096ピクセルの正方形のキャンバスならば、1670万画素ぴったりのキャンバスサイズです。

 

4096だと、2の倍数として直感的に解りにくいので、つまり、

 

(2x2x2x2x2x2x2x2x2x2x2x2)x(2x2x2x2x2x2x2x2x2x2x2x2)=16777216 

 

‥‥で、

 

12bit x 12bit = 24bit

 

ということです。

 

この4096ピクセル四方の1ピクセルごとに、RGB(0,0,0)からRGB(255,255,255)の全ての組み合わせの色で埋めていけば、1670万色を使い切った画像が出来上がります。

 

 

 

ビットの数値は日常の色々な場面で登場します。

 

通信速度はbps〜ビット・パー・セコンドですし、スマホの記憶容量はGB〜ギガバイト〜バイトは8ビットと、ケータイやスマホを所有している時点で、身の回りはビットだらけ。

 

とは言え、ビットの理屈を実際に知っている人はかなり少ないでしょう。まあ、日頃は必要ないもんね、原理は。

 

しかし、コンピュータによる映像制作の職業、しかも、誰かに対して原理や構造を説明しなければならない教育者や指導者やセクションチーフは、「暗記モノ」ではなく「理由・理屈」をもって、「色数」や「ピクセル寸法」「転送速度」などの話を、後続の若い人間たちに説明すべきでしょう。

 

歳上の人間が、暗記モノに終始して、理屈や理由の部分がフワフワしてたら、そりゃあ、後続の若手だってフワフワと影響されます。

 

若い頃はともかく、歳を重ねてリーダー格になっても、「暗記モノ」だけが知識の大半を占める‥‥ようでは、現場のさらなる発展は見込めず、大量生産の消化試合に徹する、いままで通りのアニメ業界を引きずりましょう。

 

30代以降は、「なぜ、それがそうなのか」を深く探るフェイズです。30代以降になっても「ビットって何? めんどくせえんだけど。」のようなスタンスでは、現場の未来も「めんどくせえ」なりの未来になりましょう。

 

アニメ制作現場の、画像データに直に関わるスタッフ〜演出、作画、彩色、美術、コンポジット(撮影)は、基本中の基本であるビットやRGBの原理を、どこかの段階で覚えちゃいましょう。それだけで、「わけのわからないコンピュータの内部」「ブラックボックス化」にメスを入れて開腹のきっかけとなります。

 

 

 

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM