環境とお金と自宅

何度も書きますが、コンピュータは猛烈な金食い虫です。私は18歳(1987年前後)の頃にお祝いに買ってもらった数万円の机を30年以上現役で使っていますが、1997年に数十万円を費やして買ったPowerMac8600はとうの昔に使わなくなりました。

 

つまり、コンピュータを使って仕事をする場合、その環境維持のコストゆえに、

 

作業に対する報酬金額が高いこと

 

‥‥が何よりも必須となります。3DCGの作業費と同じ理屈です。紙と同じ値段で作業したら破綻するのは、電卓を弾くまでもないです。なので、私はアニメの原画の仕事=「デジタル原画」と呼ばれる作業は避けて、「コンピュータを用いたことが結果物にちゃんと反映される」価格の高い仕事を請け負うようにしてきました。(しがらみゆえ、例外もありますが)

 

その報酬の良さ=報酬金額が高いぶん、いっぱい酒が呑める‥‥のではなくて、年次の環境増強の資金に当てる必要があります。

 

 

 

アニメ業界は、紙と鉛筆と机で作画して来た人の発言権があまりにも大きいため、その点=機材のメンテナンスと更新費用にまるで無頓着だったりする‥‥ことも多いのではないでしょうか。コンピュータを何年かの周期で買い換えて更新することが、感覚として理解できないので、まるで無駄使いでもしているように思う人もいる‥‥のかも知れませんネ。

 

まさに2010年代、Adobe CCに移行せず、いつまでもCS5.5や6を使い続けたのは、それがたとえ作画以外の撮影工程であっても、「アニメ業界の性質」を物語っています。

 

CS6どまりにし続けたら、停滞している期間は良くても、どうしても移行しなければならない時に相当な「痛み」・皮膚移植のような大手術となるわけで、健康で正常な人間の細胞のように代謝〜徐々に入れ替え・更新を進めた方が、新しい時代にも適応できて成長も順次促進されると思う‥‥んですよね。代謝を失った身体はまさに死を意味しますしネ。

 

でも、アニメ業界の多くは、CS6に留まって、CCに移行しなかった事実があります。今後、生皮を剥いで、相当な痛みとともに、新しい皮膚を移植する、苦痛の叫びが業界のあちこちから聞こえてくるかも知れません。

 

最低64GBのメモリ(すぐに128GBくらい必要なると思われます)、i9の4GHz前後で8コア以上、4Kのモニタを60Hz 10bitで3台以上接続できるビデオ性能、色に関わるスタッフ(彩色、美術、コンポジットなど)は基準となるHDRモニタ(300〜1000nitsでPQ対応)、液タブかiPad Pro 12.9、高速なWiFiとBluetooth、最低1Gbpsのネットワークで10Gbps推奨、10Gbpsのハブ、USB3.1、Thunderbolt3の40Gbps、M.2でThunderbolt3の高速な外部キャッシュディスク、最新のOSと映像制作ソフトウェア。

 

こうした2020年代基準の機材を、一気に更新など本当に可能なのか、エクセルで見積もり表を作れば、愕然とするでしょう。更新が、2010年代前半の内容から‥‥となれば、もはや全部買い直しです。生き残る機材のほうが少ないです。

 

 

 

身の丈のお金の話です。会社規模だと各所で差が大きいので、個人単位のお話にて。

 

毎月2万円をあてて、サブスクリプションとマシン入れ替えの積み立てに備える(10年で240万円)

または、

10年に1度、ドカンと240万円捻出する

 

‥‥このどちらが現実的でしょうか。そして、どちらが自分の新たな技術として身につくでしょうか。

 

私は前者だと思います。

 

まず、10年に1度とは言え、240万円なんて1度に工面できないですもん。

 

さらに、10年に1度、240万円を費やして装備を一気に更新しても、色々な技術基盤が多少なり10年前とは異なるがゆえに、すぐに240万円分の最新機材の優位を発揮できません。使う人間の知識がすぐには対応できないからです。

 

順次、知識を更新しながら、様々な技術を吸収して、古い技術を入れ替えていく必要があるわけですが、「10年に一度の機材更新」においては、まさにその「順次」が不可能なんですよネ。

 

1度に240万円の機材環境を導入しても、人間の経験と知識と技術は、1度にドンと増えることはないです。

 

 

 

つまり、10年我慢して一気にハードもソフトも更新すれば良い‥‥というわけにはいかんのです。

 

それに‥‥根本的な問題ですが、10年の期間、ちゃんと貯金できますかネ? 結局、なんだかんだと出費して貯められないんじゃないでしょうか。

 

しかも、あらゆる最新技術の足並みが、ピタッと揃うことなんてないです。結構‥‥いや、かなりバラバラです。10年後に、ベストな機材購入を一気に決済するなんて、可能とは思えません。

 

 

 

一年で使える環境機材費を決めておいて、その枠内で購入し(大枠はローンで)、その機材環境出費を相殺するために、必要に応じて仕事の幅を広げていく。

 

紙と鉛筆と机だけなら、「作画の仕事はこういうものだ」と自ら限定しがちですが、機材に色々と金がかかって、それが自腹ともなれば、「仕事の幅を広げなくちゃ」と思うものです。年間24万円出費が増えたのなら、最低でも24万円の増収を図りたいですよネ。

 

現在のアニメ業界の作画料金では、とても賄えないと実感するはずです。ゆえに、自分の仕事の内容と種類を増やすべく、自然と思考が働きます。自分自身をプロデュースする自我に目覚めます。

 

自分の可能性をなんとなく諦めていた悪癖は、実は、コンピュータ機材に比べて、金のかからない紙と鉛筆と机に道具を限定していたことも、多分にあるのではないかと思います。

 

 

 

以前、「アニメ制作会社がフリーランスに機材を貸し出す」みたいな論議も聞いたことがありますが、‥‥‥5分も考えないうちに「ありえない」ことがわかりますよネ。

 

A社、B社、C社の3社を掛け持つアニメーターは、3社分の3セットのPCとモニタと液タブを自宅に置くのでしょうか?

 

それとも、A社が貸し出した機材で、ちゃっかりB社とC社は、アニメーターに作業依頼するのでしょうか? もしA社の仕事が終了したら、B社とC社の仕事が中途でも、機材を回収するんじゃないですかネ?

 

ちょっと考えれば、会社が自宅作業のフリーランスに機材貸し出しなんて、あり得ないことがわかりますよネ。

 

自宅の機材は、自分で揃えるしかないです。その代わり、アニメの作画だけでなく、色んな仕事を請け負って、マルチに稼ぐのです。

 

 

 

アニメ業界の契約社員‥‥みたいに、アニメーターはアニメの作画だけしか仕事しちゃいけない‥‥わけじゃないです。

 

むしろ、もっとアニメ制作会社以外の色々、アニメ制作会社の仕事であっても作画以外の何かを、自分の道具を駆使して開拓すべきだと思います。

 

2020年代以降に「絵を描いて生きていく」には、コンピュータは金食い虫だからこそ、むしろ強い味方にすべきと、私は思うのです。

 

 

 


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