本当のアナログ

生身の人間や、現実世界の物品を、「アナログ」と表現する人をネットの文字上でよく見かけます。しかし、私の周りでは「生身・現物=アナログ」という意味で使う人はほとんどいません。

 

なので、実際に「現実世界の何か=アナログ」との意味で使う人が多いかはナゾです。

 

ネットに記事やツイートを書く類いの人が「イメージしやすい」意図で用いるので、多いように錯覚しているだけかも知れません。ただ、ネットに感化されやすいのも人の常なので、記事やツイートを書く場合は安易に「アナログ」という言葉は使わないほうがいい‥‥とは、わたし的には感じます。

 

私の周りで、なぜアナログという言葉を使う人がほとんどいないのか‥‥というと、単なるイメージだけで「アナログ」だ「デジタル」だのと言葉を用いると、本当の意味で「アナログ」「デジタル」の言葉を使いたい時に混乱するので自制するのです。

 

現在扱っている信号はアナログかデジタルか‥‥とか、信号の経路においてどこからがアナログでどこからがデジタルだ‥‥とか、DAやAD変換時の精度が云々‥‥とか、作業場の会話の中で「アナログ」「デジタル」を使うので、「生身のイメージでアナログ」みたいな表現を使うと、ぶっちゃけ「紛らわしいし迷惑」でもあるわけです。

 

 

 

アニメ制作といえど、今やコンピュータやネットワークのチカラなしでは制作は成り立ちません。

 

どこがアナログ信号&データで、どこがデジタル信号&データかを、ちゃんと明確に把握できていないと、取り回しができません。取り回しとは、制作進行さんがブツを工程から工程へと伝搬するだけではなく、工程の内部まで及ぶ取り回しです。全行程における信号とデータの流れの「完全な把握」のことです。

 

アニメ制作者で、安易に「アナログ」の語句を使いがちな人は、

 

全行程のデータと信号の流れを意識したことが無い(=考えたことがない)

 

‥‥か、もしくは、

 

めんどくさいので、「アナログとデジタル」ということにしておく

 

‥‥と、さじを投げているかの、どちらかじゃないですかネ。

 

もしかしたら、

 

アナログとデジタルの対比で表現できると、信じ込んでいる

 

‥‥可能性もありますかネ。

 

 

 

アナログ信号は身の回りに溢れていますが、アナログデータ記録形式は日常生活では死滅状態です。私はカセットテープを今でも愛用しているので、カセットテープの磁気データが「最後に残された」身近なアナログデータですが、ふと部屋を見渡すとあまりにもアナログデータは身の回りから消えていることに驚きます。レコード盤もVHSビデオテープももはや部屋にはないです。

 

信号線の中のアナログ信号は今でも健在です。そこら中に存在してます。

 

iPhoneは「デジタル」を体現する基本アイテムのように思えますが、iPhoneで通話する時に音が出たりマイクで音を相手に伝えるのはアナログです。iPhoneの中にDA/ADコンバータ(DはDigital、AはAnalog)、そして空気の振動を入出力するスピーカとマイクが内蔵されているから通話可能です。

 

 

 

紙の書籍はどうでしょうか。紙の書籍は、いかにもアナログと言われそうな存在です。

 

この記事を書いててふと思いましたが、

 

文字という存在自体が、不連続なデジタルそのもの

 

‥‥ですよネ。

 

ABCDEのアルファベットは、それぞれA, B, C, D, Eと区切られ、その組み合わせで意味(=情報)を作り出しますから、完全にデジタルデータの仕組みを持ちます。

 

そう言った意味では、ひらがなカタカナもデジタルです。

*漢字の場合は、字に音だけでなく意味も割り当てられているので、何と表すべきか。1つの文字で何かを呼び表す「音」と一緒に「情報」も持ち合わせていますネ。

 

AとBの中間値はなく、AとBはきっぱり分けられていますよネ。アとイの中間も無いですよネ。文字で表現すること自体が、不連続で非アナログで、デジタルそのものです。

 

特にカナのように「音」を直接文字で表す方式はかなり「デジタルっぽく」、人間の発する様々な声をしきい値で区切ってデジタル化し、組み合わせによって様々な情報を記録します。英語の場合はカナよりもう少し複雑で、例えば「B」と「E」を合わせて「Be, ビー」という音と意味を作り出します。

 

日本語の50音(濁音までいれるともう少し増えますが)は、まさに50階調のデジタルデータフォーマットと言えましょう。マスで区切れる時点で、ほらもう、デジタルそのもの。

 

 

 

この50音の組み合わせは自由かつ文字数の長さも自由なので、濁音なども入れると、膨大なバリエーションを展開できて、情報〜データを記録できます。

 

もちろん、この論法ですと、西洋音楽の1オクターブを12音で分割する記譜法も、デジタルデータフォーマットと言えます。イメージやニュアンスではなく、真の意味で言えば、ですけどネ。

 

実際の演奏上は、シとドの間に割り切れない中間の音が混ざったりもしますが、記譜法上は12分割で「デジタル=非連続化」して表現し記録します。

*無段階で上昇下降する音を記譜上で表現する場合は、ポルタメントという用語があります。シンセサイザーにもポルタメントのオンオフがあります。

 

例えば、

「凄いものを見ちゃった!」

‥‥と言う情報を誰かに伝える時に、もしアナログの連続的な発音で伝えるならば、

「うわあぁぁぁ うひ〜〜 ウッホ、ウッホ、ウッホッホ!」

‥‥みたいな雄叫びになりましょう。

 

文字の発明は、コンピュータの発明の「発想の原点」かも知れませんネ。

 

 

 

少し脱線しましたが。

 

酒の席で軽い意味で「俺はさあ‥‥根っからのアナログ人間でさあ」と言うのは構わないと思います。アナログと言う言葉で伝えたいニュアンスも伝わりますしネ。

 

でもね。制作現場は酒の席じゃないです。他愛のない世間話のニュアンスを、現場のワークフローや技術的な話題に持ち込むのは、少々‥‥いや、かなりマズいです。

 

生身の人間の作業、紙の現物、鉛筆を、アナログと表現するのは、制作現場ではやめましょうヨ。

 

それにネ。

 

コンピュータを使って作業している人間だって、生身なんだからネ。

 

紙と鉛筆を使っている作業だけが「生身」「手作り」っぽい言い方をするのは、ものすごく傲慢で失礼なので、即刻止めて欲しいです。

 

 

 

もっと、アナログの本当の意味、デジタルの本当の意味を、色々と調べて理解しましょう。

 

現物がアナログ、コンピュータのデータがデジタル‥‥と区分けは、あまりにも素人臭い表現なので、プロの映像制作、プロのアニメ制作を自認するのなら、やめましょう。

 

じゃあ、どう言えば良いんだよ?

 

紙なら、紙。鉛筆なら、鉛筆。それでじゅうぶんです。それらをわざわざアナログなんて言い回す必要はないです。アナログという言葉をプロの現場で正式に使うのなら、本当の意味でのアナログ・デジタルの区分けにしましょう。

 

なので、「デジタル作画」も、「ペンタブ作画」で良いと思いますよ。使っている道具で名前をつければ一番わかりやすいです。

 

鉛筆で描こうが、運用上はスキャンすればデジタルデータなのですから、鉛筆作画・紙作画、タブレット作画と表現するのが、一番直感的だと思いますけどネ。

 

スラングなら構わないのです。そのスラングが正式な現場の用語として用いられることが問題なだけです。アニメーター同士の世間話ならスラングはOKでしょうが、制作技術の会議の場で「アナログ・デジタル」と連呼するのは、現場意識の幼さの象徴です。

 

 

 

実際に会う人を「アナログ人間」、ネットのモニター越しやテレビに映る人を「デジタル人間」‥‥なんて言わないのと同様に、私らの使う道具や技術も、本当の意味でアナログとデジタルを基本理解した上で、現場を再構築したい‥‥ですネ。

 

 

 



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