紙の経験

私は紙と鉛筆で育った世代なので、アニメーターになるスタート地点に「紙の感覚を体得する」ことは必須であると、つい最近まで何となしに思い続けてきました。

 

しかし、ふと私のギター歴を振り返った時に、ガットギターから入門したかと言えば「否」です。生ピアノから入門したかと言えば、やはり「否」です。

 

極めて純粋なクラシック畑のギタリストになる目的でもない限り、エレキギターでギターを弾き始めて、その後にガットギターやエレアコに手を出すのでも、充分習得できます。

 

‥‥‥‥。

 

あれ??

 

なぜ、私は、生「紙」と生「鉛筆」にこだわっているんだろうか?

 

動きを習得する初期段階において、どうしても紙を通過しなければならない理由を、合理的に説明できません。

 

 

 

Procreateで原画を描くには、相当の原動画の実経験が必要です。なぜかというと、「パラパラマンガ」機能がないからです。前後のレイヤーのオンオフの簡易な動きの確認だけで原画が描けるくらいの「経験と慣れ」が必要で、実際に描く前に頭の中でプランが出来上がっている必要があるからです。「描いて動かしてみないとわからない」みたいなレベルではProcreateで原画を描くのは無理です。

 

ですから、Procreateで原画を描くには、原動画キャリアが最低でも5年くらいは必要です。

 

私は在学中(バイトです。一応)の16歳の頃から、それこそ今年まで(今年は凄く少ないですが)、作画の仕事として、紙に絵を描き続けてきたので、Procreateでの原画作業は紙からのフィードバックが大きいです。

 

しかし、クリスタ。

 

月々1000円のiPad版クリスタ。そして、Bluetoothのキーボード。

 

ショートカットキーを設定すれば、前後の原画に進む戻るの操作はキーだけで、簡易的な「パラパラ」動き確認が可能です。オニオンスキンもショートカットキー1発です。ムービーとして再生=絵をパラパラめくることも、ショートカットキーで可能です。

 

初学者が紙を使う最大の理由は、とにかく何度も何度もパラパラと絵をめくって動かして、動きの様々な性質を体の感覚へと同化させることです。

 

また、ブレない線、線の入り抜きなどの、描線のコントロールを可能にすることです。

 

‥‥‥。

 

iPad Proとクリスタで良くないか? それ。

 

 

 

ガットギターは、エレキギターよりもネックも弦も太く、さらには弦高も高いので、エレキギターより格段に音が出しにくいです。ガットギターでの経験は、エレキギターを弾く際の、プラス要素にはなるとは思いますが、ニュアンスが違いすぎるのもまた事実です。

 

ガットギターは決してエレキギターの上位互換ではなく、基礎構造は似ていますがほぼ別物と呼んで良いものです。

 

同じく、紙作画とペンタブ作画は、絵を描くという行為においては似ていますが、取り扱いは別物です。

 

思うに、どちらかを極めれば、紙toペンタブでも、ペンタブto紙でも、相当応用が効くでしょう。

 

中途半端な技量しか持っていないと、どちらを使っても不満ばかりを口にしやすいです。

 

 

 

たしかに、以前のペンタブは失笑を買うような製品もありました。昔のWacomの液タブは、お世辞にも良いものではありませんでした。「まだまだ遠い」と十数年前は思ったものです。

 

しかし、iPad ProとApple Pencilが登場して、iOSの優れたドローソフトがいくつも選択可能な今、iPad Proで絵が描けないのなら、当人のポテンシャルが相当低いか、極めて紙を愛し過ぎて融通が全く効かないかの、どちらかです。

 

これから先の未来。

 

新人のアニメーターは紙を経験する必要はあるのか。

 

実質的には「必要ない」と考えるようになりました。経験として損になるものではないですが、「必須と言える理由」を、少なくとも私は「合理的」に説明できません。

 

紙の感覚は、基本だから。

 

紙時代を経験した人間〜私も含めて、そう言いがちです。しかし、

 

紙の感覚って、具体的に何でしょうか?

 

基本とはどのような要素の集合体ですか?

 

これらを突き詰めて考えた時、どうやら「自分がそれで育ったから」という当人の経験則からの「強いバイアス」が作用し、他の方法が単に思いつかないから‥‥という理由であることに、いまさらながら、気づきました。

 

つべこべ言う前に、枚数をいっぱい描かなければ、上達しない。

 

‥‥うん。それは紙でもiPad Proでも共通です。iPad Proで、それこそ何万枚も絵を描けますよ。紙じゃないといっぱい絵を描けない‥‥なんて、子供の頃に紙しかなかった人間の単なる思い込みなのです。

 

「紙じゃないとガシガシ描けないじゃん」‥‥というのも思い込みです。iPad Proでもガシガシ絵は描けます。Apple Pencilのペン先は1ヶ月ももちません。

 

まあ、架空の話でしかないですが、もし私が現代に生まれて、最初からiPad ProとApple Pencilがあれば、紙と鉛筆を必要とせずに、上達できると思います。

 

紙じゃないと夢中になれなかった‥‥なんて単なる勘違い、思い込みです。ツールはその時代が与えてくれるものです。

 

私が2010年代に生まれたのなら、子供時代からApple Pencilに夢中になって、山ほど絵を描くことでしょう。

 

 

 

なぜ、今こんなことを考えているかと言うと、絵を描くアニメの制作技術において、「根本的な思想」の「世代交代」が必要だと痛感しているからです。

 

紙と鉛筆を神棚に祀って、神頼みしている場合ではないのです。

 

過去の軍神の思い出話よりも、現代をリアルにどう生き抜くか。

 

未来なんてどうでも良いと思うのなら、過去に生きる人たちで寄り合えば良いです。

 

未来を志すのなら、全世代が未来を共生する現場を作りましょう。

 

共生とは、共に死ぬことではありません。

 

共生とは、共に生きることです。

 

 


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