機材環境は誰が買い揃えるのか

未来のアニメ映像制作を語る際、よく耳にするのは、「パソコンやタブレットは誰が買うのか」という話題です。

 

まあ、たしかに、パソコン一式、タブレット一式、そしてソフトウェアの維持費は、相当お金がかかります。

 

ぶっちゃけ、フリーランス作業者の今の金銭感覚=報酬の状況では、「制作会社がもつべき」と言いたくなる気持ちは判ります。

 

しかし、仮にA社が環境一式をフリーランス作業者の自宅に供給したとして、その作業環境は純粋にA社の作品作業だけに使用されるわけでは‥‥‥‥‥ないですよネ。正直な話。

 

A社、B社、C社の仕事を掛け持つ場合、まさかABC各社が折半でフリラーンス作業者の作業環境機材費を出費する‥‥なんてあり得る訳もないです。会社は3社以上に沢山存在するわけですから、現実としてあり得ません。

 

●ABCD各社が機材を折半

 

●各社がそれぞれ自社調達の機材をフリーランスの自宅に持ち込む

 

*両方とも、想像できない状況ですネ。

*各社が折半すると、A社の仕事が終了すると同時に、モニタだけが回収されて困りますわな。

*さらに、1社の中でも「制作班」ごとで「どの班が出費するか」揉めたりしてネ。

*つまり、上図のような、あり得ない状況を予測するだけ時間の無駄です。

*自宅作業のフリーランスが容易に成立したのは、紙と鉛筆だったから‥‥ということを、今一度、認識しましょう。

 

 

 

「事業主」の観点でいえば、事業に必要な環境設備は、事業主が調達するのが基本でしょう。

 

つまり、

 

会社に席を用意してもらって作業する場合は、その会社もち。

 

自分の自宅が作業部屋の場合は、自分もち。

 

‥‥と言えるでしょう。

 

「ふざけんな。パソコンやタブレット一式を自前で維持して定期的に更新できるほど、作画のギャラは高くねえだろ!」

 

‥‥というのは、確かにその通り。

 

フリーランス=個人事業主が環境設備を揃えて維持した上で、単価4000〜4500円のテレビシリーズ単価のまま「デジタル原画作業」などやってられないですよネ。

 

じゃあ、どうするのか。

 

単価を上げるしかないでしょ。

 

フリーランス自宅作業者に対するデジタル作画の単価は、作業環境機材を調達しないで済むぶん、上げて然るべしです。

 

‥‥だって、作業環境の維持費は紙と鉛筆より格段に高価なのですから。

 

ただし、紙作画の作品に対し、個人の都合でデジタル作画で作業する場合は、単価は上がらないでしょう。紙にむりやりタブレットをねじ込むと、運用に手間がかかりますから、無条件にデジタル作画が好遇されるとは限りません。

 

 

 

で、問題の核心は、未来の運用。

 

現在の、紙運用の作品が大多数の中で、デジタル作画の環境設備費を単価へと計上することは難しいです。

 

しかし、世界の映像技術進化に合わせてアニメ業界もレベルアップが必要になった際は、状況が180度反転して変わります。

 

デジタル作画のフリーランスや他社など「アウトソーシング」に対しては、ちゃんと環境設備費を考慮して、報酬の上乗せが必要です。アウトソーシングの場合、当該アニメ会社は何ら作業環境への出費をしていないのですから、上乗せは当然ですし、作業を請け負う側も要求して当然です。

 

 

 

今までのアニメ業界の標準設備は、買ったら一生物の机、紙、鉛筆、その他いくつかの筆記具で済んでいたがゆえに、アニメーターを安い単価で買い叩くこともできたのでしょう。環境設備に対して、アニメーター側も報酬に含ませて計上することが、実質できませんでした。

 

しかし、3DCGのレンダーファームほどではないにしろ、例えば、iMac、4K液タブ、iPad Pro、Adobe CCやClip Studioなどのサブスクリプションを、フリーランスアニメーターが負担するようになれば、今までの作画単価で作業を引き受けることは、絶対にありえませんよネ。そんなことをするアニメーターがいたら、よほどのお人好しか、無知かの、どちらかです。

 

そうなると、フリーランス作業者だけにとどまらず、アニメ制作会社の根本的な運用方針・生産体制が問われることになりましょう。

 

安い報酬設定で誤魔化し誤魔化し作ってきた会社は、立ち往かなくなります。

 

 

 

でも、それで良いんじゃないですか。

 

ほうぼうで、ブラックブラック言われ続けるアニメ業界の、自浄作用になるのなら、またとない転機です。

 

深夜テレビアニメは、QCがユルいのをいいことに、作画崩壊も御構い無し‥‥みたいな状況が恒常化するのなら、どこかで終わりにして、新しく再出発しないとさ。

 

アニメ業界人は、ブラックから抜け出したいのか、ブラックだから身を潜めてられるのか、どちらかハッキリしたほうが良いです。

 

 

 

デジタル作画を発端とした、ペンタブ作画・ペーパーレスのこれから先の未来展開は、アニメ業界を大きく揺さぶって個々を選別する、「ふるいがけ」の展開とも思える今日この頃。

 

「機材環境は誰が買い揃えるのか。」

 

事業を展開しようとする「主」が買い揃えることに、意見の相違はないでしょう。個人だろうと団体だろうと、事業主が環境を揃えるのが基本です。

 

その代わり、今までとは違う収益モデルを目指して実践し、ちゃんと維持費を作業報酬に計上するのです。もちろん、分配計算、割合を算出して‥‥です。

 

アニメ会社も、作業環境費をちゃんと考慮した、新たな報酬設定を問われる未来が、徐々に、そして確実に近づいている認識が必要です。

 

「抜け駆けする奴もいるのでは?」と思うでしょうが、コンピュータの「金食い悪魔のチカラをナメるな」です。紙時代のように抜け駆けできるほど、コンピュータ関連の維持費は甘くないですヨ。

 

制作費が全体にアップするということは、納品先でのQCもかなり厳しくなっていくことでしょう。高い金を払って、作画崩壊作品なんて、クライントが許容するわけないです。

 

「いい加減」に作品を「転がしてた」今までの感覚は、ペーパーレス時代においては、個人も会社も淘汰されていくことと思います。

 

 

 

「機材環境は誰が買い揃えるのか。」

 

ちょっと考えれば判るようなことを、延々と決められずに議論が進まないような状況が、まさに協会団体の弱さの本質です。お歴々が集まって、お互いの腹を探り合って、煮え切らない態度とリーダーシップの欠如に甘んじているのが、ひいてはアニメ業界の弱さそのものです。

 

まあ、CS6にとどまる理由も結局、「金」ですよね。

 

お金が沢山かかることを腹の中に隠して、もっともらしく口先の上辺で議論しようとするから、ちょっとした決断もままならないのです。

 

忖度会議を招集しても、何も決議できんすヨ。

 

戦後70年以上が経過して、アニメ産業そのものが「おじいちゃん」になって、そろそろ「引退」の感の強い、2019年現在。

 

本当に、戦後のアニメ業界から生まれ変わる「正念場」ですネ。

 

 


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