クリスタで4Kで原画

色々と諸事情がありまして、私もクリップスタジオペイントEX(以後クリスタ)で4Kの原画を描いてみました。いつもはProcreateで描いているのですが、諸般の事情でクリスタも使ってみようということになり、おくればせながら、原画作業に取り組んでみました。

 

 

まず作業環境ですが、

環境概要

iMac 5K(初代の2014年モデル=Late2014)

32GBメモリ

iPad Pro(第1世代=2015年)

AstroPad(iPadを液タブに変えるスグレモノ)

‥‥です。

 

特に最新で高性能というわけではないですが、アニメ制作会社のマシンは16GB以下の少ないメモリも多いですから、メモリは普通レベルに積んでいます。

*ちなみに、今はメモリを64GB積んでも特に驚くほどではない時代です。128GBまで積んでると、多いなあ、金かけてんなあ…と感じますが。

*蛇足ですが、32GB〜128GBのメモリとは、SSDの容量ではなく、メモリ〜RAMの要領です。今でもHDDやSSDのことをメモリと呼ぶ人がちらほらいらっしゃいますので、付け加えておきます。

 

 

まず使い始めて1発目に驚いたのは、レイテンシーがPhotoshopよりも少ないことです。‥‥まあ、昔からPhotoshopで絵を描くのは、ペンのレイテンシーが気になることも多かったのですが、AstroPad経由で普通に絵を描けるのは、とても好印象でした。

 

さすがにCPU・GPUとディスプレイが一体となりAppleの思いのままに設計できるiPad、iOSで動作する定評のあるProcreateほどではないですが、普通の技量をもった原画マンなら、iMac 5K&iPad Pro、そしてAstroPadで、レイテンシーにイライラすることもなく、いつも通りに原画が描けるでしょう。もちろん、もっとディスプレイ面積が大きい方が良いですが、AstroPadの設定で絵を描く部分だけにエリアを限定すれば、Procreateのようにディスプイレイのほとんどの面積を描くエリアに割り当てられます。

 

今回は訳あって、iOSではなくmacOSのクリスタを使って、4K原画実証実験をおこなっています。スタイロスで色々と問題が出たので、Mac/PCの次世代ソフトウェアを探るためにも、macOS版のクリスタを使っています。

 

ちなみに私は本格的にクリスタのアニメーション機能を使うのは初めてなので、セルシス公開の解説PDFを読みながら進めました。

 

https://vd.clip-studio.com/clipcontent/lib/clipstudio/paint/common/CSP_AnimationGuide_01.pdf

 

このPDFを読めば、コンピュータに慣れて今まで色々とソフトウェアを渡り歩いた人なら、1〜2時間熟読するくらいで原画作業を開始できます。つまり、そんなに難解な使い方では無い‥‥ということです。

 

「アニメーションフォルダー」という独特の構造は、最初は戸惑いますが、今までの自分の流儀で考えるのではなく、クリスタの流儀に従えば、「ソフトウェア設計の意図」を汲み取って使い始められます。ラフ、原画、動画などをフォルダにまとめて整理できるのは、音楽ソフトのTrack Stack(音源の種類別に任意にフォルダにまとめる機能)にも似ていて、使い方次第で色々と整頓方法を工夫できそうです。

 

私は毎日Procreateを使っているので、余計、セルシス社の「日本のアニメの取り扱い」に慣れたアドバンテージを、クリスタからも感じました。日本で開発するソフトウェアメーカーの強み‥‥と言えるでしょう。

 

描いた原画の実際の絵は掲載できませんが、例えばアニメーションのスタートポイントの設定は、以下の通りです。

 

*「現実の紙」は1枚も介在しないので、「解像度」欄=ppi・dpiはテキトーで構いません。ピクセル寸法だけで決め込みます。

*基準サイズをボックスに例えると、演出フレームはパディング、作画サイズはマージンということになります。

 

 

 

この寸法で描いて、かつ、AstroPad経由でも普通に描けて、レイテンシーにムカつくこともなかったのは、クリスタmacOS版の優れた点と実感しました。Photoshopだとちょっとモタつきますからね‥‥。

 

ただ、大きな難点が1つあって、解像度に関わらずアニメーションの「再生・停止」がリアルタイムで再生できないのは、深刻な弱点です。

 

全てのフレームを再生するオプションを入れると(作画作業では普通そうしますよネ)1秒分の再生に4〜5秒かかるので、まともに動きをプレビューできません。原画作業の場合は、アニメーターの頭の中で既にリアルタイムで原画が動いているので「ゆっくり再生」でも答え合わせはできますが、動画作業は現バージョンの「再生」能力では辛いかも知れません。

 

After EffectsのRAMプレビュー、スタイロスのモーションチェックに大きく劣ります。RAMを積めば積むほど再生範囲が伸びるプレビュー機能は欲しいですネ。RAMを多く積んだことがどんな形でも作業のプラスになるように。

 

macOS版のVer1.9.0では、動きを正常にプレビューしたいのなら、都度、ムービーファイルで書き出す必要があります。ムービーファイルにしてしまえば、ちゃんとリアルタイムで再生されます。

*もし、4Kサイズのムービーファイルを滑らかに再生できない場合は、マシンの性能をアップする必要があります。

 

あと、描画の速度がちょっと遅いかもな‥‥と思います。最近の高速なiMac(iMac Proとか)でもレイヤーのVisibleをオンオフすると、パタパタパタと絵が書き換えられる様子は、処理性能が低く感じられてちょっと不安です。‥‥原画作業には支障はないですが、映像ソフトとしてみると、もっとGPUとかを有効に使って欲しい印象はあります。GPUの環境設定が見当たらないんだけど、無いのかな? それともどこか違うところにあるのかな?

 

細かい点で言えば、カット名が自由に定義できないのは、すぐにでも改善して欲しいです。デリミタがハイフンだけなのは、俺様仕様過ぎます。予約語を使って、

 

[title]_[scene]_[cut]_dgen_[take][##].[ext]

 

‥‥みたいにユーザ定義の自由度を実現して欲しいです。今の仕様だと、セルシスが命名規則を決めているような感じで、制作集団主導で運用できません。

 

 

とはいえ、それらイマイチな点を補って余る、原画の描きやすさは優れた長所です。これだったら、4Kでも普通に原画が描けるじゃん。‥‥とお世辞抜きに思いました。

 

ちなみに、私は単価で4Kの原画を描いておらず、4Kの実証目的でもあるので、通常の制作状況とは異なります。もし外注でガチ4Kの原画を依頼する場合は、金額設定をちゃんと計算して協議することが必須です。このブログで読んだからと言って、安易に4Kサイズの原画を今までの金額で外に出さないでくださいネ。

 

 

 

動画で使いにくいという話も耳にしてきましたが、一方で、動画でも普通に作業できて困ったことが特にない‥‥という話も聞いています。

 

思うに、使いこなしの方法によって、大きく状況が変わる性質をクリスタはもっているのかも知れないですネ。

 

書き出しの際の問題も、一旦Photoshop形式で書き出して、Photoshopのスクリプトで各セルの素材を書き出せば、手間も人災もなく、TGAに書き出せますしネ。

 

 

 

「デジタル作画」の「作画」部分は、皆さすがに本職ゆえに長けていますが、「デジタル」の部分って30〜50代の中堅・ベテランでも知識が足りなくて、その知識の足りなさが、ソフトウェアに対する不当に低評価なジャッジにつながっているようにも感じます。

 

「デジタル作画」を標榜するなら、作画だけに熱中するのではなく、デジタル‥‥というかコンピュータの広範な使いこなしにも熱中してください。じゃないと、「デジタル作画」とは言えないでしょ? dpi・ppiの理屈もわからない、RGBの原理もわからない、メモリとストレージの見分けも曖昧、ファイル形式とコーデックを混同してばかり‥‥では、同じくコンピュータで映像制作している他のジャンルの人から見くびられても、致し方ないです。

 

若い人はこれからどんどん色んなソフトを使って、見識を広めて、技術を高めれば良いです。

 

中堅・ベテランは、結構必死になって「デジタル」部分をマスターしていかないと、ソフトの機能や性能を20〜50%くらいしか使いこなせず、「使えねえソフトだ」なんて悪態をつく愚かな行為に及ぶかも知れません。それはとてもカッコ悪いことです。

 

 

 

私は現在クリスタEXを2ラインセンス持っています。iMacとMacBook Proの2つで同時に使うために、それぞれ毎月500円払っているうちに、1つはいつのまにか支払いが完了して永続ライセンスになり、もう1つは支払い続行中です。

 

クリスタは特に安いですよネ。アマチュアでも導入できる月額です。iPad版でもサブスクリプションで月1000円ですしネ。

 

思うに、セルシス社もデスクトップ版(iPadのモバイル版ではなく)をサブスクリプションへと移行する日もやがて来るのではないか‥‥とは感じます。ソフトウェア会社も霞を喰って生きているわけじゃないですもんネ。

 

ソフトウェア会社の体力不足で、アップデートの頻度が極めて少なかったり、最新のOSへの対応が遅れたり、バグや機能改善が放置されたりするのは、どんなに買い切りライセンスでもユーザの不利益そのものです。

 

ソフトウェア会社と、映像制作会社、そして映像制作を生業とする個人は、一蓮托生です。

 

できるだけ安く‥‥と、作画の単価で苦しめられてきたアニメーターが、できるだけ安く、できればタダで、ソフトウェアを使い続けたい‥‥なんて、誉められた行動ではないですよネ。

 

CS6の「認定外」で大きく騒ぐような業界は、徐々に集団も個人も体質改善していく必要がありましょう。

 

映像作品制作などの娯楽産業は、これから先、まだまだ進化していきます。一度買ったライセンスで何十年も通用する業種ではないことを認識して、絵を描くスタートから映像を映し出す機器のゴールまで、アニメ制作現場の外側にも「フロー」があることを踏まえ、2020年代の仕事を進めていきたいと思います。

 

 

 


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