ガタつき

職業病だとは思いますが、テレビでたまにアニメの映像を見かけると、

 

あ、足が滑った。

 

とか、

 

大判作画のガタつきが。

 

とか、技術的なテクニカルエラー部分に目が吸い寄せられます。

 

 

足が滑るのも、大判のPANのガタつきも、「アニメの味」と言ってしまえばそれまでなのですが、その味は、私には「良い味」とは思えないのです。まあ、昔からあるテクニカルエラー=技術上の障害なので、懐かしくはありますが、未来もソレがアニメの味だなんて、できれば克服して解決したいです。

 

とはいうものの、アニメの作画とカメラワークとの組み合わせで起こる障害なので、今の技術のベースのままでは解決は難しい‥‥というか、解決不可能です。

 

例えば、大判3コマ作画で、キャラクターが歩いていくのに合わせて、カメラをPANするカットは、

 

作画3コマ

カメラワーク1コマ

 

‥‥という秒間分解能の差ゆえに、特に「足の接地面」が見えている場合に、「絶対に解決不可能」な問題となって立ちはだかります。

 

キャラが歩いて進むのに合わせて、カメラがPANして追いかけます。

 

*キャラはもちろん、背景も全て、マウス操作でAfter Effectsだけで作って動かしました。平面レイヤーとシェイプレイヤーがあれば、この感じの可愛い絵柄なら、おてのものです。

 

 

まず、ガタつかない映像を見てみましょう。

 

 

なぜガタつかないかというと、女の子の足も1コマで動き、カメラワークも1コマで動いているからです。映像フォーマットも24コマ、女の子も24コマフルモーション、カメラワークも24コマフルモーションなので、問題が発生しません。

*上図GIFでは、微妙な「揺れ」が出ていますが、これは歩く動きに「詰め」があって、等速で動くカメラワークとの兼ね合いで発生しているものです。とはいえ、次で解説する3コマ+1コマに比べれば、些細なものです。また、(今回はしてませんが)揺れを抑えることも可能です。

 

 

ほぼ全てのアニメ制作現場では、大判作画のPANになったからといって、キャラの作画を1コマにするようなことはしません。通常通りの2コマか3コマ作画です。

 

こんなことになります。

 

 

盛大にガタついていますネ。キャラは3コマで動いているのに、カメラが1コマで動くので、キャラの動きが「遅れては追いつき、遅れては追いつき」の繰り返しとなり、このような酷いガタつきが生じます。

 

テレビのアニメでも多々見覚えがあるでしょう。いかにも「日本製のテレビアニメ」という感じのモーションは、実はこうした技術的問題にも由ります。今までのアニメ作品を見れば、やまほど、こうしたガタつきを発見することができます。

 

それにしても、まあ、すごいガタつきですネ。比較して見ましょう。白黒の画像にすると、エッジがたって、より一層ガタつきが強調されます。

 

 

なぜ、この問題が話題になりにくいかというと、たまにしかこうした大判3コマ作画のPANのカットは出てこないので、問題と認識しにくいのです。‥‥まあ、現場の、しかもコンポジット(アニメ撮影)の人間なら、「ウッ」と思いますが、作画専門職のアニメーターでも「そういうもんだ」くらいの認識しかもっていない人は多いです。

 

もしこうしたガタつきが頻発していたら、生理的に受け付けず吐き気をもよおす人も出てくると思います。幸い、大判作画のPANが少ないので、難を逃れ続けて数十年‥‥という感じですネ。

 

 

 

技術的には絶対に解決不可能ですが、状況的には絶対に不可能‥‥とまでは言い切れません。

 

問題の解決の仕方はあります。まずは‥‥

 

足の接地面をフレーム外に逃がす

 

‥‥というように、コンテの内容を変えることで解決できます。これが1番の解決策でしょう。

 

3コマで動くキャラの足の接地面が、1コマで動くカメラワークと折り合いがつかないがゆえに、このような障害が発生するので、接地面をフレーム外に出してしまえば、「故意に足を滑らせる」ことで、ガツつきは一気に解消できます。

 

 

やだやだ! 絶対に足が接地しているのをフレームにいれたい!

 

‥‥と言うのなら、仕方ない‥‥、以下の方法で切り抜けましょう。

 

作画3コマにあわせて、カメラワークも3コマ

 

カメラワーク1コマにあわせて、作画も1コマ

 

 

でも、おそらく、2つも、「現実的には無理だわ」‥‥となりましょう。

 

まず1コマ作画は、何の脈略もなくいきなりフルモーションになったら「可笑しい」ですよネ。今まで3コマだったのがいきなりこのカットだけ1コマになっても、作風に合いませんし、演出上の流れも崩れます。

 

カメラワークを3コマにするのは、実はたまに見かけます。床を歩く足のアップとかでありがちです。床を歩く足をアップでフォローなんかしたら、滑るかガタるか、どっちかなのに、そういうコンテ書いちゃうんだもん‥‥仕方ないよネ。

 

試しに3コマにしたのが、下図。

 

 

特に、遠景の雲や山の稜線に注目すると、3コマ独特のカクカク・パタパタ感が表れていますが、カメラワークとキャラのガタつきは解消されています。

 

これはこれで、可愛いから(絵柄にもあっている)アリなのですが、前後周囲のカットのカメラワークが1コマなのに、いきなりこのカットだけ3コマカメラワークになっても奇妙な感じで、演出的な流れも違和感が生じます。絵柄によっては、全く合わないこともあります。‥‥やっぱり、解決策としては難しいです。

 

じゃあ、どうすれば良いんだよ

 

‥‥と逆ギレしたくなるキモチはわからなくもないですが、そもそもガタつきの生じるカットの絵コンテをOKにしちゃったんだから、現場で「決着」するしかないです。監督判断も必要でしょう。あまりにもみっともない場合は、欠番も視野にいれましょう。

 

で、解決策。

 

ガタつきはみなかったことにする

アニメとはそういうもんだと、開き直る

 

ぎゃふん。‥‥というところでしょう。それで苦節数十年、アニメ業界は乗り越えてきました。

 

しかし、私は未来まで、その開き直りのままで進みたいとは思いません。新しく成長しつつある様々な技術を導入すれば、こうしたガタつきなど発生させずに、新しいタイプのアニメを制作できると実感しています。

 

 

 

今でもよく、こうした3コマ作画&カメラワーク1コマPANのガタつきは見かけます。しかも、「撮影で何とかしてくれ」とか言われたことも過去にはありました。

 

なんか、侘しいですよネ。寂しいですよネ。いまだに、こうした問題が解決できないどころか、問題を認識すらしていない現場の人間もそこそこいますし。

 

ガタついたPANのカットを見ると、現場の技術レベルの旧式化と限界を痛感します。この技術のまま、あと何年もつんだろうと。

 

映像の高品質化にともなう「未来の試練」に対して、聖域は存在しません。次の「試練」には作画も演出も呑み込まれましょう。波に呑まれたその時になって、「ちょっと勉強しておけば良かった」なんて言っても、遅すぎます。

 

iPadとiMacで、アニメの技術開発は個人レベルでも可能です。数千万・数億も設備に要した過去とは歴然と違います。

 

今回のサンプルは手数の少ないシンプルな絵柄ゆえに、iMacとAfter Effectsだけで作り、タブレットすら使っていません。女の子も風景も全部マウスとパスで作り、After Effectsで動かしました。

 

シンプルな絵にとどまらず、他の絵柄でいくらでも描けます。iPadとApple Pencilで描いたイラストを動かすことも可能です。

 

出来るだけ簡単にページに貼り付けたかったので、今回は低品質なGIFのアニメーション画像ですが、もとは綺麗な画像です。面倒くさがらずにYouTubeなどで公開すれば、相応に高画質な状態で公開できるでしょう。YouTubeは4Kも可能だし、60pも可能なので、本人次第で様々なアピールができると思いますヨ。

 

重要なこと‥‥ですが、コンピュータで描いて動かしたいなら、「わかんないから誰かに」ではなく、自分でiPad ProもAfter Effectsも他も覚えて、自分で使いこなすよう努力しましょう。一番重要な「動き」の部分を、After Effectsが使えないからといって、他人に任すようではその時点で、もはやアニメーターとは言えまい?

 

頑張って覚えれば、After Effectsだって、Photoshopだって、DaVinciだって、使えるようになりますヨ。

 

今を生きているのなら、今のテクノロジーを存分に味わい尽くすべきですネ。

 

*GIF画像ではディザのブツブツが出ますが、After Effects上では綺麗なベタで表現されています。‥‥まあ、面倒くさがらずに、YouTubeを使え!‥‥って話なんですが、時間が経つと色々と忘れちゃってね‥‥。

*24コマなり、60コマなりで、フルモーションで動かせるのですから、必ずしも3コマに落とす必要はないです。ただ、60コマは前の記事にも書いた通り、相当動きの表現が繊細で大変になるので、まずは24コマで動きの知識の更新を進めましょう。

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM