技術放談〜自動中割り、60p

自動中割り、60p。実際に、自分で関わって作業したアニメーターはどれほど存在するか?‥‥と言えば、少ないのが現実のところでしょう。つまり、頭の中だけで想像して話している状態。

 

私は自動中割り(という機能の名称ではないが)を実際に使うことがありますし、60pのアニメーションを作ったこともありますので、その辺りの実感があります。

 

 

 

まず、自動中割りの話で言えば、実写に比べてアニメのほうがはるかに自動中割り=フレーム補完は難しいです。このあたり、ちまたでは全く逆に予測されているので、きっぱり言っておきたいです。

 

絵は単純になればなるほど=情報が少なくなればなるほど、その「残された情報」の役割が重大になるので、扱いが困難になります。俳句って難しいでしょ? 行間、単語の間を読まなければ、何を言わんとしているか理解できないですよネ。‥‥それと同じです。

 

実写は情報がいっぱいあるので、素人目には「こんなにたくさんの情報を「自動中割り」するのは、さぞ高い技術が必要だろう」と思ってしまいます。たしかにフレーム補完技術はスゴい技術ですが、たくさん情報があるということは、補完する際の情報もたくさんあるので、「手がかりが掴みやすい」のです。

 

一方、アニメは色々な作風の色々な技法に基づいて、絵を少なからず要約して表現します。やはり素人目には「実写に比べて単純だから、さぞ「自動中割り」も楽だろう」と思ってしまいます。‥‥線画と動きの素人ゆえの浅はかな推測です。

 

細かく記録された高解像度の実写なら、画面の一部を切り取っても、分析できる情報が豊富に存在しますが、アニメの線画・彩色画は、情報を「描き手の意志でチョイスして要約」した内容なので、少ない情報から「何を意味しているか」を推測する必要があります。少なくとも今のコンピュータの能力では、情報量の少ない線画から推測して補完して埋めて、さらにまた要約してシンプルにまとめた新たな絵を作ることが難しいです。

 

2つの画像を分析して、中間の画像を補完して生成する‥‥というアルゴリズムにおいて、適度にさりげなく省略する絵柄、そして以下のような「グーからパー」の正面の動きは、悩ましい問題に溢れています。

 

 

もし、上図の動画が、「画像分析タイプの補完技術」で無人で処理可能だったら、革命的な発明と言えます。なぜって、「さりげなく描く」という境地に、コンピュータが到達した=人間の「意識」と同等の性能を有した‥‥ということに他ならないのですから。

 

「意識」「自我」をコンピュータも持てるようになれば、もしかしたら「さりげない」絵をコンピュータは描けるようになるかも知れません‥‥が、そうした場合、コンピュータが不満を口にして独自(=自我)の行動を開始したり、境遇に悲観して自死するようなこともあり得るのでしょう。そんなコンピュータが、大学の研究室や企業のサーバルームにあるのでしょうかね?

 

コンピュータが絵を自分で描けるほどの自我や意識や感情に目覚める‥‥なんて、なんだか、クローンの赤ちゃんと同じくらい、危険な話ですけどネ。

 

 

では、私は自動中割り‥‥ではなくフレーム補完技術をどういう場面に使うかと言えば、「コンピュータが処理しやすい簡単な場面」に使っています。

 

絵の細かさは、コンピュータにとってはあまり苦にはなりません。むしろ、絵がある程度細かいほうが補完の情報としては適しており、「どんなでも、中に絵が補完されていれば成立する」場合にフレーム補完機能は威力を発揮しています。

 

つまり、絵が溶けて多少崩れても大丈夫な場面で使います。

 

ただ、そうした場面でも、原画と原画の間のフレーム補完はかなり難しい‥‥というか、絶望的にNGです。少なくとも、動画状態(注)、または原画だと全原画の状態でなければ、フレーム補完は「割りミス」を連発して使い物になりません。

*注)動画まで動きを作ったのち、さらにその間に動きを入れるような場合

 

人間が描いた絵を自動中割りする、しかも原画から直にコンピュータが中割り‥‥なんて、はっきり言って、あてにして待つだけ無駄ですよ。

 

発想を変えて、「コンピュータでも中割りできる」内容をコンピュータにふれば良いのです。人間の代わりではなく、新しい「特殊な作画スタッフ」と捉えて、です。

 

ちなみに、CACANiとかの「自動中割り」は、フレーム間の画像生成補完技術ではなく、「線1本レベルのカットアウトアニメーション」と呼ぶにふさわしい内容‥‥と聞きました。私はCACANiを使っていないので技術内容に言及は避けますが、原画を描いてソフトにぶっ込めば‥‥ではなく、原画を描く時点から「どの線はどう動くか」を制御する技術なので、フレーム補完技術とは分けて語ったほうが良いですネ。

 

線レベルでオブジェクトとして管理すれば、たしかに「中割り」はコンピュータがやってくれますよネ。私はAfter Effectsで同じようなことをしますが、CACANiの技術は有意義で面白そうですネ。

 

 

 

次に60p。‥‥これも、実際に作業した経験がないまま、憶測と想像だけでツイッターなどで語られがちな話題です。

 

8〜24fpsに比べて、60fpsは滑らかか?

 

滑らかです。1秒間のフレーム数=秒間分解能が飛躍的に増えるわけですから、滑らかになるのは当然です。いわば、時間軸の高解像度です。fpsの「frames per second」の意味の通りです。

 

では、8〜24fpsに比べて、60fpsは良いか?

 

「良い悪い」という曖昧な基準で評価する内容なので、簡単にはジャッジできないでしょう。もう少し、違う視点で「良し悪し」を考察してみましょう。

 

 

まず、60fpsは、それまでの2コマ打ち=12fps、3コマ打ち=8fpsベースで表現される「動きの心地よさ」を実現しようとすると、ドカンとハードルが上がります。技術的に極めて難易度が上がります。

 

専門的な話で恐縮ですが、いわゆる

 

暗黙の軌道

 

‥‥で表現する余地がどんどん狭められて、

 

明示の軌道

 

‥‥を表現することが求められます。

 

「暗黙の軌道」とはどういことか、動きのポイントで軌道を考えてみます。

 

まず、動きのポイント。

 

 

もし、人間が暗黙の軌道を補完できないなら、このようになります。

 

 

しかし実際には、人間は以下のような軌道であると「勝手に」補完します。

 

 

 

一連の動きに対して、コマ落ちした限定された情報から、より多くの情報を「無意識」にリアルタイムに推測して補完する能力を人間は持っています。描く人間だけではなく、実は動きを観る人間も、こうした「暗黙の軌道」を補完しています。

 

キャッチボールをしている時、投げ手だけでなく、受け手も、ボールの飛ぶ放物線の軌道を想定して、ボールを投げたりキャッチしたりします。

 

人間というのは、どうやら、経験則によって、当座の不足した情報を反射的に補完するようです。いや、人間だけでなく、猫も(おそらく犬も‥‥。私は猫としか暮らしたことがないので、犬のことは具体的に話せませんが)、自然界の物理法則を「暗黙」のうちに当てはめて予測したり補完していると思われます。

 

ゆえに、2コマ、3コマ単位で動くアニメの動きも「うまくいっている」わけです。

 

しかし、24コマフルモーションや60fpsの場合は、一連の動きにおいて、より細かく絵のポイントを増やして表現する必要性が生じます。

 

 

 

 

そんなの、軌道をベジェで滑らかにすれば良いだけじゃん

 

‥‥と思うのは、確かにそうで、コンピュータでのキーフレーム操作の際は、秒間の分解能に関わらず、つねに軌道を意識してキーフレームのポイントを打つことが基本です。

 

しかし、実際は、簡単なカーブだけが動きの全てではなく、カーブの複合による複雑な軌道、そしてフリクションロスによる不規則な軌道など、色々な動きの軌道があります。

 

 

これを、2コマ3コマで表現する際、ポイントは以下のように要約します。要約‥‥と言っても、原画枚数7枚ですから、相当頑張って原画を描いていますネ。

 

 

しかし、60fpsだと、分解能が細かいので、動きのポイントは格段に増えます。

 

 

 

今までの2コマ=12fps、3コマ=8fpsの時には「コマ落ちの狭間に隠れていた」動きのポイントを、24コマフルモーションや60fpsでは誤魔化せなくなります。

 

「でもさ‥‥。「暗黙」なんだろ? だったら、「言わなきゃ」いいだけじゃん。60fpsでも「最初からそうだった」的にシラばっくれればいいじゃんか。」

 

‥‥とも思うでしょう。でも、それはバレるんですよ。

 

動きに興味がある人は動きの技術として見抜きますし、動きに興味がない人でも「動きにパンチがなくて、何だか動きが薄まった感じ」だと気づくことがあります。

 

 

今までのアニメを、2KSDR24pを最大とした器=ドンブリに入れる、ラーメンと例えるとします。

 

r1.jpg

 

では、未来は4KHDR60pのドンブリだ!‥‥と器の大きさだけに興奮して盛り上がっても、以下のようなショボいラーメンになってしまいます。

 

r1.jpg

 

 

麺も具も昔と同じ量のままで、ドンブリだけデカくていかにもショボいのに、こともあろうにスープは「今までの分量を4倍に薄めて」味が薄くて間延びしたマズいスープに変わり果てています。

 

こんなもん、食えんですよネ。

 

では、麺も具もスープも4Kに合わせて増量すれば良いのか‥‥というと、それもまた芸がない話です。体育会系の育ち盛りの学生の食堂ではあるまいし、単に量を器に合わせて増やせば良いという話ではないです。

 

器が大きくなったのなら、その器にふさわしい、新しいタイプのラーメンを考案して、器が料理を引き立たせ、料理と器の両方で食欲をそそるような、「新しい食体験」としての「新しいラーメン」が必要になるでしょう。‥‥料理の図例は描きませんけど。

 

このあたり、アマチュア、素人さんだけでなく、アニメ業界のプロの方々も考え違いをしている人が多いのを感じます。今までと同じ方法で4K60pなんて無理‥‥だと。

 

同じ方法では済まないどころか、商品としても新しい思考が求められます。なので、今までの方法論を引き合いに出す必要などありません。

 

 

では、「良い悪い」について。

 

60pの特性を理解し、そして十分に活用するアニメーション技術を確立できれば、観ていて美しくうっとりする映像を作れるでしょう。ですから、「60pを使いこなせれば」、「良し」と言えます。

 

しかし、24コマ時代の価値観にとどまって、24コマの流儀を60pに持ち込もうとしても、「悪し」です。決して観ていて感動する映像にはならず、単に間延びしてチカラのない映像になるだけです。

 

60pは、使いこなせれば「良い」。

 

使いこなせなければ「悪い」。

 

‥‥あ、これって、まるで一般論ですネ。でも、そういうことだと実感しました。ゆえに、今は粛々と技術を溜めて方法論を模索している状況です。

 

60pの滑らかな動きになれば、どんなアニメでも素晴らしいものになるなんて、あり得ません。

 

しかし、60pの滑らかさを使いこなせる技量・技術体系を確立できれば、24コマとは大きく隔たった、新種のアニメーション作品を作ることは可能です。60pを実際に扱ってアニメのキャラを動かしてみたから、解った実感です。「もっと観たい」と思いましたもん。

 

 

 

古い方法しか知らないからと言って、新しい方法にチャンレジしちゃいけない‥‥なんてことはないですよネ。

 

また、新しい方法が未来の全てとも限りません。

 

明確なビジョンを持って自覚的に行動しているつもりでいても、実は私も含めて、慣習という束縛の中に、無意識に自らハマって身動きを不自由にするのが、人間のサガというヤツです。ですから、定期的に自分の思考が凝り固まりかけていないか、自己診断する必要はありましょう。

 

自動中割りは完璧にはなり得ないでしょう。しかし、使える場面は相応に存在します。

 

60pのアニメを完全に否定する必要はないでしょう。過去のアニメーションの価値観から切り離された、新しいタイプのアニメが4KHDR60pを器として生み出されることは十分に想像できます。

 

私たちは、毎年毎月毎日、「発見の可能性」の中で生きていることを認識できれば、これほど楽しく豊かで、しかもビジネスチャンスに恵まれていることに、しみじみ実感できるでしょう。

 

昔からの表現を妄信せずに、要素をクールに捉えて再評価し、あえて現代に実践できれば、それは新しい時代においては「新しい売り要素」として映るかも知れませんよネ。温故知新とはそういうことと思います。

 

一方で、今まで通例ではなかったことを頑なにナンセンスと捉えるのではなく、荒唐無稽といわれるアイデアの中にこそ、未来へと続く道標が隠されているとも思います。新しい技術は、地域と言語と常識を超えて相互にリンクして、さらに新しいステップへと進みます。我々映像制作者におけるシンギュラリティとは、新しい技術世代の「ミーム」とも言える、無自覚で同時多発的なシンクロ=同調によるものと心得ます。

 

ただ1つ新旧どちらにも言えることは、

 

新しい時代の、新しいツールを、自由に使いこなそう!

 

‥‥ということですネ。目指すところは各人各所360度バラバラでも、「今」を生きているのなら、「今」を思う存分活用してこそです。

 

日本がアニメ技術先進国というのなら、色んなアニメを作って、日本の存在をアピールしましょう。

 

一時の流行に隷属しない、自由な創作の翼を広げましょうヨ。今の技術を活用すれば、海の上でも、山の上でも、街の上でも、空高く飛べるのは、本当に幸運だと思います。

 

 

 

追記:

 

今回からこうした技術的な雑談は、「技術放談」としてジャンルをまとめていこうと思います。

 

ブログって、記事を書けば書くほど、昔書いた記事が埋もれて死んでいくので、こまめにジャンル分けして、後ほどにWebにまとめてコラム化したいと思っています。

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM