基礎知識

いつも仕事をしている方々はともかく、たまに初対面の人、特に作画の人と話した時に、「??」となるのは、コンピュータの基礎的な知識の部分です。ツイートでも見かけますネ。

 

まず、ストレージとメモリの混同

 

メモリは2TBあれば十分ですか?

 

このような場合、言った本人は、ストレージの容量を指しているのは明白です。RAMの容量で2019年現在、少なくともパーソナルコンピュータで2TBは存在しえないからです。

 

メモリは512GBあれば十分ですか?

 

これもRAMではなく、SSD、フラッシュメモリを指しているものと思われます。512GBのRAMは2019年現在でパソコンではないですよネ。研究機関の特殊なコンピュータは知りませんけど。

 

またHDD=ハードディスクドライブではないことも、2019年の状況からして察することが可能でしょう。0.5TBのハードディスクを2019年にわざわざ買い求める状況は、想定が難しいですもんネ。

 

512GBの場合、2019年の今なら、SSD〜フラッシュメモリを指しましょう。

 

難しいのは、SSDといえど、512GBなら、iPadでもありえるしパソコンでもありえるので、「何の記憶容量ですか? iPadですかコンピュータですか?」と確認しないと話題の対象が特定できません。

 

メモリは64GBあれば十分ですか?

 

これはちょっと迷います。iPadの下位モデルだと、ストレージの数値でありえるし、4つのメモリモジュールスロットを持ったiMacやWinのマシンにおいては16GBメモリモジュールx4=64GBでRAMの容量としてもありえます。

 

そもそも「メモリ」という言葉の幅広さに由来する混同だと言えます。勘違いしても仕方ないですよね。「メモリ=記憶」という一般的な意味で考えれば、なかなか悩ましい用語です。

 

HDDもSSDもRAMも、データを記憶=データを溜め置いて保持することには変わりはないので、コンピュータ機器の仕組みをある程度理解していなければ、初心の頃は混同してもやむなしです。

 

それに、書いてて思いましたけど、「RAM」という言い草も、なかなか古い言い回しですネ。言葉の意味を考えてみると‥‥。ランダムアクセスじゃない記憶装置って、今あるんかな?

 

ランダムアクセス‥‥。昔「QD」というのがあってな‥‥、MIDIのデータを外部記録保存する時に、シーケンシャルアクセスQD=クイックディスクを使っていて、ランダムアクセスのFD=フロッピーディスクに装置を換えた時に、とても嬉しかった‥‥なんていうのは、50代のオジサンの思い出話だわな。

 

話を戻して。

 

コンピュータはおおまかに、演算処理の際にデータを一時記憶する、とても高速な記憶エリアと、速度よりも容量が重視されるストレージのエリアの、2つに大別されます。

 

ややこしいのは、演算処理に用いる高速な記憶エリアでも、ストレージとして使うこともありますし(=昔、RAMディスクなどと呼ばれた)、演算処理の一時的な記憶エリアでも、ストレージのエリアを使うこともありますから(=キャッシュと呼ばれる)、大別して概要を理解した後は、「いろんな使い方があるんだな」と事例を徐々に覚えていくのが現実的です。

 

M.2の高速なストレージは、処理計算の一時記憶エリア=キャッシュには最適ですしネ。

 

 

 

GB‥‥という単位でありがちなのはビットとバイトの混同です。

 

例えば、通信速度で、

 

GB/s

Gbps

 

‥‥は、8倍もの差があります。これは1バイトが8ビットをひと固まりと定められたからです。バイトは無条件に8bitか?‥‥というとそうではなく、情報を形成する1単位であって、昔は4ビットも6ビットも1バイトとして扱われた歴史があるようです。

 

調べてみると、意外にも1バイトが8ビットと明記されたのは2008年のことらしいです。

 

成り行きはそう言うこととして、日常会話で混同しがちなのは、

 

通信速度は1ギガだ

 

‥‥という、バイトかビットかわかりにくい言い回しです。ギガまでしか言わなければ、バイトかビットかは不明ですよネ。

 

まあ、数字慣れした人で、ネットの速度の話題なら、

 

1Gbpsのことだな

 

‥‥と推し量るのですが、外部のUSBやThunderboltの実測通信速度の話題においては、ビットかバイトのどちらを指しているか、よくわからないことも多いです。なので、「bpsか否か」を結構頻繁に確認し合うことになります。

 

「通信速度」と「転送速度」の言葉の違いも、実は結構明確に使い分けられていて、話の要領を得るには、必要なキーとなる言葉ですよネ。「通信速度」はWANやLANなどのネットワーク関係の言葉として使われがちです。一方「転送速度」は昔はSCSI、今はUSBやThunderboltなどのローカルデータストレージのデータ送受の速度として使われがちです。

 

とはいえ、10Gbpsの高速線ともなると、ローカルでのデータストレージをネットワークに置き換えるようなことも未来には可能になりますから、その際は「通信」と「転送」のどちらを使うことになるんでしょうネ‥‥。

 

 

 

アニメ現場で耳にしがちなのは、解像度のしくみの理解不足です。

 

何dpiで作業すれば良いですか?

 

‥‥という言葉が端的に物語っています。dpiが絶対的な画像の寸法を指し示すと勘違いしている人は、結構多いように思います。

 

dpi(ppi)の略語の意味を考えれば、ピクセル寸法と同等の言葉ではないのはわかるはずです。

 

ドット(ピクセル)・パー・インチ=インチあたりのドット数

 

つまり、現実世界の実寸=何インチに、何ドットが割り当てられているかが、ピクセル寸法を決定します。

 

100Fを150dpi

 

‥‥と言っても、肝心の100Fの縦横の寸法が判らなければ、ピクセル寸法は永遠にナゾのままです。

 

制作現場には、B4用紙100Fの作品もあれば、A4用紙100Fの作品もあります。そして、各社でA4用紙の100Fの横幅もバラバラです。

 

dpiだけでは話が通じません。ドット・パー・インチと言うのですから、実物の実寸=レイアウト用紙の100Fの横幅と、dpiの数値をセットで伝えないと、必ずと言って良いほど、

 

dpiは了解しました。

すみませんが、加えて、100Fの横と縦の実寸をミリで教えてください。

 

‥‥との問い合わせが必要になります。

 

コンピュータによる画像処理の基礎知識があれば、dpiだけ伝えても要領を得ないことはすぐに解るはずです。でも、dpiだけを知りたがる作画の人間は結構多く接してきました。

 

今でも基礎知識の浸透が、特に作画の人間には不十分だということの表れでしょう。

 

彩色さんや撮影さんは、解像度にはピリピリして作業するので(=素材の解像度がバラバラだと作業に支障がでるから)浸透していますが、「デジタルは後任せ」で今まで経過した作画の現場は、dpiだけで話が通じると誤解することが多いように感じます。

 

ちなみに、実寸とdpiからのピクセル数の算出は、暗算では中々難しいので、スクリプトを作っておけば簡単に数値が算出できます。私はAppleScriptで作っていますが、ESTKでも簡単に作れますヨ。

 

まずミリをインチに変換し、ドット(ピクセル)・パー・インチからピクセル数を算出するだけの、とても簡単なスクリプト文です。

 

main();

function main(){
    var length=prompt("実寸をミリ単位で入力してください.","0");
    if(!length){return;}
    var dpi=prompt("dpi (ppi) を入力してください.","0");
    if(!dpi){return;}
    var result=length/25.4*dpi;
    var intResult=Math.round(result);
    var evenResult="";
    if(intResult%2){evenResult="¥r偶数値だと「"+Math.ceil(result)+"」です.";}
    prompt("ピクセル数は「"+result+"」です.¥r整数値だと「"+intResult+"」です."+evenResult,intResult);
}

*「¥」は実際はバックスラッシュです。うまく動作しない場合は「¥」をバックスラッシュ(macOSの場合、「option+¥」で入力可能)に置換してください。

 

上記スクリプト文をESTKのエディタにコピペして実行すると、以下のようになります。対話式で数値を入力します。

 

 

 

 

 

これから先の未来、作画の人間は、むしろ誰よりも最初に、最終的なビデオ解像度を確認し、作画作業では何ピクセルの寸法で作業するのか、時には、作業時にそもそもdpiというスキャン解像度の定義が必要な作品か否かも含めて、理解しなければならない立場になるでしょう。

 

一生懸命作画したのに、「リテークです。ピクセル寸法が半分しかありません。線がボケて拾えませんので、書き直してください。」なんて言われたら、気絶しそうになりますもんネ。

 

「誰よりも真っ先に、作業する際のピクセル寸法を確認して、確かな返答が得られるまで、作業に入るべきではなかった」

 

‥‥と、作画の人間が痛感する日も近いでしょう。

 

そのためには、解像度とはなんぞや、解像度とはどのような意味の言葉なのかを、ちゃんと基礎知識として知っておく必要があります。

 

 

 

ちなみに、レタス系の固定解像度のソフトウェアに慣れている、現在のアニメ制作現場ですが、異なるピクセル寸法の素材を「故意に混在させるテクニック」も未来には求められます。

 

例えば、クイックズーム(現場では通称で「Q.T.U」)のあとで尺(秒数)が長いカットの場合、何も考えずに単純計算で4Kで組むと、こんな凄いピクセル寸法になります。

 

*図ではわかりやすく4000pxと記述していますが、実際の規格サイズは、3840(UHD)か、4096(4Kシネマ)です。

 

およそ、3万ピクセル‥‥だなんて、まあ‥‥無理ですよネ。静止画の版権ならまだしも。

 

寄った後のフレームを正規の4Kにするため、逆算で引きのサイズを単純に計算すると、こうした、あまりにも巨大なコンポサイズとなり、実質的に取り扱いが困難になります。(2019年現在のマシンスペックでは)

 

ソフトウェアの動作が鈍足になるどころか、エフェクトの処理の重さによっては「イメージバッファが足りません」とレンダリング不可能に陥ることすらあります。

 

かと言って、引きフレームを4Kで組むと、フレームが寄った後で明らかに解像度不足になります。寄った後の顔のアップで間が長く続く場合、とてもではないですが、品質が低すぎます。

 

顔に寄った後の品質を無視して計算しても、破綻します。

 

困った状況を打開するには、昔から存在するテクニック〜解像度の混在を用います。

 

以下のように、ピクセル寸法を混在させて、映像の内容と運用の現実を踏まえた「最適解」を導きだせば良いのです。要は、解像度を切り分けてコントロールするわけですネ。

 

この図を見て「5Kと6Kと4Kの縮尺がおかしい」と思う人は、ラスタライズして配置するコンポジットに慣れきってしまった人です。部分的に解像度を変えるテクニックは、実は前世紀から存在しています。画面の中の要所で、縮尺が動的に変わるコンポジットは、未来の大画面時代においても必須のテクニックです。

 

After Effectsの場合、「コラップストランスフォーム」で、この方法が実現できます。解像度を混在できないソフトウェアでは、この方法は全く無駄になるので、どんなソフトウェアでもできることではないことを念頭においてくださいネ。

 

クイックズームなので、ズーム途中は像が目まぐるしく変化して、解像度の荒れなど気になりません。つまり、カット内容を鑑みて、「実のある」作業計画を立てて対処すれば良いです。

 

ただ注意すべきは、この方法が普及していない現場もそれなりに多いでしょうから、「ブログで読んだ!」とか自己の判断で勝手に作画しないようにお願いしますネ。「解像度混在のテクニック」は示し合わせをしないと通用しないことがあるので、事前に撮影監督さんと仕上げチーフさんと美術監督さんと演出さんと作画監督さん(つまり全員)に相談してから、実際の作業にインしましょう。

 

そうすることで、実は工程間の垣根が徐々に取り除かれ、新しい時代を迎えるにあたり、セクションを超えて結びつくきっかけにもなり得ます。アニメ制作は個人作家でもない限り、共同作業であって、独裁体制は通用しません。少なくとも、新しい技術が旺盛に盛り込まれる未来においてはネ。

 

ゆえに、コンピュータの基礎知識を、セクションを通じた「共通言語」として捉えて、会話で齟齬が生じないように努めるのが肝要です。未来に、「アニメ業界はむしろ先進的な運用をしている」と言わせるべき状況の基盤を作るのです。

 

アニメ業界は他に比べて2歩も3歩も遅れている‥‥なんて、未来もずっと言われ続けないように、頑張りましょう。

 

 

 

未来、作画の人間は、コンポジットの技術も少なからず知識に加えて、作画時に最適な内容で作画することが求められます。フィルム時代の知識はソレはソレで「温故知新」としてとっておいて、新たな知識もどんどん覚えて未来に備えましょう。そして、自分の技術蓄積を担保に、相応の報酬を得る「裏付け」を形成するのです。

 

凄く乱暴な言い方をすれば、基礎知識のない現場は、どんどんトラブって、「安さ爆発の映像制作の方針」が破綻すれば、業界も「このままではいけない」と気づくこともありましょう。

 

ダメな現場と良い現場の分離は必要であり、自然界のソレと同じく、自然淘汰はどうしても未来に生じましょう。

 

スタッフ個人の視野で言えば、相応の基礎技術と専門技術を身につけた人間が相応の対価として報酬を得るには、現場も相応のレベルに到達する必要があります。紙の時代の慣習を引きずって開き直るような現場は、未来の発展とスタッフの引き留めは難しいと思います。

 

頑張れば報われる。

 

レベルを上げれば、報酬もアップする。

 

そんな現場を目指しましょうヨ。

 

 

 


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