品質鎖国

その昔、プレイステーション(初代)のゲーム内イベントムービーという、アニメの仕事のジャンルがありましてね。プレイステーションの仕様で、

 

320x240 / 15fps

 

‥‥という、今では「アイコンサイズか」と思うようなミニミニサイズで映像を完パケしていた時代がありました。

 

その際に、真正直に、320x240で作っちゃったものだから、あまりにも解像度が低すぎて、後年に映像再評価の対象にならずに、すっかり闇に葬られた状態です。

 

黒歴史なんていう言葉がありますが、まさに「黒解像度」です。振り返りようにも画像が荒くて振り返ることすらままならない、かわいそうな映像。‥‥その当時はみんなで苦労して作ったのに、悲しい限りですよネ。

*注)320x240は当時としてもミニサイズでした。当時は640x480〜720x486(480)が標準でした。

 

で、

 

1280x720

 

これも、相当なプチサイズになる予感。

 

既にHDのサイズ=1920x1080が標準になって久しいのに、アニメ業界はこの解像度が依然として多いようです。

 

4Kへと移行した未来に、過去を振り返って、「なんで、あんな小さい解像度で完パケしちゃったかね‥‥」と、後悔するのが目に浮かびます。

 

まあ、実際には1920x1080のHDサイズでの完パケなのですが、中身は1280x720のアップコン‥‥という作品は、業界内で沢山存在するようです。

 

せめて、スキャン解像度のドットバイドットにしておけば良いのに、1280まで縮小しちゃうんだもん。せっかく作ったのに、勿体無いです。

 

「フリッカー対策で」というのは、何年前の技術で停滞したままなのか。‥‥エッジを柔らかくするために、わざわざ1280pxなどにしなくても、スキャンのドットバイドットや2Kのままでも、そして4Kドットバイドットであっても、十分「詳細感を保ったままでのチラつき防止」は可能です。

 

 

 

民放テレビ深夜枠にて「タダ」で視聴できる現在のアニメの立ち位置なら、まだ1280pxでも良いかも知れません。

 

しかし、映像そのものが売り物で、お客さんがサブスクリプションで対価を支払う4K映像配信の時代には、もはや1280pxなんて通用しません。

 

せめて、作業当初から2Kで。それがだめなら、せめて、作画用紙の150dpiのドットバイドットで。

 

 

 

昔、プレステのムービーを、あんなにみんなで苦労して作って、結果、320ピクセルの「今では冗談と思えるようなサイズ」しか残っていなくて‥‥という私の経験から、「できるだけ品質を保った状態でマスターはつくるべき」と考えています。

 

1996年当時、プレステのゲーム攻殻のOPだけは、たしか640ピクセル前後で作ってたはずです。fpsも30でした。‥‥それでも、今ではミニサイズで解像度不足です。

 

もちろん、お金の問題もありましょう。

 

であるのなら、ちゃんと2Kや4Kで作業当初から作っている作品は、相応の高額な制作費を発注側が定め、作業者にも品質保証の見返りを還元するのが良いでしょう。もちろん、制作上の品質誤魔化しなど不正がおこなわれないように、QCや監査は必要となります。

 

当のアニメ業界が1280pxで十分だと「品質鎖国」している状態では、いつまでも「文明開化」〜技術の開化は果たせません。

 

もし、発注側が「お金は出す」と約束してくれるのなら、受注側は相応の品質を保証しないとダメですよネ。

 

逆に、従来の1話あたり1500万円以下の制作費であれば、品質も従来のままで1280ピクセルでもやむなしとも言えましょう。制作費によって対応可能な解像度が変わるのなら、見た目として一番ソレが判りやすいかも知れません。

 

 

 

過去、アニメ業界は「窮状を訴える」と同時に、相当ヤバい品質誤魔化しや水増しをしてきたのも事実です。受発注双方が「黒いパンチ」を繰り出す「黒いクロスカウンター」だったと言えます。

 

新しい時代が到来して、体質を変える好機が訪れても、いつまでも低解像度に自己満足して納品しているのなら、好機は無残に打ち砕かれましょう。

 

低解像度のアニメ映像は、線を見るだけでバレます。ぼやけて滲んで、しかも一律に線が太いので、内状が透けて見えるのです。

 

作品の好みは自由でいいのです。でも、解像度まで未来に自由が許されるかは、320や640(720)ピクセルの作品を振り返れば、言わずと知れます。やがて「絵が雑」という印象で括られて、時代からズレていくでしょう。

 

「絵が雑」だなんて、心外にもほどがありますよネ。プレステのムービーパートは決して雑には作っていませんでしたもん。

 

しかし未来は、解像度の低さゆえの雑さがどんどん目につくようになります。抗おうにも、人々の目が肥えてしまうので、避けられません。

 

お金を出す側、受け取って作る側。そして、実際に対価を払って視聴するサブスクリプションのお客さん。‥‥お金に関する過去との因縁を断ち切る際に、1280ピクセルは案外、判りやすい品質分岐の基準になるのかも知れませんネ。

 

 

 

では、どうすれば、4K時代に見合った品質が、アニメで可能となるのか。

 

まずは相応に見合った制作費です。そこはベタにリアルです。

 

現場的には、スキャンの存在しないペーパーレスは必須ですし、マシンの全体的な機種更新・環境パワーアップも必要でしょう。作画技法だけでなく、演出技法の革新も必要となります。昭和起源のテレビアニメ演出法はフォーマットに合わず通用しなくなります。映画の演出法を応用しつつ新しい4KHDRのテレビ感覚が求められましょう。

 

作業者の報酬も当然、4Kに適合した額面が求められます。ゆえに、膨大に枚数が嵩む今までの方法ではどんなにお金があっても破綻は目に見えています。新しい技術も併せて実用化して導入し標準化することが求められます。

 

一方で、4K相応の制作費を貰っていながら、1280pxで作ってアップコンするような会社は、監査やQCを受けて作り直しするなり、納品拒否されるなりして、淘汰され消える運命を辿るしかないです。1000円の商品を、4000円の外箱に入れて出荷する‥‥なんて、許されるわけがないですし、産業の信頼にも関わります。

 

今まで2000円の商品を1000円で売っていたような、業界の悲話はありましょう。作業者を苦しめ続けた現実として。‥‥ゆえに、どこかで適正な仕切り直しが必要で、曖昧でうやむやな制作基準・作品のグレード認識を正す機会が近い未来に到来すれば‥‥良いですけどネ。

 

「スーパーの女」の「正直屋」を目指すくらいでちょうど良いです。「どうせアニメ会社はどこも一緒」みたいな認識から脱出しないとさ。

 

抜け道はないです。地道に足場を固めていくだけです。

 

お互い、頑張りましょう。

 

 

 


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