なびきと目パチ

相変わらず、従来技術のアニメ制作現場では、「多重組み」「複合組み」のトラブルが頻発しているようですが、キャラクターデザインから考え方を改めなければ、「多重組み」のトラブルは絶対になくなりません。

 

「多重組み」を引き起こした本人が修正して責任を持つべき‥‥というのなら、「本人」とはすなわち、「多重組み」が絶対に発生するデザインをしたデザイナーでしょう。

 

髪の毛に目が透けるデザイン(=髪の中に目を書き込み)だったら、顔Aセル、目パチBセル、髪の毛のなびきCセルで、100%「多重組み」は発生します。

 

原画マンが「目パチのタイミング」を髪の毛のなびきの一定区間に必ず限定して、セル番号もちゃんと事前に振っていれば、「意図した多重組み」によって絵の破綻は防止できます。

 

●目パチの区間だけリピートをバイパスする

*セル番号の模式図ですので、「1コマ打ち」というわけではないです。適宜、2コマや3コマに読みかえてください。

*当然ですが、目パチできるタイミングは、髪の毛のリピートの「C4,5,6」の区間に限定されます。

*同じく当然ですが、目パチの「コマ打ち」は髪の毛の「コマ打ち」に完全にシンクロする必要があります。

 

 

しかし、「目パチのタイミングは、ここじゃなくて、こっちにズラして」と演出さんがタイミングを変えたら、その時点で原画マンの「意図した多重組み」は総崩れとなり、「目は閉じているのに、髪の毛の中の目は開いている」という「テクニカルエラーとしての多重組み」となります。

 

それでも、エラーの当事者は原画マンなのでしょうか。「テクニカルエラーとしての多重組み」を問われるのは、原画マンなのでしょうか。

 

あまりにも理不尽過ぎますよ。

 

もうね‥‥、こんな話題でトラブっている時点で、従来の現場はダメなんよ。「多重組み」は本人が修正すべき‥‥と言いつつ、その本人とは誰なのかも曖昧。

 

原画マンは、キャラ表に描いてあれば、よほどのことがない限り、デザインを守らなければなりません。「よほどのこと」が、まさか、目パチ&髪の毛のなびき?

 

「テクニカルエラーとしての多重組み」を原画マンの作業範囲で100%回避できるというのなら、その方法をちゃんと明示しないと説得力がないです。

 

私の見解では、どんなに原画マンがタイミングに気を使って、セル番号をちゃんと振っても、後でタイミングの変更があったり、そもそもデザイン上で「多重組み確定」で、さらには髪の毛や目に作画修正が入って設計意図が崩れたら、もはや原画マンの「テクニカルエラーの修正の保証対象外」です。

 

 

ちなみに。

 

現在作業中の作品で「多重組み対策」として実践しているのは、「デジタル作画」と呼ばれるカテゴリのカットにおいては、

 

髪の毛の奥側の目は透けない=目の書き込みはない

肌や目に、髪の毛の影は落ちない

 

‥‥という処理です。かなり割り切ったデザイン上の処理にすることで、どんなに目パチのタイミングをズラそうが、変則タイミングだろうが、髪の毛のなびきに関する「テクニカルエラーとしての多重組み」は100%発生しません。

 

一方、新しい技術を用いるカットでは、

 

髪の毛の奥側の目はコンポジット処理で美しく滑らかに透ける=目のトレス線かきこみだけの処理とは大きく異なる

タイミングは自由自在

肌や目に髪の毛の影が落ちてもOK=髪の毛の影が肌や目に落ちる場合は、コンポジット処理

 

‥‥です。そもそも「組み」が存在しません。レイヤー重ね、もしくはマスクワークで、コンポジット技術上で実現します。

 

 

残念ながら、従来の現場では、

 

原作のキャラに縛られて、アニメのキャラデザインをセルワークに最適化できない現実

マスクワークに関する処理の指示は、旧来のタイムシート用語では確立できていない

レイヤーを全て分けられるほど、手間もかけられないし、お金もかけられない

 

‥‥という状態です。

 

クライアントの無茶なオーダーに、意に反してキャラデザインを合わせなければならないこともあるでしょう。マスクワークの指示方法は、「T光」くらいだけで、より高度なマスクワークはタイムシートでは伝達不可能です。キャラのカットだけ豪勢に贅沢にレイヤー分けできるほど、アニメの現場には余裕はないです。

 

ですので、現状のアニメ制作現場では解決しようがないです。アニメのキャラは美少女キャラ合わせでどんどん複雑になる一方で、新しいセルワークや処理が業界全体に標準化されるわけでもなく、ただひたすら「根性で作画」「根性で仕上げ」「根性で撮影」体質だけで支えているのですから。

 

ゆえに、状況がわからない人は延々と「原画マンがルーズだから」と思い続けて、現場の不信感は増す一方です。‥‥ダメになり始めると、とことん、ダメになっていくよねえ‥‥。

 

じゃあ、どうすれば良いのでしょう。

 

少なくとも、ツイッターで文字を書き込むだけじゃ、改善など不可能ですよネ。焦燥感、飢餓感だけが煽られるばかりで。

 

「テクニカルエラーとしての多重組み」を「意図した多重組み」へと改善するにも、何らかのアクションは必要でしょう。旧来の現場を大切に想う当事者、旧来の現場でこれからも飯を喰っていこうと思う当人が、重い腰を上げてこそです。

 

 


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