速弾き、あれこれ

今回は、ギターを弾いてた人、もしくは弾いてる人向けの話題です。

 

先日のブログで、エドワード・ヴァン・ヘイレンの「ライトハンド奏法」がロックギター界隈においてショッキング過ぎて、誤ったTAB譜がいくつも出回った‥‥という話を書きましたが、エディだけでなく、センセーショナルなギタリストは、錯綜するTAB譜の解釈がつきまとっていました。高中正義さん然り、イングヴェイ・マルムスティーン然り。

 

エディの登場からわずか数年で、イングヴェイが登場した時には、あまりにも高速で粒立ちの揃った音ゆえに、どうやって弾いているのか、同業のプロのギタリストまでイングヴェイのライブハウス時代のライブを見に行った(聴きにいくだけでなく、運指を見に、)と聞き及びます。

 

まあ、イングヴェイが出現する前にも、アル・ディ・メオラのロックギターとは一線を画した正確かつ高速な演奏もありましたし、アラン・ホールズワースの驚異的なレガートによる変態音跳びフレーズも存在したわけですが、ポピュラーなロック(変な言い方ですが)において徹底的に「ライトハンドではない超速弾き」を見せつけたのはイングヴェイが最初でした。

 

あまりにも速くて音の粒立ちが良いので、「スロー回転で録音して元に戻している」なんていう風評まで飛び出す始末。「こんなに速いのは、遅くして録音しているはずだ」とか。

 

イングヴェイが革新的だったのは、高速オルタネイトピッキング(上下往復のピックの動き)と併用して、エコノミーピッキングを使い分ける「速く弾くための合理性」でした。

 

それまでのロックギターは「オルタネイトピッキングが速弾き上達の極意」のように教則本でも説かれていて、「休符は空ピッキング」(=今は亡き成毛滋さんの70年代の教則本でも在った)とまで徹底されていました。

 

例えば、三連符のフレーズを弾く場合、ダウンとアップピッキングを交互に繰り返すと、以下のようになります。

 

 

四角の記号がダウン、三角の記号がアップのピッキングです。悩ましいのは、三連符ごとの最初の音が、上下のピッキングとズレて、ダウンとアップと錯綜することです。テンポがゆっくりだとまだ何とかなりますが、速いテンポだと難しい‥‥というか煩雑で面倒です。

 

実際にイングヴェイがこうしたフレーズ(「Big Foot」という楽曲です)を弾く場合、以下のようになります。

 

 

ダウン・ダウン・アップの繰り返しとなり、上下往復のオルタネイトピッキングよりも「アタック音が少なくレガートに」「テンポが速くても対応可能」になります。三連符の必ず最初はダウンピッキングになるので、テンポにも合わせやすいです。

 

反面、ダウン・ダウンの際に音がくっつきやすく、正確な三連符になりにくい欠点はありますが、それも練習次第で克服できます。オルタネイトで弾くより格段に現実味がある‥‥というか、作曲者のイングヴェイ自身が弾いてる方法なので、フレーズそのものがこのエコノミーピッキング(エコノミー=節約)ありきと言えます。

 

私は当時高校生でしたが、ビデオを見た時に、かなりショックでした。

 

「速弾きはオルタネイトじゃなくてもできるんだ」「オルタネイトは絶対ではないんだ」‥‥と。

 

教則や常識に縛られていた私には、考えも及ばない奏法が、イングヴェイのライブVHSビデオの「執拗にイングヴェイの手元ばかり映す」映像の中で展開されていました。

 

まるで疾走する機関車のように、シュドドドド!‥‥とオルタネイトを繰り返すことばかりが「弾き方だ」と思っていた「融通の効かない脳」(=例え10代のティーンであっても)の私は、目から鱗が何枚も落ちた次第です。‥‥その衝撃は、エディ・ヴァン・ヘイレンと相まって、その後の私の「思考」に大きな影響を及ぼし、私の絵やアニメの技術形成にも継承されたのを実感できます。

 

 

 

イングヴェイの衝撃はピッキングだけでなく、運指でも炸裂していました。

 

例えば、以下のフレーズを弾く場合を考えてみると‥‥

 

 

 

イングヴェイ登場以前の「常識的な運指」は以下のようなものでした。

 

◆2〜5フレットの指開きで演奏する場合

 

◆3〜7フレットの比較的大きな指開きで演奏する場合

 

 

しかし、実際のイングヴェイの運指をビデオで見ると、以下のような単弦だけの運指です。

 

 

 

指板のY軸移動(縦移動)=弦を弾き分ける方法ではなく、高速な指板のX軸移動(横移動)にてフレーズを演奏する方法は、今までのロックギターの常識を覆すテクニックでした。ゆえに、イングヴェイの演奏の様子が撮影されたVHSビデオ製品が出回る前に刊行したバンドスコア・ギタースコアは、ほとんどが「タブ譜の採譜間違い・ポジション間違い」でした。プロの採譜者の人でも、想像がつかない運指だったのですネ。

 

この「X軸高速移動」の運指法・演奏法の利点は、高速なオルタネイトピッキングを単弦で持続させることで、高速なフレージングと音の粒立ちを両立させることができる点です。トレモロピッキングのような非常に速いピッキングの1つ1つが音階を伴ったフレーズになるので、今までの価値観や常識では「超人的」とも言える速度の速弾きが「いっきに可能になった」のです。

 

 

 

リッチー・ブラックモア、エドワード・ヴァン・ヘイレン、イングヴェイ・マルムスティーン。

 

ロックギターの「速弾き」ギタリストの系譜を、私は小学高学年から高校生までの、わずか6年間くらいにめまぐるしく体験し、今にして思うと、

 

え?‥‥たったそれだけの期間で、そんなドデカイ技術革新が巻き起こったの??

 

‥‥と、驚きを通り越して「畏怖」の念を抱かずにいられません。

 

時代に勢いがある時の技術の進歩って、スゴいですよネ。

 

ちなみに、Mr.Bigで有名なポール・ギルバートが彼のバンド「Racer X」として登場したのは、私がアニメーターのキャリアを本格開始して一人暮らしを始めた年なので、よく覚えています。ポールは私の1つ上の学年(?)さんです。CD(その当時はレコード全盛で、CDを買うのも珍しかったです)を大泉学園駅前のレコード屋さんで買って聴いた時、エディとイングヴェイを足して、さらにスウィープやタッピングの超絶テクを盛り込んだプレイに、「19歳でコレ? ‥‥もうアカン。ついていけない。」と呆然としたのを覚えています。

 

 

 

まあ、その反動も凄くて、ロックの音楽シーンでは「速弾き戦争」のあまりの加熱に白けてしまって、ガンズ&ローゼスなどの「非・速弾き」のスタイルが80年代後半に台頭することになり、90年代には速弾きに熱中すること自体が流行らなくなりました。

 

どんなにハイテクな速弾きが盛り込まれていても、曲が面白くなければ意味がない‥‥ということに、速弾き戦争を経たことで皆改めて認識したわけです。

 

速弾きを極めれば、曲もどんどんかっこよくなるはず。‥‥そうした技術偏重主義が幻だったことを、過剰なまでに速弾きテクニックが加熱することで、皮肉にも証明されたわけです。

 

この経緯。‥‥どこか、作画技術の80〜90年代の流れを彷彿とさせますネ。

 

 

 

でもまあ、技術は技術。何かを作る上で、なくてはならない大切なものです。

 

表現の方が大事だ。技術なんて要らない。

 

‥‥とか言い出す人もいそうですが、実は、

 

表現を支えるのが技術。

 

‥‥なのです。技術偏重主義の誤りは、表現を置き去りにして技術だけに夢中になったことでしょう。

 

 

 

現在私らが取り組む4KHDRも、目的は表現なのです。決して、4KやHDRの技術アピールに終始することが目的ではないです。新しい4KやHDRという手段で、どんな表現が可能になるのか、そこが重要です。

 

2KSDRではできない、4KHDRならではの表現技術があって、作品における表現の必然が生まれるわけです。表現と技術の相互フィードバックによって、新たな作品表現のアイデアもどんどん生まれます。

 

ベンチャーズのちょっと歪んだ程度のクランチサウンドでは、ヴァン・ヘイレンの「ユーリアリーガットミー」の切り裂くリフは成立しなかったでしょう。つまり、音楽であれ、映像であれ、その時代の「技術世代の性質」が表現に作用します。

 

「作品表現」と「技術」は、「時代」という胎内で育まれる、二卵性双生児のようなものです。

 

私の世代は、速弾き戦争も経験したし、作画技術大進化も経験したし、もっと言えば、撮影・コンポジット技術の大進化も経験しました。

 

その経験を、何に活かすのか。‥‥各人それぞれでしょう。

 

私は、「何を表現したくて作品を造るのか」を再認識し、あくまで表現のための技術を実践したいです。

 

2020年代という新しい母体の胎内で育まれる技術と表現が、どのように生まれ出でて、どのように成長していくのか、それが楽しみです。

 

 

 



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