建替の進め方

昭和30年築の古い建物を、新しい時代に適応する「新しい建物」に建て替えるには、どうすれば良いでしょうか。

 

建物が古くなったからと言って、何も土地を手放す必要はなく、むしろ、その土地を有効活用するために、現代の様々なテクノロジーを反映した、新基準の「我が家」「我が店」を建てるには、どのくらいのお金と時間がかかるのか。

 

4KHDRをはじめとした新しい時代の映像産業の中で生きていくということは、すなわち、そういうことです。

 

どう考えても、かなりのお金と時間は必要ですよネ。

 

私が前に「今のアニメ技術のままでは、4KHDRのスタートラインにも立てない」と書いたのは、アニメ制作現場のスタッフの力量の話ではなく、作業環境に起因する話です。

 

絵を描く環境

色を彩る環境

演出する環境

コンポジット&編集する環境

制作運用する環境

 

「げ。‥‥全部じゃん。」‥‥と思うでしょうが、ぶっちゃけ、その通りです。

 

なので、一気に建替なんて無理なんですよネ。

 

そもそもシステムや新技術の導入は、エラー&リトライの試行錯誤の時間が必要です。

 

仮に、お金をものすごく用意できたとしても、いきなり「住みやすい家を建てられる」保証はありません。「凄くお金をかけて建て替えたけど、凄く住み難かった」なんて笑い話では済みません。

 

従来の制作システムを所与のものとしてしか考えない人は、次世代の制作システムもお金さえ出せばポンと完璧な状態で手に入る‥‥なんて思ってませんか?

 

自動販売機のように、お金さえ入れれば、最適な環境一式がゴトンと落ちてくるわけではないです。

 

 

今まで何も準備してこなかったのに、「明日から4Kです」と言われて対応できるわけがないです。そもそも環境が対応してないので、作業を開始することができませんし、慌てて環境を更新しても、それが適切な更新内容とは限りません。

 

目安としては、以下の通り。

 

絵を描く場合は、タブレット作画に完全移行。マシンのスペックは最新のものにリプレース。

 

色を扱う場合は、モニタは4KHDRの最低でも300nit PQ対応の機材に完全移行。色を塗るマシンも最新のものにリプレース。

 

コンポジットと編集の場合は、4KHDR24pをコマ落ちなく正確な色で再生できる機材に完全移行。もちろん、最新のマシンが必須。

 

制作運用は、PM(プロジェクトマネージメント)のシステムへと完全移行。何らかのPMのソリューションを導入し、全スタッフに供給。

 

 

‥‥うんざりしますかね。でも、これが未来の現実です。

 

お金と時間がかかるのは、避けられません。避けたければ、2KSDR24pのままの環境でアップコンに頼るしかないですが、その仕事は4KHDRとして受注することはできません。

 

 

 

私ら技術グループは、2013年頃から「紙での4Kを開始」し、翌2014年に4Kの取り組みを本格化(=実用化を目標)しました。「2014K」というニックネームをプロジェクトに付けたので、よく覚えております。iMac 5K、iPad Proと矢継ぎ早に「4K時代の製品」が発売されたのも、取り組みを開始できた要因の1つです。

 

つまり、現在で既に4年以上の基礎技術の積み上げが経過しています。「時間がかかる」とこのブログで度々書いているのは、そうした今までの実感に他なりません。

 

ちなみに、カットアウトの技術に関しては、2005年くらいには実用を目的とした研究をスタートしているので、もう13年以上になります。Blood劇場版の頃(部分的に使っていた)からカウントすれば、ほぼ20年です。

 

ぶっつけ本番でいきなり4Kなんてできません。準備と慣れの期間が必要です。

 

 

お金も、徐々に徐々に投入して、今に繋がっています。普通に考えて、実績のないものに会社はお金を出しませんし、仕事もくれません。現在受注している仕事の中で、徐々に成功事例を蓄積して、「D-Day」〜大作戦の下地を作っていくのです。

 

ですから、安易に成功事例を安売りするのは禁物なのです。「秘密主義」なんて揶揄する人もいますが、成功した事例は大切に「D-Day」に向けて備蓄して守る必要があります。過去のアニメ業界において、野放図に何の戦略も無しにどんどん技術を共有したからこそ、ディープレッドなオーシャンがアニメ業界を覆ったことも忘れてはなりません。

 

技術はお金と時間によって生み出されます。つまり、技術は財産です。

 

ゆえに、どのようにお金を使うかは、重要なキモです。チャンスを逃さずに、徐々に投資していく「タイミング」はどうしても必要です。それは組織に対しても、自己に対しても‥‥です。

 

 

 

自分たちの住む古い家を、現代化するために建て替える。‥‥となると、どうやって建て替えるか。

 

難しいですよネ。

 

建替の長期的なロードマップも必要でしょう。中期的な住み替えプランも必要でしょう。目先の短期的な家具の入れ替えも必要でしょう。

 

幸い、人間は同時にいくつもの事柄を処理できませんから、まずは液タブやiPad Proを獲得してタブレット作画に慣れて短期的ステップを達成し、そのタブレット作画技術を足場にして、次の中期的ステップに進む‥‥という「ステップアップ方式」は、有効な手法です。

 

でも、何もしなければ、当然何も変わらないし、どんどん置き去りにされるだけです。ステップを昇らなければ、一向に上の段階には進めません。

 

一方、時代は必ず進みますから(ガラパゴス化はあるでしょうが、時代そのものは止まった試しがないですよネ)、未来を見据えた建替のプランをあれこれと当事者自身がまず考えることが肝要です。

 

 


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