ディスプレイモニタ

6Kモニタ?‥‥Apple新製品の「噂」ですが、私としては寸法そのものよりも、HDRのPQ対応のほうが関心事です。いくら寸法が6Kでも、Apple節のHDRでは使い道がないです。実際、iMac ProのモニタはHDRの仕事には使えないですしネ。6Kモニタを出すのなら、1000nitsでPQ対応にしてほしいです。‥‥となると、macOSのUIの配色も見直さないとダメなので、風呂敷が広がって、すぐには無理っぽい感じですかね。

 

Appleの開発スタッフには、いっそのこと、自社のPVとかでDolby Visionの仕事もしてもらって、未来のディスプレイやOSのUIに何が必要かを、ひしひしと実感してほしいです。ただ鮮やかなだけで、使い道の乏しい「500ニト」のディスプレイを高い金を出して買う気にはなれんです。

 

でもまあ、思い起こしてみると、Apple製のモニタがリファレンス用途になった試しは、過去一度もないわけで、作業用モニタというよりは「とりあえず見る」モニタとして、今後もわきまえて使っていけば良いのでしょう。iMacのモニタはオフにはできないですからね。

 

過去、頼りになったのは、EIZOやBarcoのディスプレイ製品でした。Barcoは、2K以前の劇場アニメ作品でリファレンス用途で使っていましたが、2K以降はEIZOのモニタを使い続けています。

 

EIZOといっても、何でもかんでも上位機種にしているわけではなく、4KHDR導入前までは「ビジネス用途」向けの8bitの2.5Kモニタを使っていました。廉価な部類の製品です。

 

で、このビジネスモデルで8bitの2.5Kモニタが、これまた五反田のラボのグレーディングルーム(北斎ね)と「クリソツ」で、社内システムスタッフ(=モニタの色公正をメンテしてもらっています)と驚いたことがあります。「もう少しズレてても良さそうなのに」と。

*「ビジネスモデル」とふと書いてしまいましたが、ややこしい言い回しですネ。映像制作用途ではない一般事務用途で用いる主旨を「ビジネス」と言い表すのは、考えてみれば誤解を生じやすいです。「ビジネスモデル」とか言うと、まるでマーケティングの用語みたいですし。

 

もちろん、数百万クラスのマスモニの、別次元のしっとりして落ち着いた発色に比べれば、数万のビジネスモニタなので見劣りはしますが、日々の作業には十分な性能を持っていました。なまじ「Adobe RGB」を謳うモニタよりも、EIZOのビジネスモデルのモニタのほうが、ラボと極めて色が近かったのは、興味深い事実です。

 

 

もし、近い未来に、もう少し導入しやすい価格の4KHDRモニタが出れば、マシン本体はモニタなしの新型Macminiで盛り盛りにして、モニタは4KHDRとサブの2.5KSDRの2つで十分ですネ。2〜4Kの液タブを繋いでもまだ余裕があります。

 

液タブに関しては、線画を描く際にはHDRは必要ないですが、イメージボードなど色付きの絵を描く際には、HDRでしかもPQ1000(=たとえ300nitsでも)で表示できると、次世代の映像制作にスムーズに導入できます。‥‥まあ、まだ先の話だとは思いますが‥‥。

 

 

もしかしたら、2020年代以降のアニメ業界でズドンと大きく変わるのは、絵の描き方よりも、ディスプレイ周りの意識かも知れません。

 

アニメ制作現場は、今までずっと「リニアオンリー」の運用です。いわゆる「見たまんまの色」で運用するスタイルです。

 

一方、実写ではHDRの以前から、「ログ」で実写撮影をして、LUT=ルックアップテーブルで「リニア」に変換する方法を採っています。階調の潰れが目につきやすい部分には、多くのデータ帯域を割いて実写収録し、最終段階で「人間の見た目」に合わす方法です。コンポジット(VFXなど)作業上ではリニアでルックを確認しつつ、データ上はログのままで運用する方法が必要となります。

 

なぜアニメ制作現場常駐の私がログとリニアの運用を知っているかというと、アニメ作品だけでなく実写作品を作業したからに他なりませんが、私が特別に順応能力が高かったわけではなく、ある程度のスキルを身につけた人なら、対応できると思います。

 

とはいえ、ずっとリニアの世界だけで生きてきた人にとっては、ログの運用は「なぜ?」と戸惑うことばかりです。私も最初は戸惑いましたからネ。

 

同じように、PQ=パーセプチュアルクオンタイゼーションによるHDRの映像データは、非HDR-PQのモニタでみると、まるで実写のログ映像をLUTなしで見た時のように、ぼんやりと眠いローコントラストのルックになります。

 

たとえ「500ニト」のiMacのモニタで見ようが、PQに対応していない限り、画像・映像データは本来のルックで映し出されることはありません。

 

実写のログ撮影データを、LUTなしでビジュアルエフェクト作業するのが不可能なように、たとえアニメであっても、PQ仕様の映像データはPQ対応モニタでなければ作業はままなりません。

 

 

ディスプレイ・モニタの未来に対して、アニメ制作現場には2つの選択肢があります。

 

旧来のリニアオンリーの運用のままか。

 

PQに対応する能力を獲得するか。

 

 

私には何とも予測できません。‥‥私自身は、PQに対応すべきと思いますけどネ。

 

実写においては、今ではリニアで撮影されたデータを受け取る方が稀なくらいです。リニアでデータが来るときは、例えばiPhoneで撮影したデータとか、プロ用ではない機材で収録したデータのみ(そんなときは「逆LUT」を当てて作業)です。ログのデータとLUTファイルは、必ずペアで受け渡されます。

 

ですから、実写の方々は、PQの運用そのものに関しては、スルっと馴染むと考えられます。

 

アニメ業界も同じようになるか‥‥は、何とも。

 

アニメ業界はリニアで、かつ、プロファイルなしの運用が、根付きに根付きまくっているからなあ‥‥。

 

でも、HDRの能力を最大限に作品に活かすのなら、PQ対応は必須と思います。

 

 

こうしてWebブラウザで見ている画像や映像はSDRです。最近ちょっとだけ公開された4KHDRプロジェクトのスクリーンショットも、あくまでSDRで、PQ1000ではありません。‥‥Webで見れるようにするには、現時点ではHDR to SDR変換が必要ですから、強烈に抜けの良い光の色彩は、Webではご覧になることができません。無理にHDRでレンジいっぱいにWebブラウザを表示しても、再現できません。

 

PQ1000のHDRが本領を発揮するのは、Dolby Vision対応の4KHDRテレビで、ネット配信映像を見る時です。

 

これはすなわち、風呂敷を広げて考えれば、「テレビの役割が次世代に移行する」ということですネ。テレビは、テレビ放送を見るだけの装置ではなく、様々な映像の受け口になるわけです。

 

そして、その新たな受け口に、ビジネスの新たなチャンスも含まれています。

 

 

深夜のテレビ枠のまま、アニメを留まらせて良いでしょうか。それとも、ベビーブーム時代のゴールデンタイムテレビアニメを、まだ諦めきれずに懐かしみ続けますか。

 

アニメを未来にどうしたいか。‥‥モニタ1つとっても、アニメ制作者の気概が問われていますネ。

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM