切り札

例えば、頬にごはん粒がついていると判らないように、あるいは、自分のこめかみを肉眼で直に見ようとしても見えないように、日本のアニメ制作現場で従事する人々は、自分たちの技術の「何が優れているのか」があまりにも視界の近くにありすぎて自覚できていないのかも知れません。

 

ちょうど、明治の文明開化の頃に、世界でも類稀なる日本の木版画の名作を、輸出品の包装紙として使ったように、自分たちの文化的財産・技術的独自性を「妙な劣等感」にて過小評価し、欧米や他ジャンルに対する中途半端な模倣と引き換えに、今まで積み上げた表現技術を破棄するのは、極めて愚かしいことです。

 

日本のアニメーション技術は、もの凄い「切り札」が何枚もあります。私が欧米のアニメ新作や3DCG作品を見ても、「まだ十分イケる。勝ち目はいっぱいある。」と思えるのは、その「日本の切り札」ゆえです。

 

では日本のアニメ現場で何が劣勢かというと、技術的な話で言えば、「道具とその運用方法が旧式化」していることです。逆に言えば、そこだけ、です。

 

私は「ペーパーレス」の現場環境をどんどん推進していますが、実は紙の現場で作業する人々の技術の中に、2020年代以降にも十分「切り札」として通用する要素が豊富に内包されているのを感じます。‥‥まあ、私も紙現場の出身者なのでネ。

 

問題は、旧式な装備、旧式な運用システムの中で、燃焼効率が悪いままで大半を眠らせている日本のアニメ技術を、どのように眠りから呼び覚ますか、‥‥です。

 

自分たちの技術の姿を、時には鏡に映し、時には外から眺めたりすれば、「なぜ、今までコレに気づかなかったのか」と呆然とするとともに、闘志も湧いてきますヨ。

 

闘志‥‥と言っても、浮き足立つ必要はないです。カラ元気で威勢を張る必要もないです。

 

 

 

2020年代を前にして、フワフワと浮き足立つ人間は困り者です。現場の人間は技術に自信をもって然るべし。

 

他国や他ジャンルの目新しい完成品を前にすると、もともと技術的基盤の乏しい人は、「あっちがいい」「あれがすごい」と浮き足立ちます。技術の足場が弱々しいので、すぐ何か別の浮き草に飛び移ろうとするわけです。

 

浮き足立つわりに、新しい技術要素〜例えば、4KやHDRやカットアウトにはほとんど無関心です。他者が新しい技術で作った完成品ばかり見て狼狽えるのです。新しい技術そのものは見ようとしないで、です。

 

他者が作った目新しい完成物を前に「評論家気取り」でアレコレ言っても進展しません。感想を述べるだけなら単なる「いちファン」で良いです。ファンのままでいたいのなら、現場に入ってくる必要はないです。

 

分析は必要ですが、分析で終わらせずに、計画に盛り込んで実践しなければ、分析は何の役にも立ちません。

 

新しく出現した技術要素を自分たちの新たな武器にしていくのが、未来を勝ち進もうとする現場の人間が実践すべきことです。

 

 

 

2020年代は、新しい技術要素でてんこ盛りです。

 

そんな中で、技術をしっかりと積み上げた方々が「自分は古い考え方の人間だから」と身を引く必要はないのです。その「古い(と思っている)考え方の本質は、本当に古いのか」を考えてみることです。

 

考え方を具現化するスタイルが古くなっているだけで、アニメ現場で培った多くの要素は新しい技術スタイルと再結合することで生まれ変わると、私は確信しています。‥‥アニメだけでなく、実写や3DCG作品にも関わった経験上から、そして、現在4KHDRのプロジェクトを毎日作業しての実感です。

 

まだ現時点では、私の口(文?)からは、具体的な「アレをこうすれば」「ソレをああすれば」ということは言えませんが、2020年代の4KHDR時代を前にしても、日本のアニメ現場に潜在する技術は「切り札だらけ」とは言えます。

 

 

 

アニメ制作現場の、各スタッフの卓越した技術。

 

失って初めて気づく‥‥なんて、ありきたりな恋の歌みたいなことは避けたいですよネ。

 

技術がまだ内にあるうちにハッキリ認識して、今のやりかたでダメなら、他のやりかたを考えましょう。

 

 

 


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